New Worid

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世紀の戦い

 1987年3月29日ミシガン州ポンティアック・シルバードームにて行なわれたレッスルマニア3はなんと93173人というレッスルマニア、というかWWE史上最多の観客動員数をあつめた大会として有名です。そしてこの大会の最大のお目当てはメインでのハルク・ホーガンVSアンドレ・ザ・ジャイアントとの”世紀の一戦”でしょう。正確にいうとホーガンとアンドレの試合はこれが始めてではありません。1980年にニューヨークのシェアスタジアムでの対戦を始め、日本でも何度か対戦しています。アオリとしては初対決としたほうが盛り上がるのは確かですが。とにかく93173人の注目がホーガンとアンドレの対戦にあったのは間違いありません。
 それではメイン以外の試合を紹介します。第1試合はリック・マーテル&トム・ジンクVSドン・ムラコ&”カウボーイ”ボブ・オートン。第2試合はビリー・ジャック・へインズVSハーキュリースのフルネルソンマッチ。第3試合はヒルビリー・ジム&リトル・ビーバー&ザ・ハイチ・キッドVSキングコング・バンディ&リトル・トーキョー&ザ・ロード・リトルブルック。第4試合は”キング”ハーリー・レイスVSジャンクヤード・ドッグ。第5試合はブルータス・ビーフケーキ&グレッグ・バレンタインVSザ・ルージョー・ブラザーズ。第6試合は”ラウディ”ロディ・パイパーVSアドリアン・アドニスの敗者髪切りマッチ。第7試合はハート・ファンデーション&ダニー・デービスVSブリティッシュ・ブルドッグス&ティト・サンタナ。第8試合はブッチ・リードVSココ・B・ウェア。第9試合はリッキー”ザ・ドラゴン”スティムボートVS”マッチョマン”ランディ・サベージのインターコンチネンタル王座戦。第10試合はホンキー・トンクマンVSジェイク”ザ・スネーク”ロバーツ。第11試合はアイアン・シーク&ニコライ・ボルコフVSザ・キラービーズ(ブライアン・ブレアー&ジム・ブランゼル)そしてメインのホーガンVSアンドレ。
 アレサ・フランクリンによる”美しきアメリカ”の熱唱が終わり盛り上がったところで第1試合がスタートします。第1試合のリック・マーテル&トム・ジンクVSドン・ムラコ&”カウボーイ”ボブ・オートン。リック・マーテルは1984年5月13日に日本人で初めてAWA世界王者となったジャンボ鶴田を破りAWA世界王座を獲得しました。その後1985年10月21日日本でNWA世界王者リック・フレアーとAWA世界王者であるマーテルが史上初のNWA・AWA世界王座統一戦を実現させたことでも有名です。トム・ジンクはあのロード・ウォリアーズらと同期でAWAで活動していた若手レスラーでした。対する”カウボーイ”ボブ・オートンは言うまでもなく”レジェンド・キラー”ランディ・オートンの父であり”ビッグO”ボブ・オートンシニアの息子、実力的には4人のなかではトップでしょう。”マグニフィセント”ドン・ムラコはハワイ出身のパワーファイターでインターコンチネンタル王座を獲得したことのある実力者です。余談ですがドゥエイン・ジョンソンがザ・ロックとなる以前のザ・ロックがムラコでした。といっても意味合いは違ってましたが。試合はオートン、ムラコが引っ張ってマーテル、ジンクがついていくという典型的な展開で進行しマーテル組が勝利。
 続いてビリー・ジャック・へインズVSハーキュリースのフルネルソンマッチ。ルールは単純でフルネルソンを仕掛けギブアップを奪った者が勝利。ヘインズ、ハーキュリース、共に典型的なパワーレスラーで特にヘインズはあのスーパースター・ビリー・グラハムをフルネルソンで勝利したことがあるほどです。但し2人共レスリングセンスは乏しいのが欠点ですが。結局引き分けに終わりました。ハーキュリースはその後もWWEで中堅での活躍はしますが、ヘインズは馴染めなかったのかすぐに離脱します。続いてはヒルビリー・ジム&リトル・ビーバー&ハイチ・キッドVSキングコング・バンディ&リトル・トーキョー&ロード・リトル・ブルック。しかし前回のレッスルマニアでメインを務めたバンディがここまでステータスを下げるとは…。一説に、正確にはダイナマイト・キッドの自伝では前回のあとなにか失敗してそれが尾を引いてずるずると落ちていったみたいです。なおリトル・トーキョーはレッスルマニア史上初めての日本人レスラー登場となってますが実際はどうなんだろう?日系人かもしれないし。それとジムとバンディ以外はミゼットレスラーです。試合はジム組の勝利です。
 次の試合はジャンクヤード・ドッグVS”キング”ハーリー・レイス。ここで”ミスター・プロレス”ハーリー・レイスの登場です。レイスのWWE入りは結構衝撃でした。WWEの全米侵略に敵意を持っていましたし、地元カンザスにWWEが来たときに、なんと38口径の銃を持って乗り込んだというエピソードがあるくらいでしたから。それがまさかのWWEいり。NWAにとっては裏切り行為でしょうね。しかしビンスは敬意をもってレイスを迎え入れましたしレスラー、アンドレなど特にレイスの実力を知っている人たちは喜んで受け入れました。だからこそ”キング”というキャラをレイスに与えたのです。余談ですがそれに反発したのがメンフィスの”キング”であるジェリー・ローラーでした。試合をコントロールしていたのは当然レイス。全盛期は過ぎていたとはいえ名人レイスが巧みにコントロールして盛り上げました。ドッグを立てつつ見事勝利しました。続いてルージョー・ブラザーズ(ジャック&レイモンド)VSドリーム・チーム(グレッグ・バレンタイン&ブルータス・ビーフケーキ)。ルージョー兄弟はカナダの名門プロレス一家でブレット・ハートらハート一家と2大カナダの代表的存在です。ただハート一家がカルガリー、イギリス系カナダ人なのに対しルージョー一家はモントリオール、フランス系カナダ人です。ちなみにレイモンドが兄でジャックが弟です。このタッグマッチは80年代のWWEの名脇役たちの一戦ですね。試合はドリームチームの勝ちです。
 次は”ラウディ”ロディ・パイパーVS”アドラブル”アドリアン・アドニスの敗者髪切りマッチ。この試合を最後にロディ・パイパーは引退することになりました。…といっても約2年後復帰しますが。タイプは異なるものの共に試合をコントロールできる能力に長けたもの同士だけに好試合になりました。パイパーが得意のスリーパーホールドを決めて勝利。敗者アドニスは無残にも髪を切られてしまいました。そしてアドニスもその後WWEを去ります。残念ながら1988年7月4日交通事故で亡くなりました。続いてはブリティッシュ・ブルドッグス(ダイナマイト・キッド&デイビーボーイ・スミス)&ティト・サンタナVSハート・ファンデーション(ブレット・ハート&ジム・ナイドハート)ダニー・デービス。正直サンタナとデービスはいらなかったかな。ブルドッグスとファンデーションの対戦で十分盛り上がるし。試合はブルドッグスチームが勝ちましたが。続いてココ・B・ウェアVSブッチ・リード。感覚としては箸休め的なカードですかね。リードは一時NWA世界王者候補の1人という評価を得ました。残念ながら伸び悩んでWWEの中堅で落ち着いてしまいました。その後WCWでロン・シモンズ(ファルーク)と組んで活躍しました。試合はリードの勝ちです。
 そして80年代WWEのベストバウトと謳われている”マッチョマン”ランディ・サベージVSリッキー”ザ・ドラゴン”スティムボートのインターコンチネンタル王座戦。年齢、キャリア、共にこの頃が2人の全盛期といえだからこそ名勝負が生まれたのでしょう。実際今見ても絶賛されると思います。一進一退の攻防の末、スティムボートが勝利。個人的には負けて引き上げるときの悔しさを露わにしたサベージの姿が印象に残ってます。しかしこれをきっかけにサベージは大ブレイクしホーガンと並ぶ存在になります。このあたりはレッスルマニア10でのショーン・マイケルズ、レッスルマニア13でのスティーブ・オースチンに似通ってます。続いてジェイク”ザ・スネーク”ロバーツVSホンキー・トンクマン。2ではヒールだったロバーツですがこの頃はベビーフェイス。しかもヘビーメタル・ロッカー、アリス・クーパーがセコンドに付いています。当時アリスはロッカーとして勢いを失ってた時期でしたが、これを期に浮上していったようです。そして80年代のWWEのコミカルヒール、ホンキー登場です。実はあのキングと従兄弟という間柄なホンキー。ニセエルビス・プレスリーなホンキー。今だとサンティーノ・マレラがいますが、ホンキーのほうが好きですね。次はキラー・ビーズ(ブライアン・ブレアー&ジム・ブランゼル)VSアイアン・シーク&ニコライ・ボルコフ。さすがにこの頃ともなるとシークもボルコフも古さを感じてしまいます。それでも老獪さがものをいって勝利しますが。
 そして、いよいよハルク・ホーガンVSアンドレ・ザ・ジャイアントの”世紀の一戦”となりました。厳密にいうとホーガンとアンドレの試合はこれが初めてではありません。1980年でのニューヨーク・シェアスタジアムで初めての一戦を始め日本でも数回戦ってます。ただ明確な決着は付いておらず、個人的な感覚では長年続いた戦いの決着戦という見方をしています。まああくまでも個人的な見解です。観客の見所としてはホーガンがアンドレをボディスラムで投げれるかで一致しています。最初は失敗してしまい中盤までホーガンは苦戦します。しかし終盤、遂にアンドレをボディスラムで投げることに成功し、とどめは得意のレッグドロップを決めて勝利。遂に決着が付きました。といってもこれで2人の戦いが終わるなんてことはなかったのですが。
 このレッスルマニア3はホーガン、そして80年代のWWEの絶頂期だったといってもいいでしょう。



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