New Worid

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史上最大のヒーロー退場

 1992年4月5日、インディアナ州インディアナポリスにてレッスルマニア8が開催されました。今回の最大の見所はハルク・ホーガンの引退。実際は引退はしませんでしたが、少なくとも当時ホーガンがプロレス界から身を引こうと決心していたのは確かです。というのも1990年代になってからステロイド問題が一般的な関心を強く引いていたのが原因です。ステロイドを過剰に使用した際の副作用については現在でも大きな問題として取り上げています。当時嘗てのWWE世界王者スーパースター・ビリー・グラハムが副作用によって臀部や足首の骨が溶けて自力での歩行が困難になるという状態に陥りました。実際のところステロイド問題はいつしかWWEバッシングになり、そしてホーガンバッシングへと変化していきました。こういった騒ぎにホーガンが嫌気をさして引退を考えたとしても不思議ではないでしょう。しかしこうした流れがホーガンに代表だれるパワー重視からブレット・ハート、ショーン・マイケルズに代表されるテクニック重視へ移行されるきっかけにもなりました。
 第1試合は”ボーイトーイ”ショーン・マイケルズVSエル・マタドール。第2試合はジ・アンダーテイカーVSジェイク”ザ・スネイク”ロバーツ。第3試合は”ラウディ”ロディー・パイパーVS”ヒットマン”ブレット・ハートのWWEインターコンチネンタル王座戦。第4試合はビッグ・ボスマン&ハクソー・ジム・ドゥガン&サージャント・スローター&バージルVSザ・マウンティ&リーポマン&ナスティ・ボーイズ(ブライアン・ノブス&ジェリー・サッグス)。第5試合は”ネイチャーボーイ”リック・フレアーVS”マッチョマン”ランディ・サベージのWWE世界王座戦。第6試合はタタンカVS”ザ・モデル”リック・マーテル。第7試合はマネー・インク(”ミリオンダラーマン”テッド・デビアス&IRS)VSナチュラル・ディザスターズ(アースクエイク&タイフーン)のWWE世界タッグ王座戦。第8試合は”ザ・ロケット”オーエン・ハートVSスキナー。そして第9試合はハルク・ホーガンVSセッド・ジャスティス。世界王座戦の位置が微妙ですが、ホーガン引退が焦点になっているとなれば止むを得ないということですか。
 それでは各試合について。今大会でショーンがMrレッスルマニアへの道が始まったといったら格好良いのですが、さすがに当時そんなこと予想できるはずはなく(笑)のちに”ショー・ストッパー”と呼ばれるほどのパフォーマンスはこの試合では見られず、マタドールの上手さが光った試合でした。第2試合ですがそれまでヒールだったテイカーがレッスルマニアとロイヤルランブルの合間にベビーに転向していました。というより観客がテイカーを支持したというのが適切でしょう。このあたりはのちのストーンコールドと似たケースでもあります。新旧怪奇派の世代交代といえる試合でした。場外でのツームストンは以降レッスルマニア26でのショーン戦以外見られない貴重なシーンです。第3試合はパイパーのベストバウトといっていい試合でした。ブレットにとっては王座奪還と同時にパイパーとの存在感との戦いでもありました。ブレットにしては珍しく流血し苦戦しましたが最後はパイパーのスリーパーを丸め込んで逆転勝利。パイパーは潔くブレットの勝ちを祝福していたのが印象的でした。
 第4試合は箸休め的なカードですね。前回のメインに登場したサージやインタコンチに挑戦したボスマン、タッグ王座を獲得したナスティが入っています。1年経過して脇役とは時間の流れの速さを物語っています。そして第5試合。団体の看板である世界王座戦がこの位置とは…。それでも試合はインタコンチ戦と並んで素晴らしい内容でした。まあフレアーとサベージ、2人のプロレスの達人が絡めば素晴らしい試合になるのは明らかですが。そしてランディ・サベージにとってWWE在籍最後の名勝負となりました。実際レッスルマニア以降は精彩を欠いた状態になりましたし。第6試合はネイティブアメリカン系のキャラであるタタンカの初登場の試合でした。私のイメージではワフー・マクダニエルが最高のネイティブ系キャラでしたが、タタンカはワフーのレベルまでには達しませんでした。第7試合は終わり方がお粗末でした。デビアスとIRSほどの技量ならもう少しましな試合になったはずですが…。相手が大味すぎたか…。第8試合はオーエンの快勝でした。スキナーは昔は良いレスラーだったんですが…。
 そしてメインの試合です。その前に録画ですがビンス・マクマホンによるホーガンへのインタビュー、最後を匂わすPVなどでホーガン引退を伺わせる演出を見せます。入場したときのホーガンの表情が感傷的だったのが印象的です。試合は同じタイプのセッドが相手なので大味な展開なのは否めません。しかもセッドがホーガンの必殺レッグドロップを受けていながらカウント2で返したのにマネージャーのハービー・ウィップルマンが乱入して反則裁定で終わるという消化不良な結果となりました。更にパパ・シャンゴ(のちのゴッドファーザー)が乱入してリング上は混乱状態に。しかしここで1991年夏に離脱したアルティメット・ウォリアーが登場してホーガンを救出。ホーガンに代わってウォリアーが主役になるかの暗示を示しました。なおセッドはこの直後WWEを離脱。ここから主役を巡る争いがスタートしました。そしてホーガンも結局引退はせず1年後復帰します。



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