今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

今日の気持ちを短歌におよび短歌鑑賞

2017.10.18
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カテゴリ: 短歌


白浜短歌会六月歌稿(六月二十一日)

A子さん

庭に咲くあぢさいの花美しく色とりどりで周囲賑わす

椅子にかけ引きずり乍ら 雑草 ( くさ ) を取る庭はきれいに我は筋肉痛

1.庭にあじさいの花が咲いています。その花はいろとりどりで美しく周囲をにぎやかにしているようだと感じています。ほっとした、気持ちで庭を見回している作者なのでしょう。次の作品を見ますと、その庭は作者が雑草を取っているのです。そうしたことによってなおさらあじさいが美しく見えるのでしょう。ですから、多少満足感も感じられます。それが「周囲賑わす」という言葉になったのかもしれません。

2.「椅子にかけ引きずりながら雑草を取る」という表現に、九十歳の作者の苦心がにじんでいます。「庭はきれいに」なった満足感とつい無理してしまって体が痛いという反省とが複雑にからんでいます。ただ、それほど深刻ではなく、多少ユーモアも感じました。「バカだなあ、筋肉痛になるほど夢中で草取をしなくてもよかったのに」といった軽い感じです。

               B子さん

受けつけぬことばとメロディー多くなる七十年代シカゴ聴く夜

パソコンが起動しなくてイラッとすお気楽なミケ(ネコ)ひざで居眠り

ミニダリアレモンイエローが雨に映え下手なスケッチ挑戦したり

1.世の中が様変わりしています。音楽界も同様で、歌詞といいメロディーといい作者には受け付けられないものが多いようです。作者は昔を、1970年代、(昭和45年から昭和55年)を懐かしく思っているようです。その当時、作者は何歳ぐらいであったでしょうか、夜になって一人静かにシカゴ(バンドの名前ですか)を聴いていると若い頃の色々なことが甦ってくるのでしょう。バンドシカゴの曲で「素直になれなくて」というのがあるようです。

2.パソコンが起動しない、パソコンをやる人間であれば何度か経験することです。これは、パソコンだけではなく車などもそうですが、メカニズム(機械装置)とソフトウェア(操作手順)とがあって、私などは操作方法はある程度わかるんですが、メカニズムの方の知識があまりありません。ですから、機械的な故障などですと、すっかりお手上げで、パニックを起こしてしまいます。作者もたぶんパニックを起こしたのでしょう。ただ、表現は「イラッとす」と軽めに抑えているようです。こんなときは、可愛がっているミケにさえ当たりたい気分ではないでしょうか。「お前は気楽でいいね」とひざで居眠りをして頼りにならない猫に当たりたい気分なのでしょう。



3.ミニダリアにも色々な色があるようです。作者の家にあるミニダリアの色は、レモンイエローのようです。そのレモンイエローが折からの雨に映えてなんとも美しく見えたのでしょう。雨で外出もままなりません、そうだこの美しいダリアをスケッチしよう、そんな明るい気持ちになった作者ではなかったでしょうか。花の美しさとともに花の力を感じる歌です。

                   D子さん

有り難き先輩の誘い有りて我気持ち新たに短歌の会へ

只々と病に向う我のいて日々を支えし短歌と俳句

今は只感謝感謝の日々の中傷痕残し命頂だく

1.鈴木絹代さんが、白浜短歌会に戻って来てくれました。有難うございます。

 この歌は、そんな鈴木さんの挨拶の歌と受け取りました。正岡子規がよく挨拶の歌を詠んだようです。ご自分の気持ちを素直に歌うのが短歌だと思います。こうした感じでどしどし詠んでいただけたらよろしいかと思います。



2.具体的に、どのような病を患らっていらっしゃるのかはわかりませんが、日々ご苦労されていらっしゃるようです。そうした日々の苦しみを短歌や俳句を作くることによって、なぐさめられているのでしょう。短歌で支えられた具体的な一瞬を詠んでいただくと、もっと強烈に読者に届くものがあると思います。



3.二首目も「日々」という言葉があり、三首目のこの歌も「日々」という言葉が使われています。短歌の基本は瞬間を歌うことです。「日々」というようなまとめかたには、注意が必要が必要ですので、念のために申し添えて置きます。作者の気持ちは「感謝感謝」「命頂く」といった言葉通りであろうと推察します。ただ、多少観念的であるように感じます。短歌は、(俳句も同様であろうと思いますが)写生からと言われますので、写生に心掛けられると歌がもっともっと生きてくるように感じました。(これは私自身が常に気をつけていることです。)作者の気持ちは原作でも十分読者には通じると思いますが。




E子さん

草むしりきれいになった庭ながめ瓜の間の土を洗いぬ

五月豆今年もサルに食べられたにくいと思うも利口に負けた


若者のウインドサーフィンからふるに波風に乗り春の海すべる

1.作者も九十歳を過ぎていられる、草むしりしてきれいになった庭を眺めているようです。しかし、それだけではなく、(採りたての)瓜の土を洗っているというのです。仕事をするのが好きな作者かもしれません。「瓜の間の土を洗いぬ」が少し分かりにくいと思いました。「瓜に付いたる土を洗いぬ」ということだと思います。草をむしってきれいになった庭をながめることと、(採り立ての)瓜を洗う事と二つのことを歌っていますが、どちらか一つで十分歌になると思います。

2.せっかく作った五月豆を猿に食べられてしまった。「今年も」とありますから、去年もそうだったのでしょう。ですから、今年こそはと、食べられないような工夫をこらしたはずです。しかし、猿のほうがそれを上回って、五月豆は食べられたのでしょう。憎いと思う以上に猿の利口さにお手上げの作者の姿が浮かびます。

3.白浜海岸でウインドサーフィンをしている若者たちを詠っています。カラフル(色あざやか)な服装をして波に乗っている姿、おりしも季節は春、遠い若い日を思い出している作者なのでしょうか。「波風に乗り」という表現はどうでしょうか、「波風を受け」としたいところでしょう。

                                 F子さん

伊豆地区の高齢化率報道にいかに生きるや夫と語りし


芝の上カラス一羽がスキップす伴侶を得たか偶然なのか

1.確か、西伊豆町が県下で一番の高齢化率が高かったように記憶しています。高齢者が多くなり、介護が受けにくくなるとかの問題が浮かびます。そうした問題をご主人と話し合ったというのでしょう。まず、「夫と語りし」の「し」は過去の回想の助動詞ですので、「夫(つま)と語りぬ」あるいは、「夫(おっと)と語る」とかのほうが良いと思います。「いかに生きるや」の「や」は相手に疑問を投げかけるときに普通使います。自分自身が疑問である場合は「いかに生きるか」となります。この場合「語る」となっていますから、ご自身が色々悩んでいることをご主人に語ると言った感じで、「いかに生きるか」のほうが良いように思います。ご主人に、「どのように生きますか」と疑問を投げかけるのであれば、『「いかに生きるや」と夫に言いたり』とかでしょうか。

    参考:伊豆地区の高齢者率高ければいかに生きるか夫(おっと)に語る

    参考:伊豆地区の高齢者率高ければ「どう生きます」と夫に言いたり

2.短歌は心に感じたこと、感動したこと、あるいは心配ごとでも困ったことでもいいのですが、作品にはこころの動きが必要となるでしょう。頭の問題、考えの問題ではないのです。ですから、「偶然なのか」は不要に思いました。だだし、歌に理(理性、昔はことわりといいました)の部分を入れ込むことが作者の個性なのかも知れません。

参考:芝の上カラス一羽がスキップす伴侶を得たと喜ぶように

                                   G 子さん

草をしき温き畑に 里芋 ( いも ) ねかせ春の 陽光 ( ひかり ) を静かに待てり

やわらかな小さなかたちのかまきりが芝生の上で春の陽をうく



1.里芋を植える手順を語りつつ、その成長を見守る様な作者の眼差しを感じます。「草をしき温き畑に里芋ねかせ」と丁寧に表現しています。そして「春の陽光を待つ」というのです。春の陽光を待つのは里芋だけでなく、作者自身も春を待っているような感じを受けたのです。

2.「やわらかな小さなかたちのかまきり」とこれも対象を見る目が細かく丁寧で、優しい感じがします。それと同時に、そのあやうい生命体が無事に成長するようにと祈っているようにも感じました。歌の内容とともに作者の人柄が感じられます。

            さくらの花                 原 明男

追ひかけて追はれて児等の笑い声さくらの花も風に馴じめり

祖のこころ律儀に耕こす若者の笑顔の清がしはつなつの風

   1.花見でしょうか、子供たちが、追いかけっこしたりして、はしゃいでいます。それに合わせるかのように桜の花も揺れているようです。それが、「さくらの花も風に馴じめり」という表現になったのでしょう。お孫さんでしょうか、見ている作者の視線、風になじんでいるのはさくらの花だけでなく、作者も同様だったのではなかったでしょうか。

2.「耕こす」は、「おこす」と読むのでしょうか。先祖代々営んで来た農業を継いでがんばっている若者がいたのでしょう。その若者の清々しい笑顔、それははつなつの風のように、さわやかに作者の心を吹き抜けたのでしょう。






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最終更新日  2017.10.18 21:02:36
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