All About Jukeman !

All About Jukeman !

ライナーノーツ

ライナー・ノーツ

 ~ユーミンの「音の世界」を中心に、熱い想いを
  ライナー・ノーツ形式で綴ってみようというコーナーです。
  全く権威がないにもかかわらず、
  フジTVの深夜番組っぽく「偉そうに」書いてますので
  ご立腹のことと思いますが、何卒ご容赦を・・・ ~




■Bonne annee
ミシェル・ルグラン風の軽快なフレンチ・ボサノバタッチの曲。
ユーミン曰く、「2001年宇宙の旅」のティー・ラウンジのイメージ。
アルバム・オープニング曲なのに、何のSEもなく始まるのは珍しい。
Cメロの転調のオンパレードが心地よい。

■Wings of Winter
ポール・マッカートニーの「ワンダフル・クリスマス・タイム」
を思わせるボヨヨンとしたアレンジがいかにもなクリスマスソング。
「♪窓には」のバックコーラスが、かじかんだ手に息を吹きかけている音に聞こえる。

■Northern Lights
フィンランドの民族楽器「カンテラ」の切ない音で始まる曲。
ユーミン曰く、マイナーでエスニックな受難的クリスマスソング。
音的には「きみなき世界」+「哀しみをください」風。

■ただわけもなく
ユーミンの育ての親「ひでちゃん」に捧げる曲。
「蘇州夜曲」を思わせる、さびのアジアなメロディは、日本の夏の風景そのもの。

■Rodeo
カウントから録音されている印象的なイントロでスタート。
全編、ユーミンが裏声で歌うという、やたらキーの高い曲。

■雪月花
ハープのピチカートのアルペジオが全編に流れる。
イントロは、ZARDの「君に逢いたくなったら」のサビを思わせる。
サビの「♪満ち欠ける」のメロディは、「美女と野獣」のAメロチック。
日本のポップスの「泣かせ」のメロディをすべて封入したような「泣いてくださいソング」。
Cメロでの転調は、本当に春が来たように、パッと彩りが生まれる。

■Painting the sea
集中治療室の音でスタート。(私は最初、「トラックのバックの音」かと思った。)
この音と同じ高さの音でイントロのメロディが始まるので
無機質な機械音が融解してイントロが始まるように聞こえる。
正隆さんは、この曲に「死のイメージ」を描いたという。
さびにこんなに地味なコードを持ってきてしまうのは
ユーミン以外では許されない技であろう。

■One more kiss
イントロから続く4つのコードの循環は、ミニー・リパートンの「Lovin’ You」を彷彿させる。
ミニー・リパートンほどではないが、ユーミンはこの曲で、およそ2オクターブの音域を歌いこなしている。

■哀しみをください
冒頭から、地声と裏声が1音ごとに交差するという、ユーミンのボーカルテクが光る曲。
エンディングのスキャットも、ユーミンの声ならではの「アジアな雰囲気」が
ジャストフィットしている。

■110°F
「マシュケナダ」のような雰囲気を持つブラジルもの。
コードも、ボサノバの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビン的な
哀愁漂う難解な展開を見せている。

■acacia[アカシア]
シンプルに感じられるが、随所に裏技が散りばめられた曲。
BメロのC,D,Emのコードの繰り返しが斬新。
「♪道しるべ~」のフレーズは大昔のCM「ソフトエクレア~」のフレーズを彷彿させる。
バンジョーを使用している点、「旅」が出てくる点で、「そのまま」と姉妹曲のように感じられる。

■Song For Bride
イントロの雰囲気はデビッドフォスターの「セントエルモスファイアーのテーマ」の世界感と共通し、実に爽やか。
「♪あなたのままで」のフレーズは、どこかで聴いたことあるような、でも思い出せない・・・まさにアルバムコンセプトを象徴するような部分である。(強いて言えば、「恋人がサンタクロース」の「♪今夜8時になれば~」のフレーズと近いのか。)
Bメロで転調して、また上手く元の調に戻す技が、流石である。

■Lundi
曲調的には「魔法の鏡」「まちぶせ」のライン。
切ないイントロは、往年の多岐川裕美主演ドラマあたりの雰囲気がある。
ユーミン曰く「走れトロイカ風」のアレンジだが、「平井堅」と呼ばれていたR&Bテイストのバージョンも録音されていたらしい。ぜひ聴いてみたい。

■幸せになるために
意図的にシンプルに作ったと思われる曲。
Bメロの頭にはG#mが7拍も続くが、どこかにM7などを持ってきたくなるところを、あえてシンプルにしている。
サビも、CのKeyでいえば、「F GonF Em Am」というポップスのサビの黄金パターンを使用。(このパターンは、「青春のリグレット」「雪だより」「私のフランソワーズ」「卒業写真」などにも見られる。ちなみに、このパターンを、サビではなくAメロの頭に登場させる贅沢な曲としては「Downtown Boy」「残暑」などがある。)
このパターンを使用するのは、勝負に出ている証ともいえよう。
こんなにシンプルなので、誰でも簡単に弾き語りが出来そうだが
実はKeyが厄介なB。ユーミンの曲は、そう簡単には攻略できないのである。

■7TRUTHS 7LIES
当時、リバイバルで流行っていた「ABBA的なもの」を意識したらしい。
(ちなみに、松田聖子に提供した「ロックン・ルージュ」も
 アバの「ダンシング・クイーン」を意識したらしい。)
Aメロのユニゾンは「天使と悪魔」の対比に聞こえ、
Bメロのボイスエフェクトはストレートに「悪魔声」をあらわしている。
エンディングにはウェディングマーチのメロディが重なるという凝った構成。

■PARTNERSHIP
シングルとアルバムでは、アレンジも違えば、Keyも大幅に違う。
やはり、Frozen Roses Tourで痛めた喉では、シングルバージョンは
低くせざるを得なかったのだろう。
シングルの方のイントロは、ビートルズの
「Golden Slumber」のイントロを彷彿させる。

■巻き戻して思い出を
サビのメロディは、「春の日は過ぎ行く」でリメイクされているかの様である。

■Raga#3
インド音階をたっぷり取り入れた曲。
さびに登場する「おおたか静流」の声がスパイスになっている。

■Josephine
ユーミン曰く、映画「バグダッド・カフェ」の「コーリング・ユー」のような浮遊感を表現した曲。
音はジャズだが、単に「ジャズテイスト」なアレンジにとどまるのでなく
メロディにも多分にテンションノートが織り込まれている。

■8月の日時計
清涼飲料水のような曲。正隆さんのアコーディオンの音色が光る。
この曲のハイライトは、「♪眩しさ~に」の前後のギターの音である。
この音が、抜けるような8月の青空を表現しているように思われる。
サビは、ユーミンお気に入りの音階(CのKeyでいうと、レ・ド・ソ・ドを繰り返す音階。これは、「Holiday In Acapulco」のサビ、「2人のストリート」のサビ、「人魚になりたい」のサビ、「ダンデライオン」のイントロ、「Josephine」のCメロ等にも用いられている)が登場する。
サビ前のピアノのフレーズは、「Tropic Of Capricorn」のBメロにも登場。

■セイレーン
この曲のハイライトは、何と言っても「♪うねりの前ぶれ」の後のギターの音。
このベンチャーズ・加山雄三ラインの音が、サーフィンものを印象付けている。

■Sunny day Holiday
大瀧詠一サウンドにインスパイアされて作ったという、いわゆる「フィル・スペクターもの」。
ちなみに、このシングルの発売日は、偶然にも、大瀧詠一の「幸せな結末」の発売日と一緒であった。

■きみなき世界
スティングの「Englishman In N.Y.」風の曲。
全体がサビだけで出来ている曲を作ろうとして出来たナンバーらしい。

■時のカンツォーネ
「時をかける少女」と同じ歌詞の曲。
コーラス部分に歌詞を移動させたりして、うまくツジツマを合わせている。
全体の曲調は、マジックショーのBGMで有名な「オリーブの首飾り」そのもの。

■Saint of Love
イントロには「ホーミー」の音を起用。
本編は、漆黒の闇の中にいるようなイメージ。
そして、エンディングは一転、陽気なゴスペルコーラスが登場。

■ありのままを抱きしめて
イントロは、不気味な電子音と生ギターの融合。
まさに「アーバン+プリミティヴ」というアルバムテーマを表現している。

■告白
いわゆる「ダサカッコイイ系」のイントロ。

■Moonlight Legend
昔の世界の部分と現在の世界の部分の対比が、アレンジの点でも明瞭になされており、とても面白い。
「♪昔の世界で」のメロディが、「ロスト・ハイウェイ」の「♪もう通り過ぎたけど」の部分で登場する。

■別れのビギン
ムード歌謡テイストの曲。
Aメロのアコーディオンのアレンジは、西城秀樹に提供した「2Rから始めよう」のAメロのアレンジに応用されている。

■Midnight Train
サビまでのフレーズは、ほとんど2コードで構成されているのが見事。

■Called Game
冒頭のフレーズは、ポール・マッカートニーの「My Love」の冒頭の雰囲気が漂う。
バスドラでリズムを刻むアレンジは、同じスポーツバラードものの「ノーサイド」と共通する。

■まちぶせ
「私のフランソワーズ」で登場するフランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」にインスパイアされたのではないかと思われる曲。
サビのアレンジは、コーラスが重厚なシングルバージョンの方が好きである。

■命の花
ユーミン曰く「アシッド演歌」。インドのどうでもいいような歌謡曲にインスパイアされたという。
曲調は、奥村チヨの「恋の奴隷」を連想させるが、リズム帯は実にクールなループを使用。まさに「アシッド演歌」である。

■クロームの太陽
途中から、米米CLUB「FUNKフジヤマ」、田原俊彦「シャワーな気分」の路線になってしまう。

■Walk on, Walk on by
バート・バカラックの作品に「Walk on by」というのがあるが、
サウンドも「雨にぬれても」ラインの、正真正銘の「バカラックもの」。
(ちなみに「愛は・・・I can’t wait for you, anymore」もバカラックの香りがしてならない。)
さびの展開もなかなか意外で流石である。

■Weaver of Love ~ORIHIME
民謡・演歌の要素を取り入れた和物。
アレンジにも、和太鼓や鐘の音が登場。
「♪あなたへ~」の部分のメロディは、ドビュッシーの「月の光」
にも登場するが、まさに宇宙を感じさせるメロディである。

■Sign of the Time
Aメロの冒頭部分は、T.REXの「20th Century Boy」のイントロを彷彿させる。

■GET AWAY
「表彰状授与」のようなイントロから一転、ソフトレゲエタッチのAメロが始まる。そして、サビはノリノリの8ビート。
「♪Believe Me~」の歌詞が「キリンビール」に聞こえる。ちなみに、この曲はキリンビールのCMに使用された。

■Hello, my friend
ギルバート・オサリバンの「Alone Again」の雰囲気を持つ曲。

■RIVER
一見、何のひねりもない曲に思えるが、とてつもない隠れ技が潜んでいる。
まず、Bメロのコードのベース音をたどっていくと、見事に1音(あるいは半音)ずつ下降している。さらに圧巻は、2コーラス目後の間奏部分で、8小節に及ぶ下降ラインの旋律が登場する。この部分が、正に「川の流れ」を音で表現しているのである。

■Oh!Juliet
サビで、3連のリズムに変わる実験的な曲。

■春よ、来い
サビは、サンバの曲として元々書いていたものらしい。
コーダ部では、童謡の「春よ来い」のメロディが重なる。

■自由への翼
リズムがパット・メセニー風。
サビの繰り返しが、1回目と2回目で、1拍目の場所が異なっているのが面白い。

■HOZHO GOH
ナバホ族女性の語りで始まるプロテスト・ソング。
サビの変拍子が心地いい。

■この愛にふりむいて
「U-miz」の中では、この曲と「只今最前線突破中」が、当時流行していた
「ドリカム的な」要素を取り入れた作品、という印象がある。
この曲の圧巻は、「♪たぶん前より」の後のDm7(?)のコード。
それまでの流れから、いきなりここに戻すのは、高等テクである。

■XYZING XYZING
マイナーKeyで低音の効いている曲を作ろうとして出来た曲らしい。
吐息音でビートを刻むアレンジも斬新。

■July
ユーミンが「私の中のサイケです」とコメントしていた曲。
ベース音が何の予告もなくBメロから唐突に登場する所がハッとさせられる。

■二人のパイレーツ
ピアノとハモンドオルガンのみのシンプルなアレンジの曲。
CMで使用された時は、クリスマス風のアレンジであった。
もしライヴでこの曲が歌われたら、「♪金貨~~~」の部分の声が裏返らないか
冷や汗ものである。

■サファイアの9月の夕方
イントロが、マイケル・ジャクソンの「Black or White」を思わせる。

■Misty China Town
Aメロ頭「♪チャイナタウン」部のコード「Caug→F6」だけで
どうしようもなく「チャイナ」を感じさせてくれる。
間奏のトロンボーン・アレンジがコミカルでいい。

■冬の終り
「終わり」ではなく「終り」の表記になっているのは、「夏の終り」(矢沢永吉)、「夏の終り」(オフコース)という日本ポップスの伝統に基づいたものか。
「冬」の字が字面上重複しているのは、語呂合わせ好きのユーミンの狙いかもしれない。

■So high
Aメロ、Bメロ、Cメロと、次々意外な転調を見せる見事な曲。
エンディングのアレンジは、月に飛んで行くような上昇感がある。

■恋の一時間は孤独の千年
麗美への提供曲のセルフカヴァー。
アレンジはアシッド・サンバ。
全体的に音が低く、ユーミンの低音域を堪能できる。

■情熱に届かない
松崎ナオがカヴァーしたときのアレンジが、
最高にこの曲の良さを引き出していると思う。

■DAWN PURPLE
サビのメロディは、映画「野生のエルザ」の「ボーン・フリー」を思わせる。
イントロから続くリズムは、正隆さん編曲の「ピンクのモーツァルト」(松田聖子)の全編にも流れる。

■9月の蝉しぐれ
Aメロ頭とサビ頭が同じフレーズという見事な構成。この部分の旋律は、フランシス・レイの「パリのめぐり逢い」を彷彿させる。
Aメロ後半部は、バート・バカラック的なコード遊びが見られる。

■Miss BROADCAST
曲調は、当時の「ジャネット・ジャクソン的なもの」を狙ったのではないだろうか。
後半間奏部分は、まるで架空のニュース番組のオープニングテーマのように聞こえる。

■時はかげろう
オメガトライブのラスト曲として提供されたナンバー。
「♪滅びゆく種族の歌」という歌詞が、それを物語っている。

■ホタルと流れ星
この曲をぜひ歌ってもらいたいのが、八代亜紀である。
特に、「♪雨のファイヤーフライ」の部分は
「♪あんめのファイヤーフリャ~~~」と人を食ったように歌って欲しい。

■残暑
後半、サビの繰り返しの部分で、
「♪そばにいて」の「て」の音と
「♪あなたの声に」の「あ」の音がぶつかる所が気になる。

■Save Our Ship
Aメロ部分は「ひこうき雲」「翳りゆく部屋」などに見られる教会音楽のコード進行が散りばめられている(D→DonCの展開等。)
また、「♪Save Our Ship」の歌詞の部分が1コーラスで2回登場するが、いずれも同じメロディというのも、珍しいパターンである。
そして、この曲の凄い所は、KeyがGであるのに、前半部分で1度もGのベース音が登場しない点である。このGの音はサビの「見えぬ未来を」の部分で初めて登場するのである。これは、ルートであるG音を外すことで、根無し草のように浮遊し続ける感覚をもたらしている。これは、正に無重力空間をさまよう様である。
そして、「見えぬ未来を乗り越える」の部分では、それまでと逆に、コードが4つ変化するにも関わらず、ベースはルートのG音のまま動かない。これは、今までG音が外されていた不安感を一気に取り除くように、4小節に渡って安心をもたらすのである。この安心感により「見えぬ未来を乗り越える」という希望にあふれるメッセージが説得力を与えられる。見事としか言いようがない。

■LOVE WARS
リマールの「ネバー・エンディング・ストーリーのテーマ」を意識して作ったものと思われる。その証拠に、間奏部分のメロディに同曲と同じものが登場する。
(「I gotta go LOVE WA~~~RS」の部分)

■心ほどいて
イントロのキーボードが印象的。
サビの部分のベースのメロディが
Coda部分で変化するところがいい。

■リフレインが叫んでる
「最後の春に見た夕陽は~照らしながら」「夕映えをあきらめて」の2ヶ所で、ポップスの黄金コードパターンを使用(「幸せになるために」の項参照)。これで人気が出ない訳がない。
「ノイエ・ムジーク」での収録時間は、「ディライト~」よりなぜか20秒も短い。リフレインがあまり叫ばないのである。

■Nobody Else
曲のほとんどがCとDの2コードで出来ているという実験的な曲。
井上陽水の「夢寝見」という曲は1コードだけで出来ているが、それに次ぐ快挙と言えよう。

■誕生日おめでとう
ギターとボーカルが掛け合いのようにメロディを奏でるお洒落な曲。

■Home Townへようこそ
Aメロは、舘ひろしの「泣かないで」を思わせるダサいメロディを使い、田舎の雰囲気を盛り上げている。
しかし、曲の終わり(「気に入られるわ」の部分)は、お洒落な9thコードを用い、舘ひろしとの違いを見せつけている。

■とこしえにGood Night(夜明けの色)
四七抜き(よなぬき)音階(ファとシを抜いた音階)で作った代表的な曲。(他には、「少しだけ片思い」「Aはここにある」等がこの音階の作品。)
この音階は、日本の唱歌に多く用いられ、ある種の郷愁、また、適度な「ダサさ」を感じる音階だが、歌詞の「なさけなく」「らしくない」自分の状況とリンクしている。

■ダイアモンドダストが消えぬまに
エンディングが「青春のリグレット」のエンディングと瓜二つ。

■思い出に間にあいたくて
イントロのメロディ、全体的な曲調が「今だから」と共通の雰囲気を持つ。

■Sweet Dreams
ポール・ヤングの「Everytime You Go Away」のような世界感を持つ曲。
サビのキメには、大瀧詠一・山下達郎的要素も入っている。

■Tuxedo Rain
リバーブをたっぷり効かせて、雨の中の幻想的な世界を表現している曲。
メロディもシンプルなのに印象的で、「アニバーサリー」やジョンレノンの「イマジン」と並ぶ名曲と言えよう。
ちなみに、藤井フミヤのお気に入りでもあるそうだ。

■LATE SUMMER LAKE
ドン・ヘンリーの「ボーイズ・オブ・サマー」のユーミン版という感じの曲。
サビのフレーズは、ジャーニーあたりに歌ってもらいたい「80年代ポップスの王道」風。

■霧雨で見えない
ロケーションは恵比寿。
サビは泣かせのコード進行「D→EonD」の連続技。
(体操で言えば「ダブル・コバチ」といったところ)
S.B.S.では、ユーミンの監督推薦で選ばれたらしい。

■パジャマにレインコート
シングルB面に収められていたが、満を持してこのアルバムに登場。
「♪せめぬこと」のメロディが「So High」の「♪Fly Me To The Moon」
のメロディと共通する。

■白い服、白い靴
思わず、歌詞に聞き入ってしまう曲。
1コーラス目のエンディングの「~したの」の甘え口調の3連続、
2コーラス目のエンディングの「~した」のがっかり口調の3連続、
そして、それを彩るメロディも、ほぼ同じ波形が3連続する、
という見事なリンクには、惚れ惚れする。

■ホライズンを追いかけて
Ⅱ-Ⅴ(ツー・ファイヴ)と呼ばれるコード進行が随所に散りばめられた曲。
これにより、ストレートに胸に響く曲となっている。

■Autumn Park
イントロから大活躍のキーボードの音は、当時流行りの「ホイットニー・ヒューストン的なもの」を感じさせる。
ユーミンは、「スタンダード」を作ろうと思って、この曲を書いたそうだ。

■もう愛は始まらない
当時流行っていたスクラッチノイズをイントロから導入。
この曲は、タイトルの「もう愛は始まらない」よりも
「DA・DI・DA」の部分のイメージが強い。
ちょうど、円広志の「夢想花」が「とんでとんで」と呼ばれる現象に似ている。

■BABYLON
舞台は都会だが、サウンドは喜多郎風エスニック。
CDではリズムはパーカッションのみが刻むが
ライヴではドラムが壮大に挿入されるアレンジが楽しめる。
Aメロでは、ほぼ同じ波形のメロディが4回繰り返されるが
その都度コードは変化するという見事さ。

■SUGAR TOWNはさよならの町
サビのコーラス部分は、ナンシー・シナトラの「シュガータウンは恋の街」のフレーズを引用。実にお洒落である。

■青春のリグレット
乙女チックな麗美バージョンをがらりと変えたノリノリのアレンジ。

■ノーサイド
なんと言っても印象に残るのが、イントロのメロディ。
当時、クリストファー・クロスの「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」のイントロに似てるという批評もあったが、独自の存在感を持っていると思われる。
サビの頭のコードはFであるが、この「F」の使われ方がこの曲の鍵になっている。
この曲はCのキーで始まるが、FはCのキーでは「サブドミナント」に当たる。
そして、この曲はサビからFのキーに転調するが、FのキーではFは「トニック」に当たる。すなわち、サビに入って、Fが鳴ると、最初は転調に気付かずに、サブドミナントとしてのFが鳴っている錯覚を起こすわけである。そして、その錯覚は「何を犠牲にしたの」のCmが聴こえて、やっと「錯覚」と気付かされるのである。
これは、ある種の「トリック」であるが、コードがキーによって異なった意味を持つことを知り尽くしたユーミンならではの手法と言えよう。

■BLIZZARD
この曲の注目ポイントは、1コーラス後、シンセリードのソロが入り
そのシンセソロのエンディングが2コーラス目のボーカルの頭と
絶妙に絡む所。背中をゾクゾクさせる。
そして、ハイライトは、エンディングのサビのリフレイン前に
盛り上がって盛り上がって、それをドラムの音で切り裂く部分。
心が滑らないはずがない。

■木枯らしのダイアリー
イントロのメロディが、「海を見ていた午後」のサビのメロディを彷彿させる。

■青い船で
イントロに登場する「ダララララン」という半音ずつ下がる音階は、「オペラ座の怪人」のイントロを彷彿させ、微妙な緊張感を与える。
「なぜかとても ああなつかしい」のメロディは、映画「ラ・ブーム」のテーマ「リアリティ」を思い起こさせる。

■不思議な体験
イントロから「SFもの」を予感させる。
さびのユーミンコーラスは鳥肌ものである。
エンディングでフェイドアウトしながら、ストリングスのみが残るというパターンは、麗美に提供した「パンジーとトパーズのネックレス」でも使用されている。

■ハートブレイク
サビの部分が、Kiroroの「最後のkiss」という曲のサビでトリビュートされている。

■川景色
イントロのトーイピアノの音が可愛い。
「甘い生活」と同じフルートのおかずが登場する。

■ESPER
シングル曲が御無沙汰で満を持してこのアルバムに登場。

■心のまま
この曲はABCの三つのパートで構成されているが、Bメロでスタートするという点が画期的である。
この手法は、後に小室哲哉が「I Believe」「Chase The Chance」などで試みている。

■ずっとそばに
ユーミンの多重セルフコーラスが聴けるのは、この曲あたりからと思われる。
「♪潜るような」と「♪つらいならば」のフレーズは
メロディが同じで、高さだけが1オクターブ違う。
こういったバリエーションによる構成が素晴らしい。

■経る時
Aメロ頭2小節のフレーズがテーマのメロディとなって全編に繰り返し登場するが、その見事なバリエーションに脱帽してしまう。(このようにテーマのバリエーションで全編綴られる曲としては、他に「バビロン」「Delphine」などがある。)
1コーラス目がメジャー、2コーラス目がマイナーという手法は、マイケルジャクソンの「ベンのテーマ」にも見られるが、「経る時」でも見事な効果を発揮している。

■フォーカス
イントロが、「なるほどザ・ワールド」のテーマに似ている。

■消息
ボズ・スキャッグスのAORな雰囲気を漂わせる曲。
サビのメロディは、ボズの「We’re All Alone」のサビを彷彿させる。
また、間奏のギターソロの音は、ボズの「Twilight Highway」のギターソロの雰囲気がたっぷりである。ボズへのオマージュ曲だろう。

■ビュッフェにて
この曲の特徴は、一拍目を鳴らさない独特のリズムにある。
この手法は、プリンスの実験的な曲「アルファベット・ストリート」にも見られるが、正隆さんは実にポップにさりげなくこなしている。

■カンナ8号線
サビのメロディは、オフコースの「Yes-No」のイントロや、大貫妙子の「色彩都市」のサビと三つ巴でトリビュートし合っている。
「雲の影があなたを横切り~」の部分の怪しげなコード進行は
歌詞とリンクしていて、とても効果的である。
ちなみに、このコード進行は、松田聖子に提供した「時間の国のアリス」にも登場。

■グループ
途中からマイナーKeyになる所が恐い。
(「風の中の栗毛」の恐さと同種)
曲順的にも、暗い曲に挟まれているので
この曲のポップさも「カラ元気」に聴こえてしまう。

■A HAPPY NEW YEAR
とてもシンプルだが、なかなか作れない曲。

■スラバヤ通りの妹へ
大江千里が「ポップスの教科書のような曲」と絶賛したナンバー。
LPレコードにもかかわらず45回転のサイズだったので
間違えて33回転で廻して、野太いユーミンの声を聴いてしまった人がたくさんいたというエピソードがあったが、私もその一人である。

■HONG KONG NIGHT SIGHT
ユーミンの楽曲の中で、唯一の正隆さん作曲のナンバー。

■人魚になりたい
「踊りましょう」「いつだって」のフレーズの後に登場する、ストリングスの「タララティララタララティラララ~」(笑)という旋律は、同じ正隆さんアレンジの、松田聖子の「小麦色のマーメイド」にも登場する。これは、もはや“人魚もの”の定番効果音なのか。ちなみに、尾崎亜美の「サマービーチ」という曲にもこの旋律が登場(人魚ものではないが・・・)。
サビのメロディをシャングリラでは変えて歌っていたのも有名な話。

■ワゴンに乗ってでかけよう
サビが「草競馬」風である。
そのためか、ユーミンは「この曲、継子なのよね。」と語っていたことがある。

■恋人と来ないで
岡田真澄とのデュエット曲。
久々の荒井由実名義の曲である。

■セシルの週末
ギターサウンドを前面に押し出したこのアルバムを象徴するような一曲目。

■時のないホテル
Aメロは、電話を通した声のようなエフェクトがかかったボーカル。

■ジャコビニ彗星の日
イントロの旋律は、どこか「学校のチャイム」の響きを思わせるが
8つの異なるコードに色づけされ、ドラマティックに仕上がっている。
これとは対照に、エンディングでのこのチャイムの旋律は
ワンコードのままであり、遠くへ行ってしまった寂寥感を漂わせている。
評論家の渋谷陽一氏が、「日本のラブソング史上に燦然と輝く曲」と絶賛している。

■緑の町に舞い降りて
全体的に、ビートルズの「Here Comes The Sun」と共通する雰囲気を持つ。

■DESTINY
ステージでは、スローバージョンでスタートするパターンが多い。

■気ままな朝帰り
全体的な曲調、口笛の音などが、ギルバート・オサリバンの「クレア」を感じさせる。
テンポをもう少し速くすると、同じ朝帰りソング、「うれしはずかし朝帰り」(ドリカム)になる。もちろん、ユーミンが先であるが・・・。

■水平線にグレナディン
ユーミンには珍しく、長い英語の歌詞が聴ける曲。
間奏部分でベースがメロディを奏でるのが切ない。
マイナーキーの曲であるが、所々、シメの部分でメジャーコードを効果的に使用しているのがお洒落(「帆影は急ぐ」の「ぐ」の音や、「to stay」の音など)。

■78
コーラスの上田正樹の声が光る。

■青いエアメイル
ライヴでは、「♪5年~」の後にブレスが入ることが多い。

■帰愁
「♪涙雲ばかり」の部分は、ユーミン本人曰く「演歌」。
研ナオコがカバーしている。

■冷たい雨
ユーミンの曲には珍しく、アレンジが細野晴臣。
ハイ・ファイ・セットのバージョンはスローテンポ。
香港では有名な曲らしい。
最近、ライブでは、アカペラで披露するスタイルが定着しつつある。

■風の中の栗毛
とにかく、中間部のベースソロが、唐突で恐い。

■りんごのにおいと風の国
冒頭の「♪ハロウィン」の部分がマイナーコード、
サビの「♪ハロウィン」の部分がメジャーコード、という対比が絶品。

■ロッヂで待つクリスマス
イントロのチェンバロの音に、心を癒される。
クリスマス・バラードなのに、微妙にエスニックなリズムアレンジなのがいい。

■埠頭を渡る風
「星空の誘惑」「BLIZZARD」などのラインの源流といえる曲。
「♪もうそれ以上」のフレーズが「妄想令嬢」と聞こえるという空耳話がある。

■静かなまぼろし
何気ない生活の一コマを描いた曲だが、アレンジは壮大なオーケストレーション。
松本明子がカバーした時のような、シンプルなアレンジが
個人的にはこの曲に合っていると思う。

■Corvett1954
ミュージカル音楽的な曲調で、「きっと言える」を凌駕するほどの転調に次ぐ転調。しかし、とってもお洒落なメロディ。
当時無名だった「来生たかお」とのデュエットも相性ぴったりである。

■私なしでも
歌い出しの部分が、メロディ、リズム共に非常に難しいが
ユーミンはちゃんと歌いこなしている。

■紅雀
同じような雰囲気の曲として、小林麻美に提供した
「恋なんてかんたん」がある。

■白い朝まで
マイナー歌謡ポップバラード路線の「届かないセレナーデ」
「Lundi」などの源流的存在の曲。

■中央フリーウェイ
ムッシュかまやつから贈られた「楽しいバス旅行」のアンサーソング。
難解なコード進行でありながらポピュラリティを備えている傑作。

■あの日にかえりたい
山本潤子によるイントロのスキャットが印象的。
「S.B.S.」では、小野リサとコラボしている。

■花紀行
金沢の浅野川での情景をイメージして作った曲。
モンゴルで、民族楽器に合わせてこの曲を歌ったのが新鮮であった。
ユーミンナンバーの中でも数少ない「ワルツ」の曲である。

■何もきかないで
「グッドラック&グッバイ」「最後の春休み」「ためらい」「Walk on, walk on by」など、ユーミンロッカバラードものの源流といえる曲。

■航海日誌
大海原をたゆたう様な、しっとりオーケストラアレンジが心地よい。

■瞳を閉じて
Aメロでは、ベース音がF,G,A,Bb,Cの上昇線を繰り返している。
そして、サビでは逆に、D,C,Bb,Aの下降線を繰り返している。
この構成が、実に見事。
この手法は、ビートルズの「Here,There,and Everywhere」にも見られる。

■あなただけのもの
「♪あなただけのもの」の「の」の音は、この曲のKeyの9thの音にあたるが、
こういう音で締めくくられる曲は、当時のJ-POPでは珍しかったといえよう。

■私のフランソワーズ
フランソワーズとは「フランソワーズ・アルディ」のこと。
しかし、曲調はフランソワーズ・アルディというよりも、正統派のポップスバラードの黄金路線である。
冒頭、「♪たそがれ時~」の「が」の部分のコード「Cdim on G」は秀逸。

■旅立つ秋
Aメロから哀しいマイナー・キーが流れる。
そして、サビになると一転、「C」のメジャー・キーになるが、その直後、「Em」のマイナー・コードに転調する。そして、再び「C」が来るが、また「Em」に転調。
この2回の裏切り、ユーミンのサディスティックな片鱗が見え隠れする。

■ひこうき雲
ユーミンが15歳の時、加橋かつみに提供した「愛は突然に」と同様に、プロコルハルムの「青い影」的教会音楽の要素が随所に見られる曲。
さびの「♪空をかけてゆく」の「け」の部分のコード「B♭m」を聴いて、正隆さんは衝撃を覚えたという。

■空と海の輝きに向けて
「♪光りがある」の部分は、1フレーズの終わりの部分なのに、
Fm、Eb、Abとコードが展開していく。
こういう意外性がとても素晴らしい。
尾っぽまでたっぷりあんこの詰まったたい焼きのようである。

■返事はいらない
ユーミンの記念すべきデビュー曲。
しかし、タイトル通り、反響は薄かったようだ。

■VOYAGER
同タイトルのアルバム「VOYAGER」には収録されていない。
映画「さよならジュピター」の主題歌であるが、
アレンジはハーモニカを使用するなど、至ってフォーキー。
シャングリラでは「さみしい人」というフレーズを「やさしい人」に代えて歌っていた。

■星のルージュリアン
サビは、E.W.&F.のファルセット・コーラスを意識したのか、裏声一本で歌われている。



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