・青のフェルマータ



書籍名:青のフェルマータ
著者名:村山由佳
出版社:集英社


あらすじ

両親の不和、離婚から言葉を失った里緒は、治療に効果的だというイルカとのふれあいを求めて、オーストラリアの島にやってきた。研究所のイルカの世話を手伝って暮らす彼女に島に住む老チェリストJBが贈る「フェルマータ・イン・ブルー」の曲。美しいその旋律が夜明けの海に響いたとき、海のかなたから野生のイルカが現れて―――心に傷を持つ人々が織りなすイノセントでピュアな愛の物語



FAVORITE PHRASES


・一番望むこと。。。
 いちばんなどといわれなくても、望むことはひとつに決まっていた。
 わたしは手を伸ばし、机の上のボールペンをとりあげると、
 そばに広げられていた真新しいノートの一行目に、
 へたくそな字で小さくこう書いた。
 Love Me.

・もし人間の能力を基準にして知能や知性が高いというのなら、
 人間に近いと言われることをイルカたちは喜ぶだろうか?
 そんなもの、人間側の勝手な押しつけに過ぎない。
 わたしたちにとってあたりまえの思考方法は彼らにとっては 
 きっとあたり前でもなんでもないはずなのだ。
 陸にくらべて視界のきかない水の中で、表情をそう変えるわけでもなければ、
 怒ったからといって、逆立てる毛もない彼らが、
 わたしたち陸上哺乳類と同じような方法で思考すると考えるなんて、
 想像力の欠如もいいところだと思う。

・たとえば六色しかない色鉛筆----言葉というものは、そういうものじゃないかと 
 わたしは思う。
 自分の今の気持ちになんとなく似た色はある。
 色同士を混ぜ合わせたり、組み合わせたりすれば、 かなり近いところまでは
 たどりつける。でもそこまでだ。
 今の気持ちを、100パーセント正確に表せる色は、結局自分の心の中にしかない。 

・言葉と心の関係は、大きな網で小魚をすくおうとするようなものだとも思う。
 本当に伝えたいことのほとんどは網の目からするりと逃れてしまって、
 どうでもいいおおざっぱなことばかりが残る。

・いたずらに言葉を積み重ねていったからといって、
 いったい、何が、どれだけ豊かになるというのだろう。
 わたしは言葉を失ってはじめて、そのことに気づいた。

・もし、失ったものとひきかえに手に入れたのが、言葉を使わずに自分を表現し、
 相手を理解する力だったのだとすれば。。。
 声なんて、そんなに大きな犠牲では なかったかもしれない。

・守るべき存在があるというのは、ずいぶん人を強くするものらしい。 

・自由であること。野生とは、つまり、誇り高い自由のことだ。
 彼は、誰かに教えられたわけではない。餌がもらえるからこうしているのでもない。
 彼自身の自由な意思で、ただそれだけで、わたしのそばにとどまっているのだ。
 それがたとえ、まったく単純な興味や好奇心からに過ぎないとしても。

・もしかすると人は、相手に対して自分がしてあげられたことの結果をその目で見るとき、
 初めてそこにいることを赦されたような気持ちになれるのかもしれない。
 愛する者のために何かをすることは、何かをしてもらうことよりもずっと深く、
 わたしたちを癒す。

・きみに出会えたことで、私はこの先残りの一生ぶんの幸せを約束されているんだ。

・わたしがきみを大切にするのは、きみのためばかりじゃないんだ。
 きみだけが、私を生きている気にさせてくれるからなんだよ。

・人には必ず、一生に何度か、とんでもない転機がめぐってくることがある。
 それをチャンスに変えるか、ただのあぶくにしてしまうかは本人次第だ。
 そう、こんな話を知っているかね?チャンスの神様には前髪しかないというんだ。
 出会いがしらに前髪をひっつかんでつかまえないと、あとはスルリと
 逃げられてしまうしかないのさ。

・大事なものはそのとき強引にでも奪い取らない限り、二度と手に入れることはできないんだ。
 後になって、どんなに後悔してみても遅い。二度目はないんだよ

・自分を表現できないこと、それがきみにとっていちばん苦しいことであるからこそ、
 自分への罰として、あらゆる言葉を封じ込めてしまうことを選んだのさ。

・誰もがきっと、それぞれに、たったひとつの特別な役割を担って生まれてくる。
 そうしてその誰もが必ず、べつの誰かにとっての「特別」になることができるはずなのだ。 

・抱えている傷が同じだからといって、求めるものまで同じとは限らない。
 抱かれたくもない男を愛することはできないけれど、
 抱かれたい男なら必ずしも愛せるというものでもなかったのだ。

・傷つけられたことよりも、自分がつけた傷をまのあたりにするほうがこんなにつらいなんて、
 知らなかった。

・起こったことのすべてを自分の責任だと思いこむのは、傲慢というものだよ。
 人間というのは、生きていくうちに必ず誰かを傷つけてしまう生き物なんだ。
 それを認めてやらなければ、足がすくんで一歩も動けなくなってしまうじゃないか。

・抱き合うこともしない、キスもしない、手を握ることもないし好きだと言ったこともない、
 それでもずっとその人を想い続けていられるって、、、うらやましい。
 好きだと言わないのではなくて、もしかしたら壊れてしまうことを畏れて
 言えないのかもしれないけれど。

・JBのにいられるだけでわたしは、自分がつまらないちっぽけな人間だということを
 少しは許せるようになる。
 自分が自分であることを受け入れてやることができる。 
 JBは、そう、、、夜明けの海にそっくりだ。

・言葉ってやつはな、相手を傷つけもする代わりに、すでにつけられた傷を
 癒してやる手伝いもできるんだ。
 もちろん万能じゃない。でも無能でもない。ただ便利な道具ってだけだが、
 便利なのはけっこうなことさ。
 使い方と使いみちさえ間違わなければ、人生とかいうイケ好かないやつとも
 それなりに楽しんでつき合える。



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