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空想作家と専属イラストレーター&猫7匹の 愛妻家の食卓
『ぼくらはみんな』・5話~7話
クマゾーンと書かれた看板を過ぎると、広く大きなオリに凄く大きな真っ白な動物が寝転んでいた。
「ホッキョクグマ・・・」
犬のように大きな口に、とても大きな手足・・・
とても強そうで、少し怖い・・・
〈そこに居るのは誰だ!・・・ん?猫じゃないか?〉
「は、はい・・・」
〈怖いのかい?こっちへおいでよ〉
「・・・」
おいでと言われてもその大きな体が怖かった・・・
〈大丈夫、ボクは噛み付いたりはしないさ〉
「ホント?」
〈ホントだよ〉
「じゃあ、行くね・・・」
優しい声にボクは信じることにした。
でも、近づくと本当に大きくて、側まで行けずに止まると、
〈ボクはそんなに怖い?ほら、ここにおいでよ〉
と、大きな手で手招きをした。
ボクは恐る恐る側に行った・・・
〈小さいね〉
「大きいね・・・」
〈君は猫だろ?迷い込んだのかい?〉
「うん、ボクは旅をするノラ猫のグリーン、ここには自分から来たんだ」
〈グリーン、君は旅をしているの?〉
「うん、ずっと・・・」
〈じゃあ、ボクの仲間たちが住んでいるホッキョクって知っている?〉
「ホッキョク?知らない・・・何処にあるの?」
〈ボクも良く知らないけど・・・遠い、遠い氷でできた島なんだ〉
「氷でできた島?・・・とんでもない、ボクはこの足で歩いて旅をしてるんだよ」
〈そうか・・・ボクはここで生まれたから・・・〉
「・・・氷でできた島かぁ・・・どんなのかな・・・」
〈あたり一面、氷でね、真っ白なんだって〉
ボクは想像してブルッと震えた。それを見てホッキョクグマは
〈寒いのかい?ボクに寄りかかっていいよ〉
「ありがとう・・・」
ボクは寝ているホッキョクグマの大きな腕に寄りかかった。
「温かい・・・」
〈ここは年中暑くてまいちゃうよ〉
「そうか・・・本当は氷の島に居るんだもんね」
〈うん・・・ボクは君たちが寒いくらいでちょうどいいみたい〉
「そうなんだ・・・」
〈自由な君がうらやましいな〉
「・・・でも、大変だよ、毎日が生きるために必死で戦いみたいなものだから」
〈それでもやっぱり、1度は見てみたいなホッキョク・・・〉
「あっ、そうだ!ここに入ってすぐにチンパンジーっていうサルさんが居て、いつかここに住むみんなを解放するんだって言ってたよ」
〈ホント?〉
「うん。それにね、今年の冬は寒くなるらしくて、この辺りにも雪が降るって!」
〈雪!ホント?〉
「うん、ニャジロウって何でも知っている猫が言ってたよ、ボクにはやっかいだけどね」
〈それなら冬、またここにおいでよ、冬でもボクは温かいからボクが温めて守ってあげる〉
「うん、その時はそうさせてもらうね・・・じゃあボクはもう先に行くね」
〈うん、気をつけてね、きっとまた来てね〉
「うん、きっと」
そうして、ボクはホッキョクグマと別れ、隣のオリへと進んだ・・・
「メガネグマ・・・」
今度はホッキョクグマより少し小さく、黒い体に白の模様のクマがいた。
〈おい、そこの小さいの!〉
「あっ、はい」
〈オリから逃げ出したのかい?早く自分のオリに戻りなさい!〉
「いえ、ボクは・・・」
違うと言う間もなく、メガネグマはボクに話しかけた。
〈逃げられるわけない、そんな所でウロウロしてると、人間に鉄砲で打たれてしまうぞ!悪いことは言わん、早くオリに戻りなさい!〉
「鉄砲?・・・」
〈鉄砲も知らん?奴らは言うこと聞かない動物には鉄の玉が飛び出す道具を使ってオレたちの命を奪うんだ〉
「えっ!でも、ボクは・・・」
〈親切で言っているのが分からないのか?それならとにかく走れ!走るんだ!〉
「は、はい!」
元々、逃げ足の速さで生き抜いてきたボクは思わず走ってしまった・・・
「・・・どうして?」
ボクは知らない間に大きな、大きなオリの前にいた。
「ゾウ?・・・」
つづく。
第6話・・・『ゾウ』
「ゾウって一体どんな動物なんだろう?・・・こんな大きなオリで逃げ出さないのかな・・・」
ボクはオリの中を見渡した。
「何?」
広い敷地にとても大きな岩が1つ・・・
今、それが動いたような気がした。ボクはオリの外をグルリ回ってその岩を確かめた・・・
「えっ!・・・岩に手足が・・・あれがゾウ?」
どうやら岩と思っていたものがゾウという動物らしい・・・
だけど・・・
「ボクが乗ってきたトラックぐらいある・・・大きな顔・・・えっ!シッポが顔にも付いている??いや、顔の真ん中にあるから鼻?・・・」
ボクが思わず大きな声を上げると、ゾウはボクに気が付いた。
〈猫さん?〉
「見つかっちゃった・・・」
体のわりには細く優しい声だった。
だけど、とにかくその姿と大きさが怖くて逃げ出そうとした。
〈待って、ニャジロウさんのお友達じゃないの?〉
「えっ!ニャジロウ?・・・」
ボクが立ち止まると、ゾウは起き上がってボクに近づいた。
ドス!ドス!ドス!・・・
歩く度に地面がゆれ、ボクはその度にドキドキした。
〈やっぱり、あなた知ってるのね?〉
「はい・・・ここを教えてくれたのがニャジロウさんです・・・」
〈やっぱり・・・〉
「・・・」
〈あら、私が怖いの?大きいから?見たこと無いものは怖いわよね・・・〉
「はい・・・」
〈でも、大丈夫よ私は草食動物だから〉
「そうしょく動物?」
〈そう、植物しか食べないの、他の動物を傷つけることなんてしないのよ〉
それを聞いて凄く安心した。
「植物だけでそんなに大きくなれるの?・・・あっ、ごめんなさい・・・」
〈いいの、大きいって毎日みんなに言われているから平気、それでみんなが喜んでくれるんだから・・・ここには私の他にもたくさんの草食動物がいるわよ〉
「そうなんだ・・・でも、植物だけじゃ栄養不足にならない?」
〈ならないのよ、植物って凄く生命力があるじゃない、大きく育って長く生きるじゃない、その命を分けてもらっているんだから、それに他の動物の命を奪わなくて生きていけるんだからいいでしょ?〉
「そうだね・・・でも、ボクにはできそうにないな・・・」
〈それは無理ね、あなたたちはそう生まれたのだから〉
「どうして、こんなに違うように色んな動物がいるんだろう・・・」
〈さぁ・・・でも、私がどうしてこんなにも大きいのか、あなたがどうして猫なのかきっと理由があるのね・・・それこそニャジロウさんに聞いてみれば?〉
「そうだね、また会えたら聞いてみようかな・・・ニャジロウさんはここに来て何をしたの?」
〈リンゴをくれたの、不思議な真っ白なリンゴをくれたの・・・それを食べたら私は軽くなって、宙に浮き、少しの間だけ空を散歩できたのよ〉
「そんな・・・それは夢でしょ?」
〈そうなのかしら・・・どちらにしても彼は私を少しの間、体の重さを感じないくらい軽く自由にしてくれたのよ〉
「まさか・・・本当に猫の神様なのかな・・・」
〈そうかもしれない・・・また会えるといいなぁ〉
「ボクも・・・ここは嫌いですか?自由になりたいですか?」
〈そう思っていたこともあったけど、ここにも素晴らしい愛があるの、いっぱい色んな愛が見られるの、だから今は幸せかな〉
「愛?いっぱい見られるって?」
〈そうよ、私を見に来てくれる人たちが微笑むの、それが家族であったり恋人であったり・・・〉
「分からないな・・・」
〈あなたにはまだ分からないかもね・・・〉
「・・・」
〈さぁ、ここでゆっくりし過ぎると全部回れなくなるわよ〉
「そうだね・・・ボクは旅をするノラ猫グリーン、また会いに来ていい?」
〈もちろんよ、ニャジロウさんに会えたら私がお礼を言っていたと伝えて〉
「はい、必ず!じゃあさようなら・・・」
〈さようならグリーン・・・〉
そうしてボクはゾウさんと別れ、先に進んだ・・・次はどんな動物だろう・・・
「コアラ?・・・」
6話、終わり。
第7話・・・『コアラ・カンガルー・ラクダ』
コアラと書いていたオリの中には細長い木が並んでいた・・・
「またクマさん?・・・」
木にクマのような小さな動物が抱きついていた。
「何か可愛い・・・」
小さくて可愛かったので、ボクから声をかけてみようと思った。
「こんばんは」
〈・・・〉
寝ているの?・・・少し近づいてみた。
〈オレに何か用か?寝る邪魔をしないでくれ〉
「・・・」
姿と違い、ふてぶてしい態度だった。
〈何か用か?と聞いているんだ、用が無いのなら邪魔しないでくれ〉
「邪魔するつもりは無かったんだけど・・・」
〈だから、どういう用でここへ?〉
よくよく見てみると可愛くないかもと思った・・・
「ボクは旅をするノラ猫なんだ、ここに来たのは世界中にいる動物を知りたくて来たんだ、だから少しでもみんなと話が出来たら良いなと思って・・・」
〈くだらない・・・〉
「・・・くだらないだって?」
〈どいつもこいつも珍しそうにオレを見るなってことだ、オレの立場になって考えてみな、こんな所に閉じ込められて毎日、毎日、指を指されて・・・〉
「・・・」
少し考えてみた。ボクが自由をなくしたら・・・そう思うと、このふてぶてとした態度も仕方ないかと思った。
「楽しいこと、一つもないの?さっき会ったゾウさんは人から愛情を感じると言ってたけど・・・」
〈冗談じゃない、奴らの笑顔もオレには辛いだけさ・・・毎日こうやって木に抱きついているだけ・・・楽しいことなんて何もないさ〉
「それぞれなんだね・・・」
〈それぞれ?オリに入ってるんだ、みんな思ってるさ〉
「・・・」
ゾウさんの所でホッとしたばかりなのに、また分からなくなった。返す言葉が見つからなかった。
〈なんて顔しやがる・・・別になぐさめてもらおうなんて思わないさ・・・早く消えてくれ、寝たいんだ・・・〉
「分かったよ・・・じゃましてごめんね」
そう言ってボクが立ち去ろうとした時、コアラが小さな声で言った。
〈いい旅をな・・・〉
「ありがとう・・・」
ボクは降り向かず、答えて走った。
ここが愛でいっぱいで好きだというもの、ここは自由がなく見せ物にされて嫌いというもの・・・正しいのはどっち?ここは本当に何のためにあるの?
ボクは走りながらそう考えていた。
でも、分からないんだ・・・ニャジロウさんなら本当に答えを知っているだろうか?後戻りをしない旅をしてきたボクが初めてまたニャジロウさんの所を訪ねたいと思った。
そうしていると、また1つのオリが見えてきた・・・2本の足で立つまた不思議な動物・・・
「カンガルー?・・・」
二本の後ろ足で立っている動物が手を小刻みに動かせていた・・・
シュッ!シュッ!
「・・・何やってるの?」
〈ん?猫か、これはシャドーボクシングといってな、ボクシングの練習をしてるんだ〉
「ボクシング?・・・」
〈格闘技だよ、戦うための技だ〉
「戦うって誰と?」
オリの中に一匹でいるのに・・・と、思った
〈誰って?・・・そんなことは分からないが、いつでも戦える準備をしておかないとな〉
「だから、どうして?」
〈オスだからさ、どうだ、君もやってみないか〉
「ボ、ボクがそれを?・・・無理です、ボクはそんなに上手に二本足で立てないもの」
〈そんなことはないだろう、猫もなかなかのバランス感を持っているじゃないか、まぁとにかく同じようにしてみろ〉
「は、はい・・・」
こうして強引にボクシング講座が始まった・・・
〈いいか、立つのにはシッポの働きが重要になる、こうしてしっかりシッポを地面に当ててバランスを取るんだ〉
「こう?あっ、立てた!」
〈よし、なかなか良いぞ、次は顔の前に手を出して構える!〉
「こう?・・・」
〈もっとアゴを引いて・・・何でそう可愛くなるんだ・・・よし、パンチを出してみろ!〉
「えい!えい!」
〈招いてるようにしか見えないな・・・こう、真っ直ぐ出せないか?〉
「こう?」
〈そう、そう、様になってきたな、続けて1・2、1・2、1・2・・・〉
「はぁ、はぁ、カンガルーさんもういい?ボクは先に行かなくちゃいけないんだ」
〈なんだ、もう行くのか?筋が良いのに・・・きっと良いボクサーになれるのに・・・もったいない〉
「ありがとう。でも、ボクは戦わないすべを知ってるから」
〈仕方ないな・・・気が変わったらいつでも訪ねてくれ〉
「はい!」
そうして、ボクはカンガルーさんのオリを後にした。
すると、すぐ隣りのオリにとても背が高く、大きな動物がオリの中をグルグル歩き回っていた。
「ラクダ?・・・」
それは背中に二つ不思議なコブを持っていた。
〈おや?猫かい?〉
と、言いつつ止まってくれない・・・そのまま一周してはボクの所で話すという何とも話しにくい状況が続いた。
〈猫がどうしてこんなところに?〉
「旅をしてるの、ラクダさんはどうしてずっと歩き・・・」
一周。。。
〈私も旅をしているのさ〉
「旅を?同じ所を回ってるだけじゃない・・・」
一周。。。
〈私には見えるんだよ、灼熱の太陽に照らされた砂漠の蜃気楼が・・・〉
「砂漠?蜃気楼?・・・」
一周。。。
「そうやって一日中歩いてるの?」
〈あぁ、そうすればいつかたどりつける・・・〉
一周。。。
「どこに着くって?」
〈楽園、オアシスだよ・・・〉
一周。。。
「頑張ってください・・・ボクはもう行きますね・・・」
一周。。。
〈そうかい、君も楽園を見つけられるといいね〉
「はい」
そうして、ボクはラクダさんのオリを後にした。
楽園と聞いて思い出したことがあった。それは憧れのサスライさんが言っていた猫の楽園・・・
確か、「猫のなる木」・・・猫たちがとても大きな木の上に住んでいると言っていた・・・ボクはそんな猫の楽園が本当にあるのなら行ってみたいと思いながら歩いていた。
すると、中に池があるオリが見えてきた。
「ペンギン?・・・」
つづく。
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