オトキチ日記

陰影礼賛

北朝鮮旅行記3日目

陰影礼賛


21:30になり、李さんキムさんとホテル内のカラオケバーへ。

例によつて通路は暗い。
が、カラオケバーも暗かつた。
シャンデリアやミラーボールもあるのだが、点いてゐるのはバーカウンターの上の照明と
モニターだけ。カウンターに女性ひとり。
始まれば灯りが点くのかと思つてゐたら最後までそのまま。
歌本もよくは見えず、時折、李さん持参の懐中電灯のお世話になる。
電力事情は本当に苦しいのだなと更に更に実感する。

カラオケ機械は日本製のやうで歌も日本のものそのもの。
「朝鮮に日本のカラオケあるといふとみなさん驚きますね」と李さん。「10年前からあり
ますね」
たしかにその通り。
しかし、正確に言へば、「10年前から」ではなく「10年前のままに」といふべきであらう。

まづ李さんが「会へて良かつた」を朝鮮語で歌ふ。
これはカラオケで最初に歌ふ定番の歌とのこと。初日の中国人観光客も歌つてゐて、その
とき説明があつた。シンプルなリフレインで「会へて良かつた」と元気良く歌ふ。

そのあとはすべて日本の歌。
テレサ・テン、美空ひばり、「いとしのエリー」(キムさんが一番好きな歌とのこと)、
ほかカラオケの定番で日本と変ることなし。


カラオケ

<カラオケを歌ふキムさんと李さん。李さんの服が例の「名も無い服」>


テレサ・テンの歌はご存じの通り不倫だの愛人だのの歌。
こんな歌を歌つていいのか?
そのへんをキムさんに聞いた。
「建設的な、前向きな歌しか駄目なのかと思つてゐました」と私。「不倫とか浮気とか、かういふ退廃的な
歌を歌ふことに問題はないのですか?」
「問題ですか?」と意外さうな表情。
「人が生きてゐればどこでだつてさういふものはあるぢゃないですか?」
さう言つて顔を伏せる、その仕草が、また、(小爆発)。

歌本は日本のものそのものだが、よく見るとコピー。曲名索引のみで、歌手名索引はない。

で、おや?
ところどころ消されてゐるではないかい?

如何に酔つ払つてキムさんの清楚な色香に惑はうとも、その辺の観察は怠りませぬ。
何の曲が抹消されてゐるのか?
歌本を眺めつつ考へるがよく分らず。

一曲だけ確実だつたのは(私が歌はうと思つてゐた)「天城越え」(石川さゆり)。

しかし「天城越え」のどこがいけないのか、分らず。
同じ石川さゆりの「風の盆恋歌」はあつたしなあ。
不道徳云々といつたら「風の盆恋歌」のはうがきついだらう。

単なるディスクの不良で消されてゐたのか? 
つひに答へは得られませんでした。

カラオケ2

<キムさんとカラオケバーの店員さん>


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