Midnight waltz Cafe 

2nd Dance -第1幕-



      Midnight Waltz -Re: ACT-



          不知火 楓    



         -2nd Dance  真夏の夜の夢-



            -PROLOGUE-  月下の魔術師





午前零時、その時刻は怪盗の時間である。黒を基調とした姿で、また今夜も満月に照らされて、街に現れては、消えてゆくのであった。

その月下の魔術師の名前は 『怪盗チェリー』 という・・・。











            第1幕   主役争奪戦!?



7月7日、七夕。この年はいつもより真夏が早く来たのかもしれない。なぜなら、この日の最高気温は、例年をはるかに上回っていたからだ。

そんな日の午後、新日館ホールというところでは、今度の連続ドラマ『ガラスの大人(コドモ)』のヒロインを決めるオーディションが行なわれていた。その結果30人ほどいた候補の中から、2人に絞られ、その2人については後日オーディションをして、どちらがヒロインになる決められることとなった。ヒロイン候補の2人とは20歳の織田 亜美(おりた あみ)と、21歳の柳 真琴(やなぎ まこと)の2人である。

そして2人だけが残っていた控室で、事件は起きた(オーバーな言い方かもしれないが)。 真琴が自分のバッグを取ろうとした時に運悪く、ペンダントがバッグから落ちてしまい、転がっていった。真琴が慌てて拾おうとしたが、それよりも早く亜美が拾う。開いていたペンダントの中は、丸い鏡と自分と同じくらいの男性の写真。どうやら鏡付きのロケットのようだ。

「柳さん、この人はだぁれ?彼氏?」

亜美は、意地悪っぽく聞いてみる。

「返してください。」

真琴は、叫びながら取り返そうとした。

「嫌よ、せっかく面白いもの見つけたんだから。返してもいいけど条件があるわ。じゃあ、またね。」

そう言って、亜美は控室から帰っていった。

真琴は、ハッと気づいた。返してもらう条件というのは「ヒロイン」なんだろうと。そしてしばらく考えて、携帯電話を取り出し、ある人と会う約束をする。





その頃、滝河涼は、学校の授業が終わった後で、彼女の高瀬雪絵が生徒会の仕事のため忙しいので、涼は仕方なくひとり街をぶらついていた。

そして駅前を歩いていた際に、どこかで見た人とすれ違う。一瞬誰だかわからなかったが、涼はすぐに思い出す。その人は・・・

「あれ、楓さん?」

その人は涼の姉、滝河桜の幼なじみの高山 楓(たかやま かえで)という。

「涼君ですか、お久しぶりですね。」 

「3年ぶりですね。」と言いながら、涼は、楓の隣にいる女性が気になった。

「楓さん、そちらの人は。」 涼は聞かずにいられなかった。

「彼女は、高校の同級生ですよ。」 軽く答える楓。

「なるほど、彼女さんですか。」

その涼の声を聞き、女性はかすかに照れているようであった。

「どこをどう聞いたら、そう聞こえるんですか。まったく、あいかわらずですね。まぁ、それはおいておくとして、・・・実は、桜さんに会いに来ました。」

「ね、姉さんに?」 少し困惑する涼。

「ええ、少し困ったことが起きましてね。」

「困ったことって?」

「話せば長くなるかもしれませんが・・・」

「あ、やっぱり、ここじゃ何だから場所を変えない? ちょっと待ってて!」

そう言って、涼は少し離れて、携帯電話を取り出し雪絵に電話する。・・・雪絵、家に帰っているといいんだけどな・・・と思いながら呼出音を聞いている。

『あ、涼どうしたの?』

「雪絵、今どこにいる?」

『まだ学校よ、今から帰るところだけど・・・』

「なあ、今から教会に行っていいか?」

『なにか、あるの』

「たぶん仕事の話になると思うんだ。」

『分かったわ。怪盗の出番なのね。』

「ああ、たぶんな。」

実は、この滝河涼は世間を騒がせている『怪盗チェリー』なのである。

それから涼は2人のところに戻り、教会に桜の代わりに話を聞く人がいると説明して、2人を教会まで案内する。行きしなに楓に「桜がどうしているか」とたずねられ、「遠くの大学に行ったから今はいない」と、嘘ではないとしても本当のことは言えないでいた。



そして数十分後、教会にたどり着く。

涼は「話は、奥で彼女に。」と、女性にすすめるが、

「ここでいいですよね?柳さん。」

楓がそう言い、「え、あ、はい。」と『柳さん』と呼ばれた女性はうなずき、話を始める。

その女性は、柳真琴という女優で、今度東洋テレビで放映される連続ドラマ『ガラスの

大人(コドモ)』のヒロイン候補らしい。そのオーディションの控室で、父からもらった大切な『鏡』のペンダントを、同じくヒロイン候補の人に取られてしまったらしい。

真琴は言う。「勝負なら正々堂々とやりたいの。たとえ落ちるとしても。」



「ひとつ聞いていいかな。どうしてそのペンダントを取られたの。」

涼は、どうしてもわからないんだと、たずねる。

「そ、その・・・高価なペンダントなんです。」

真琴は少し困っている。

涼は、その回答を聞いてからは黙っていた。それから少し話をして、楓と真琴は帰っていく。

「きっとそのペンダントの中に写真があるのよ!」

2人が帰った後になって、今まで黙っていた雪絵が堰を切ったように言う。

「写真?そんなこと一言も言ってなかったぜ。」 そんなバカなと、涼は言う

「そう、ペンダントの中にきっと片思いの男の人の写真があるの。」

それで困っているんだわ・・・雪絵は、瞳を輝かせて力説する。

「で、その写真の男性は誰なわけ?」 

「そこまでは分からないけど。」 トーンが下がる雪絵。

「・・・しかし、あの話でよくそこまで想像できるなぁ。」 涼は、苦笑する

「ふっ、まだまだね。涼。そんなことでは乙女心は理解(わか)らないわよ。」 

チッチッチッ、と人差し指を振る雪絵。

「はいはい、そうですか・・・」 呆れ顔の涼であった。

「ノリが悪いなぁ。・・・なんか冷たいわよ。」 不満そうな雪絵。

「別に・・・、そういやそのペンダント取ったのって誰だっけ?」

「織田亜美っていう人よ。」

「おりたたみ?」

「おりた あみ!! つまらないとこでボケない。本人に失礼でしょ。」

「で、雪絵の妄想が当たっていれば、その織田亜美って人に取られて困る写真なのかよ。その片思いの人の写真って。」

「女優だから困るんじゃないかな。 ・・・ねぇ、涼。なんで楓さんは、桜さんを訪ねてきたのだろうね? ちょっと、聞いているの? 涼!!」

「ああ、聞いてる聞いてる。」

「ほんとう?」

「聞いているってば。」

「まぁ、いいわ。」

雪絵は、少しふくれて言う。

「で、いつまでに取り返せばいいんだ?」

「21日に最終オーディションみたいだから、それまでね。」

「じゃあ、せっかくの夏休みだけれど、20日の午前零時に行くかな。」

「えーっとね。・・・20日の午前零時なら、テレビに出ているみたいよ。」

「マジかよ。・・仕方ないな、行くしかないか。テレビ局か・・・まだよしとするかな。海外とかだと、とんでもないからな。」



そして、次の日に織田亜美の所属する霧谷プロダクションに予告状が届く。





7月20日の午前零時

東洋テレビにいらっしゃる、織田亜美さんが持つ『鏡のペンダント』を頂きに参ります。

その時、皆様に宇宙旅行にご招待しましょう。

怪盗Cherry







  -こうして深夜の舞踏会、第二部の幕が、静かに上がるのであった。









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