Midnight waltz Cafe 

3rd Dance -第1幕-


            Midnight Waltz Re: ACT
                                             不知火 楓    





                                3rd Dance -最後の舞踏会!?-




                -PROLOGUE-



 「月の鏡」は満月の光を浴びて、こう文字を映し出す。
・・・クロキスイショウトニジノスイショウハタイヨウノヒカリヲアビテタカラヘトミチビク
  「黒き水晶」は、、午前零時に黒を基調とした衣装で現れ、予告状の品を盗んでゆく怪盗チェリーが持っている。
 そして「虹の水晶」は・・・・・・











        第1幕     始まりの鐘はロンドンで…


木枯らしが吹く季節となった11月11日。
天文坂高校の2年生は、来週の修学旅行について盛り上がっていた。
「来週の月曜日から、いよいよ修学旅行だな。」
「そうだね、ほんと楽しみだね。」
「イギリスかぁ、パスポート忘れないようにしないとな」
クラスメイトが楽しそうに話している中、ひとり滝河涼は憂鬱そうに物思いにふけていた。
「どうしたのかしら?滝河君。修学旅行前にそんな元気のない顔してて。」
声がしたほうを振り向くと、神尾真理が紙をもてあますように持って立っている。
「これのせいかしら?」
そういいながら、真理は紙を机の上に置く。
「来週の月曜日から、ロンドンのキャロルミュージアムで『虹』という水晶が展示されるわ。もちろん知っているわよね?」
「で、どうかしたのか。」
涼は、ぶっきらぼうに答える。
「どうかしたって、あなたね・・・あなたの探し物じゃないの?これって。」
真理は、興奮してか声が大きくなる。
「あまり、大声で叫ぶなって。・・・バレたらまずいだろ。ったく、それに俺はほんとのことが知りたかっただけで、そんな宝石欲しいわけじゃねぇよ。」
そう言い残して教室を去る涼であった。
「やれやれ、2人ともどっから調べてくるんだよ。ったくよ・・・。」
廊下を歩きながら、涼は昨夜のことを思い出す。


―俺はただ、姉さんに会いたいだけだったのにな。


           回想・昨夜の教会にて…

「ねぇ、涼。これどう思う?」
高瀬雪絵は、そう言いながら、涼に紙を手渡す。
「えっと・・・R、a、i、n、b、o、w・・・って何だっけ?」
「レインボー、虹という意味よ。」
仕方ないなぁと言いながら、雪絵が説明する。
「さすがの俺でも、レインボーって聞けばわかるよ。で、その虹がどうしたの?」
「その虹の名前の水晶が、来週からロンドンで展示されるの。」
雪絵は、涼に英語ばかりの紙を見せながらそう言った。
「それで。」
「気にならない?虹って言う名前が?」
「別に・・・だって・・・」
「水晶を集めたいわけじゃない・・・でしょ?」
雪絵は、くすくす笑いながら言う。
「なんだよ。」
「ううん、なんでもない。」
雪絵はその後こう続ける。
・・・でも、その水晶があの月の鏡にあった水晶で、誰かに悪用されたら桜さん、悲しむんじゃないかな~?
グサッ・・・涼の心にグサっときた。

―回想、強制終了。

「ほんと、雪絵は俺の痛いところついてくるよな。やっぱり『怪盗』の出番なのかぁ。」
涼は、空を見上げながらつぶやく。

  ―実は、滝河涼は世間を騒がしている『怪盗チェリー』なのであった。


       11月15日  新東都国際空港  午前8時

天文坂高校2年生は、修学旅行の行き先であるイギリスに行くために、ここ新東都国際空港に集まっている。
ここから、彼らは5泊6日の旅行に出る。しかしイギリスまでのかなり距離があるため、実際に観光できるのは3日ほどとなるが

 そして、一路イギリスへ・・・・


約半日かけて、イギリスのヒースロー空港に到着した。
天文坂高校の2年生一行は、そのままにホテルに向かう。そのバスの中、涼と雪絵は何か話をしている。周りにひやかされながらも・・・
それからホテルに到着し、みんながくつろいでいる中、真理はフロントに向かっていた。
電話がかかってきたようである。
「誰かしら?お父様かしら?」
フロントに向かいながら、真理はそう思った。
そして、フロントで自分が神尾真理であることを告げ、受話器を受け取る。
「もしもし、真理ですけど・・・・・」



そしてその日の夜。ホテルの屋上では涼と雪絵が立っていた。
涼は、おなじみの黒のシルクハット、スーツにマントに赤のネクタイ。そして銀の眼鏡を身につけた「怪盗チェリー」の姿をしている。
「なぁ、雪絵。ほんとに今日行くのかよ。」
涼は、旅に疲れているようである。
「うん、そうよ。さっきバスの中で言ったじゃない。」
雪絵の微笑みは、計算づくか無邪気な微笑みである。
「わかったよ、しょうがないなぁ。」
涼はそう言って、雪絵に見送られながら、キャロルミュージアムへと飛び立った。

    11月16日 午前零時(ロンドン時間) キャロルミュージアム

涼とガードマンを何ダースか眠らせて、博物館の中へと侵入した。
「さすが、虹の水晶を展示しているだけはあるなぁ。」
そうつぶやきながら、涼は虹の水晶が展示している特別展示室へと向かった。
そして虹の水晶を前にして涼は・・・
「これが、虹の水晶か」
そうつぶやき、止まってしまう。
虹の水晶は、その名前のとおり虹色に輝いている。
・・・涼が、蒼波(あなみ)から盗った「誘惑」の見るもの全てを取り込んでしまう漆黒とは、違い・・・この「虹」の水晶は、見るものを天へと昇らせてしまうのではないかと思えるほどの鮮やかさであった。
涼が、水晶をもっと近くで見ようと動いた時、展示室に人が入ってくる。
なんと、驚いたことにその人は、「涼と同じ姿をしていた」。

「やれやれ、まさか涼君が来ているとは思いませんでしたよ。」
ため息混じりに、入ってきたのは高山楓であった。
「か、楓さん?」
「念のため、確認しますが・・・展示ケースには触っていませんね。」
「あ、あぁ。」
うなずく涼。
「そうですか。でしたら大丈夫ですね。とりあえずここから出ますよ。」
・・・話は後です。そう言って楓は先に部屋を出て行く。
「なんなんだよ。」
そうぼやきながら涼は、後を追う。
そして2人は、涼が泊まっているホテルへ向かう。

何でも楓さんの話によると、あのケースにはセンサーが付いていて、触ると警報機がなる仕組みなんだとか。
ホテルにむかいながらそう聞いて・・・
「それじゃあ、誰かに悪用はされなさそうだな。」
涼は、そう言う。
「さて、それはどうでしょうか?」
楓は小さくつぶやく。
「って、それよりなぁんで、楓さんがロンドンにいるんだよ!」
「僕は仕事で来ているんですよ。」
取材かぁ。
・・・そうだった。楓さんは、脚本家だっけ? 今「ガラスの大人(コドモ)」ってドラマの脚本書いていたっけ。
ちなみに、ヒロインは楓さんの恋人の柳真琴さんだけど。

「僕よりも、どうして涼君がここにいるんですか?」
逆に質問されてしまった。
「お、俺?俺は学校の修学旅行。」
「なるほど、では学校をさぼって一人で来たわけではないのですね。」
「当たり前だろ・・・・」
「いえいえ、そうでなくてですね。」
楓は、涼の言葉をさえぎる。
「てっきり雪絵さんを置いてきぼりにしたのかと思っただけですよ。」
「どういう意味だよ?楓さん。」
「特に深い意味はありませんが・・・あぁ、そうでした。」
楓は何か思い出したように言う。
「涼君、どうやらあの『月の鏡』そして水晶は、日本で作られたようですよ。」
「どうして分かるんだよ。」
涼は、驚く。
「あの月の鏡が浮かび上がらせた文字はなんでした?」
「えっと、黒き水晶は・・・」
「文章はそうですが、文字のことですよ。」
「文字?」
「クロキスイショウハ・・・ですよね。カタカナだったでしょう。」
「ああ、そういえば・・・」
「カタカナを使うのはどこの国ですか?」
「日本・・・あ、なるほどな。」
涼もやっと分かったようで、とても納得している。
「そういうことです。詳しくは調べないと分かりませんが・・・さて、今晩はお開きとしますか。」
楓は、ある方向をしめす。
そこには、寒そうに雪絵が立っている。
「帰りの遅い涼君を心配してのお迎えですか、それとも・・・」
そんな言葉を残して、楓は姿を消した。
屋上には、涼と雪絵の2人だけとなる。
「帰り遅かったから、心配したの。」
「わ、悪い・・・遅かったかな。」
「今3時だよ。ここの時間で。無事だったから良かったけど。」
「なぁ、雪絵。お前どうしてここに?」
とっくに部屋で休んでいると思ってたんだけど・・・
「何でって。涼を見送ってから、私ずっとここにいたよ。」
きょとんと、雪絵が答える。
「おい、ちょっと待てよ。あれからって4時間ぐらい経ってるぞ。かぜひいたらどうするんだよ。」
「だいじょうぶだよ。」
「ったく・・・」涼は、自分のマントをそっと雪絵にかける。
「少しは暖かいだろ。部屋に戻ろうぜ。」
涼は歩き出す。
「ねぇ、涼。どうやって部屋に戻ろっか?」
「どうやってといってもなぁ。こうなったら手は一つしかないだろ。」・・・・・・


その頃、ロンドン郊外 キャロル邸
当主のエドワード・キャロルは、巨大プロジェクターの映像を見ていた。
その映像には、怪盗チェリーが映し出されていた。
(こやつが、虹を狙う者か・・・。)  
      {※()は、英語の会話ということでよろしくです}
その時、ドアが開き女性が入ってくる。
(お久しぶりですわ、お父様。ただいま戻りました。)
(マリアか。よく戻ってきた。ちょうどいい。これを見てみろ。)
彼女の名前は、マリア・キャロル。エドワードの娘である。
(これは?)
(さっき、ミュージアムに入ってきた泥棒猫だ。)
(・・・日本語。日本人みたいね。)
マリアは、感想を述べる。
(そうみたいだな。外国でも平然と日本語を話すのは日本人ぐらいだ。しかし、そこが気になるのだよ。)
(どうして?)
(日本にいたお前なら知っているだろう。 アナミが持っていた「誘惑」がなくなったのを・・・日本でのことだ。日本人がかかわっているのだと思うのだよ。)
(・・・・・・・・)
マリアは、何か思案してか沈黙している。
(マリア、また日本に行ってくれないか?)
(分かりましたわ、お父様。それで、今度はどちらの私で行けばよろしいの?できれば・・・・)
エドワードは、マリアの言葉を聞き、近くにある花瓶から1本だけ抜き取るとマリアの胸元に・・・
その花は、真紅の薔薇であった。
(マリア、今度は薔薇の花、『マリー・ローズ』として行ってきて貰いたい。)
その言葉を聞いて、マリアは薔薇を手にし、無言で部屋を出て行った。


11月16日 午前7時(ロンドン時間)
みんなが、朝食を食べている中。涼は大きなあくびをする。
「おい、一番早くに寝たお前が何でそんなに眠たそうなんだよ。」とクラスメイトにつっこまれ、「寝すぎて眠いんだよ。」とあくび交じりに答える涼であった。
すこし離れ、女の子のグループにいる雪絵も・・・
「どうしたの?雪絵ちゃん。眠たそうだけど?」
「大丈夫よ。ちょっと寝付けなかっただけだから。」
心配そうなクラスメイトに大丈夫といいながらも、眠たそうであった。
「よかった。ばれてない。」と、涼と雪絵はそっと胸をなでおろす。
・・・数時間前、2人は部屋に入るために、涼のお得意のマジックを使ったのだった。
まずは、雪絵を部屋に入れ、その後自分を部屋へと入れたのである。
ただ不思議なのが・・・・真理も眠たそうなのである。
それを見て、涼と雪絵は真理に駆け寄り
「神尾さん、どうしたの?」
心配そうに、そうたずねた。
「・・・昨日ね。父が怪我をしたって電話がかかってきたから。心配で眠れなくて。」
ほんとに、真理は疲れているようだ。
「で、大丈夫なのかよ?お前の父さんは?」
涼は、怪盗チェリーとしてではあるが、真理の父を知っており。心配そうに聞く。
「一応大丈夫とは、言われたけど。・・・・・・それよりも滝河君。」
急に真理は、涼をにらみつけ、逆にこう聞き返す。
「あなた昨日、虹を見に行ったでしょ?」
「そんなわけないだろ!見に行ってないって。」
「嘘よ!見に行ったのでしょ。私には分かるんだから・・・。」
何故か真理は必死であった。
「何で分かるんだよ!」
涼は、真理の意外な叫びに思わず叫んでしまう。
「だって・・・・・・・・・」
真理は、独り小さくつぶやいている。
「何か言ったか?神尾。」
真理は、涼の言葉に反応して、こう言った。
「滝河君、高瀬さん。 あなたたちうまくやったつもりなんでしょうけど。みんな暗黙の了解だからなんだけど・・・あなたたち2人が同時に消えたら、みんな何かあるとおもっているわよ。」
『えっ、ほんと?』
涼と雪絵は、二人同じように驚く。
「・・・まして、私ならなおさらよ。」
真理は、聞こえるか聞こえないかギリギリの独り言を残して、レストランを出て行く。
「おい、神尾。お前今また何か言ったろ!!」
涼は、そう叫び真理を追いかける。

「はぁ・・・ほんとに神尾さん、自分の居場所をつくってキープしてるんだから。こまったなぁ。」
雪絵は、ため息交じりにそう言って、涼を捕まえるためにレストランを出て行く。
「早く捕まえなきゃ。これ以上神尾さんに乗せられないうちにね。」

そんなこんなで、ロンドン3日間の観光の旅は、事故もなく無事に終わった。こうして、天文坂高校2年生の修学旅行は幕を閉じたのであった。





   ・・・時は流れて。クリスマス、大晦日を過ぎ、新年を迎えた。
  そして、深夜の舞踏会の舞台は、ロンドンから日本へと移って・・・・





       -「彼」と「彼女」は、出逢ってしまった。



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