Midnight waltz Cafe 

The Last Waltz


    ―そして、あなたとふたりで『夢』の続きを見たいの…。

      今宵、最後の「深夜の舞踏会」・・・再演します。




     -Midnight Waltz Re:ACT-    

         -Final Dance 「The Last Waltz」-




              -PROLOGUE-

白いユキが舞い降りるホワイトクリスマスイヴ。
町外れの小さな教会で、1組のカップルがひそかに結婚式を行なっていた。
参列者は、誰一人としていない。
2人を祝うのは、白い雪と・・・

「愛しているよ、雪絵。」
滝河涼は、彼女を抱き締めてそう言った。
「私もだよ。」
笑顔で答える、高瀬雪絵。
「なぁ、雪絵。」
涼の顔つきが変わる。
「何?」
「・・・本当にいいのか?」
「何のこと?」
「もう・・・・できないけど。」
「いいの。」
雪絵の声には、決意があふれていた。
「・・・・・・・・」
「だって、私たちなら大丈夫だと思うから。」
微笑む雪絵。

「そうだな。」
「そうでしょ?涼。」
「あぁ・・・。」

そうだよな。俺たちなら・・・きっと・・・
『もう2度と・・・・としても』


・・・そして2人は、ユキの中で口づけにより愛を誓い合うのであった。



・・・2人だけの結婚式には、隠された物語があった。
その物語こそが・・・
2人の「最後の舞台」となるのだった



「幸せになろうね。私たち。」
「決まってるだろ。」




Midnight Waltz Re: ACT
                       不知火 楓    



-The Last Waltz-






12月22日 午前9時
「ねぇ、涼。準備はできたの?」
雪絵は、涼に声をかける。
「何の?」
「何の・・・ですって。(パン!)たたくわよ。」
雪絵の手には、なぜかハリセンがある。
「いってぇ。たたいてから言うなよ。」
「そう?」
パーン!!
「・・・言ってからたたいたわよ。」
けろっとして、雪絵は言う。
「ひどい、ひどいよ。」
うなだれる涼。
「で、何の話だったっけ?」
「だから準備よ。式の準備。」
そう、明後日の24日は、2人の結婚式であった。
「任せとけよ。カンペキだって。」
「ほんとに?」
「あぁ。」
「ほんとに、ほんと?」
「当然だろ。」
(と言っても、あまり準備するものがないんだよな。)

「なら、1つお願いしたいんだけど。」
突然雪絵が、そう言った。
「え?」
「お仕事よ。」
彼女の言う「お仕事」は、ひとつしかない。
彼のもう1つの姿での仕事である。
滝河涼・・・彼は、世間を騒がしている「怪盗チェリー」なのであった。


12月22日 午前8時37分
町外れのこの教会に、一人の老人が相談に来たのであった。
「聞いてくれんか。わしは、ドール・ライブの工場で友人から預かった大切なモノをおとして、なくしてしまったんだ。」

「・・・その大切なものを探すのか?」
「そうよ。」
「で、なんなんだ?その大切なものって?」
「指輪なんだって。」
「・・・」
涼は、何かに一瞬だけ反応する。
「どうしたの?」
「いや、なんでもねぇよ。わかったよ。探しに行ってくればいいんだろ。」
「今から行く気なの?」
「ダメなのかよ?」
「えっとね。実は・・・」

「昼は見学の人しか入れない!?」
どうやって、その老人は入ったんだよ。見学か?

「ったく、いつも通りによるに行けばいいのかよ?」
「うん。」
「仕方ないな。では、久しぶりに怪盗チェリーの出番と行くかな。」
涼は、不適に笑う。

12月22日 午後10時47分
「今晩は、予告状なしでいいのかよ。」
「そうね・・・探し物だもん。いいでしょ。」
「そっか、それじゃあ行ってくるわ。」
そう言って涼は、指を鳴らす。
すると、涼の姿が、黒のシルクハットにスーツ、赤のネクタイ、銀の眼鏡をまとった姿になる。
そう自称盗めないものはない、怪盗チェリーの姿である。
「行ってらっしゃい。」
「あぁ。」
涼は、教会を出て行く。
「さて、涼の帰りを待ぁとうっと。」
雪絵は、ココアの準備をするためにキッチンへと向かう。
ギィィィィィィィ。
教会の扉が、開いた音がした。
(涼が忘れ物?そんなわけないわよねぇ。誰だろう?)
雪絵は、ドアに近付く。
「え・・・・あ、あなたは・・・・・・・・・・・・・・!?」


12月22日 午後11時57分
「さぁてと、ちゃっちゃっと見つけて帰るかな。」
涼は、工場内の捜索を始める。
「・・・しかし、今晩中に見つかるかな?」
涼は、気が重かった。

12月23日 午前5時3分
「・・・やっとあった。」
指輪のケースを見つける。
「・・・これって!?」

12月23日 午前7時7分
「ただいま、雪絵。」
・・・あれ、雪絵。いないのかよ。まぁ、遅かったしな、寝てるのかな?
「何だこれ?」
1枚の紙が置いてあった。

―親愛なる 滝河 涼 様
高瀬雪絵嬢は、預かりました。
12月24日 午前零時 ビクトリアキャッスルミュージアムでお待ちしています。

                -Cherry the Phantom thief-


「Cherry the Phantom thief・・・・怪盗チェリー!?」
どういうことだよ?・・・っていうか、またかよ。雪絵さらわれるの2回目だぞ。
(3rd Dance 最後の舞踏会!?参照)


仕方ないな。行けばわかるか。
ビクトリアキャッスルミュージアムか。ちょっと遠いな。
今から行けば間に合うか。

「待ってろよ、雪絵。」


そして、涼は最後の舞踏会の舞台へと向かう。
雪絵を助けるために・・・





12月23日 午後11時53分 ビクトリアキャッスルミュージアム
「さて、ついたはいいが、どこにいけばいいんだよ。」
・・・まぁ、中に入ってみるか。
涼は、中へと進んでいく。

「来てやったぞ!! Cherry the Phantom thief!!!」
涼は、叫ぶ。
「よく来てくれましたね。」
カツッ、カツッ・・・

「やっぱり、あんたか。」
涼は、そう言った。
目の前に現れたのは、高山楓であった。
しかも怪盗チェリーの姿をしている。


「涼君、あなたに尋ねたいことがあります。」
「聞きたいことがあるのはこっちだよ。まぁ、いいさ。何だよ?」
涼は、楓が現れたことに驚きはなく、落ち着いて話している。
「これからも怪盗チェリーを続けるつもりですか?」
「そのつもりだけど。」
「雪絵ちゃんを危ない目に合わせてもですか?」
「・・・・・」
「それでもなんですか?」
「それは・・・・」
「あなたが信じて動くものは何ですか?姉の・・・桜さんへの想いですか?雪絵ちゃんへの想いですか?」
「俺は・・・・」
「雪絵ちゃんと結婚して、家庭を持って、それでも怪盗チェリーという危険な仕事を続けるというのでしたら・・・それは何のためですか?
桜さんのためですか? 雪絵ちゃんのためですか?」
楓は、強く言う。
「・・・・」
「どうなんですか?涼君!!」
「俺は、雪絵のためだけに動くよ。怪盗チェリーとしてな。」
涼は、強く言った。
「でしたら、今夜限りで辞めることをすすめます。」
「どうして?」
「あなたは、怪盗チェリーとして動いている間に、その大切な人を奪われたんですよ。
まぁ、もっとも相手が私ですので、雪絵ちゃんは当然無事です。しかし、相手が悪ければ・・・」
「それは・・・」
「これで2回目ですよね?マリー・ローズの時と今回。涼君、あなたは相手の罠にはまっているんですよ。」
楓は、言い切る。

「なぁ、楓さん。やっぱりあの指輪を盗ったのは楓さんかい?」
涼は、突然話を変える。
「そうですよ。」
「俺と雪絵のペアリングを・・・」
あの、ドール・ライブの工場にあった指輪は2人のペアリングだったようだ。
「あなたに、怪盗チェリーを辞めさせるためです。」
「だからって!!」
「こうでもしないと、涼君を止められませんからね。さて、怪盗チェリーを辞めると言えば、雪絵ちゃんは解放します。」
「・・・・」
「どうしますか?時間をあげましょうか?」
「意地悪だな。時間なんて要らないのを知っていて。聞くまでもないだろ。降参だよ。」
涼は、両手を挙げる。

12月24日 午前0時10分

「涼、ごめんね。」
雪絵は、そう言った。
「気にするなって。」
「だって、また捕まっちゃったんだもん。」
「もういいんだよ。怪盗チェリーは終わりだからな。」
「え?」
「楓さんと約束したからな。」
涼のその言葉に、楓は沈黙を守る。
「楓さん、どうしてこんなことを?」

「―――全ては・・・のため。」
楓とは違う方向から声がした。


「え?」
「・・・姉さん?」
そこにいたのは、涼の姉である滝河桜であった。
「そう、すべてあなたのためよ。」
「どうして?」
「涼君、今回のことは・・・」
「私が黒幕なの。」
桜は、楓の言葉をさえぎる。
「あなたと雪絵ちゃんに幸せになって欲しいから。これからも続けてこんなことになって欲しくないから・・・」
桜は、そう言う。

「・・・姉さん。」
涼はうなだれ、こう続けた。
「わかったよ。もうしないから。」
「涼・・・」
雪絵は、涼をみつめる。
「悪いな、雪絵。ずっと続けられなくて。」
「いいの。もういいの。」
そう言って、雪絵は涼に抱きつく。
それを見て、桜は静かに立ち去る



「・・・・・・・・」
「何も言わずに、行くつもりですか?」
「えぇ。」
桜は、うなづく。
「しかし、驚きましたよ。あなたからこの話を持ちかけられた時は。」
「これ以上、涼を縛っておきたくないの。怪盗チェリーにね。」
「そうですか。」
楓は、クスッと笑う。
「何よ?」
「いえ、何でもありませんよ。」
「気になる言い方ね。」
「・・・あの2人なら大丈夫ですよ。きっとこんなことしなくてもね。」
「そんなことはわかってるわ。でももう『昔話』はここで終わりにしたいの。」
桜は、夜空を見上げながらそう言った。
「そうですね。」
楓も倣う。
・・・2人にも、未来はあるのですから。
「さて、私は帰るわね。」
桜が、歩き出す。
「2人の式は見ていかないんですか?」
「いいわ。2人のためだけにするつもりなんでしょうから。」
「そうですか。」
「また会えるかどうか分かんないけど・・・またね、楓君。」
「ええ、また会いましょう。どこかで・・・。桜さん」
そして、2人はそれぞれ違う方向へと歩いていく。


 -もう二度と会えないことを知っていたとしても、
       ためらうことなく、進んでいく・・・それぞれの未来へと



     -こうして最後の舞踏会は、幕を閉じたのであった・・・。-




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