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★アバクロ★JuicyCouture★GAP通信★安可愛なアクセ★★かいたんと一緒♪
鏡の中の2人・巣立ち
リクさんはシートを少し倒し
自分の頭に手を廻しながら、天井を仰ぎ、ゆっくりした姿勢で色々話してくれた
彼は私と同じ高校を卒業した先輩でもあった
大学へは進学せず、
中学生時代からの日頃の努力が実って自分の好きな事を職業とし
更にある専門分野のスペシャリストとして働いていた
彼にも家庭環境やその他でいろいろ大変な事があったのが
彼の話しで分かった
聞いていて心が痛かった
聞くことしかできないプラーグ
でも彼が辛かったであろうことはよく理解できたつもりだった
リク:
『お前の事を見ていると
過去の俺自身を見てるようでならない。
まるで鏡を見てるみたいだ。。。』
その時、彼にとって特別な存在になったような気がして嬉しかった
でも鏡であるがゆえに
自分の嫌な部分まで写し出され
見たくない気持ちも彼にはあった
しかし怖いもの見たさからだったのか
彼との絆はこの頃から徐々に深まり始めた
月日が経つのは早く
私は受験の前日を迎えた
リカと2人でリカの仙台の親戚宅にお世話になり
受験大学の仙台での地方試験を受ける予定だった
しかし、プラーグはこの時大風邪を引き
熱は38度まで上がった
鼻水もかなり辛い状態><
するとリカが
リカ:
『こういう時はね・・・』
と言って連れて行ってくれたのは近くの酒屋さん
リカ:
『これしかないでしょ(笑)』
2人でチューハイを買って雪の降る中外で飲んだ
まさか未成年がご厄介になっている親戚の家で
酒盛りをするわけにはいかない(笑)
お陰様で体も温まり、鼻水も楽になり
すぐに寝付けた
翌日2人は代ゼミで地方試験を受け
リカはその翌日も仙台で地方試験
私は東京での地方試験のため東北新幹線に乗り込んだ
残りの3校の受験を京都で済ませ
実家で結果を待った
合計4校を受け、2校に受かった
それでよくよく検討し
奨学金が充実し授業料の安価な
英文学部のある京都の某大学へ入学を決めた
リカは東京の大学に合格した
2人の合格を喜ぶと同時に
進学して離れ離れになる寂しさがこみ上げた
リカみたいな友達が京都でも出来たらいいな・・・
リカは私の親友だった
M先生のレッスンも残り僅かだ
そしてもうすぐ彼とも会えなくなる
入学金を支払った日
プラーグはバイトが終わってから大学の合格通知を持って
彼の会社へと向かっていた
リク:
『これが合格通知かあ。よく頑張ったな。
俺も頑張らないといけないなあ。
よし、ご褒美に高校卒業したら飲みに連れて行ってやる!』
待ちに待った卒業式が終わった
友達との打ち上げもあった
その日私は私服に着替え、慣れないお化粧をし
打ち上げの途中で抜け出して、夕方彼の会社に向かった
その後、彼が会社でお世話になっているスナックへ連れて行ってもらい
皆さんにお祝いをして頂いた
訳の分からない盛り上がりだったけど
凄く楽しかったのを今でも覚えている
飲んで、歌って、踊って、とにかく弾けた
そして宴は終わり、彼に送ってもらった
リク:
『いつ行くんだ、京都?』
プラーグ:
『4月3日の夜だよ。寝台列車で行くよ。』
リク:
『寂しくなるな。。。』
プラーグ:
『そうだね。。。』
リク:
『たまに、お前のおやっさんが作ったヤキソバを
食べに行くからな。。。』
彼はうちの実家の近くを通る度に、実家の食堂によく食べに来てくれた
父はそれまで2度離婚をし、1番最初の奥さんとの間に男の子がいた
今生きているとすると、46歳になる
会えない我が子を懐かしんでなのか
父はリクさんにもう20年以上会っていない息子を重ねていたみたいだった
私とは仲が悪かった父、でも彼とは仲良しだった
父が亡くなる数日前、
『さっき、リクさんがお見舞いに来てくれてたのに、眠くて寝てた。。。
申し訳なかったなあって言っといて。。。』
と私に言った
この頃父は肝不全が進行し、
肝性脳症(意識障害)
が起こっていた
彼が来たと思ったらしい
実際彼に尋ねると、この日は会社に缶詰状態で
父のもとには来ていなかった
それだけ亡き父の中でも彼は大きな存在だった
彼はそんな父が作った大盛りヤキソバをよく食べてくれたのだ
4月3日がやってきた
この日私は色んな思いがこみ上げて落ち着かなかった
リクさんに会いたい
でも会っちゃったら、顔を見ちゃったら・・・
段々京都へ行きたくなくなってしまう自分がいた
それでこの前日に、1本早い寝台列車に変えて頂いた
彼が見送りに来てくれる予感がしたからだ
駄目だ、会っちゃうと私は行けなくなる・・・
自分の中の色んな気持ちと戦っていた
すると昼過ぎに幼馴染達がドライブに誘い出してくれた
暫く会えなくなることを惜しんで
私達は幼稚園の遠足で行った湖に向かった
湖を眺めながら、私達は思い出話しに花が咲いた
そして時間はあっと言う間に過ぎ、帰宅の途についた
『元気でな・・・』
そう言ってお互い握手をしあい、みんなと別れた
しかし、この時点で私は先日予約を取り直した
1本早い寝台列車に間に合わなくなってしまったのだ
それで再度最終の寝台列車に変えて頂いた
寝台列車の停まる駅まで1人電車で向かった
大きなボストンバック1つとリュックサック1つ
それまでの18年間が頭をよぎった
バレーボールとの出会い
楽器との出会い
リカとの出会い
そしてリクさんとの出会い・・・
明日京都へ着いて、私は新たな生活を始める
私まで新しくなってしまうのだろうか
色んな思いをかみ締めてホームへ出ようとした
その時、彼の姿が遠目に見えた
やはり彼は来た
言葉が出なかった
彼の傍にいたい・・・
その気持ちを押し殺すので精いっぱいだった
何のために京都へ行くのよ???
そう言って心の中で自分に言って聞かせた
電車が到着する時刻は刻一刻と迫っていた
リク:
『都会の生活はビタミンが不足するだろうから。。。』
そう言って彼は私に茶色い紙袋を手渡してくれた
電車の汽笛が聞こえた
その音に背中を押されたかのように
私は無意識に彼の胸に飛び込み、広い胸に顔を押し当てて泣き始めた
彼は壊れるくらいに“ぎゅっ”と私を抱きしめてくれた
その温もりに、ずっと包まれていたかった
電車の扉が開いた
プラーグ:
『行かなくちゃね・・・』
彼から離れ、電車に乗り込んだ
リク:
『元気でな・・・』
電車はゆっくり走り始めた
窓越しにお互いの顔を見つめる
2人の距離はどんどん離れていった
そしてとうとう見えなくなった
私は自分のベッドに座り込み
止まらない涙をハンカチで押さえていた
そして彼がくれた茶色い紙袋を開けてみた
中にはオレンジが6個入っていた
『都会の生活はビタミンが不足するだろうから。。。』
彼らしいや・・・
オレンジを1つ手に取って頬に当てた
そして、車窓からの夜の景色をぼんやり眺めながら
いつしか私はオレンジを握りしめたまま、眠りについたのであった・・・
←1つ前へ
≪続く≫
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