こんにちわ♪

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密猟と密輸


フィリピン滞在中。

俺の住んでいたミンダナオ島から、月に一度くらいの割合でちょうどフィリピンの中央部に位置する、日本でも有名なセブ島へ行っていた。
セブ島は、観光地、リゾート地として、日本ではかなり有名な島だ。成田や福岡から直行便も出ているので、非常に日本からだと行きやすい。

俺がこの島へ月一度くらいの割合で、行っていたのは決して観光のためではなく。

このセブに在住されている、日本人の飼育されている動物の診察やアドバイスで行っていたのだ。


さて、そんなセブ島、厳密に言うとセブ島に隣接しているちっちゃな島のマクタン島。

そこには、日本の企業の工場が立ち並んでいる。

小さな日本人町、そして出島が出来上がっているのだ。

そうセブ・マクタン島は、もはや日本の植民地といっても過言ではないかもしれない。

そんなマクタンの日本企業の工場のとある社長さんから、『鳥の治療をしてほしい』という依頼があった。


その社長さんは、大の鳥好きで、鳥マニアといっても過言ではない。

その工場の敷地内には、たくさんの禽舎が建築されていて、いろいろな形でそこへ鳥たちがやってきて暮らしているのだ。

その工場の社長さんは、本当に鳥が好きで。

もちろんケンタッキーは、大嫌いだ(笑)

あれは、彼からすれば敵にしか思えないらしい。
フィリピンでは、レチョンマノックという鶏の丸焼きがたくさん売っていて。

まぁ庶民のご馳走だったりするわけだけど。

そんなのは社長さんから見たら、地獄としか思えないらしい。

道端で売られている鶏なんかも保護して買い取り、連れて帰ってきてここで飼育されていたりなんかしちゃっている。

そう、ここはいわば鳥類の天国。

鶏肉好きのフィリピン人から彼らを守るいわば聖域であるのだ。


工場の敷地内に入ると、俺のご馳走である鶏や七面鳥なんかが。

それはそれはえらそうにほっつき歩いていた。


鶏の治療

フィリピンのバランガイにて、鶏の治療。
でもさ、鶏って治療しても、すぐ食べられちゃうんだよね(笑)



さて、そんな所で、治療を依頼されたんだけれども。

鳥類の場合、人間の目で確認できた時点でかなり重症となっている場合が非常に多い。

大体の症例が、診察した時点ですでに手遅れになっているのだ。

今回のもそうであった。

社長さんの目から見て、かなりひどくなっちゃったと思っていたらしく、それで俺を呼んだわけなのだが。

腹部に化膿層ができていて、それが非常に悪化していて腹腔まで達していたのだ。

まぁ、簡単に言うと腹に穴が開いちゃっていた。

治療鳥

治療の最中。
腹に穴が開くという重症にもかかわらず、鳥の場合はかなりの抵抗をします。
そのため、布の手袋が必要。

治療として、その部分を消毒して縫い合わせ、抗生物質を投与したんだけれども。

重症にもかかわらず、鳥は自分で縫合部分を食いちぎってします。

さらに鳥類は、正常体温が40度(人間の平熱は36度)とかなり高温のため、通常はばい菌が繁殖しにくい体質となっているにもかかわらず、化膿するという事は、なかなか抗生物質が効きにくいということでもある。

さらにオウム病(クラミジア)などの人獣共通伝染病を持っている例もたくさんあるため、非常に注意が必要なのである。

何とか治療を終えて、この鳥はどうにか治ったんだけど、正直奇跡に近いとも思った。





さて、そんな鳥好きの社長さんのところには。

なぜかワシントン条約に記載されちゃったりしている、準VIPの鳥たちも少なからずいる。




社長さん、だめじゃないか。







と思っていたんだけれども。



実はそういった鳥たちは、インドネシアあたりで密猟されてフィリピンに持ち込まれ、路上などで売られているものをすべて引き取り、ここで保護しているのだという話。

治療した鳥もそういった形で保護された鳥だったんだ。



フィリピンの南部ミンダナオ島とインドネシアとの間の海域は。


実は今でも海賊がかなりいて。


島で密猟したいろいろな動物をその海賊たちに売り渡し。


そしてフィリピンの市場へと持ち込まれる。


セブなどの観光地だと日本人以外の外国人観光客が大勢訪れるため、そして中には長期滞在者もたくさん折り、そういった方々が、密漁されたものとは知らずに、その容姿の愛らしさから購入してしまうそうだ。


オウム

これは保護されたキバタン。ワシントン条約に記載されているオウムです。

キバタンなどは、日本の皆さんにもなじみが深いんじゃないかと思う。

よく海賊の親分の肩に乗っかっている白いオウムですよ。


この保護されたキバタンは、路上で売られていたそうなんだけれどもそのときかなり衰弱していて、しかも足(大腿骨)を骨折していたらしく、今でもその後遺症のためにびっこなのだ。


こうなっては、もはや野生に戻ることもできない。


ということで社長さんは引き取り、そしてそのオウムのために、禽舎を建築し。


せめて野生に戻れないならとできるだけ大きな禽舎で暮らさせてあげている。



社長さんは、かなり資材を投げ出し(というかポケットマネーからだけれども)、こうした密猟された鳥たちの保護に力を注いでいる。


それでもこうした密猟はなくならない。


それは、安易な考えで、ただ単に容姿がかわいいというだけで、ペットとして購入しようとしているお金持ちの国の人間がいるからでもある。


密猟にも、少なからず需要があって供給が生まれるシステムがあるんだ。


俺の日本の知り合いに、TVでキバタンを見て、しきりに飼いたい飼いたいと言っていた人がいたけれども。


その人は、本当に『飼いたい』のか?


ただ単に『買いたい』のではないのか?


『きゃ~かわいい~っ!!』なんて勢いで、まるで洋服でも買うかのような感覚で生き物を飼ってしまうこういった方々。


キバタンなんか、ちゃんと寿命を全うすれば人間と同じくらい長生きするのだ。


飼い主が死んでしまった後、誰が面倒を見るのか?


そして、わざわざ野生から密猟してまで、買いたいと思うその心はどこから来るのか?


それは単なる、人間の欲求を容易に満たす行為であって。


決して善行ではないと思う。






俺は別にペットそしてこういった動物を飼うことに反対しているわけじゃないんだけれども。


本当に、最後まであなたのペットとして、面倒を見てあげられますか?

そして、寿命を全うさせてあげることができますか?

と問いたいんだ。



オウムを買いたいと思っている方。


少しでもこういったあまり知られていない事実に目を向けて。

考えて見られたらいかがでしょうか?





そして今現在も飼っている皆さん。

どうか、決して『あ~きた』なんていう事がないように、終生飼ってあげてください。


こんなオウムも、『犬の十戒』に当てはまる生き物です。



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