鴎座俳句会&松田ひろむの広場

鴎座俳句会&松田ひろむの広場

ひろむ千日千句抄2006

貝の層 鴎座9月号より

にわとりに乳房がなくて夏落葉

この齢の貧の暑さに軽い首相

風となる天女のお臍涼しくて

青梅や凡兆ほどの才あらば

二粒は逃げ出しそうで梅筵

雷香る欅の胴の傷増えて

白むくげ供花と五寸のおろち墓

縄文の扉大森昼顔区

不機嫌な蝉貝塚の貝の層



新緑 鴎座8月号より

虚実皮膜の間にばたばた鴉の子

くらがりにトマトの種の桃太郎

糸瓜咲くかの三十の晩年に

夏はあけぼの武蔵の山のひとつずつ

紅つけしとろけ地蔵に華鬘草

汗ばむやみずほ銀行青過ぎて

そら豆にくびれのあれば酒旨き

  会津田島吟行

遠く来て姫さゆりとは一花二花

谷うつぎほのぼの胸が熱くなる

デジタルカメラ谷うつぎとて甘えつつ

鳴子ゆり木道幅に交差点

若鮎や山がすとんと落ちてきて

元祖より本家が淡く額の花

手押しポンプここから佃島五月

風薫る発光ダイオードの青に



新緑「鴎座」7月号より 松田ひろむ

言葉失いし母よ新緑食べようか

母在(ま)して汗ばむことも三回忌

言霊を頼りの母へ初西瓜

亀鳴くや公僕は死語純潔は

  生麦市場

十二軒ばかりか貝の市場の若葉雨

潮の香の「蛇も蚊も」が神ふっと風

生麦の語源の貝の緑雨にて

鮎よりも鮎子のことば塩を振る

うすうす夏へ水琴窟に住む少女



板橋宿「鴎座」6月号より 松田ひろむ

お御籤の自販機縁切榎の芽

落花狼藉遊女なにがし墓斜め

軍国のまた西行の花筏

類想類句椿はいつも散っている

ベビーカーに湿った空気紫木蓮

会いたくてまだ会えぬ姉紫木蓮

花大根小体(こてい)な仏とば口に

春の雨伽耶百済まで浜沿いに

晩年の誓子に疎く鳥曇

耕衣より幸彦が風みなみかぜ


太穂忌3006.5 松田ひろむ

腸(はらわた)の厚きを軽ろく太穂の忌

太穂忌の春寒もやや丹沢に

とんがらし地蔵の頬こそあらめ太穂の忌

春ならい太穂墓前に飲めば酒

亀鳴くとだれのメールの一行目

わんたんやときどき春の雲に乗り

にんげんの形を石に春芒

白梅に始まる佃島ほろろ

紅梅の空を下にし聖橋

斑雪軽舟尚毅偽老人



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