鴎座俳句会&松田ひろむの広場

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ひろむ千日千句2012年


千日千句抄―フクシマ      松田ひろむ
夏風邪のひと待ちかねて佃堀
マスクメロン痛い痛いというひとへ
子を探し探して夏へ隅田川
竹婦人子ども手当が欲しいから
カルメンとみんみん蝉の故郷へ
気仙沼やはり花火を咲かせてよ
広島と福島くらりくらり夏
フクシマ以後の被ばく者われら緑陰に
猫がくる捨て昼顔の寄り合いに
ブラウスの汗の地図いろ長崎忌
曼珠沙華地獄の沙汰に原発派
原子炉の冷温はいつ火(ほ)垂(た)るの記
風鈴はモノクロの音津波以後
金葎平和利用という罠に
子が消えてフクシマ秋暑爆心地
万年の単位フクシマきりぎりす
安全神話蝉の空揚げなど食べて
縄文びとの涼し涼しと土を練る
子宝や縄文人が蚊を払う
(2011年8月)

2012年9月号
千日千句抄―道の字に      松田ひろむ
秋つばめ南の道の見えはじめ
メルトダウン人智の外に秋の風
台風禍熊野に神が多すぎて
台風来額(ぬか)田(たの)王(きみ)の巫力など
大鵬は台風である荘子説
荘子なら秋刀魚二匹を焼くばかり
道の字に首あるはなぜ秋の暮
秋の雲孔子もついに足をひき
秋風のふっとささめく原発忌
雲秋意ポカリスエット飲み干せば
野蒜咲く生者のために僧あまた
名のみにて三四郎池とは味(み)泥(どろ)池
名句でしょうね銀杏散る散る句碑二つ
子規の忌の「帝大」下水蓋を踏む
蕗ちゃん逝くや九月縁の河が茫
銀芒「渡鬼」どっと最終に
天高し乳母ではないが乳母車
稲庭うどんびっくり水も水澄んで
花電車復活の秋荒川に
(2011年9月)

2012年10月号
千日千句抄―佃小橋       松田ひろむ
草は穂に蕗子はどこでけんけんぱ
佃小橋蕗子隠れに草の花
野菊晴佃小橋でかくれんぼ
てのひらの湖となるラ・フランス
津波後の秋のいちにち落し蓋
いつまでも南は山で蛇笏の忌
爽やしや手をひろげたる女人こそ
口ねばるオクラ刻むといえばもう
敬老も棄老もむかしひつじ雲
初恋の味は紅玉オギノ式
地球脱出秋の金魚と手をつなぎ
ひとの死の九月薄紙剥ぐように
賢い人もときにめんこく新走り
重機の女機械の男秋渇き
パソコンの指ほどほどに昼寝覚
植字工文選工と霧のなか
十円の大吉そして蔦紅葉
さざんかの落合坂で手を放す
むかし町我善坊町みずきの実
(2011年10月)

鴎座2012年11月号
千日千句抄-風祭 松田ひろむ
地名にも風祭ありその祭
愛情のひとつに蝗甘辛煮
子規の忌の孫自慢また猫自慢
観音のお臍眠むたし秋茄子
遊郭が横浜(はま)の古地図にねこじゃらし
潮の香と銀杏の香と少女以後
清少納言とライバルの距離菊人形
秋の虹葵の上は胸病みで
清くただしく盗人萩に叱られる
椎茸とGUERALAN三越日本橋
白鳥なり大川小の子供たち
津波禍のとなり柿いろ柿の数
浦祭去年の五人どこにいる
かまきりの雌ならばもう風に乗る
  九品仏
中品の弥陀に冷たい美顔水
極楽の右に蓑虫ぶら下がる
枯蓮のなかの浄土で指遊び
むかご蔓楸邨句碑が引く場合
寒雀楸邨句碑の裏に閨(ねや)
(2011年11月)

千日千句抄―女系        松田ひろむ
露けしや結(ゆい)と紬(つむぎ)と名付ければ
冬ざくら女系の国でいいものを
冬の香の醤油団子が焦げている
音百選帝釈天の寒の鐘
矢切の渡連れて逃げても日向ぼこ
白鳥の渡少女も老い易く
ピーマンとメタボどうしても無縁
触れようか銀杏黄葉の電圧に
七十の子作り話桃を剥く
十二月八日歓呼の声だった
極月の時計を止めて恋すらむ
木枯し紋次郎大勝軒に並ぶひと
BOSSだから缶コーヒーがあったかい
なりふりは懸大根の晴れ曇る
ヒマラヤの岩塩紅く雪催
寺庇借り極月の乾物屋
十二月未来都市とは膝痛む
尿瓶兜太虚虚血のひろむ寒晴に
伊右衛門はお茶ではなくて鎌鼬
(2011年12月)


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