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May 13, 2024
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カテゴリ: 抜き書き

貪欲を追求した結果の地球状況

近年、既に顕著になりはじめた温暖化、気候変動の様相そのままである。われわれは空気中に生息しているから、その深刻さを感じにくい。サウナで空気の九〇度には耐えられるが、水の九〇度では身体は煮えて死んでしまう。気温が一度や、二度の上昇は、風呂の設定温度で考えてみればいい。暑くてたまらない、海の生き物は生息困難で、魚介類は死滅する。温度上昇で水蒸気の量が増え、台風のエネルギーが強化され、トラックも宙に浮くほどの風速 60 メートル級の暴風が当たり前になり、一時間降水量八〇㍉以上といった大水害も常態化する。

例年の四倍という昨年(二〇二〇年)来の大雪も、日本海の水温上昇で水蒸気が増加したことによるものである。一昨年から昨年にかけて何カ月も燃え続けたオーストラリアの森林火災は、気温の上昇と乾燥によるもので、大都市の空を真っ赤に染め、煙と煤で呼吸も大変だったと報じられた。地表の草木が燃え尽きた後も、根っこが炭化し熾火となって燃え続け、大地は熱かったという。さらに「大地はすみ(炭)のごとくをこり」「無間地獄より炎いでて、上梵天まで火災充満す」そのままであった。これは、対岸の火事ではない。

シベリアのベルホヤンスクでは昨年、温暖化で最高気温が三八度を記録し、永久凍土が解けて、露出した土壌から強烈な感染力を持つ未知のウイルスが発見された。何万年もかけて永久凍土に閉じ込められてきた大量の温室効果ガスが、大気中に放出されれば、温暖化は一気に加速する。

昨年末、新型コロナウイルス感染症によって人類が脅かされているが、感染から発症するまでの一~十二・五日の時間差に悩まされてきた。ところが、温暖化のツケは、数十年ほど後に顕在化する。その取り返しのつかない状態でだ、核廃棄物は、ものによっては何万年という単位で維持し続ける。そのツケの損害をこうむるのは若い人たち、これから生まれてくる人たちである。今、政治の世界で権威をふるい、利権をほしいままにして、権力闘争に明け暮れしているのは老人の政治家で、そのツケ顕著になる頃は、この世の人ではない。

温暖化への対応は、この十年が勝負の分かれ目だと言われている。ところが、老人の政治家たちは、全く無頓着のようである。

この理不尽さに黙っておれなくて、声を上げたのが、若きスウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリ氏(二〇〇三~)であった。その叫びは、真実であり、切実である。

日蓮が、『法華経』のをはじめとして、『金光明最勝王経』『薬師経』などの仏典を踏まえて、『立正安国論』(一二六〇年)で、

汝須く一身の安堵を思えば、先ず四表の静謐を禱らん者か。

と叫んでいたことは、このような人類的危機を前にして、国主は責任ある政治を行うべきだと警告していたように思える。賢う人も、身分の低い人も皆、分かっていることでありながら、三毒という酒に酔ってズルズルと破滅に向かうことを危惧していたのであろう。それは、七百六十年後の今日のために書かれたのではないかとすら思えてくる。



【日蓮の手紙】植木雅俊 訳・解説/角川文庫






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Last updated  May 13, 2024 04:56:42 AM
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