かるまの愚痴吐き場

果たされぬ約束 2



澪は深道を一人走っていた。
彼女の双子の姉、繭を置いて。
怖かった。
村にはびこる怨霊も闇も。
これ以上この場所にいることが辛かった。
本来なら繭とともに逃げるはずだった道を一人走り続けた。
繭を置き去りにする罪悪感を振り払うように…

もうどれほどの時間走り続けたのか。
胸が苦しい。
息ができない。
どれだけ走れば外に出られるのだろうか。
もうそれすら考えることも出来ないほど走り続けた。
その時だった。

『マタ私ヲ置イテ行クノ…?』

耳にした瞬間、澪の動きは止まった。
心臓の音が耳に付く。
冷たい汗が流れ落ちる。

(…いる)

姉によく似た、姉じゃないモノ。
強い怨念を抱えた白い着物を血で紅く染めた少女。

(…捕まったら殺される!!)

逃げなくてはという思いが澪の頭の中を支配した。

『澪…』

再び走りだそうとした澪の足は止まった。

(…お姉ちゃん!)

置き去りにしようとした自分の姉。
澪は振り返ろうとした。
繭に謝るために。
しかし…

『振リ返ッチャ駄目ダ!!』

澪は動きを止める。
でも振り返らなければ…
繭に謝るために。
思い切って振り替える。

「お姉ちゃん!私…」

今更ながら何故振り替えるなと言われたのかわかる。目の前にいるのは繭じゃなく、血塗れの着物の少女・紗重だったから。
目の前にいる紗重はゆっくりと近寄ってくる。
瞳に強い怨念を宿して。
澪は己の死を覚悟した。
首に冷たい手が掛けられる―


気が付くとここは思い出の場所だった。
繭と話をしていた場所。
地図から消えた村に迷い込む前にいた場所。
白昼夢でも見ていたのだろうか?
しかし…

「お姉ちゃん?」

あの場所にいたことが夢のように感じられるのに、夢では無かったと証明するように繭の姿だけがそこには無かった。
初めからこの場所には存在していなかったかのように…

「お姉ちゃん!お姉ちゃん?!」

澪は姉の姿を探し回った。
心のどこかではいないと解っていながら。

「お姉ちゃん…お姉ちゃん…」

置いてきてしまったのだから。
怨霊のはびこる呪われた村の中に。
自分が助かりたいが為だけに。
戦う術の無い姉を1人残して。
『ずっと一緒にいる』と約束しておきながら。

なんて酷い裏切り。
憎まれているかもしれない。

だけど…

「戻らなきゃ…」

澪は意を決して元来た道を引き返した。
あの呪われた村へ。
置き去りにしてしまった姉の元へ。
今度こそ約束を守るために…

村へと戻っていく澪の背後から2つの声が掛けられる。

『「ズット…待ッテル…」』

-後書きという名の言い訳-
今回は天倉姉妹編です。
これはゲームオーバールートの「マヨイガ」ですね。
澪が1人で逃げる話。
それに妄想プラスしてます。
一応次で完結…の予定。


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