蛮の狩猟戦記tri                        『新たなる一太刀』

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第9章、第10章、第11章、第12章



ドンドルマの船着場に着いた時、空は漆黒の闇に染まりその所々に星が輝いていた。

「おい、着いたぞ、早く降りな!」

ずっと甲板で寝そべっていたロンに船員が怒鳴った

「あ・・・今降りるよ」
ここに着く1時間ほど前だろうか、街へ向かう一頭の飛竜の影をロンははっきりと見た。

闇夜の様に黒く、しかし何処か夜明けの空を映した様に蒼いその姿は、この世界に生きる者の頂点に君臨する、竜そのものであった。

ドンドルマの方角に飛び去ったため、街が襲われているのではないかと思ったが、街は出発前と変わらない姿を残していた。

いや、むしろ活気に満ち溢れているようだ。

荷造りを終えて船の桟橋を歩いて行き、酒場の裏まで来たときに、ロンの耳に聞き覚えのある声が聞こえた。

「・・・・という訳で、何とか間に合いましたよ…はい、リオレイアは倒してません、尻尾からこれだけ剥ぎ取って来ただけです」



「この声・・・・」



ロンは急いで酒場の階段を駆け上がった、途中でよろめいて他のハンターにぶつかったが構わず酒場へ向かっていった。

「あれ?君は……」

仲間と話をしていた男が、カウンター横で息を荒げているロンを見た。

間違い無い、昼間にロンを助けた剣士だった。

兜を椅子の脇に置いて、テーブルに出ている食事を食べていた

昼間顔は見えなかったが、胴鎧に付いた傷が昼に見た男の物と同じだったため間違いは無いだろう。

髪型はレウスレイヤー

「あんた、何でここに居るんだ?同じ船には乗って来なかったはずだろ?」

男の方へ歩み寄って行った

男は仲間に席を外すように言い、ロンに向き直る

「いやね、陽鉱石堀に行ったのは良かったんだけどランゴスタがもう無茶苦茶に多くてさ、帰って来ちゃったんだよ、いや~参ったよあれには、はははっ」

そう言うと男は肉を切り分けて口へ運んでいた。

「聞いてることが違うだ・・・・モゴッ!?」

口の中にひと口大の塊が放り込まれた、昼間に飲まされたにが虫をまた飲まされたのかと一瞬思ったが、口の中に濃厚な肉汁が広がって行くのが分かった。

「美味いだろ?帰った時くらい良い物食べないとね。」

口に放り込まれた肉をやっと飲み込んで、口を開きかけた時、畳み掛ける様に男が言った。

「それと…、無闇に人の事探る真似は止めた方良いよ、早死にしたければ別だけど」

その一言だけが嫌に重く感じ、それ以上は何も言わなかった。

「…とりあえず座ったらどうだい?」

ロンは立ちっぱなしであった事に気が付き、男と向き合うように座った。

「ティナさん、これもう一つ出してもらえるかな?」

男は目の前にあるアプトノスのステーキを指差して言った。

「あら?いいけど・・・・お値段分かってるわよね?」

「大丈夫ですって、じゃ一つお願いします」

数分後、見事に調理されたアプトノスのステーキが目の前に出された。

みるみる内に口の中に唾液が溜まって行くのを感じた。

「僕の奢りだから気にしなくていいよ、帰って来た時くらいはこう言う物食べないとね」

この意味が何なのか、やっとロンには分かった。

ロンはステーキを切り分けて口へと持っていった、柔らかい食感と溢れんばかりの肉汁が食欲に拍車をかける

ものの5分もせずに出された食事を平らげてしまったロンを見て男は少々驚きながら

「いくらなんでもかっ込み過ぎじゃ・・・・ま、いっか」

そう言うと男はテーブル脇にあるベルを鳴らした、しばらくしてカウンターの奥から一匹のアイルーが出てきた。

アイルーの持ってきた領収書を見て、男は凍り付く



「・・・・ちょっと待っててもらえるかな・・・?」



男がカウンターの方へ歩いて行き、ティナと何かを話していた。

「あの・・・なんで1800zも取られるんですか?」

「あら?さっき言ったはずでしょ?このお料理のお値段分かるのって」

「だからって・・・一人前で1800zっていくらなんでも・・・・」

気付かれないよう少しづつカウンターに近寄り、聞き耳を立てていた。

「一人前?それ、2人分のお値段よ?」

一瞬間が空いた

「・・・・・・えっと・・・・・今なんて・・・・?」

「聞こえなかったの?そのお値段、2人分よ?」

男は何故だと言わんばかりに声を大きくした

「何でですか!?だってあの時出してくれるって・・・・」

「えぇ、出してあげるとは言ったわよ?ただし、奢りだなんて一言も言って無いからね。」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



ティナはにっこりと満面の笑みを浮かべながら手を出していた。

男は膝を付き、完全に沈黙していた。

それを見ていた周りのハンター達が一斉に笑い出した、ティナはにっこりと笑いながら手を出したままでいたし

ギルドマスターは呆れたと言うような顔をしている。

「・・・・ぷっ、はははははははははっ」

膝を付いてうなだれている男を見て、とうとうロンも噴き出してしまった。

「・・・・・・くくくく・・・あははははははははっ」

うなだれていた男自身も一緒になって笑い出した

「はははっ、あぁそう言えば自己紹介がまだだったね」

一通り笑い終わった男が立ち上がり、ロンの方へ向き直った。

「僕はジャンって言うんだ、よろしくね」

ジャンと名乗った青年は背中に黒い太刀を背負い、蒼くも黒くも見える鎧で全身を覆っていた。

「俺はロン、今日街に着たばかりなんだけど・・・とりあえずよろしく!!」

二人はそう言うと、互いに握手をした。

その夜、酒場では一時も休まる事無くドンドルマの夜を照らしていた・・・・・



第10章「記憶」

空はどんよりと曇り、雨が冷たく肌を打つ…

世界が全て焼けてしまったような錯覚に陥る光景が目の前に広がっていた…

右も左も焼け野原、所々に人の形をした白い焼け残りがいくつもある…

少年は歩き出した、靴は無く裸足の足で…

「ここは・・・・みんな・・・どこ?」



しばらく歩いて行き少年はふと足を止めた、目の前には一本の大剣が地面に深々と突き刺さっていた。

その大剣に背を預けて何かを呟く子供がいた・・・・



「・・・・・だよ、・・・・も・・・なんだ・・・」

その子供に近づこうとした時、空が突如暗くなり何も見えなくなった。

地面が崩れ、奈落の底へ落ちて行った・・・・

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・」






「…さ……ィさん、………バースディさん。」


ロンが目を開けるとそこには少女が一人立っていた。

女性の頭装備にしては珍しく、顔全体を覆う生地に目の模様の入ったブランゴUキャップを装備し

その他各部位には剣士用ブランゴUシリーズに身を固めている

それ以上に目を引くのが、背にしているグレートバグパイプ

希少な鉱石をベースとした狩猟笛で、その音色を聴いた者は一時的に攻撃力、守備力が上昇する

狩猟笛は、ハンターの身長(約170cm)とほぼ同じ大きさの為使いこなすのが困難だが

なんとこの少女、背丈はロンより頭2つ小さいのだ

「おはようございます、バースディさん」

「あ、あぁ、おはようハンナ」

ジャンから紹介されたハンターの一人で、狩猟笛を使う珍しいハンターだ。

彼女は人間ではなく、竜人族と呼ばれる人種なのだと言う

竜人族:その多くが人間と関わる事を嫌い、この世界の何処かにあると言われる隠れ里にひっそりと暮らしているらしい謎多き種族である



部屋の入り口を見てから少女に向き直って一言

「俺…部屋開けっ放しで寝てた?」

コクリとハンナが頷く

「殿下がお待ちです、バースディさんを起して酒場まで呼んで来る様にと仰せ仕りました。」

彼女はジャンの事を殿下と呼んでいた、ハンターには変わり者が多いと言われるが、彼女もその類なのだろうとロンは無理矢理自分を納得させた。

「解ったよ、準備するから先に行ってて」

ハンナはもう一度頷き、部屋を出て行った。

リオレイアと初めて戦ったあの日から見る夢……

その夢の始まりはいつも決まって曇り空で雨が降っていた。

「・・・あの子は・・・・誰だ?」

そう考えながらも手は動かしていた、ジャンが勧めてくれた装備:ランポスシリーズを装着し終えると

倉庫に立てかけている骨刀【竜牙】を手に取った。

そして部屋を出る間際に、村から一緒に連れてきていたプーギーに米虫を与え頭を撫でてやった。

プーギーは嬉しそうに飛び跳ねて部屋を出て行った、何かアイテムを探しに行ったのだろう、可愛いペットである。

マイハウスの出入り口からすぐ横にある酒場へ入ると、3人のハンターがテーブルに座っていた。

「やっ、おはよう…今昼だけどね」

ジャンの向かい側には先ほどロンを起しに来たハンナが、隣には弓を背にした女性がいる

「全く!!時間にルーズな男って嫌いなのよね、私!」

「…耳元で怒鳴らないでくれよ、ディラ」

ディラはジャンといつも一緒にいる女性ハンターで、弓を使うガンナーである

甲殻種ダイミョウザザミのガンナー装備に身を固め、パワーハンターボウを背にしている

「ふん、あんたの試験手伝ってあげてるんだから後でちゃんとお礼してよね!!」

刺々しい口調ではあるが、仲間思いの優しい狩人だ。

「まぁ昨日一気に3つもやったら疲れて当然だよ、さて、今日はハンターランク10の最終試験だね」

「えーっと…ダイミョウザザミだよ」

ロンはギルドマスターからもらった試験クエスト一覧を見て言った。

「じゃあさっそく行こうか、ディラがさっきから機嫌が悪いんだよ」

ジャンがロンの耳元で小さく言ったのを聞いて笑ってしまった。

カウンター脇から出発する時、ティナが微笑みながら手を振っていた。

ロンが町へ来て初めて迎えた繁殖期、今日も良い天気になりそうだ



ジャン、ディラ、ハンナ



この街で出会い、初めてパーティを組んだこの3人が

ロンにとって初めて出来た仲間である


第11章「序奏」


ロンが街に来てちょうど一年、ドンドルマの街に鐘の音が響き渡り、温暖期初日を知らせていた。

しかし街にロンの姿は無い、昨日の夜にクエストに行ってからまだ戻ってはいなかったのだ



・・・・・・所変わって・・・・・・



ここは沼地と呼ばれる狩場、昼間でも濃い霧に覆われており

場数を踏んできたハンターでさえ、その特異な地形に手を焼く事も多い

ほぼ全てのエリアが湿地帯に接しているため足元はぬかるみ

夜にはその臭気を吸ってしまったら、たちまち肺を腐らせる程の猛毒の沼が顔を出す

そんな中、2人のハンターが走っていた・・・・・・





「ったく!!いつまで走らせんだよ!!」

悪態をつきながらそれでも走り続けるロン



「合図が出るです」

落ち着き払った声でそれに答えるハンナ



(「そんな事解ってるよ・・・・」

真面目に答えられてしまい、ロンは黙りながら走り続る・・・・・・



2人の後ろには2つの大鎌を持つ、ショウグンギザミが迫っていた。





数十分前・・・・・・・・



「え?今何て言った?」

「だからちょっと引き付けておいてくれないかな?罠作るからさ」

そう言ったのはリーダーのジャン、パーティ内で唯一上位と呼ばれるハンターだ



「罠って・・・シビレ罠なら持って来ただろ?」

「あぁ、だけどちょっとこいつデカ過ぎる様だからね・・・・・」

確かに、今眼前にしているショウグンギザミは今まで見たことが無いほど巨大だった

その大鎌は広げれば20mを優に超えるだろう



「だからさ、合図するまでその辺ハンナと一緒に走っていて、じゃ、頼んだよ」

そう言うとジャンとディラはエリアを変え、ハンナが角笛を吹いたのだった・・・・・





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―沼地の一角―



「・・・・・・ねぇ」

弓を背にした少女が足場を確認しながら立ち居地を決めている

「何かあったの?貴方ならあれくらいちゃっちゃと殺れるでしょ?」

ジャンは黙々と作業に当たっていた。


「・・・ま、いいわ、貴方が意味も無くこんな事しないもんね・・・・・」

ジェラが作業に取り掛かった直後に、ジャンが口を開けた



「ちょっとね、嫌な感じがしたからさ・・・・・」



=====================================





ピィー………

もうどのくらい走り続けただろうか、強走薬の効果が切れ掛かったその時

遠くの方で消え入りそうなくらい微かな笛の音が聞こえた


「合図ですね、さ、行きましょう」

ハンナは進路を左に変える

強走薬を服用していたため疲れはしなかったが、走り続けている内に自分が何処に居るのか分からなくなっていた。

しかし、ハンナには今どこに居てどこへ行けば良いのかが分かっていた様で、迷わずにどんどん進んで行く。

ジャンが何故ハンナを付けたのかが今になってやっと解り、少し情けなくなった・・・



走り回った割にはそう遠くない場所を走っていたようで、罠を張っていると言う場所まで数分程度で辿り着いた・・・・・が。



「おい・・・・何処に罠なんてあるんだよ!!」

強走薬の効果も切れてしまい、これ以上は走り続けるわけには行かない・・・・

ショウグンギザミはすぐ後ろに来ていた



「こうなったらやるしか・・・・」

ハンナは狩猟笛に、ロンは背中に掛けてある細身の剣に手をかけた、その時!!

「こっちだ!!」

後ろを振り返るとジャンが呼んでいた、しかしジェラの姿がどこにも無い

強走薬が切れていたのと、休み無しで走っていた反動が重なり思うように前へ進めない

ふと気が付いた時、ショウグンギザミの姿は無かった、だが気配は感じる・・・



「急げ!」

そう言われ、ロンとハンナは弾かれるように走った。

二度三度、転びかけたが何とか耐え、ジャンのもとへ辿り着いた

「お疲れ様、あとは僕がやっておくよ」

すぐ後ろで大きな音がした、地面に隠れていたショウグンギザミが顔を出したのだ

「ジャン、逃げろ!!」

しかしジャンは微動だにしなかった、そして大鎌はジャンの脳天めがけて振り下ろされる




しかし、その大鎌はジャンに届く一寸ほど手前で止まっている

もう片方の鎌も振ろうとしていたが、それは振り下ろす事すら出来ず止まってしまっていた

よく見ると、鎌にロープが巻き付いている、これがジャンの言っていた罠だろう。

かなり単純な作りの様だが、しっかりと巻き付かれたロープは解けそうも無い



「それじゃ・・・」

背中に掛けた太刀、鬼神斬破刀を抜刀したと思うが早いか、左側の鎌を斬り飛ばしていた・・・

「ギシャァァァァァァァ!!」

「切り刻むのは好きじゃなくてね・・・・手早く終わらせてもらうよ」

数分と掛からずに2つに分かれた屍が青みがかった血を流して倒れていた・・・


ジャンは一度深呼吸をすると、太刀に付いた血潮を拭き取り納刀した。

「ディラ、もう少し早くやってもらえないかな?」

「スリルがあって良かったでしょう?」

近くの木の上からジェラが皮肉交じりの笑いを浮かべ降りてきた

さっきの仕掛けはジャンが誘き出し、ジェラが罠を発動させる仕組みだったようだ・・・



「さ、早く剥ぎ取って帰ろう」

ジャンの顔が何処か警戒している・・・・

4人は剥ぎ取り作業を終えてベースキャンプへ向かおうとした時・・・



「ズドドドドドドォ!!」

「グオォォォォォオオ!!」







そう遠くない場所から爆発音が聞こえた、距離にしておおよそ200mと離れていないはずだ



「なにかあったのか!?」

「・・・・早いとこ行こうか」

ジャンがマズイといった顔をした、今までジャンのこんな顔を見たことは無い・・・・

「あれ?もしかして怖いのか?」

少しからかってみた、が・・・・・・



「・・・あぁ、怖いさ、ヤバ過ぎる・・・」



ロンは自分の耳を疑った、一年間付き合って来たが

ジャンがこんなに弱気になっているのは初めて見る


「・・・・そうだな、依頼以上の狩りはいろいろと問題が出るからな」

4人はベースキャンプへと向かった・・・・・





=====================================

―爆発地点―



「た、助けてくれぇぇぇ!!!」

「ぐああぁぁぁああああ!!!」

「か、体が・・・焼け・・・・」ドサッ



「グォォォォォォォォォ!!!!」



一人のハンターが最後の力を振り絞り、一言呟いた・・・・・



「か・・・・陽・・・炎・・・」

そう言った途端にそのハンターは発火し、灰も残らずに燃え尽きてしまった・・・・


第12章「温暖期」

ショウグンギザミの狩猟を終えて4人は街に戻って来た。

街の広場には温暖期初日と言うこともあり、様々な露店が並んでいた。

ランポスの牙でできた首飾り、ケルビの皮をなめして作られた衣類、中には火竜の尻尾がそのまま出してある物まである

ハンターにとっては毎日のように目にする物ばかりだが

街の外に出られない一般人にとってはこの上無い貴重品だ

街を一歩外に出ればそこは既に狩るか狩られるかの世界、人が生きて行ける世界ではない・・・

そんな危険を犯してまで行商人達は世界を回り、各地で商売をするのである

もっとも、彼らは護衛のハンターを雇っているが・・・



酒場の扉を開け、すぐ近くのテーブルに3人は座った。

「はぁ~きつかったなぁ~」

席についた途端にテーブルに寝そべるロン、酒場まで歩いてくる時も不自然な歩き方をしていた・・

「何言ってるの、あなたはただ走り回ってただけじゃない、ビール1つお願い!!」

ディラは呆れたと言った顔でビールを注文した。

「走ってただけ!?あのなぁ、一時間も全力で走ってみろよ!!足腰ガッタガタだぜ!?」

「じゃあハンナはどうなのよ?ハンナは平気?」

ロンの隣に座った小柄な少女は凛とした態度で座っていた、疲れなど微塵も無いようだ

「私は竜人なので人間よりも多少の無理は平気です」

淡々と話す独特の口調がハンナの特徴であるが、同時に感情を表に出さないと言う面もある・・・

「人間も竜人も関係無いわよ、ただコイツが軟弱なだけ!!」

「んだと!!」

囮になるため走った時、無尽蔵のスタミナを与える強走薬グレートを服用していたとは言え

それは一時的な物、時間が経てば効果は無くなるだけでは無く、蓄積された反動も一気に帰って来る

過去に強走薬を過剰に摂取し、効果が切れたと同時に襲ってきた反動に耐え切れず命を落とした者もいたと言う・・・

「これじゃしばらく狩りにも行けないな・・・」

背に掛けていた太刀を降ろし脇に置いた



骨刀【竜牙】  骨刀シリーズの最高峰で、切れ味も大幅に上がりより殺傷能力を高めた太刀



「ところで・・・ジャンはどこ行った?」

酒場に来た時は居たはずのジャンの姿が見えなかった

「古龍観測所に行くって、あの声がまだ気になっているみたいね」

2杯目のビールを飲みながらディラが答えた。

古龍観測所は、飛竜とは全く別の進化を辿った竜『古龍』の生態を研究すると同時に

世界を飛び回っている古龍の行方を調べ、必要とあらばギルドに討伐要請を出すこともある場所だ

古龍は稀に街を襲撃し、甚大な被害を出す事もあると言う・・・



「・・・何だったんだろうな、あれ・・・・」

「・・・私に聞かないでよ・・・・」



暫しの沈黙が流れた・・・聞こえるのはディラがビールを飲む時の音だけ・・・



と、その時、クエストから帰ってきた狩人達が嬉々として酒場に入って来た。

どうやらディアブロスを狩って来たらしい、一人の背には大きくねじれた角のような物を括りつけていた。



それを合図にしたかのように続々とハンター達が酒場へ雪崩れ込んで来る

ボロボロになって来た者、返り血が鎧に付いたままの者、満面の笑みを浮かべ仲間と話す者



あっと言う間に酒場はハンター達に埋め尽くされてしまった。



「・・・うーん」

酒場に入ってくるハンター達を見ながらロンは唸った

「どうしたの?」

口の周りにビールの泡を付けたままでディラが訊ねた

「なぁ、何でクエストには4人までしか行けないのかな?」

ロンの言葉を聞いた瞬間、飲みかけていたビールを一気にぶちまいてしまった。

ハンナはピクッと動いただけで先ほどと変わり無く無言のまま座っていた。

「ゴホッゴホッ!!・・・・・アンタそれでもハンターなの?信じられない・・・・」

酔いが回って来ていた様で、声が大きくなっていた。

「何だよ、ちょっと聞いてみただけだろ?人数が多けりゃそれだけ一人当たりの被害も少なくなる、違うか!?」



酒場中に響くほどの大声を出してしまった為一瞬場が静まり返った・・・・



「・・・アンタ・・・本気で言ってるの?」

ディラは信じられないと言う顔をしている

「あぁ!本気だ!!」

立ち上がりながらそう言った、しかし思いがけない事に酒場中にドッと笑い声が湧き上がった。

「小僧、お前本当にハンターか?はははっ」

「そんなんでよくもまぁハンターやってられるもんだぜ全く、ガハハハハッ」



自分の無知が恥ずかしくなり、小さくなりながら椅子に座り直した。

「はぁ・・・ま、ちょうど良いわ、私が教えてあげる」

聞きたくないと言いたかったが、今はその言葉すら恥ずかしく思えたため

ロンは静かに頷いた






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