日々のあぶく?

日々のあぶく?

January 31, 2006
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物語療法の世界と副題がつく。
著者は精神科医である。

装幀・原マスミ

書評で見かけて気になって借りたものの、読みにくいのではとも思っていた。
しかし、ビックリするほど分かりやすくて読みやすかった。
患者の症状と解決法を示す童話や昔話を提示し、
(ヒントとして患者に示し、本当の問題、状況等に気付けるよう導き)
分かりやすい治療のステップとしている。

ねむりひめ
エスカレーターの学校に入学するも成績下位だと外に出されるため、
母親がずっと勉強を見ていたが、高校に進学してから不登校になってしまった娘。
そもそも、彼女は高校になって母親が勉強を見てくれなくなって不安になり、お腹が痛くなったりして学校に行けなくなったという。
「ねむりひめ」の中の"つむ"を国中から焼き払い、呪いから姫を守ろうとした王らを娘を守る親(特に母親)に見立て、
最後に助けたのは王や妃ではなく、他国の王子だった―
どこまでも守れない、いつかは自立しなければいけない。
その時には他人の手助けが必要なのだ。
物語をクッションに納得できる方法(治療法)を選んでいく。
彼女は休学した後、無事に復学する。

三ねんねたろう
二十歳になる息子が仕事にも行かずひと月こもりきりだと両親が相談にくる。
医者の誘いにのって病院にきた息子はこんなにこもるつもりではなかったという。
会社が忙しくなり、休みがほしいと思っていたとも―
三ねんねたろう(働き者の農夫が三年間籠って寝続け、起きて用水路の工事をし、周りの協力を経て畑に水を引く話)を例に出し、
人は内省的な時期と行動的な時期を交互に繰り返す。
彼も飛躍に備えていたのだと…
彼はその後、再び出社し始める。

幸運なハンス
大学を卒業した後に職を転々と(しかもどんどん小さな会社になっていく)する息子が不安に思った両親に連れられて受診。
物々交換をするうちに一文無しになるがそれでも喜んで家に帰るハンスのように学歴やブランドに価値を見出さないだけで、
その都度興味のある職についていたことが判明。
それを話し両親を安心させる。

食わず女房
眩暈に耳鳴り、頭痛や吐き気に悩まされる主婦が受診。
女癖が悪い夫に「誰が食わせているんだ!」と言われ、浮気のたびにモノでごまかされていたが、
食わず女房の夫の要望通り、飯を食わない女房が実は鬼婆で、頭の後ろの口で大飯を喰らった話と照らし合わせ、
自分の気持ちは納得しておらず、鬼婆のようになろうとしていたことに気付く。

ぐるんぱのようちえん
仕事の責任が突如重くなり、眠れず、落ち着かなくなった女子社員が受診。
転職も「負け」と感じる彼女は象のぐるんぱがどの仕事もクビになったが、
最後の子守りが人気となり、今までの仕事も生かして幼稚園を開いた話を聞く。
捉え方次第で物事は変わる(転職も悪いことではない)と気が楽になる。
(結局、今の仕事は自分に合っていることに気がつき、休職後復職)

ももたろう
慣れ親しんだ家を立ち退かなければいけなくなり、眠れなくなった老婦人が受診。
老夫婦の元に授かるももたろうを引き合いに、もう一度、人生を新たにするチャンスだとと言う考え方を示す。

赤ずきん
失恋後、過食症になってしまった女性が受診。
打算もあり彼との結婚を考え、妊娠してしまうが、彼は手切れ金を残して彼女のもとを去った。
赤ずきんの狼は愛情で結ばれていたおばあさんと赤ずきんに嫉妬して食べてしまったと言う見方を示し、
愛に飢え、嫉妬に狂った狼になってしまった彼女に救いの手を伸ばす。

うらしまたろう
退院してきた精神分裂病の患者が受診。
両親の離婚、育ての祖母が冷酷だったなど、幼い頃から女性との関係が上手く行ってなかった患者だが、
入院先の看護婦がやさしかったことに癒されたと言う。
看護婦はうらしまたろうが出会う乙姫のような存在だったのだろう。

三びきのこぶた
キャリアウーマンで仕事はもちろん、家事、育児も完璧なアメリカ婦人が心のバランスを保つため受診。
母親の再婚、養子に出され家出。
孤児院から学校へ通い、今の生活を手に入れた彼女は自分の人生を三びきのこぶたのようだと言った。
そこから、今でも狼に襲われる不安があることが導き出された。

いっすんぼうし
就職か進学か迷った青年が受診。(最近は彼のような「よろず相談の患者」もいるそうだ)
結局就職することで落ち着くが、
以前、「妾の子」であるという彼は荒れてた時にラジオで一寸法師の話を聞き、立ち直ったと言う。
不利な条件下に生まれながらも活躍し、両親を呼び寄せて幸福になった一寸法師は
母を守ろう、弁護士になろうと思っていた彼本来の使命を思い出させたのでは?としている。

つる女房
突然妻から離婚を切り出され、喜怒哀楽がなくなってしまった男性が受診。
実家とも上手くやってくれ、問題がなかったはずの妻が何故?
原因を探るため、妻にも受診してもらうと、
結婚前、自分が肩身が狭かった時に優しくしてくれた夫にどこか恩を感じていたのか、夫のために彼の実家にも尽くしてきたが、
義母や義姉の間に挟まれ誰のため、何のためにやってきたのか分からなくなってしまったのだという。
自分が無理していることが夫に分かると終わりだと思っていたと言う。
原因がわかると離婚する理由も立ち消えていった。

ジャックと豆の木
破滅を叫ぶ青年が大家に連れられて受診。
調子に乗ってきわどい(犯罪すれすれの)仕事を転々とするうちに、いつか捕まるのではと言う強迫観念が膨らみ、不安になったと言う。
鬼のところから盗みを働き、鬼に追われたジャックと青年を照らしあわすことで
東京を生き馬の目を抜くところと思い、やるかやられるかだと思っていたことも分かり、妄想も消えていく。

これに鏡の国の精神科医(上)(下)と不思議の国の精神科医(上)(下)というエッセイ?が付いている。
説明するよりも読んだ方が早い一冊(笑)





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Last updated  February 1, 2006 01:08:01 PM


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