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今日も他人事
ビーバー帝
・ビーバー
『永遠の命なんて歪んだ夢よ。悔い改めて裁きを受けなさいよ』
諡号は紫影帝。アバロン地下のシーフギルドに所属する女盗賊である。
運河要塞攻略において大きな働きを果たしたシーフギルドはその高い能力を買われ、密かにジェラール帝と結び、皇帝直属の諜報機関としてその性質を改変していった。
彼らは存在を秘匿され、常に水面下で帝国内外の諜報活動に携わり、領土を拡大し繁栄するバレンヌ帝国の治安維持に大きく貢献し続けたのである。
そして、シーフギルドの中でも特に優れた技術を持ち、より高みへと近づこうとする向上心と揺らぐことのない皇帝への忠義心を併せ持った者は、「皇帝の手」と呼ばれる直属の隠密として歴代の皇帝の傍に仕え、絶対の信頼を寄せられることとなる。
「皇帝の手」に選ばれることはシーフギルドにおける最大の名誉だったのである。
そして、初代「皇帝の手」である伝説の女盗賊キャットに勝るとも劣らないと讃えられたのがビーバーだった。
彼女の過去については定かではないが、その果敢さと聡明さによって、若くしてシーフギルド内で頭角を現し、「皇帝の手」に選出されると時の皇帝の寵愛を受けたといわれている。
皇帝が病で息を引き取った時、不思議な光がビーバーを包み込み、彼女は自らに宿る力と意思に驚きを隠せなかった。
この光こそ、かつてレオン帝が実践した伝承法であり、ジェラール帝の死後から数百年の後、その後継者として相応しい人物が選出されたことを示す証でもあった。
本来であればジェラール帝の血族にあたる者から皇帝が選ばれる筈であったが、ジェラールの遺言により、伝承法によって選出された皇帝は地位や出身に関わらず、万事に優先されて伝承皇帝となることが認められ、義務付けられていたのである。
こうして伝承皇帝に選ばれたビーバーは、その最初の仕事として、宝石鉱山で発生している奇病の解決に取り掛かった。
先の皇帝の晩年、宝石鉱山で働いている鉱夫が次々と意識を失い倒れるという事態が発生し、以来、宝石鉱山の発掘作業は中止に追い込まれていたのである。
バレンヌ帝国の大きな財源であった宝石鉱山の運営は死活問題であり、皇帝の病死という事態でなければ、ビーバーもその調査に赴く予定だった。
皇帝となったビーバーは皇族の宮廷魔道士オニキスや傭兵隊長オライオンらを配下として騎士団を編成する。
当初、皇族でもなく、裏の世界で暗躍していたビーバーへの不信感は強く、この宝石鉱山の調査の中で自らの実力を見せつけることで、信頼を勝ち取らなければならなかった。
そして、宝石鉱山の最新部にて見つかった生命力を吸い上げる妖しい魔石を破壊することで事態を収束させることができた。
この事件を通じて、ほとんどの者はビーバーを新たな主として認めたが、皇族であるオニキスだけは以前として反抗する姿勢を曲げようとはせず、以後、二人は度々いがみ合う関係となった。
鉱山の運営を再開した後、ビーバーが取り掛かったのは長年、帝国を悩ませていた武装商船団の問題であった。
運河要塞の攻略により、ソーモンの交易路は確保されていたが、武装商船団と呼ばれる武装集団の危険に度々晒されており、大きな利益を挙げてはいなかったのだ。
帝国は以前から武装商船団の正体と根拠地を突き止めるべく、調査を続けていたが、遂にモーベルムにその片鱗を見つけることに成功する。
モーベルムを訪れたビーバーが武装商船団の船長に帝国への協力を要請すると、船長は誠意を示す代償として、メッシナ鉱山に巣食っている魔物の討伐を要求し、ビーバーがこの要求を成し遂げると、続けて船の床掃除を要求した。
プライド高いオニキスはこの不躾な申し出に激怒するが、ビーバーは何か別の意味があると考え、床掃除を始める。
そして、床掃除を終えた時、ビーバー達は既に船が動き出し、ヌオノへと向かっていることを知らされるのである。
ヌオノへと招かれたビーバーを迎えたのは、武装商船団の長であるエンリケであった。
ビーバーの帝国に所属する船への略奪を禁止するようにという要請に対し、狡猾なエンリケは通行料を要求したが、暗部で活動してきた皇帝はこの要求を断固として拒否。
エンリケがまだ交渉の余地があると考え、譲歩案として帝国との同盟を申し出ると、ビーバーはこの案も拒否し、帝国と海賊が同盟することなどないと言い放ち、エンリケも態度を硬化させ、帝国と武装商船団の対決を宣言。
騎士達からの疑問の声に対し、ビーバーは武装商船団がまだ帝国を見くびっていることを指摘し、帝国の実力を見せつける必要があると真意を明かした。
ビーバーは隠密時代の技術を活かして、武装商船団の会議が行われている小屋に潜入し、ヌオノの洞窟内に根拠地があることやハリア半島から陸づたいにヌオノへ進むことができることを知った。
そして、シーフギルドを通じてハリア半島とヌオノをつなげている獣道があることを発見したビーバーは魔物が生息する危険な山道を越えて、ヌオノへと大胆な奇襲を仕掛けたのである。
天然の要害に守られていた武装商船団の団員たちは予想外の事態に対応が遅れ、エンリケの元へとビーバー達が辿り着くことを許してしまった。
愕然とするエンリケは、帝国への服従要求を承諾し、帝国武装商船団として再出発する道を選ぶのであった。
こうして帝国内部で抱えていた2つの問題を解決し、アバロンに帰還したビーバーを待っていたのは、海を挟んだ隣国カンバーランドの国王ハロルドからの招待状であった。
騎士団を伴ってダグラス城へと赴いたビーバーはハロルドの歓迎を受けたが、翌日ハロルドが病により急死したという知らせによって目を覚ますこととなった。
宰相サイフリートはハロルドの遺言を受け取っており、末っ子のトーマが次期国主となることを宣言するが、南部の長城の守りを任される長兄ゲオルグはこの宣言に激怒し、兵を集めて交戦の構えを見せる。
一方、末っ子のトーマも国王となったことに驚きと戸惑いを隠せず、ゲオルグとの対決を避ける道を求めていた。
ビーバーはサイフリートの反対を押し切って和平の使者を買って出たが、ハロルドの急死からの展開に疑問を抱いていた。
騎士団の一人であるオニキスもその点に対しては同意見であると言い、知恵者として信頼できるソフィアに相談すべきだと助言した。
そして、ファーファーの開発を任されていた長女のソフィアも二人の意見に頷き、ハロルドの急死も、ゲオルグとトーマの対立も何者かの策謀の可能性が高いと告げ、自らも和平の使者として同行することを申し出たのである。
ネラック城を訪れたビーバーとソフィアに対して、当初ゲオルグは不信の目を向けていたが、長城の下にトンネルを掘って侵攻して来た魔物に対し、ビーバーが果敢に戦い、これを打ち破ると自らの非を認めた。
まず、ダグラス城を占領している魔物と兵士達を誘いだすべく、ゲオルグがネラック城の兵を率いて対峙すると、その隙に、隠し通路を通じてビーバー達がダグラス城へと侵入し、所在が分からなくなっていたトーマを発見し、内部からダグラス城を取り戻すことに成功する。
再開した三兄弟はそれぞれの非を詫び、事件の黒幕がサイフリートであることを理解し、サイフリートのアジトの探索が始められた。
そして、真っ先にアジトへと辿り着いたビーバーは船で国外へと脱出しようとしているサイフリートを補足。
サイフリートは七英雄の一人ボクオーンに誘惑されて腐敗していたのである。
不死の肉体とカンバーランドの支配を約束としてこの陰謀劇を画策していたことを明かし、自らの野望を粉砕したバレンヌ帝国への憎悪をあらわにしたサイフリートであったが、ビーバーは得意の体術によって対抗し、裏切り者の野望に終止符を打った。
サイフリートの陰謀を暴き、国外逃亡を阻止したことでカンバーランドの帝国への信頼は高まり、カンバーランドの帝国への併合とホーリーオーダーの設立という三兄弟の申し出を受け入れたことはビーバーの皇帝としての最大の偉業となったのであった。
・オニキス
ジェラール帝とエメラルドの子孫であり、次期皇帝と目されていた才女である。
由緒ある血統と優れた才知の持ち主であり、非常にプライド高い性格であった。
その為、平民の出身でありながら伝承皇帝として選出されたビーバーに対して激しい敵愾心を抱いており、彼女がその実力を見せた後も、方針を巡って度々対立することが続いた。
しかし、こうした問題を抱えながらも、ビーバーは決してオニキスを騎士団から外そうとはしなかった。
頑固な性格であったが、オニキスの才能と実力は帝国内でも随一だったためである。
事実、オニキスはほとんどの戦場において高い実力を示し、カンバーランドを巡る陰謀の中では、ソフィアと相談するように助言するなど優れた観察眼を示している。
ビーバーがアバロン帰国後、騎士団を解体した後は結婚し、正当なアバロン皇族の血統を守り通した。
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