c - Rakuten Inc
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
2459836
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
今日も他人事
大悪司SS『独り』
「……ふふふ」
女の陰鬱な笑い声が聞こえる。
「ふふ、やだ、城太郎さんったら……ふふふ」
まただ。
また、看守の日陰密子が、独り言を呟いている。
「ふふふ……」
耳障りな彼女のおかしな独り言を聞いても、眉をひそめることもなくなって久しい。
この独房に入れられた時、初めは戸惑い、苛立ちを覚えたこともあったが、今では鳥の囀りのようなものだと思うことにしている。
私は、ちょっと身じろぎし、独房の壁に背を預けた。
ここに来て、何日、立ったのだろう。五十日? 六十?
ひょっとすると、八十を超えたかもしれない。
悪司との戦いで捕らえられ、この独房に入れられたのが、もう随分と前に感じる。
悪司以外にも、何人か、元わかめ組の仲間がやって来て、言葉を交わすことはあった。
どうやら、全く心を開こうとしない私を動かそうと、悪司が特別に面談の許可を出したらしい。
かつて、あれほど悪司を憎み「殺してやる」と息巻いていた辻家が、すっかり悪司の手管に染まり、その情婦に成り下がっている姿は、呆れを通り越して滑稽ですらあった。あんたの殺意って、そんなに軽いものだったの?
でも、そんな風に身軽に自分を変遷してしまえるのは、正直、少し羨ましい。
「………」
任侠かぶれの森田は相変わらずで、大声で訳の分からない自分語りを散々した挙句、そのまま去っていった。
……そういえば、最近、全く姿を見ていない。
確か、ビノノン王に憑りつかれたとか、お蘭姉さんが言っていた気がする。ちょっと、意味が分からない。
お蘭姉さんは、私のことを一番、心配してくれていた。
体は大丈夫か、地下は冷えないか、とか。そんな他愛もないことばかり。
その方が正直、気が楽だった。
他の連中と違い、姉さんだけは、悪司の部下になれ、とは言わない。
ひょっとすると、姉さんは、私の気持ちに気付いている、のかもしれない。
「………」
お父さんは来ない。
今は悪司の部下として働いているらしいが、一度も顔を見せに来たことはなかった。
……まあ、当然か。あの人は、そういう人だ。
多分、お父さんの中で、私はもう娘でもなんでもないのだろう。
私達親子の関係は、いつの間にか、そういうものになってしまっていた。
要するに。
私以外のわかめ組の幹部は、皆、悪司の軍門に下った、という訳だ。
別に怒りは感じない。裏切られたという気分も。
……もし。
自分も抱かれてしまえば、悪司に肌を許していれば。
彼女達と同じようになっていたのだろうか。
悪司への怒りも、昔の思い出も、過去に交わした約束も、全部全部、無かったことにして。
……それは。
それは、嫌だ。
そんな風に、何もかも有耶無耶にして、風化させて、無かったことになんて。
『なあ、いつまでも意地張ってても、しょえがねえだろう』
『おめえの同僚だった森田も辻屋も、あのお蘭の奴も今じゃ、うちでよろしくやってるぜ。親父さんもだ。お前だけだぜ。ずっと、そうやって捕虜やってんのは』
『おめえもいつまでも、こんな壁の中で燻っててもしかたねえだろう。お天道様の下をよ、大手を振って歩きたくねえのか』
『何が気に入らねえんだよ、ったく…』
いつかの、悪司のうんざりしたような言葉が蘇ってくる。
何が?
何が、ですって?
決まってるじゃない。そんなの……!
そんなの……。
…。
「………」
足音。
こっちに近づいて来る。
「よお、トコ」
―――悪司。
「すっかり、やつれた顔してんな。折角の美人が台無しだぜ」
「……何の用?」
「今夜、俺らはエデンを攻める」
思わず、眉をしかめる。
エデンを? あの、ウィミィ駐留軍司令部を?
「……正気?」
「色々あってな。細けえことは伏せるが、ま、そういう話になっちまった」
「死ぬわよ」
「何、やってみなきゃ、わかんねーさ」
不敵な眼差しを浮かべ、悪司がニヤリと笑う。
「総力戦になる。頭数は一人でも多い方がいい。どうだ、久しぶりに娑婆で暴れてみねえか? おめえが来てくれたら、俺としちゃ心強いんだがよ」
そう言って、悪司は私に手を差し伸べす。
かつて、私を縁日に連れて行ってくれた、あの日のように。
「こいよ、トコ。一緒に、オオサカとろうぜ」
そう言う悪司の目は、ギラギラと輝きに満ちていた。
野獣のように、獰猛で、凶悪な。
でも、どこか純粋すらも感じる。
「……」
全く。
正気の沙汰とは思えない。
自殺行為だ。エデンを攻めるなんて。
でも。
――悪司らしい、か。
ああ、そうだ。
私は、こういう悪司が好きだった。
こういう途方もなく無鉄砲で、どうしようもなく真っすぐな彼が。
「……ん」
おずおずと。
その差し伸べられた手を掴もうとして。
―――あ。
不意に、それが目に入った。
指輪。
左手。薬指。悪司の。
指輪。玩具じゃない。本物の。私のと違う。
私じゃない誰かの。
「………」
掴もうと伸ばしかけた手が、くず折れる。がっくりと、うな垂れて。
長い沈黙の後、悪司の溜息が、独房に響いた。
「……そうか。あばよ、トコ。達者でな」
別れの言葉。私は顔を上げなかった。
足音が次第に遠ざかり、そして、聞こえなくなる。
「………」
ポケットに忍ばせてある指輪を握り締める。
子供の頃に貰った玩具の指輪。この独房に入れられた時、取り上げられなかった大事なもの。
私と悪司をつなぐ、たった一つの。
……どこで。
どこで、間違えたんだろ。
ずっと、待ってた。待って、待ち続けて。
なのに。
「……悪司」
呟きが漏れる。
どこかで、水滴の落ちる音が聞こえた。
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
どんな写真を撮ってるの??(*^-^*)
四国2023景勝地探して(27)三滝渓谷…
(2024-11-26 19:00:56)
がんばれ!地方競馬♪
ラブミーチャン記念は、強力遠征馬を…
(2024-11-26 11:15:12)
妖怪ウォッチのグッズいろいろ
今日もよろしくお願いします。
(2023-08-09 06:50:06)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Create
a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
評判のトレンドアイテム情報
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: