よんよんとともに

第一章 梅のひと(3)



(3)





青年と美女は3日の間、一言も言葉を発せずに

時の流れに身をゆだねていた。



寄り添いまどろみ、そして水と戯れ・・・。



きらめく水のしぶきが美しく・・・。



あたりに溶け込んでいる老木の姿が美しい・・・。



それにもまして二人の姿は美しかった。





4日目の朝、美女の姿は何処にも無かった・・・。



それなのに青年は慌てることも無く

おもむろに宿に向かって歩き出した・・・。







宿の主はとても心配していた。

ふらりと泊まりにきた美青年が気にかかっていたのだった。



「あ、お客さんお帰りなさい・・・。



どこもお怪我されていませんか・・・・。

3日もお戻りでないので、少し気を揉んでました・・・。



ご無事で何よりです・・・・。」



人のよさそうな主はそう語りかけて様子を伺った・・・。





「あ、ほんとうにすみません。ご連絡もしないで・・・。



別にどこもどうともないです。ありがとうございます。





あの・・・。このあたりに貸してもらえる空き家はありませんか?



できれば川べりにある梅の老木が見えるところにあるとうれしいのですが・・・」





「え?川べりの梅の木ですか・・・。

あのあたりにお出かけだったんですか・・・。



そうですか・・・・。」



主は少しの間をおいて、



「空き家ですか・・・。



あるにはあるんですけど、普通の民家ではないんですよ。



あのあたりの近くなら

窯元がひとつそのまま誰も使わなくなってるはずでさぁ・・・。



梅の木が見えるかどうかはちょっとはっきり申し上げられませんがね・・・。」



心配げに主は答えた・・・。





青年の目が輝いた・・・。



『窯元・・・・』



願ってもない棲家だ・・・・。





彼は都会に住んでいたころ、自由に外出もできずに

自宅に居ることが多かった。



そんな彼が唯ひとつ夢中になれるものが

陶芸だった。



轆轤も窯も自宅に設えるほど夢中になっていたのだ。



しかもかなりの腕前だった・・・。





「是非その家を紹介してください。」



青年は慌てて主に頼むのだった・・・。





宿の主の親戚がその窯元の持ち主だった。







彼はその日のうちに

手提げかばんと名もない花の鉢植えをひとつかかえ、



窯元の主となった・・・。



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