よんよんとともに

(9)・(10)



ある日ふたりは、かごを持って老木へ出かけていった。

根元には、いくつかの梅の実が転がっている。

すこしだけ老木をゆすってみる。


ぱらぱらぱらっと地面に落ちてくる。

それをかごに入れた。

そんなに時間がかからないうちにかごが一杯になった。


空は今にも泣き出しそうなどんよりとした雲で満たされている。


ピョルにとってこの季節はあまり歓迎できなかった。
が、メファは活き活きとしていた。

そんなメファを見ているのがピョルは好きだった。


ピョルは心の中でほっとしていた。

梅の実のなるころも乗り越えられた・・・と。


持ち帰った青梅をきれいに洗って、

あらかじめ町に出て買ってきておいた焼酎に漬け込んだ。

家中に青梅の香りが漂い、
メファが何人も居るような気がするほどだった。



その年の梅雨は例年並に明け、
蝉のやかましい鳴き声とともに
真夏の太陽が顔をだす・・・。

この季節はピョルもメファも苦手だった。


朝早いうちに散歩に出かけ
日中は少しひんやりとする作業場で過ごすことが多かった。

春に庭に出した鉢植えの花は、

何枚も増えた葉の隙間から
陽射しを探すかのように小さいつぼみを覗かせている。

(10)

ある日ピョルはひとりで、上薬を買いに町まで出かけた。

2時間ほど歩くと小さいながらも町にたどり着く。


この辺り一帯は、古くから焼き物の盛んな地域だったので、
小さい町でも焼き物関係の店は少なくない。

ピョルはお目当てのものを購入して
それから乾物屋にも立ち寄った。

そして通りを歩いていると、

衣類や小物を売っている店先にならぶ
感じのいい日傘が目に付いた。


真夏の陽射しに少し弱くなってきたメファを思い浮かべて、

日傘や、服、そして淡い色の髪飾りも買った。

喜ぶ顔を想像しながら、彼は歩みを速めた。

真夏の天気は不安定で、
1時間ぐらい歩いた頃、辺りが急に暗くなったかと思うまもなく、

ポツ、ポツと大粒の雨が降り出した。

大きな袋を提げているので、走り出すこともできない。

当然雨具も持ち合わせていない。

せっかく買ったメファへのお土産も濡れてしまう・・・。

ピョルは恨めしそうに空を見上げる。

そんなピョルにお構い無しに雨足はどんどん激しくなるばかりだ。


あきらめてトボトボ歩いていると、近くの家から声が聞こえる。

「小降りになるまで、休んでいきなさい・・・」

ピョルは立ち止まってキョロキョロした。

ガラガラと戸が開く音が聞こえ、

傘を差して駆け寄ってくる一人の婦人が見える。

「あらあら、ずぶ濡れじゃないか・・・。
じきに止むと思うからちょっと休んでいきなさい。」

傘を差しかけてくれながら、ピョルに話しかける。

ピョルはお礼を言いつつ、断わった。

一人待つメファが心配だったのだ。

すると、その婦人は傘を差し出して、
「これ、差していきなさい。また、町に来るついでに返してくれればいいよ。」

そういうと、傘を手渡しさっさと家の中に入っていってしまった。

ピョルはその親切がうれしくて家に向かってお辞儀をし、
傘をさして歩き出した。

30分ぐらい経っただろうか・・・。

大粒の雨はやがて小粒になり、

そして雲の切れ間からは陽が差し込んできた。

鳥の鳴き声も聞こえ始めた。

遠くの山に目をやるときれいな虹が出ている。


人は虹を見るとついうれしくなるようだ。


ピョルも傘をたたみ、足取りも軽く

さらに歩みを速めるのだった。


雨上がりの町はとてもきれいに見える。

あともう一息でメファの待つ家に着く・・・・。


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