ココ の ブログ

タイトル変更(2)

タイトル変更(2)

 結婚して30年以上経つ我が家にはペットは居なかった。それなのにココを飼う気に成ったのには偶然の理由があった。厳密に言えば、一度だけ短期間だがペットが居たことがあって、向かいの家に住んでいた両親が綺麗な模様のあるダルメシアン(犬)を貰って来てひと月ほど居たのだった。税理士をしていた父が取引先の社長から貰って来たのだ。しかし、向かい同士で住むボクは仕事で忙しいので休みの日に散歩に連れて行く程度で、他に餌以外の面倒を観る者が居ず、可哀想なので結局、知人に譲ってしまう羽目に成ってしまった。可愛いという純粋なな気持ちで貰ったのだろうと想えば、面倒を観ることもできないのに不用意に貰って来たのを責めることも出来なかった。

ダルメシアン
僅かひと月ぐらいしか飼わなかったダルメシアンだが、綺麗な犬だった。

 そういうこともあって一度もペットを飼ったことがない妻は、犬もそうだったが猫が我が家に来るというのには反対だった。餌の与え方や飼い方が分からないからというのが主な理由だったが、子供の頃、余所の飼いネコに追いかけられて怖い目に遭った経験があるという笑ってしまいそうな話もあった。ボクは子供時分に飼ったことがある経験から平気だったし面倒なこともなく、犬よりも猫の方が愛着があった。既に隣家にはモモという名の黒い縞模様猫のアメリカン・ショートヘア種が居て、我が物顔で近所を闊歩していたのだ。我が家の庭にも来ては糞をして臭うので困っていた矢先だったから妻の心配も当たっていない訳でも無かった。そのくせ妻はモモを可愛がっていた。


 モモの糞害に悩まされていたボクは対抗手段として、もう少し上を行く猫でも飼ってモモを圧倒させてみようかなと微かに想ったりもしていた。すると偶然にも取引先の奥さんが「娘がニューヨークへ語学留学をすることになって飼い始めたばかりの仔猫を手放すので貰ってくれません?」とボクに話を持ちかけて来た。モモのこともあったのでボクは快諾し、早速車で豊中まで貰いに行くことになった。日曜日に妻も一緒に行く予定だったが直前になって「行きたくない」というので独りで行くことになった。矢張り猫を飼うことをためらっているのだろうと想った。しかし、もう決めたことで相手も待ってくれていて約束の時間も迫っていた。

COCO-00
我が家に来て間もないココは、階段も怖々降りていた。

 初めて訪問する豊中の家は、カーナビのお陰で直ぐに分かった。途中で携帯に電話があり「未だ?今、何処に居るの?」と待ち構えていた奥さんが心配そうに訊いた。彼女もボクが来るかどうか心配していたらしい。直ぐ近くだったから間もなく家を訪ねるとチンチラ(猫)とミニ・ダックスフントが居て、もう一匹細くて白い仔猫が居た。それがココだった。三匹も飼っているのだから一匹ぐらいそのまま飼えば好いのにと想ったが「この子が(ココを指して)ヤンチャで、他の二匹を追いかけて耳を噛むのヨ」と言うので手放す理由が他にもあることが分かった。娘さんは既にアメリカへ発って居なかった。


 暫く世間話をしているとココが近くまで来たので、ひょいと膝の上に乗せるとジッと大人しくしていた。「あら、この子、珍しく余所の人に懐いているワ。猫好きな人が分かるのネ」と感心した。ココも予感したのかも知れない。用意してきた籐籠のバスケットにココを入れるとニャ~ニャ~と啼きだした。狭いバスケットに入れられて嫌なのは分かるが、これから一時間ほどドライブが始まるので辛抱してくれないと困る。高速に入る手前で余りにも啼くので蓋を開けてやると手にしがみついて来た。信号待ちで停まり、おもむろに籐籠から出してやった。車が停まっている時は啼かず動き出すと啼いて座席を行ったり来たりする。だから左手で抱えながら運転をしなければならなかった。

coco-04
我が家に慣れるとココは木登りが得意なのか、よく庭木に登って遊んだ。

 ようやく無事に自宅まで運んで妻と対面させると彼女は珍しいものを観る眼で観ながらそろりと手を出してココを撫でてやった。ボクにしがみついているココは、なされるままジッとしているだけだった。啼くのは止んだが新しい環境に馴染むまで時間がかかりそうだった。貰って来た餌を少しやると食べ始めた。とりあえずニ階の使っていない妻のアトリエをココの部屋にすることにして糞トレーに砂を入れて置いた。そこへココを入れて鼻を砂に押し付けて糞をする場所であることを教えた。昔、そういう風にして躾けた通りのことをしたのだ。多分、それを数度繰り返せば覚える筈なのだ。(つづく)



© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: