ココ の ブログ

変わった形の建物(2)

変わった形の建物(2)

 コルビジュエの弟子であった前川國男さんの作品は全国に多くあるから京都会館(コンサート・ホール)のひとつぐらい無くなっても殆どの人々は気にもかけないかも知れないが、彼はコンクリート打ちっ放し仕上げを日本に紹介した事でも知られ、京都会館にはそれが多用されている。最初それを観た時(高校時代だったと想う)コンクリート面に仕上げが未だ為されていないのかと想ったものである。が、コンクリート面が妙にツルツルと綺麗に仕上がっていて型枠の木目模様までが揃っているので、これが新しい建築手法なのだと分かった。コルビジュエはマチエール(素材)の持つ独自の美しさに注目して表現材料に多用したのだったが、コンクリートもその一つだった。

都会館(1.前川國男)
京都会館(1)。相当古くなって、時代の流れに合わなくなった面もある。

 それまで、土木構造物にコンクリート打ちっ放しは当然のように用いられていたが、建築では殆ど用いられなかった。むしろ下地と看做されていたものだ。打ちっ放し仕上げにするには、被りが余分に要る。被りとは鉄筋と型枠との隙間の事を指すのだが、土と接する面には5~7cm程度、一般的には3cmが標準だ。コンクリート打ちっ放し仕上げにすると収縮目地を含め5cmほど余分に被りが要る。他の仕上げ材とのコストの比較からすれば決して安価に済むものではない。だから流行りだからと言って無闇に打ちっ放しにすると後々のメンテナンスを考えれば問題が残る。防水の問題もあれば車の排気ガスで表面が化学反応して真っ黒に変色する問題もある。それより観た目に未完成さが残る。

京都会館(2.前川國男)
京都会館(2)。ホールの天井面の傘のような反響版が当時は珍しく観えたものだった。

 多くの建物は、外壁に石を張ったりはめ込んだり、タイルやテラコッタの仕上げをする。吹き付け材も多い。カーテン・ウォールの場合はガラスが一番多く、次いでアルミ版や表面処理をした金属板を張り付け、特殊仕上げの布(キャンバス)にする場合もある。プレキャスト版やALC版も多いが、工期と予算と意匠の絡み合わせで決まる。建築家の好みも大きく左右する。どれが一番良いかは建築家の腹次第である。予算を気にせず設計が出来て、絶対これしか無いと信じれば一般市民が眉をひそめるものでも建築家は独善で決める。そこに建築家の我がままと言われる要素があるのだが、有名建築家に成れば誰も口を出さない。そういう作品で失敗したものは案外多い。多いが、決して建築家は認めない。

京都会館(3.前川國男)
京都会館(3)。楽屋側の外壁に蔦がからまって文化的な雰囲気を醸し出している。

 それは言わば誤診をした医師のようなものだ。裁判で敗訴しない限り認めることは無いのだ。それだけに人の金(税金)を使うという社会的責任を自覚した建築家でないと社会的損失は大きい。その点、民間の建物はクライアントさえOKすれば、どんな奇抜なものでも許される。勿論、法の許す限りではあるが、中には社会的概念という法以前の立場から周辺住民の反対運動で取り壊したり修復させられたりする事があるから法といっても絶対ではない。近年、高さの問題や外壁の色彩の件で反対運動が起きているのは枚挙にいとまがない。地域住民のエゴもあるから一概に建築家やクライアントだけが悪いとも言いきれない処が難しい問題である。要は、周りとの調和が取れているかどうかの問題である。

京都コンサートホール(1.磯崎新)
地下鉄烏丸線の北、植物園に出来た新しいコンサートホール(1.磯崎新)。

 そう言えばボクも昔、軽井沢と小諸に別荘を設計・監理して、片方の建物が山の崖に建っていて外壁をピンクにした処、後日、地域住民から不満が出たという話を聞いたことがあった。工事が終わって数ヶ月してからの業者からの連絡で知ったのだったが、クライアントはそのまま押し切ったそうである。話し合いが持たれなかったのは残念だが、今はどうなっているのか分からない。グーグル・アースで調べてみると、軽井沢の方はレストランに変わっていてそのまま存続していたが、小諸の方は影も形も無かった。ひょっとして取り壊されたか、ボクの思い違いで場所を間違えて観ているのかも知れず、兎に角、現在の姿は分からないのが気に掛かるところだ。

京都コンサートホール(2.磯崎新)
京都コンサートホール(2.磯崎新)

 さて、京都会館に代わるコンサート・ホール(設計・磯崎新)が植物園辺りに出来たので、一度行ってみたいと想うのだが、遠いので未だに入った事が無い。昨年だったか高校の創立100周年記念の同窓会が其処であって、音楽課程のフィルハーモニーが演奏する案内状を見たが、好みでない曲ばかりプログラムに載っていたので行かなかった。考えてみれば観る機会を逸して惜しい事をしてしまった。ドライブ途中で外から観る限り、外壁は黒っぽいタイル張りで、コンクリートの打ちっ放し部分は無かった。写真で観ると、他にはカーブした外壁にガラスがはめ込まれ昭和初期を想わせるレトロ風意匠で面白いと想った。ボクは磯崎氏のファンだから中を観なくても大よその見当はつく。面白ついでに言えば、ポスト・モダーンと呼ばれる彼の作品の中で、福岡のホテル・パラッツォは、ベネチア風モダーンで人気がある。(つづく)

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