ココ の ブログ



 日本文化は「恥の文化」だと言った人が居たが、確かに、かつてはそういう時代があった。新渡戸稲造が「武士道」という日本文化を達者な英文で妻の為に書いた頃までの話である。上流社会のアメリカ人であった妻は日本語が読めず、日頃から夫から話としては聴いていたが、ちゃんと体系だった英文で知りたくて夫に頼んだのだった。上流社会の知的美人とくれば同国の伸士達が放ってはおかない存在なのに敢えて新渡戸稲造を選んだ彼女は慧眼の持ち主であった訳だ。国際的地位が確立している現代社会でもそういう関係が難しい時代、よくぞ日本男児として国際的に通用する人物が居たものだと感服する。逆に言えば、武士道精神を持っていたが故に明治維新以降も日本の知識人は大いに欧米社会で活躍したのだった。

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 そういう意味では現代社会に武士道精神を持った人物が何人居るのか数えてみると甚だ心許無く残念な気持ちに成らざるを得ないのだ。例えて言えば、昨年、中国の元首(主席)が国賓として日本に来て日本の首相と会談そした際に、お互いに目と目を合わせて話すのではなく、事もあろうに首相は手にした(官僚に作成して貰ったと想われる)書面を読みあげるという失態を演じながらも恥を恥とも想わない態度をとっていたのだった。主席は軽蔑したような目でジッとその姿を眺めていたが、それが我々の国を代表する人物だと認識せざるを得なかった時「ああ、これで日本は完全に中国のみならず国際社会から馬鹿にされてしまうだろう」と憤りを感じたのはボクだけでは無かっただろう。

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 その直前には、尖閣劣島での中国漁船(漁民を装った偵察船団)による領海侵犯があって、日本の海上保安庁の警備艇が警告を発したにもかかわらず、逆に体当たりすらされ、その船長を公務執行妨害で逮捕した事件があったのに、この首相はオロオロしてマスコミから逃げ回り、挙句が、拘留期限を待たずして釈放させてしまった。その現場状況の撮影記録もあったのに開示もせず、無罪放免(不起訴処分)にしてしまったのだ。それに怒った一人の海上保安庁の職員がネットのユー・チューブに個人的に撮影記録を公表して世界に事実を知らしめ、完全に中国船の領海侵犯と公務執行妨害を明らかにしたのだった。彼の怒りは武士道精神以前の正義感ある人間としての義務感から出た普通の行為だった。

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 それなのに、この首相は「誰が撮影記録を公表したのか?」と犯人探しのように調査させ、数日後、彼が名乗り出て犯人探しは終え、彼は結局、詰め腹を切らされ退職してしまった。原則的に言えば確かに彼は立場上、公文書を無断で世の中に流したかどで公務員法違反をした訳だが、世論が彼を支持したので、政府も彼を罰する事が出来ず、裏工作で詰め腹を切らせてしまったのだった。その事件を知った上で、中国主席が日本を訪問し、表面上は尖閣列島問題で国際法上は何事も無かった事にしてしまおうという事にしてしまった。彼は内心では「日本政府は弱腰外交しか出来ない腰抜けだ」とせせら笑った事だろう。まして文書を読み上げてしかまともな話が出来ない首相なぞ眼中にはなかった筈だ。

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 その失態を演じても尚、上目遣いの自信の無い態度が随所に現れ、のらりくらりと的を射ない返答しかせず国民から馬鹿にされ支持率も下落の一方だった。とうとう20%を割る状態に成りながらも、妻が「マイナスの支持率になった訳でも無いでしょ!」と居直ってみせ、更には政治資金問題で外国人からの献金受理を問われ正に政治生命も終わるやに見えた矢先、東北大震災が起き、非常時内閣として延命したのだ。にも関わらず福島原発事故が起きるや又してもオロオロ狼狽し、迅速な対応が出来ないまま時間を浪費させ、その結果、決断遅れのベント指示(原子炉の内圧低減処置の許可の出し遅れ)で原子炉が次々と水素爆発を起こし原子炉が壊れ、放射性物質が撒き散らされる最悪の状態に成ってしまったのだ。

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 以上の事柄だけでも充分に辞任すべき要件が揃い、野党だけでなく与党内からも辞任要求が出ているにもかかわらず辞めない理由は、単なる恥知らずに過ぎないのだろう。人間としても失格であるが、恥を恥とも想わなくなった人間はどうしようもない。「己の無知に気がつかず我で行動する輩ほど手に負えないものは無い」と勝海舟も言っている。私事ではあるが、亡くなった父が新渡戸稲造に同行して全国をキリスト教伝道に周った経験談をよく話してくれたのを想い出すにつれ、かつての日本男児の武士道精神に基づく情熱と潔さは最早、昔話になってしまった観があるのは非常に残念でならない。せめて恥を知り、誠意をもって出処進退を決意するなら「身を引いてこそ立つ瀬もあり」とテレビ・ニュースの首相に向かって言たくなるのを我慢している毎日である。

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