ココ の ブログ

梅雨の晴れ間(2)

梅雨の晴れ間(2)

 阿呆になるには変なプライドは出来る限り捨てる覚悟が要る。そうでないと出来ないからだ。人間と言うものは自己を四つの部分に分ける事が出来ると言われる。先ず自分の事は誰もが知っているという部分(明るい窓)と、自分の事を他人は知っているが自分は知らない部分(暗い窓)、そして自分だけが知っている部分(隠された窓)、四つ目として他人も自分も知らない神のみぞ知る部分(未知の窓)の四つである。それをジョハリの四つの窓と言うのだが、殆どの人は四つの部分を一緒くたにして観てしまいがちか、自分の事は自分が一番よく知っていると考えるものである。が、冷静に考えてみれば、神のみぞ知る未知の部分は別にして、自分は知らないが他人が知る部分が意外に多い事を知るのである。

梅雨の晴れ間006 梅雨の晴れ間006

 自分の事を自分は知らず他人が知っているという暗い窓の部分が多くを占めるという事は一種恐ろしい事である。が、世の中は概してそういう場合が多いものである。他人は勝手に人を判断し自分のポケットにしまい込むもので、そういう分類で人との付き合いをしている。ポケットの数が多いほど他人の観察をよくしている事になるが、大まかには自分にとってプラスになるかマイナスになるかの二つに分ける。しかし、プラスになろうがマイナスになろうが好きとか嫌いだけで分ける人も居るだろうし、何故か惹かれるからという理由だけでマイナスになる面が多くても付き合いをする人も居る。ドン・ファンに群がる女や悪女に惹かれる男のようなものである。それ程、人と言うものは複雑な生き物なのである。

梅雨の晴れ間007 梅雨の晴れ間007

 そこで、自分のプライドを捨てて誰とでも合わせられる人は八方美人と呼ばれる事もあるが人付き合いの好い人である。しかし、その人が本当に相手の事をどう考えて観ているかは分からないものである。表面上は愛想が良くても全く逆の事を考えている場合もあるからだ。その駆け引きが上手い人を策士とか政治家と言うのだが、そういう面を読み取られると人は一歩下がって警戒して付き合う事になる。警戒しながらも自分にとってプラス面が多いと辛抱して用心しながら付き合う。キツネとタヌキとの馬鹿し合いが政治の世界だが、普通の人と人との付き合いでそういう事をしていると寂しい人生を歩む事に成り兼ねない。尤も、概してそういう人が人生の成功者として頭角を表すものである。

梅雨の晴れ間008 梅雨の晴れ間008

 ジョハリの四つの窓ではなく、自分の表現方法として関西では四つのパターンがあって、賢賢(カシコカシコ)とカシコ阿呆と阿呆カシコと阿呆阿呆である。カシコカシコは見るからに秀才で言う事為す事が優れている人の事を指し、カシコ阿呆は見掛けは賢そうだが実は馬鹿というタイプ、阿呆カシコは見掛けは馬鹿なように観えて実は冷静でソツの無い人、阿呆阿呆は見るからに抜けていて言う事も為す事も出鱈目な人の事である。中でもカシコ阿呆が一番多く居て、如何にも自分は賢いのだと見せたがる鼻もちならない人である。逆に、阿呆カシコは案外隠れた人材で人に警戒心を与えないから人は油断して接する。しかし、本当にその人が賢ければ本性を知られても阿呆ぶっているから人は警戒心を抱かない。

梅雨の晴れ間009 梅雨の晴れ間009

 そういうタイプの人間に成れば肩肘張って生きなくても良いから気楽に想える。実際はそういう人ほど繊細な神経の持ち主なのだが、処世術として身に付いていると案外心配したほどでも無いのかも知れない。例えば、故大平首相なぞは一見そういうタイプで一体何を言っているのか分からない「アー、ウー」と言うばかりに観えたものだったが、歴代の首相の中では一番の論理家で理路整然とした話に聴衆や接した人々の評判は良かった。その逆と言えば今の首相で、如何にも賢そうでソツの無いような振りをしているが、何も内容が無く、実際には権力にしがみ付くだけの無能な人物という事がばれてしまって、早く辞めろという大合唱が世論になっている。世論というのは無責任だが、怖いものである。

梅雨の晴れ間010 梅雨の晴れ間010

 昔、豊臣家が滅びかけ徳川家に政権が移ろうとしていた時、前田利家は五奉行として生き残る策としてわざと阿呆ぶって、鞘が割れた刀を引き摺って大阪城の廊下を歩いたという。為に、廊下の畳が切れてしまい「前田様が歩かれた跡は畳替えをせねばならぬ」と城の管理をする者達が利家の惚けたことを噂し合った。その噂を聞いた徳川家康は「百万石大名も惚けてしまえば敵では無い」と加賀百万石に警戒心を抱かず潰さなかったという。子供時分にボクの親父が遠いご先祖様の事を面白おかしく話して聞かせてくれた話だが、左程、人は見掛けで判断するものという例え話である。案外、上手な世渡りの方法としては阿呆カシコで行くのが良いのかもしれない。小賢しい面構えでは相手に警戒心を与えるだけである。(つづく)

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