好奇心は放浪中!

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律令のしくみ☆その1(中央の政治組織)

くまくまキャスター(以下くま)「はい、こちら藤原宮の朝集堂内から生中継でお送りしております。発表の準備が整ったようですので、不比等氏にカメラをまわします」
藤原不比等の顔がドアップに。手元に置かれた資料をほとんど見ることなく、強い光をたたえた目で、記者一人一人を順々に見据えながら話し始める。
不比等「大宝令の目的のひとつは、 新しい国家を円滑に運営していくための仕組みを、きちんと作り上げること にある。そのためにはまず、 国政(国家の政治)のかなめとなる”中央の政治組織”を整理し、おのおのの役割分担を明確にする必要 があった。大宝令で定められたこの政治組織は、口頭で説明するのは非常に分かりづらいため、図を使ってお話させていただこう」

大宝1

不比等「中央の政治組織は、 神祇官(じんぎかん)・太政官(だいじょうかん)・弾正台(だんじょうだい)・五衛府(ごえふ) の四本柱からなっておる。そのうち、政治全般を取り扱う最高機関が太政官であるので、そちらの説明は後ほど詳しく行いたいと思う。
ではその他、三つの役職について簡単にご紹介する。

(1)神祇官→宮中の神祇祭祀(天地の神々を祭ること)をつかさどり、全国の神社を統括する重要な役職である。 (ということですが、実質的には太政官より下に置かれているそうです……なんかコレって名誉職?)
(2)弾正台→官吏の監察 (お役人の仕事ぶりを調査し、取り締まるコワーイお役目ですね) と、風俗の粛正 (風紀が乱れていたらキビシク取り締まり、ビシバシと不正を正すというこちらもおっかな~いお役目。いうなれば風紀委員?) を担当する。体制のゆるみを引き締め、長らく維持していくには欠かせない職務である。
(3)五衛府→藤原京と藤原宮、全地域の警備をあずかる保安隊である (天皇の身辺警護もおこなうそうですから、まさにエリート警察官の集まりですね~♪)


スタジオにいるアナウンサー「くまくまさん、くまくまさん!ひとりごとが混じっていますよ……エッ、そうなんですか?わ、分かりました。視聴者の方にはお聞き苦しい点もございますが、不比等氏の説明がなにぶん難解であり、かみくだいてほしいという要望が多数寄せられておりますので、このまま続行したいと思います。では再び現場にお返しします」


不比等「ここまではよろしいだろうか。では次に太政官についてご説明する。まずは太政官の内部をじっくり見ていただこう。赤で囲まれた部分がその内部にあたる。

大宝1

太政大臣から大納言までが、主な政策を審議する議政官(ぎせいかん)、つまりは ”国家の頭脳” であり、少納言・外記(げき)はその事務を一手に引き受けている。
左弁官・右弁官を頂点とする機関は、 各役所や各諸国から上がってくる要望や報告を受け付け、議政官にまわしたり、あるいは逆に議政官からの命令を伝達すること を主な仕事としている (つまりはパイプ役ですね~☆)

くま「太政官は今でいえば、 国会と考えても差し支えない でしょうね。もっとも民から選ばれた代表者は全然いませんけど、 政策を話し合い、決定し、行政機関(内閣)にその実現をまかせるという点では、変わらない と思います。さて、今度は太政官の下におかれた行政担当機関、八省の登場のようです!」


不比等「 太政官で決められた政策にもとづいて、それぞれ受け持ちの仕事にあたるのが八省 である。ここでは簡単にその仕事を紹介するにとどめるので、了承いだたきたい。

(1)中務(なかつかさ)省……天皇・後宮に関わる事務をあつかっている。 (この下には陰陽寮もあって、興味津々!)
(2)式部(しきぶ)省……文官の勤務評定や人事を担当する。 (勤務評定によって出世できるかが決まるので、実はこの部署ってかなりのチカラを持っていたそうです☆しかも文官だけでなく、武官の勤務評定もやっていたので、ここのご機嫌を損ねたらタイヘンですね~~。ちなみに、奈良時代の権力者・長屋王(ながやおう)はこの式部省の長官を長いことつとめていたそうで、そこで自らのチカラを着々とためこんでいた可能性は大!ですな)
(3)治部(じぶ)省……各氏族の系譜・相続・婚姻など官人の身分に関わる事務を引き受けている。 (さらには宮中音楽や外交も取り扱っていたそうですから、今でいえば総務部?)
(4)民部省……戸籍・租税などの民政全般を担当する部署である。
(5)兵部(ひょうぶ)省……諸国軍団・兵士・兵器・軍事施設などなど、軍事に関する業務をすべて担当する。 (「鼓吹司」といって、現代の自衛隊音楽隊?みたいな業務もあるので、今も昔もそう変わらない気がして何かおもしろいッス♪)
(6)刑部(ぎょうぶ)省……裁判・刑罰など司法全般をあつかっている。ちなみに遺失物も取り扱いしておるので、何かあればこちらをたずねていただきたい。
(7)大蔵省……諸国から届く貢献物を保管している他、物価の統制も行っている。
(8)宮内省……宮中のさまざまな雑事を一手に引き受けている。 (中務省が公的な事務をあつかうのに対し、こちらはまさに庶務課!宮中のインテリアやガーデニングの他、天皇家の身の回りをこまごまとお世話しています。その仕事のバラエティーぶりは、ショムニも真っ青?!)


くま「こうして見てみると、大蔵省なんてつい最近まで使っていたコトバですし、宮内省に関しては、”宮内庁”として今なお生き残ってますよね~。コトバ一つにも長い長い歴史があって、非常におもしろいところです。最後に、大宝令から1168年後の、明治初期(1869年)に打ち立てられた政治組織を見てみましょう♪あまりにソックリで思わず目が点になってしまうくらいです^ ^;

*神祇官と太政官の二本柱
*太政官の中身は、左・右大臣と大納言と参議(さんぎ)
*太政官の下には、「外務省・大蔵省・兵部省・民部省・大学校・開拓使・刑部省・弾正台・宮内省」


なぜほとんどパクっているのかは明治時代にお話する予定ですが、律令体制の一部がつい最近まで用いられていたんだなあ…と思うと、なんか不思議な気持ちになりますね★」




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