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らヴ げーむ{小説
幸せになればいいと思った
私の大切な人が
幸せになればいいと思った
私も
幸せになりたいと思った
恋なんて
自由なものなんだって
お姉ちゃんがずっと
教えてくれてた
私は小さい頃から
お姉ちゃんに憧れていた
お姉ちゃんが言うことは全て正解なんだって
思ってた
お姉ちゃんはたくさん恋をしてた
だから
たくさん幸せを持ってて
たくさん悲しみを知ってた
私はそんなお姉ちゃんの話が
お姉ちゃんが
大好きだった
お姉ちゃんは
私を大事にしてくれた
大好きな大好きなお姉ちゃん
私の大きな目標
憧れの存在
「美咲ー?明日でしょ?挨拶に見えるの」
「うん。お父さんには今日話すから。お母さん、協力してくれて有り難うね」
「いいのよ、そんなのは」
「沙由華も、ありがとね」
「お姉ちゃんもついに結婚しちゃうんだねー…彼氏さん、どんな人なの?」
私は中学3年生
恋をしている
「とてもいい人よ?沙由華にも早く会いたいって言ってる」
「へえー、かっこよくなかったらやだよ」
「誰の彼氏だと思ってんの?かっこいいに決まってるでしょ?」
「まあね」
明日は姉の美咲の彼氏が
お父さんに挨拶に来る
結婚を、許してくださいって
挨拶しに来るのだ
私は姉の彼氏を見た事がない
だから、私もドキドキしていた
「沙由華、学校は?」
「あ!遅刻しちゃうじゃん!」
「早く行っておいで」
私は走って学校へ向かった
このわくわくを抑えきれない
「さゆー!」
「あ、香奈枝!おはよ」
「明日でしょ?お姉さんの彼氏、来るの」
「うん」
「どんな人なのかなー?」
「まだわかんないけど、きっとかっこいいよ」
「どうして?」
「お姉ちゃんと付き合う人、みんなかっこいいんだよね」
「さゆの好きな相手も、かなりかっこいいけどね?」
「いつか私も隆文と一緒に挨拶しに行きたいなあー」
「まあ、16歳まで待ちなさい」
隆文、は
私の大好きな人
私達の、担任の先生
21歳、独身
去年入ってきた新しい先生だ
顔もよくて生徒に大人気
私はそんな先生に恋をしているのだ
絶対結婚する!という決意の元
私は先生に猛アプローチをしているところだ
「隆文はさあ、私のことどう思ってるんだろーね?」
「ただの生徒としか思ってないんじゃない?」
「えー…ひどい!絶対意識してるよ…ね?!」
「はいはい。そうだといいね。て言うか、告白しちゃいなさいよ」
「え?」
「気持ち、伝えないままだと、何も進歩しないよ?」
「そんな軽く言わないでよぉ…私これでも結構真剣に悩んでるんだから」
「ま、私は応援してるから」
私の恋は
真剣なのである
「せ…先生、おはようございます!」
隆文をみつけて
私は勇気をふりしぼって挨拶をした
「おはよう」
笑顔が…輝いてる
「さゆ、固まってないで、早く教室行くよ」
「…香奈枝……」
「なに?」
「私、結構まじに好きかも」
「はいはい」
私は本気
絶対実らせて見せるんだから
お姉ちゃんみたいに、結婚したいもん
幸せになりたいもん
あと1年待ってて…先生
私、16歳になったら
すぐにでも貴方と結婚したい
「沙由華?」
「あー孝太、おはよ!」
孝太は私の幼なじみ
「お前、なにボーっと歩いてんの?」
「へー?」
「まあいいけど」
顔もよくて運動神経抜群で頭もまあまあいいし
性格も優しいし
女子から結構人気がある
だけど私は知っている
孝太は、ヘタレなのだ
「あ、真由美ってどんな奴?」
「え?真由美って、浅賀真由美のこと?」
「ああ」
「いい子だよ?ちょっとドジだけど」
「ああ、そう」
「真由美がどうかしたの?」
「内緒だけど、朝告られたんだよ…困るよな、別に好きでもないのにな」
「真剣に考えてあげるんだよ!女の子は本気なんだからね」
「なんて断ればいいと思う?」
「馬鹿。自分で考えろ」
男って本当に
駄目
恋してる女の子は
すっごく敏感で傷つきやすくて
弱いものなんだから
「香奈枝ー今日は一緒に帰れるよねー?」
そんなこんなで、もう放課後
「うん」
明日はお姉ちゃんの彼氏が来る
「お姉さんの彼氏、どんな人かわかったらすぐメールしてきてね」
「うん」
「でもお兄さんが出来るのかあ…何だか不思議だよね」
「そうだね」
「明日が楽しみだね」
「うん」
「じゃあね、ばいばい」
「うん」
私は、上の空だった
私にはお兄ちゃんが出来る
その新しい家族に
明日、会えるのだ
わくわく、ドキドキ、心臓が止まりそう
「お姉ちゃん!」
「あ、沙由華。おかえり」
「明日なんだよね」
「え?」
「彼氏来んの!」
「ああ、うん。明日だよ?それがどうかした?」
「もう、私、緊張していても立ってもいられないのよ」
「何で沙由華が緊張するの?」
「だって…相手もまだ私のこと見てないわけでしょ?…ブスだとか思われたら嫌だし、それに…気が合わなかったらどうしようとか思うし。仮にも、お兄ちゃんになるわけなんだから。しかも、大事なお姉ちゃんをあげる相手でもあるわけだし…」
私の声が小さく消えてゆくと
お姉ちゃんが大声で笑った
「なっ…何ぃ!」
「沙由華は、何の心配もしなくていいし、何も気負うことなんてないんだからね?あの人も、きっと沙由華を気に入るわ。私が断言してあげる。それに、沙由華も好きになる。沙由華にとって、いいお兄さんになる。それに、沙由華のことブスだなんて思うわけないでしょ?仮にも私の妹よ?それにね、沙由華。あの人、すっごくいい人なの。沙由華も、大好きになるような」
「…うん」
緊張は、ほぐれた
残ったのはただ、わくわくした気持ちだけだった
お姉ちゃんはすごい
たぶん、ううん、絶対
新しいお兄ちゃんも、いい人だと思うし
私も好きになる。お姉ちゃんと同じくらい
「早く明日になんないかなあー」
「嫌でも来るよ、明日と彼は」
姉の言う通り
嫌でも来てしまった
時間が、刻一刻と迫る
「…もうすぐ来るよ」
お姉ちゃんの顔にも、緊張の色が見えた
「お、お父さん…どうするの?来ちゃうよ?」
「沙由華は少し黙ってなさい」
「お母さん、緊張しないの?」
「特に」
「お姉ちゃん…彼氏さん、かっこいいといいね」
「だから、かっこいいって言ってんでしょ」
心臓が高まるのを感じた
ピンポーン
「来た!」
お姉ちゃんが玄関の方へ走る
私は、手を握り締めた
お兄ちゃん…一体どんな人なの?
「おじゃまします」
声…男の人の声
「来たよお…」
「こんにちは」
少し緊張した面持ちで
私達の前に姿を現したのは
「……うそ…先、生…」
「紹介するね。私の彼、山下隆文さんです」
「初めまして」
「どうして…え、なんで…?」
「驚くだろうと思って、あえて言わなかったんだけどね。沙由華の担任の先生なの。沙由華、吃驚したでしょ?これからは先生でもあり、お兄さんでもあるのよ」
「…嘘、でしょ…?先生が?どうして…」
嘘、嘘だ、絶対嘘だ
嫌、絶対いや
そんなの、有り得ない
酷すぎるよ
「沙由華ちゃん、これからは兄としてもよろしくね」
「…あ、有り得ない」
それから先生は
お父さんに挨拶してたけど
全然、声なんて聞こえなかった
絶望。ただそれだけだった
私を現実に引き戻したのはお父さんの大きな笑い声だった
隆文と、…いや、先生と
楽しそうに話している
ああ、結婚しちゃうんだ、って思ったら
涙が出てきて、止まらなかった
バレちゃまずいと思って
私は家を飛び出した
かすかに、姉の呼ぶ声が聞こえたけど
私は気にせず走った
「香奈枝!どうしよう…今すぐ会いたい!」
気が付いたら私は香奈枝に電話していた
━「なに?どうしたの?」
「今すぐ会いたい!ねえ、今どこ?行っていい?」
━「ちょ、落ち着いて?沙由華?今どこに居んの?て言うか、今日はお姉さんと彼氏が挨拶に来てるでしょ?」
「…そのことで、大変なことになった…私、どうしたらいいか分かんない」
━「待って、沙由華。今から行くから。どこに居んの?」
「今…歩道橋の下」
━「分かった。今から行くから、待ってて」
電話が切れた
私は、頭の中がカラッポだった
「沙由華!」
少しして、香奈枝の声が聞こえた
香奈枝の姿をみて、私は泣き崩れた
「香奈枝ーどうしよう、私、もう…家帰れないよおー」
「何?何があったの?!」
私は少し、泣いていた
「沙由華?落ち着いた?」
「…うん、ごめんね……急に呼び出したりなんかして」
「ううん」
「…今日、お姉ちゃんの彼氏が来たの」
「うん」
「こんにちは、って、彼氏、入ってきて……そしたら、それ…先生だった」
「…先生、って…?まさか、」
「隆文」
「…うそ」
「本当なの。私も嘘だって思いたいけど、これが現実。……ねえ、香奈枝…奪えると思う?大好きなお姉ちゃんから。お姉ちゃんの大切な人を…奪えると思う?私…そんなの出来ない……出来ないけど、欲しい…隆文のこと、本気で好きだったから、今でも好きだから、諦めることなんて…出来ないの」
「でも…先生は、お姉さんと結婚するんでしょ?」
「うん」
「…お姉さんは、沙由華の気持ち知ってるの?」
「知らない…言えるわけないよ……だって、お姉ちゃんには幸せになってもらいたい」
「だったら…キツイこと言うかもしれないけど、諦めるしかないよ。もう、仕方ないよ。沙由華はお姉さんに幸せになってもらいたい。お姉さんの幸せは先生と結婚すること…だったら、沙由華は、諦めるしかない。」
「でも…」
「諦められない。…そうでしょ?だったら、奪うしかない。お姉さんと結婚する前に、止めるしかない。だけどもう、結婚してしまう。先生の気持ちもお姉さんに向いてる。…言いたくないけど……もう、これしかない。結婚してから、時間をかけて奪いなさい。初めは辛いかもしれない…だけど、いつか、叶うかもしれない」
「駄目だよ、そんなの」
「沙由華…じゃあもう、先生に告白しちゃいなさい。フラれるかフラれないかは、先生の気持ち次第だけど。私はフラれると思う。悲しいけど、それが現実。フラれて、すっきりして、お兄さんとして先生を見なさい。いつか、辛くなんてなくなるから…お姉さんの幸せ、先生の幸せ思うなら、それが一番。でもね、沙由華。どうするかはあんたの自由。ゆっくり考えて、決断すればいい。私は沙由華が決めたことなら、どんな決断でも応援する」
「…うん」
「辛かったら泣けばいい。私は、いつでも居てあげるから」
「うん…うん……ありがとう」
私は、考えなければならない
先生のこと。これからのこと
自分の気持ちのこと
「香奈枝…私、帰るね」
「もう、平気なの?」
「平気ではないけど、これから、もっと平気で居られなくなること、あると思うの。だから、今は先生とお姉ちゃんのことしっかり見て、現実を受け入れたい。これから訪れる、色んな苦しみに、負けないように…」
「…頑張ってね」
「今日はいきなりごめんね。ありがとう。じゃあ、また、明日ね…」
私は香奈枝に別れをつげ
家に戻った
玄関の前には、姉の姿があった
「沙由華!」
「…お姉ちゃん、先生は?」
「あんた、どこ行ってたの?!急に家、飛び出すから…吃驚して…」
「ごめんね、私も、驚いちゃって。友達に会ってたの。」
「そうだったの…」
「あ、別に先生が嫌だとかじゃないよ?ただ衝撃がねー。昨日まで、只の担任だったから。急に兄になるとか、考えられなくて。でももう大丈夫。友達に話し聞いてもらってたらさ、何か、普通になってきて。だって友達、先生がお兄ちゃんになるなんて、勉強も教われるしラッキーじゃん、なんて、軽く言うんだもん。私も何だか、軽くなって」
笑顔で、話せた
バレてない
私はこれからも、こうして
大好きな姉に嘘をつく…
「そうだったの…もう、ほんと、驚いたんだからね。急に家飛び出すもんだから…まさか、沙由華、隆文のこと、好きだったんじゃないかとか、考えちゃったよ」
あ、見抜かれてる?
まさか、気付かれてる?
「まさか。やだな。そんな訳ないじゃん。生徒が担任好きになるとか、漫画だけの話だってばー。お姉ちゃん古い!」
笑って、誤魔化すしかない
「だよねー。まさか、有り得ないよね!そんな、ドラマみたいな話!」
でもね、お姉ちゃん
そんなドラマみたいな話が
ここに、あるんだよ
「さ、家入ろうよ?」
現実に起こってるんだよ
「先生も吃驚してた?」
ドラマなんかとは、比べ物にならないくらい
残酷
だってこれは、現実なんだもん
「そりゃあ、驚いてたよ?嫌われたんじゃないかって慌ててた」
これからいっぱい、いっぱい
「あはは!先生も単純なんだからー」
笑顔の勉強
「だから隆文にも言ってやって?驚いただけだって」
しないと
「そうだね、先生に悪いことしたねー」
先生の顔をみて、涙が出そうになった
「先生、ごめんね?私、驚いちゃって、友達に会いに行ってたの。だから、先生のことが嫌だとか、そんなんじゃないから、気にしないで下さいね。お姉ちゃんをよろしくお願いします」
「そう、だったのか…よかった」
「先生、これからも、一生徒として、そして妹として、よろしくね」
先生は、笑顔で頷いた
今にも流れ出しそうな涙をこらえて
必死に笑った
おめでとう、おめでとう、って
何度も、何度も心の中でつぶやいてた
心から祝福できない
自分に、言い聞かせるように
それから、先生とお姉ちゃんの結婚の準備は
驚くほどスムーズに進んだ
とても早かった
私は、学校で見る先生だけを好きになろうと思った
嫌いになんてなれないし、意識しないようにするなんて
絶対に無理だから
お姉ちゃんと居る先生はお兄ちゃんで
学校に居る先生は、私の大好きな人
別人なんだよ、って、呪文のように何度も言い聞かせていた
それから、2人の結婚式の日が決まり
私の家は、どこか慌ただしくなっていた
その慌ただしさに、私は助けられていた
ゆっくりと流れる時間の中で、苦しめられるより
慌ただしさにかき消されていた方が
随分楽だったから
私も無理にでも忙しい毎日を作った
今まで全くと言っていいほど提出してなかった宿題も
ちゃんと、毎日出すようにして
毎日、授業の予習と復習をするようになった
忙しい方が、楽なんだ
二人の幸せそうな顔なんて、目に入らないくらい
忙しい方が、私は正気でいられた
でもたまに、嫌な夢を見る
2人が結婚して、幸せそうな顔で、私に微笑みかける
私も幸せそうに笑い、二人を祝福している
でも、私の笑顔はニセモノで
すぐに暗闇のドンゾコへと落ちる
そして、その夢をみたあと、私はふいに思ってしまう
幸せを装って、私は、暮らしていかなければならないんだ、と
いっそ、死んでしまったほうが、楽なのではないか、と
「沙由華、って、呼んでもいいかな?」
ある日、隆文が私に問いかけてきた
「え、どうしてですか」
私は素直に、いいですよ、と答えられなかった
「妹を名字で呼ぶのもおかしいし、ちゃん付けで呼ぶのも余所余所しいかな、って思って。あ、でも、嫌ならいいんだ」
「え、いえ…嫌じゃないですよ」
「学校では、ちゃんと名字で呼ぶけど、家では、親しみを持って呼びたいな、って思って」
「はい、いいですよ。私もその方が嬉しいし。私もお兄ちゃんって呼んじゃおうかなあ」
「うん、いいよ。呼んで欲しい」
「でもやっぱまだ駄目」
「どうして?」
「結婚式の日から、お兄ちゃんって呼ぶの。決めてるの。だって…先生にはまだ、先生で居て欲しい…」
「え?」
「何でもないです、すみません」
私は走ってその場から逃げ出した
思わず、口に出してしまった
本音が、つい、出てしまった
「…隆文……」
駄目、駄目、駄目
わかってるよ、そんなこと
二人の幸せが一番なんだから
私なんて、どうでもいいんだから…
……でも、私にだって、幸せになる権利はある
いつまでも只の先生で居てよ
私の思いは、叶わなくてもいいから
お願いだから、只の先生で居て
私が好きで居ても許される、先生で…
「沙由華?」
「…お姉ちゃん」
私は涙をふいて、振り返った
「どうかした?」
「え?何が?どうもしないよ?」
「さっき、隆文と話してた、よね?」
「…うん」
鼓動が高まるのを感じた
「何話してたの?」
姉はあくまでも笑顔だった
「先生がね、沙由華って呼んでもいいか、だって」
「え?」
「妹だから、沙由華って、呼びたいんだって」
「そうなの!よかったわね、沙由華。隆文、沙由華のこと、本当の妹のように思ってくれてるのよ」
「そうなの?」
「うん。もう生徒としてじゃなくて、妹として見てるわ、沙由華のこと。いいお兄さんができて、よかったね」
「うん、嬉しい!」
嬉しくもないのに、泣きたいのに
もう、この家には、私の安らげる場所なんて、ない
「だから沙由華。貴方も隆文のこと、お兄ちゃんって呼んであげてね?」
「それは嫌」
「えっ、どうして?」
「結婚式の日から、お兄ちゃんって呼ぶことに決めてるの。今はまだ、実感湧かなくて…私も先生のこと、本当のお兄ちゃんだって思いたいから、ちゃんと実感湧いてからがいいな、って思うの」
「そうなの。隆文、きっと喜ぶよ」
「そうだといいな」
素直に、笑える日が来るといいな
イコール、私はもう、隆文を好きじゃないってことになってるよね
恋なんて、しなければよかった
同級生の男子を好きになればよかった
隆文のこと、いい先生だなって思うくらいにしとけばよかったんだ
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