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おかしいよね
ねえ、そう思わない?
「みなみー!おはよー」
「おはよ!」
元気で、明るくて
みんなの人気物
そんな貴方に憧れを抱いている
そんな私は
全く逆の人間
「…みなみちゃん、おはよう」
「おはよ!」
笑顔で挨拶を交わすだけ
それだけで、元気をもらえた気がする
貴方のような人間に生まれていたら、どんなに幸せなんだろう
「美穂、何してんの?」
「えっ」
「何ボーっと突っ立ってんの?」
「え、別に…」
「じゃあ早く行くよ。あ、今日荷物重いから持ってくれない?」
「え…うん、いいよ」
「今日さあ、腕痛くて。ごめんねー」
「ううん、気にしないで」
どうして人間って
こうも違うんだろう
貴方みたいになれたなら…
「美穂さ、今日お昼ひま?」
「え?どうして?」
「お昼ごはんなんだけど、コンビニで買ってきて欲しいの」
「…うん、いいよ」
「あ、ほんと?じゃあお昼休みまでによろしくね」
何を頼まれても断れない
ううん、違う
嫌われるのが怖いから…
それも、違う
嫌われてるけど、それでもいい
一人になりたくないから
一人は怖いから
なんでも、いいよって、引き受けちゃう
誰かに意見したり、逆らったり、したことなんて
ないんだよ
ださいよね、こんな私
こんなだから嫌われちゃうんだよね
駄目だね…私
「ありがと、荷物。じゃあ私職員室寄っていくから。先教室行ってて」
「あ、うん…わかった。じゃあまた後でね」
教室に入っても、みんな
私に気づきさえしない
気づいたとしても、挨拶はしてくれない
だけど、ただ一人
みなみちゃんは、挨拶してくれる
皆にするのと同じように、笑顔で、おはようって言ってくれる
今日もまた
いつもと同じように時が過ぎて
私もいつもと変わらず
過ごせると思ってた
私の席からみなみちゃんは
とてもよく見える
私はみなみちゃんの斜め後ろ
みなみちゃんはいつも、
寂しげに窓の外を見ている
話しかけて、何かあったの?とか
元気づけてあげたりしたい
でも、私にはそんなこと出来ない
私は挨拶するのが精一杯で
みなみちゃんはきっと、私のことなんて眼中にない
授業が終わって、私は
心の昼食を買いにコンビニへ向かった
「美穂、どこ行くの?」
「コンビニ」
「そう。私のお昼よろしくね。お金はあとで払うから」
「分かった」
いつものことだから、何が食べたいのかとか
聞かなくても分かっちゃう
そんな自分が、時々無性に、いやになる
殺してしまいたいくらいに
「じゃ、行ってくるね」
心は私の言葉を聞き終える前に席から立って
みんなの会話の中に入った
少し、ため息をついて
私は教室を出た
学校を出て、少し歩いたところにコンビニはある
授業の途中で教室に入るのはいやだから
いつも近くの公園で時間をつぶしてから学校に戻るのだ
私はコンビニで心の好きなサンドウィッチと自分の分のパンを買い
公園へ向かった
ベンチに座って、イチゴミルクのパックにストローをさした
「今日はこんだけかよ?お前さー、俺のことほんとに好きなわけ?」
大きな声に驚いて、声のする方を見たら
男の人と、みなみちゃんが居た
「好きだよ!でも、私、高校生だよ?そんな大金、無理だよ」
「バイトすりゃーいいだろ」
「してるよ」
「じゃあもっとしろよ。なあみなみ、俺に捨てられたいのかよ?」
「そんな、待ってよ!」
「捨てるわけねーだろ?俺も好きだよ、みなみ」
その男の人はみなみちゃんにキスをした
「…じゃあ、またな。次は3万、よろしくな」
「3万…」
「俺も色々、大変なんだよ。分かってくれよみなみ」
「…隆志、次はいつ会えるの?」
「わかんねーけど、また電話するから」
「わかった、じゃあね」
その男の人は去ってった
みなみちゃんは、走って学校の方へ戻っていった
声をかけたかったけど
かけれなかった
あの男の人は、彼氏?でもお金…
私は何故か走って、男の人の後をつけた
自分でも、何してるのか分からなかった
でも、足が勝手に動いてた
その男の人は、喫茶店に入った
私も後をつけ、入った
そしたら、女の人が来た
男の人はその女の人にお金を見せて、
二人で店を出た
私は何故か動けなくなって、しばらくそのまま座っていた
私が教室に戻ったら、ちょうどお昼休みだった
「美穂ー!」
心は怒っているのか、声が大きかった
「どこ行ってたの!遅すぎ!有り得ない!」
「ごめん。ちょっと、色々あって」
「で、私のお昼は?」
「これ」
私はサンドウィッチを手渡した
「ありがと。お金は美穂、遅かったから奢ってよ。いいでしょ?」
「うん」
みなみちゃんは、いつものメンバーと皆でお弁当を食べていた
いつもと全く変わりない笑顔で話してた
私はふと、あの男の顔を思い出した
なんだか無性に、腹が立ってきた
私は屋上に向かった
何かあると、必ず私は屋上に来る
屋上は町が見渡せて、遠くに海も見える
なんだか凄く、落ち着く
「………みなみちゃん…」
私は何かしてあげられないだろうか
そればかり、考えていた
あの男の人とみなみちゃんはどういう関係なんだろう
聞かなくても、分かっていた
言うべき?あの男が
みなみちゃんとは違う女と会ってたこと
言うべきなの?
言ったら、みなみちゃん、どんな顔するだろう
ショックを受けちゃうかもしれない
そんなの、だめ
私、どうすればいいの…
何もしないのだけは、絶対に、いけない気がした
放って置けばいいことなのに
放ってなんておけない
それは、みなみちゃんだから
「あの、…みなみちゃん、話があるんだけど…いい?」
気がついたら話しかけていた
もう後には引けない
「ん?何?」
みなみちゃんは笑顔だった
「あの、ここでは…ちょっと……」
「ああ、うん。じゃあ教室、出よっか」
みなみちゃんは、私が呼び出しても
いやな顔ひとつせずに私についてきてくれた
「ねえ大嶋さん、どこまで行くの?」
「…美穂、で、いいから」
私はみなみちゃんと屋上に来た
さっきより風が強くなっていた
みなみちゃんは黙って私を見てた
スカートが風になびいて、捲くれ上がるのを
手でおさえながらみなみちゃんはじっと、私を見ている
私は、スカートが捲れようが
髪が乱れようが、気にならなかった
ただ一心に、何から話せばいいのか、それを考えていた
「……あのね、余計なことだと思うんだけど…」
「うん」
「みなみちゃんが、…その……さっき、公園に居るのを見たの」
「うん」
みなみちゃんは顔色ひとつ変えずに、ただ私を見ていた
風に靡く髪を乱暴に耳にかけて
みなみちゃんはちょっと微笑んだ
「それが、どうかした?」
「…その男の人、みなみちゃんと別れたあと、女の人に会ってた。みなみちゃんから受け取ったお金を、見せて微笑んで、そのあとは、どこへ行ったかは分からないけど」
「後をつけたの?」
みなみちゃんの顔色は全然変わらなかった
「…ごめんなさい。勝手に足が動いてて、気づいたら…その男の人が入った喫茶店に、私も入ってた」
「心配、してくれたの?」
「……ごめんなさい」
「どうして謝るの?」
「…あ、…ごめん、」
「いいよ、謝らなくて。彼ね、私の彼氏なの。彼氏って、言っていいのか分かんないけど。私の好きな人」
「…お金は、」
「うん…それはね、大嶋さんの想像通りだよ。お金で引き止めてるの。彼のこと。たぶん、彼が会ってた女の人は、彼の好きな人だと思う。本命って言うの?それ。」
「辛く、ないの?」
「うーん、辛くはないかな。彼のこと好きだし。たった2万や3万で彼は私を好きでいてくれるんだもん。安いもんだよ」
みなみちゃんは、笑った
私はどうすればいいのか分からずに
ただ下を向いていた
「大嶋さん、気にしてくれてありがとね」
「美穂で、いいから…」
「じゃあ美穂、教室戻ろうか?」
「うん」
私はみなみちゃんの後ろを黙ってついていった
教室に近づくにつれ
みんなの声が聞こえてくる
それは笑い声ばかりで
私は何故かとても泣きくなってきた
「あの…!」
「どうしたの?」
みなみちゃんがドアに手をかけたとき
私はそれを遮った
「と、…友達に、なってくれる?」
「何言ってんの?私達、友達じゃん!」
私はみなみちゃんの笑顔が
とても嬉しかった
みなみちゃんは優しい
こんな私を、友達だと言ってくれる
こんな私に、たくさん、たくさん、笑ってくれる
私はみなみちゃんに憧れてる
あんな人間になれたらいいな、って
ずっと思ってた
でもこの気持ちは、本当に憧れだけなのかな?って
最近、思ってた
でも今日、やっと分かった
私はみなみちゃんが好き
恋とか、そういうんじゃないけど
私はみなみちゃんが、凄く好き
それは憧れだけじゃなくて
とても、恋心に似てるのかもしれない
「みなみー、何してたの?」
「ちょっとね」
「あの子、大嶋美穂だっけ?私あんまり話したことないけど。みなみ、友達なの?」
「うん、まあね」
みなみちゃんたちは、それ以上私の話はしなかった
私は、いつか、あの子達みたいに
みなみちゃんと普通にお弁当を食べたり
休み時間に他愛もない話をしたり
一緒に教室を移動したり
出来る日が来るのかな
「美穂ー?お昼食べたの?」
「え、ううん、まだだよ」
「私達、体育館でバレーするから、あとで販売機でりんごジュース買ってきてくれない?」
「あー…うん、分かった」
「じゃ、よろしくね」
「……ねえ!」
心達は立ち止まって私のほうを振り返った
「なに?」
みなみちゃん達も見ていた
「……あのさ…心は、私のこと、…友達だと、思ってくれてる?」
「は?なに言ってんの?いきなり」
「心ー、もういいじゃん。行こ」
心達は教室を出た
「まっ…」
「待って、心」
「みなみちゃん…」
みなみちゃんは廊下に出て、心の腕をつかんだ
「みなみ?」
「美穂、聞いてんじゃん。答えくらい、言ってあげてもいいでしょ?」
「……クラスメイト、かな」
クラスメイト
その言葉が、妙に引っかかった
それは、友達?
心たちは何食わぬ顔でまた歩き出した
「ごめんね、割り込んじゃって」
「…ありがとう」
「いいえ」
みなみちゃんはまた、席についた
「みなみは優しいよねー」
「優しくなんてないよ」
みなみちゃんはそのまま教室を出た
私はみなみちゃんにもう一度、ちゃんとお礼が言いたくて
小走りに後を追った
「みなみちゃ、」
大きな声が出せなくて
私はみなみちゃんの腕をつかんだ
「みなみちゃん、さっきはどうもありがとう」
「いいよ、そんなの」
「でも、ちゃんとお礼、言いたくて…引き止めちゃってごめんね」
「言いたいことは、はっきり言ったらいいんだよ。聞いていいのかわかんないけど、美穂は心達のこと、友達だと思ってる?」
「…………思いたい…思いたかった」
「…あのね、美穂、」
みなみちゃんが何か言いかけたとき
みなみちゃんの携帯に電話がかかってきた
「もしもし?」
小さく電話の向こうの人の声が聞こえてくる
何を言っているかは全く分からなかったけど
「うん、今から行くから。え?…うん、分かった……じゃあね」
「引き止めてごめんね」
「…美穂……私今日、振られちゃうかも」
「えっ…?」
「今の電話、彼氏からだったの。大事な話があるからって。まあ薄々気づいてたんだけどね」
「…その彼氏って、……」
「うん」
みなみちゃんは携帯の画面を私のほうに向けた
画面には微笑んでいるみなみちゃんと
この前みた、男の人が居た
「美穂は一度見たことあるよね」
私は頷いた
「私ね、彼のこと本気で好きなの」
私は再び頷いた
「絶対に離れたくないの…そのためには、お金しかないんだ」
「でも……それじゃあ、みなみちゃんが…っ」
「美穂…お願いがあるんだけど、聞いてくれる?」
「…うん」
「一緒に、来て欲しいの」
私はみなみちゃんと一緒に
みなみちゃんの彼氏に会いに行った
「みなみ」
「…隆志……話って、」
私は影から、こっそりと2人の様子をみていた
「別れよう」
それは、予想していたよりも、ずっと、ずっと
あっさりしていた
そして、
ずっとずっと、心が痛んだ
「…うん……好きな子が、いるんでしょ?」
「ああ、ごめんな。じゃあ」
「隆志っ…私、あんたのこと、本気で好きだったんだからね」
「…じゃあな」
私は、じっとして居られなかった
「ちょっと待ってよ!」
「…美穂……」
「誰だよお前」
「みなみちゃんは、本気であんたが好きだって言ってんだよ!?どうして、そんなに冷たいの?もっと…人の気持ち、考えないと……そんな、あっさり、別れるとか…っあんたはいいかもしれないけど、みなみちゃんの気持ちはどうなるの?あんたが去った後も、ずっと、一人で、もう居ないあんたを想ってしまうみなみちゃんの気持ちは…っ行き場のない気持ちは…っ」
「何だよお前。部外者は口出すなよな」
「美穂、もういいよ」
「…あんたなんてっ…みなみちゃんの優しさ伝わらない人間なんて…っ大嫌い!」
「…美穂……」
そのまま男は去っていった
「美穂ありがとね。スッキリした。だって美穂、私の言いたい事全部言っちゃうんだもん」
みなみちゃんは声を上げて笑った
そして、泣いた
「…屋上、行こう?気持ちいいよ」
私達は学校へ戻って、屋上へ行った
「風、強いね」
私達はしっかり、手をつないでいた
「みなみちゃん…私、みなみちゃんが好き」
「へへっ…ありがとう。私も美穂、好きだよ」
「ずっと憧れてたの。私と、友達になってくれる?」
「馬鹿。私達、親友じゃん」
私達は笑った
風を思い切り浴びながら、
でもそんなことはまったく気にせず
2人、傷を癒しあうように
「美穂ー!リンゴジュースは!?どうして買って来なかったわけ?喉カラカラなんだけど」
「…私はっ……心の召使じゃないよ」
心は呆然としていた
「美穂、私達と友達じゃなくなってもいいの?」
「…別に、構わないよ。そもそも私達、はじめから、只のクラスメイト…でしょ?」
「美穂?あんた、」
「ばいばい、心」
私は走った
全力で走って、屋上へ行った
「みなみちゃん…っ」
「よく、やったね」
私達は笑った
リ セ ッ ト 完 了
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