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親友死体 {小説
私は泣きながら
私とさよならをした
精神異常者と罵られることに快感を覚えて
私は今までに
どれだけのおかしなことを仕出かしてきただろう
ごめんなさい、私、自分が見えなくなってたの
中学生という
人生の中で一番輝いていなければならない時期に
私は何をしていたのかというと
毎日学校へ通うわけでもなく
家に引きこもるわけでもなく
ただ、ずっと、あの場所に足を運んでいた
私のたった一人の親友がいる
あの場所へ
「紗江?」
あまりに静かだったためか、
自分の声がやたら大きく聞こえて
どきっとした
「紗江、居るの?」
まだ小学生だった私は
背伸びをして少し高いヒールを履いて
そのヒールがコツコツと音を鳴らすたびに
息を呑んだ
「紗江…、居たら返事してよ」
私はいつでも寂しかった
親は共働きで、兄弟も居なくて、いつも一人だったような気がする
そんな私に唯一、たった一人だけ家族のような存在が居た
それが紗江だった
幼稚園の頃からずっと一緒で
私達はお互いをとても信頼していたし
お互いをとても好きだった
とても暑い夏の日
私は、紗江を失った
「………紗江…?」
私の目の前に、紗江と見知らぬ男の人が出てきた
その男の人は紗江の首にナイフを当てて
ニヤニヤ笑っていた
「お嬢ちゃん、この子の友達か?」
「…はい」
「この子を助けたいのか?」
「………はい」
声がだんだんと小さくなってゆくのが自分でもわかった
恐怖で足が震えていた
「条件がある」
蝉がみんみんと鳴いていた
その蝉にまでもすがりつきたいと思うくらい
私は、怖かった
「この子と引き換えにお前がおじさんと死ぬ」
「…そんなの、」
「嫌か?死にたくないか?じゃあこいつを殺すまでだ。二つに一つ。お前が死ぬか、この子が死ぬか」
憧れていたヒーローが助けに来てくれるだなんて
そんなこと、少しも思わなかったけれど
小学生だった私が頼れるものといったら
そんな、空想の世界のヒーローだけだった
「さあどうする?お前が死にたくないのなら、こいつを殺せば済む話だ。逃げてもいいんだよ?お嬢ちゃんが逃げたら、その時点でこいつの命はないけどな」
二つに一つ
大好きな、大切な、紗江の命をとるか
自分の命をとるか
そんなこと、考えなくても答えは出ていた
私は死にたくない
そんなの、誰でも自然に思うことだ
私は絶対に死にたくない
「…おじさん、お願い……やめて。やめて…そんなこと」
神様、もし居るのなら
私達を助けてください
これからどんなことがあっても私は悪いことはしません
勉強もたくさんして、いいこともたくさんします
お母さんやお父さんが仕事で遅くなるときも
もう我慢する
お小遣いだっていらない
だから、神様、お願いです たすけて
「お嬢ちゃん、名前はなんていうんだ」
「…真美、です」
「真美ちゃんは、借金という言葉を知ってるか?暴力団を知ってるか?離婚や、裏切り、そして、自殺という言葉を知ってるか?おじさんはな、誰も経験しないような、辛いことをたくさん経験した。一人くらい、おじさんについてきてくれてもいいだろう?おじさん、何も悪いことはしていない。皆と同じように、ただ、普通に暮らせればそれでよかったんだ。その普通の幸せまでも奪った神を俺は恨む。平凡で普通の人生さえも奪った神をな。俺は死ぬ!ただ一人で死ぬのは嫌だ。誰か、俺と同じ運命を歩む奴が一人くらい居たっていいんじゃないのか?同じ人間なんだろ?平等なんだろ!?よく覚えてろガキ。人生、そんな甘いもんじゃねーんだよ。ただ生きる、それすら出来ねえ奴が居るんだよ!じゃあな」
そのおじさんは紗江の首にナイフをつきさした
紗江は血だらけになった
おじさんはそのナイフで自分のお腹をさした
そのまま地面に倒れた
二人の血が私の足元に流れてくる
紗江の目は私に語りかけていた
ユルサナイ ユルサナイ ゼッタイニ ユルサナイカラネ
ねえ紗江、私は死んだも同然よ
でも紗江とは会えない
何でだろう?
私、やっぱり、この場所で
自殺という道を選ぶべきなの?
でもね、紗江、私やっぱり
大好きな紗江を殺したあの男と同じになんてなりたくないの
精神異常者で
こんな馬鹿な私にも、分かることがあるの
あいつと一緒のことをすることで
あいつと同じになってしまう気がするの
ねえ紗江
どうしたら許してくれる?
いつになったら許してくれる?
…違う、違うね
違うよね、紗江
私はただ一人で思い込んでるだけ
許してほしいだなんて思っちゃいけないんだよね
ずっと恨んで
紗江が楽になるなら、私を使って
私達、友達だもんね、親友だもんね、家族だもんね
ずっと一緒だもんね
「真美、またこんな所に居た」
「朝子…何しに来たの?」
「真美を迎えに来たにきまってるでしょ?早く学校行こうよ」
朝子は小学生の頃よく遊んでいた友達だ
私と、紗江と、朝子と、3人でよく遊んだ
そんな私達は今中学3年生
だけど朝子は知らない
紗江の真実を
朝子は何も知らない
「真美…いつになったら学校来てくれるの?もうすぐ高校生なんだよ?受験もあるし、中学校生活はあと1年しかないんだよ?いつまで過去に拘ってるつもりなの?」
「私は、罪を償わなければならないの」
「一生ここに居ることで、真美は罪を償えるの?」
「それは分からない。だけど離れたくない。ずっと一緒に居るって決めたから」
「もう紗江は居ないんだよ」
朝子の言葉なんて、私に届いているはずもなかった
私は過去に生きている
私は過去を生きている
「じゃあ私もう行くね。明日も来るから」
私は地面に寝転んだ
ああ、紗江が居る
紗江の声が聞こえる
ユルサナイカラ ゼッタイ ユルサナイカラ
私はたまに
今、自分がここに存在していることを疑う
あの時私は、どちらかを選択したのではなく
どちらも、選択したのではないか
そして私たちは一緒に、今でも一緒に、どこかで
ずっと永遠に生きているんじゃないか
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