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夢(小説)
でも、心のどこかで、そんな夢叶いっこない、とわかっていた。そんな私の夢が、現実になるとは、本当に、夢のような話。
私は、浜野ケイ。売り出し中のアイドル。アイドルって言っても、まだ子供なんだけど・・。
「ケイちゃん、早く!」
「はーい、ちょっと待って。」
「学校遅れるよ」
「はーい、」
「行くよ」
「お母さん、いってきます!」
「はい、いってらっしゃい」
私はアイドルなんだけど、まだ中学生。
学校にも行かなくちゃいけないし、結構大変で忙しい毎日をおくっています。
だから毎朝の通学は、マネージャーの松田さんに送り迎えしてもらってます。
「いつもありがとね、松田さん」
「いえいえ」
松田さんは、私の家に住んでいる。母が、居た方が楽だから、と。
「ついたよ、ケイちゃん」
「ありがと、じゃあ、いってきます!」
「いってらっしゃい」
「ケイちゃーん!おはよッ。」
「おはよ、真美!」
真美。真美は、私の親友。
「今日もお仕事?」
「うん」
「そっかー、遊べないね・・」
「ごめんね」
「ううん、お仕事頑張ってね」
「ありがと」
そう。私は、売り出し中のため、仕事が忙しく、遊べるのはごくたまに。
「あの、スミマセン、サイン下さい」
「えっ、あぁ、いいよ」
「あの、先輩、頑張ってください!」
「ありがと・・はい」
「ありがとうございました」
「ケイは優しいね」
「仕方ないよー、こればっかりは」
「最近多いよね、1年たちがサイン求めてくるの」
「だねー」
「同じ学校なのにね」
「うん・・」
私も、学校で居る時ぐらい、ごく普通の中学生をしたい。でも、ファンが減るとうのは、芸能人にとって辛い事である。
「でも、友達としては嬉しいよ、ケイが芸能人だって事。」
「そう?」
「うん、大物になってね!」
「頑張ります!」
「応援してるよー、ケイちゃん!」
「ありがとー、真美ちゃん!」
「またベタベタしちゃって、オマエらは」
「あー、加藤、おはよ」
「おはよ」
「加藤も今のうちに見といた方がいいよ!大物になるからね、ケイは」
「まぁ、せいぜい頑張れや。」
ガラ
「おはよー!」
「おはよ」
私のクラスは朝からにぎやかで、楽しい。
「あっ、あの・・浜野さん!」
「ん?おはよ・・」
「あの・・サイン下さい。」
「サイン・・うん、いいよ。」
「じゃあ、コレに・・」
「あっ、写真集。買ってくれたの?」
「はい、ファンですから。」
「ファン・・、ありがと。」
「同じクラスなのに、ファンって・・どうなわけ?」
「でも僕、本当に大ファンなんです」
「はい、書けましたよ」
「ありがとう、じゃあ」
「何ー、同じクラスなのにねぇ、ケイちゃん。」
「うん、写真集まで買ってくれて、ちょっと驚いたかな・・」
「あいつ、ヤバイよー。」
「ヤバイ?」
「アイドルオタク系?」
「まさかー」
「有り得ない事もないよ、気をつけてね、ケイちゃん。」
「うん」
同じクラスに、ファンがいるなんて・・ちょっとやりづらいかなぁ。
放課後
キーンコーンカーンコーン
「ちょっといい、浜野さん」
「え、いいけど・・」
「あのさ、芸能人だかなんだか知らないけど、調子乗ってんじゃないわよ。」
「何言ってるの・・?」
「サインとか書いちゃって、生意気なのよね。」
「頼まれたら仕方ないじゃない、あなた達には迷惑かけてないでしょ?」
「目障りなんだよね、あんた。」
「目障り・・・」
「ちょっと、何ケイちゃんに文句つけてんのよ。」
「何、あんたには関係ないでしょ。」
「ケイちゃんが芸能人だからって、何?」
「真美、いいよ。」
「よくないよ、こいつらには何も迷惑かけてないじゃない。」
「それは、そうだけど・・」
「目障りなの。学校で芸能人ぶるの、やめてよ」
「あなた達には迷惑かけてないんだし、関わらないから、いいじゃない。」
「関わらない?じゃあ学校やめて」
「ちょっと、あんた何言ってんの?」
「真美、」
「ウザイの、目障りなの、それだけだから。じゃ」
「待ちなさいよ」
「真美っ、」
「ケイちゃん、あんなの気にしちゃ駄目よ。」
「うん、ごめんね・・」
「ケイちゃんが誤る必要なんてないわよ」
「うん」
仕事の事でからかわれたり、良くない目で見られたりするのは前から少しはあった。でも、どうして芸能界に足を踏み入れてるから、目障りなのかが理解できない。理解したくもない。
「・・私、帰るね」
「うん、じゃあまた明日ね」
「バイバイ」
「バイバイ」
私は真美に手を振り、教室を後にした。
「ケイちゃーん、どうしたの?遅かったね。」
「ゴメン、間に合う?」
「全然大丈夫」
「よかった・・」
「どうしたの、元気ないね。」
「そう?普通だよ。」
「それなら、いいんだけど。」
「今日はCM?」
「うん、この前言ってた、アイスの」
「私、食べ物のCM多い気がするんだけど・・」
「そうだね。その後は雑誌の取材が入ってるよ。」
「忙しー」
「それがいいんだよ」
「だね」
「よろしくお願いしまーす」
スタジオは、カメラや照明がたくさん。
「はい、じゃ、いきまーす」
今回のCMは、私がアイスを食べながら砂浜から海を眺める・・というモノ。
「ケイちゃーん、もっと美味しそうに食べて。」
「はーい、スミマセン」
これでアイス何個目よ・・。
「はい、いいよ。」
「ありがとうございました」
「お疲れ様」
「ケイちゃん、急いで」
「はい」
「次は、中学生向けの雑誌の取材と、表紙」
「表紙?」
「ケイちゃん、表紙に出るんだよ。」
「へぇー、いいね」
「結構人気な雑誌だから、ケイちゃん今から売れるよ、きっと。」
「ハハー」
「はい、笑ってー」
カシャ カシャ
ライトがまぶしい・・。
「いいよ、いいよ」
「はい、OKでーす」
「ありがとうございました」
「ケイちゃん、次取材。」
「今、大人気のケイちゃんに質問です」
「はい!どんと来ーい」
・
・
・
そして、順調に私への質問は続いた。
「最後の質問です、芸能界に入っている事で、辛かった事、悲しかった事はありますか?」
「・・・ありま、す。」
「えっ、そこ詳しく、」
「スミマセン、もう時間が」
「松田さん?」
「ケイちゃん、帰るよ。」
「ありがとうございましたー」
「お疲れ様でーす」
雑誌などの質問は、時に思い出したくない事まで思い出させる。
「ケイちゃん、明日は2時からドラマの撮影が入ってるから、学校早退して、早く帰って来てね。」
「うん、わかった。」
また明日も、早退なんてしたら、芸能人だからと、文句を言われてしまうのだろうか?
「ケイちゃん、元気ないね?」
「そう?そんなつもりないケド・・」
「元気でるでるドリンク飲む?」
「なにそれ、オヤジくさー」
「なっ、前ケイちゃんが飲んでたからでしょ?!」
「そーだっけー?」
「何を、」
「ハハッ」
私の笑顔はまだ少し、ぎこちなくて・・・
そして次の日。
嫌でも、朝はやってきてしまう。
「ねぇお母さん、今日早退するぐらいなら学校休みたい」
「勉強遅れるから行ってきなさい」
「どうしても?」
「さっさと行くッ!」
「はーい」
「松田さん、今日は歩いて行くよ」
「えっ、どうして?」
「そんな気分」
「そう、気をつけて・・」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
そんな気分でもなんでもない。ただ、また芸能人だからと冷たい目で見られるのが嫌なだけ。少しでも、普通の中学生に近づきたいだけ。
「ケイちゃん?」
「あっ、真美、おはよー」
「どしたの、今日は」
「うん、歩きたい気分なの」
「・・昨日の事、気にしてる?」
「えっ、何?昨日のコトって。」
「顔に出てるよ、親友を騙そうなんて、10年早いっ!」
真美には叶わないなぁ・・
「うん、実はサ、ちょっとね・・」
「気にしなくてもいいじゃない、あんなヤツ。」
「そうなんだけど・・ね。」
「同じクラスに芸能人がいるって言うのは、すごく嬉しいわ。否、むしろ大歓迎よ!」
「うん、ありがと」
「私が部活を頑張ってるのと同じよ?仕事を、頑張る事は。レベルが違いすぎるけど、そんな甘いモノじゃないけど、中学生なんだし、気楽に行こうよ、ね?」
「真美・・」
「ケイちゃん、ファイト!」
「元気出てきた!」
「うん、ソレでこそケイちゃん!」
「・・走りたい」
「走る?」
「走るッ!」
「だーー」
「あっ、待って!ケイー」
ドンッ
「きゃ」
「ケイちゃん、大丈夫?!」
「ごめんなひゃい・・」
いひゃい、舌噛んだ・・・・
「ごめん、大丈夫?」
「はい、全然平気!舌カ噛んだけど・・」
「ハハッ、なんかあんた、おもしれー」
「面白い・・?」
「ケイちゃん、無事?」
「無事」
「ケイ?もしかして、浜野ケイ?」
「浜野ケイでーす、でもどうして知ってるの?」
「知ってるよ、あんた、芸能人だろ?」
「一応・・」
「スゲー、俺、芸能人とぶつかったよ!」
「ケイちゃん、遅刻するよ」
「いけないっ!じゃ、サヨナラ!」
「あっ、」
キーンコーンカーンコーン
「ケイちゃん、カバン持ってどこ行くの?」
「今日ね、仕事で早退なの」
「そうなの、頑張ってね!」
「うん。また明日ね」
「仕事で学校サボるんだー」
「えっ、」
「仕事と学校、どっちが大切なんだよ、って感じ。」
「ちょっと、ソレどういう意味よ。」
「そのままの意味」
「森山さん、私は仕事も学校もどっちも大切にしてるつもりなの、私の頑張りだけは認めてよ。」
「頑張り?ただテレビに出るだけで、金貰っちゃってるヤツの、頑張り?」
「ただ出てるだけじゃない!あなたにはできっこないわ、私は頑張ってるの」
「熱くなっちゃって、何。」
「ケイちゃん馬鹿にすんのもいい加減にしてよね」
「日浦、オマエもうざくねぇの?こんな友達」
「ケイちゃんの事悪く言うのヤメテ」
「馬ッ鹿みたい」
「私もう行かなきゃ、おくれちゃう」
「待ちなよ、行かさないよ」
「何言ってるの?」
「仕事なんて、失敗しちゃえばいいのよ」
「ちょっと、やめなさいよ」
ガラ
「ケイちゃん?何してんの、早く・・」
「松田さん、」
「だっ誰よ」
「ケイちゃんのマネージャーさんよ、森山には関係ないでしょ」
「マネージャー・・・」
「ケイちゃん、急いで」
「はい」
「どうしたの、教室でもめてたみたいだけど?」
「ううん、なんでもないよ」
「大丈夫?」
「平気」
「今日のドラマはね、イジメラレッ子の役なんだけど、突き飛ばされたり、きつそうだね。」
「任せて」
なんでも演じてやるわ、見返すため、そしてファンの皆のため。何よりも、自分のため。
「ケイちゃーん、もっと悲しそうな表情できない?」
「はいっ、スミマセン」
「テイク3いきまーす」
頑張らなきゃ・・精一杯、やろう。
「どうして、何も言わないの、気持ち悪い。」
演技で言われても辛いやぁ・・
「どうして、私が何したって言うのよ!」
「口応えする気?」
「やめっ、」
「死んで!」
バシャーン
「ひゃっ、」
「カット!」
「ひえー、びしょびしょ・・」
「バケツで頭から水かけられるのって、結構苦しいよね」
「苦しかったー」
たとえこれがドラマだと分かっていても、いつ私がこうなってもおかしくない状態だから、演じてる子のキモチになりきれる。うん、いける。
「ケイちゃん、よかったよ」
「ありがとうございます」
「なんて言うかなぁ、こう、なりきってる感じがいいよ」
「へへー」
「ケイちゃん、大丈夫?」
「今日は疲れたー」
「明日からドラマスタートなんだって」
「そうなんだ」
「明日は仕事入ってないから、遊んで来ていいよ。」
「本当?!」
「うん」
「どうしよー、イキナリ休みとなると、何していいのか。」
でも、とても嬉しい。
久しぶりの、普通の中学生。
「ケイー!おはよ」
「おはよっ、真美!」
「どしたの、今日は元気だね。」
「今日さ、仕事ないんだ!」
「えっ、珍しいじゃん。」
「うん、だから嬉しくって」
「じゃあ、放課後寄り道決定ね。」
「もちろん!」
「どこ行こうかー」
「ねぇ」
「あの、ケイさん!」
「はいっ、」
「俺、覚えてる?」
「あっ、あの時ぶつかった」
「そう。俺、南たかしって言うんだけど、」
「うん、で?」
「なんか・・声かけちゃったけど、言う事なんてないんだ・・」
「・・でも、また会えた事だし、私たちお友達って事で!」
「え、友達?」
「うん、だから、見かけた声かけてね?」
「うん」
「じゃ、バイバイ!」
「おう」
「なんだったんだろうね」
「友達になりたかったんだよ、きっと。」
「えー、男がぁ?」
「うん」
「もしかして、ケイの事好きだったりして」
「まさか」
「有り得るよ、ぶっかって、一目ぼれ。」
「もっと可愛い子だったらわかるけど、私だよ!?」
「何言ってるの、ケイ、十分可愛いじゃん!」
「もし本当にそうだとしても、私は好きとか、そういう気持ちないもん。」
「じゃ、明日また話しかけてきたら決定よ!」
「何が?」
「ケイのこと、好きって事よ」
「なんで?」
「2日も連続で会うって事は、待ち伏せしてる可能性が高いわ。」
「まさかー、偶然だよ」
「きっと恋よ、面白くなってきたわ」
「やめてよ、真美ー」
「いいじゃない彼、顔もまぁまぁだし」
「そんな問題?」
「そんなもんよ」
「えー」
でも、悪くないかも・・。
ガラ
「おはよー」
「おはよう、浜野さん」
「森山さん・・・」
「何、その引きつった笑顔」
「何か用?」
「あなたのマネージャーさん、あなたの家に住んでるって聞いたけど、本当?」
「そうだけど・・」
「ふぅん・・」
「何?」
「別に」
「ケイ、行こっ」
「あ、うん・・」
森山さん、一体何なの・・?
「ねぇ、森山、マネージャーとか言ってたよね」
「うん」
「何か関わりがあるの?森山と、ケイのマネージャーさん」
「そんな話、聞いた事ないケド」
「昨日、マネージャーさんが教室までケイの事迎えにきたでしょ、」
「うん」
「あの時、森山の様子、おかしくなかった?」
「おかしい?どういうふうに」
「何だか、変って言うか」
「んー、なんだろうね」
「ケイちゃん、気にならないの?」
「うーん、得には・・」
「ケイちゃんが気にならないなら、いいけど・・」
「うん」
気にならない、わけがない。松田さんと森山、一体どういう関係?知り合い?何なのー。
「ケイ?ケイさーん」
「えっ、あっ、何?」
「おはよう」
「加藤、おはよ・・」
「何ボォっとしてんの?」
「別に」
「また森山に何か言われてたみたいだけど、何かあったら俺に言えよ。」
「・・うん、ありがと」
「あれれー、」
「わっ、真美・・ビックリした」
「加藤、ケイちゃんの事好きなんじゃないー?」
「バッ、何言ってんだよ」
「その慌てっぷり、ますます怪しいですね、加藤さん」
「やめろ」
「真美、そんな事あるわけないでしょ」
「そうだよ、日浦」
「えー、つまんないのー」
「つまんなくねぇよ」
「でも、もし加藤がケイちゃんを好きでも、私からケイちゃんを取れるかなー?」
「日浦から?」
「そう、渡さないよ、ケイは」
「だいたい俺は、もっと肉付きのいい子がいいしなー」
「何よ、ソレ」
「浜野は細すぎ、やせすぎ。」
「ケイちゃんの悪口言うやつは私が許さないわー」
「悪口じゃねぇっつうの」
「真美、私は十分肉付きがいいわ!」
「どこが?!」
「ヒドー」
「ハハッ」
「笑うなー」
そんなこんなで放課後・・・
「ケイちゃん!」
「真美ちゃん!」
「放課後だー!」
「っとその前に、森山の正体がわかったのよ」
「正体?」
「あいつ、小学校の時に一度芸能界に入ってるわ」
「嘘、どういう事?!」
「何かのオーディションで受かって、ドラマ出てるの、ちょい役だけど」
「嘘ー」
「本当よ、ほら、その時の写真」
「うわぁ・・私、このドラマ知ってるかも」
「それよりほら、ココ」
「松田さん・・?」
「そう、ケイちゃんのマネージャーさんが写ってる」
「という事は・・」
「やっぱり、森山とマネージャーさんはかかわりがあったって事よ」
「待って、じゃあこの後森山は芸能界をやめたって事?」
「そうなるんじゃない?だから、ケイちゃんに冷たくあたる」
「・・・つじつまがあう」
「そういう事だったのね・・」
「だから松田さんを見た時、驚いてた・・。」
「うん」
「でも、どうして芸能界やめたんだろ?」
「売れなくなったんじゃない、厳しい世界だし」
「・・へぇ、そうだったんだ」
「ケイ、何かあるのかな?松田さんと、森山」
「ないでしょー」
「気になる、私もう少し調べるわ」
「待って、真美、こんな情報、どこから?」
「あら、どうにでもなるわよ?森山の小学校時代の友達とか・・」
「すごいね・・」
「探偵にでもなれるかな」
「なれそうな勢い・・・」
「だから、ケイも松田さんに聞いといてね、いろいろ」
「わかった」
「じゃ、遊びに行きますか?」
「うん!」
その後、私たちはいっぱい遊んで、話したけど、どれも記憶のすみっこ・・森山の事、松田さんの事の印象が強すぎて、そればかり気にしていた。
「ただいま!」
「おかえりなさい、ケイ」
「松田さん、いる?」
「おかえり、ケイちゃん」
「松田さん、ちょっと来て!」
ガチャ
「どうしたの、ケイちゃん?」
「松田さん、森山って子知ってる?」
「森山・・」
「知ってるわよね、この写真見て」
「僕・・だね」
「この子、森山」
「うん」
「何があったのか、教えてほしいな・・」
「何もないよ、昔この子のマネージャーをしただけ」
「本当にそれだけ?」
「そうだけど、この子がどうかした?」
「こいつ、今私と同じクラス」
「へぇ、そうなんだ」
「私にすごく冷たく当たるわ、芸能界の事も、馬鹿にする」
「え・・」
「どんなやめ方したの、森山は」
「・・・・」
「お願い、教えて。森山と分かり合えるチャンスかもしれないの!」
「分かり合いたいの?ケイちゃんは・・」
「どうしてあれほど芸能界を嫌うのか、知りたいの」
「・・・・分かった、話す。黙って聞いてて」
「はい・・」
「僕は、あの子のマネージャーだった。この写真のドラマがあの子の最初で最後のドラマ。あの時、監督はひどく彼女をしかった。泣いて、泣いて、もうやめるとずっと言ってたんだ」
「うん」
「彼女は、帰りの車の中で、僕の事が好きだと言ってくれた。小さいなりに、僕を本気で好きだと思っていたらしい・・」
「本気で・・」
「僕は、あの子に僕も好きだよ、と言った。それを本気だと思い込んだんだ、彼女」
「うん」
「僕には付き合ってる人がいたんだけど、そんなある日、その付き合ってる女と僕が手をつないで歩いてるところをあの子は目撃した」
「それで、ショックで?」
「そう、やめた、芸能界を」
そうか。だからあの時、森山は松田さんを見て驚いた。もしかして、まだ好きなのか?松田さんの事を・・・。
「僕は、責任を感じてるんだ、まだ小さいあの子のキモチを、考えればよかった。」
「ううん、松田さんは悪くないよ!」
「ケイちゃん、今の話、忘れてね」
「・・・うん」
「じゃあ」
ガチャ
そんな過去があったんだ・・・。
次の日
「ケイちゃーん!」
「真美、おはよ」
「どう、何か分かった?」
「うん」
私は真美に昨日松田さんが話してくれたコトを全て話した。
「そうだったんだ・・」
「うん」
「でも、以外よね。森山が芸能人・・」
「うん」
「ケイちゃんの事、否定するのはうらやましいからなんだろうね」
「えっ、」
「森山は、芸能界に残りたかったんじゃない?だから、今売れてるケイちゃんが憎い。その上、マネージャーさんが松田さんだから・・」
「だから、私に冷たく?」
「そう」
「そんな・・私、関係ないのに」
「八つ当たりよ」
「・・森山に、ちゃんと話がしたい」
「えっ、あんなヤツと何はなすの?」
「私に冷たく当たるのは、間違ってるってコトと、松田さんと話さなきゃ駄目ってコト、伝えたい」
「松田さんの誤解もとかなきゃいけないもんね・・」
「うん」
「今日、話してみよっか。」
「うん」
「私は、いない方がいい?」
「えっ、」
「ちゃんと話したいなら、2人きりの方がいいでしょ?あいつも、そんな話の時にまでケイちゃんにヒドイ事言わないでしょうし・・」
「真美・・」
「心配なのよね、ケイが傷つかないか」
「真美・・ありがとう」
「ケイ、何かあったらいつでも相談してね。」
「うん」
キーンコーンカーンコーン
「ケイ、」
「行ってくるね、真美」
「うん」
私は少し緊張しながらも、しっかり覚悟を決め、森山の席へと向かう。
「森山さん、ちょっといい?」
「何か?1人で、しかも私の所に来るなんて、珍しい」
「ちょっと話があるの、時間はとらせない、ちょっと来てくれる」
「何よ・・」
私たちは人気のない、廊下へ来た。
「何?」
「あのさ・・私のマネージャーの松田さんの事なんだけど」
「なによ・・」
「誤解してるよ、松田さん。自分のせいで森山さんが芸能界やめたって」
「な、何言ってるの?」
「知ってるの、聞いちゃったの。森山さんが芸能界にいた事も、全て」
「・・・誤解じゃないわ、その話」
「えっ」
「私はマネージャーが嫌になって、芸能界も嫌になったからやめたの。全ての責任があるわけじゃないけど、あのマネージャーにも少しは責任はあるわ」
「でも、松田さんは全ての責任が自分にあるとずっと気にしているの、そうじゃないって事、伝えてあげてよ」
「どうして・・私が」
「好きなんでしょ、松田さんの事」
「馬鹿な事言わないでよ」
「好きってキモチ、隠さなくてもいいじゃない。本当の事、言えばいいじゃない。」
「今更言えるわけないでしょ!」
びくっ
私は森山さんの大声に驚いて言葉がでなかった。
「・・言える事なら、もうとっくに言ってるわよ」
「えっ」
「私だって、謝らなきゃって思ってたわよ。松田さん、悪くないから・・」
「じゃあ、どうして」
「今更のこのこあの人の前に現れるわけにもいかないじゃない。第一、あの人、私の事見ても気付きさえしなかった・・」
「・・・まだ間に合う、今日、一緒に来て」
「・・あなたの家に?」
「そう」
「嫌よ、そんなの・・」
「いつまでも逃げるわけにはいかないでしょ、いつかは、ちゃんとしなきゃって、思ってたんでしょ?」
「・・・・わかったわ」
「じゃあ、放課後」
私はその場を後にした。
「ケイちゃーん!」
「真美・・」
「大丈夫だった?」
「うん」
「よかった」
「今日ね、家で松田さんと会わせる事になったの」
「えっ?!」
「大丈夫、心配ない。」
「うん」
そして、時間は過ぎ、放課後。
「森山さん、行こう?」
森山は、何も言わず立った。
「何してんの、早く行くわよ」
「うん」
「ケイちゃーん、また明日ね!」
「うん、バイバイ!」
真美に手をふり、教室を出た。
「ねぇ、森山さんはどうして私に冷たくあたるの?」
「・・あなたが嫌いだからよ」
「私は仲良くしたいのになー」
「絶対ごめんよ」
「どうして?私が芸能人だから?」
「そんな事、関係ないわ」
「嘘。私が芸能界にいるからでしょ?森山さんは、芸能界をやめた、でも、私は今芸能人。それが、憎いんじゃないの?」
森山さんは答えなかった。図星だから?
「森山さん、私は仲良くしたいのに・・」
「無理よ、今更。だいたい私達がベタベタしてても、変じゃない?」
「今更って何?関係ないよ、無理じゃないよ、変じゃないよ。」
「・・あなたといると、疲れそう」
「楽しい事は、保障する」
「言ってなさい」
森山さんの横顔は、どこかいつもと違って見えた。
「着いた、アレが私の家よ」
「・・ええ」
「行く?」
森山さんは頷いた。
私には森山さんの不安と緊張が伝わってきた。
「ドア、開けるよ、準備はいい?」
「・・・・さっさと開けて」
少しの間の中で、森山さんは決心したのであろう。
ガチャ
「ただいま」
「おかえりなさい、あら友達?」
「うん、ねぇ松田さんいる?」
「部屋にいるんじゃないかしら」
「ありがと」
「森山さん、上がって」
森山さんは私に続いて家へあがり、母におじゃましますと頭を下げた。
私たちは2回の松田さんの部屋へと向かった。
コンコン
「はーい」
松田さんの返事が聞こえると同時に、森山さんは一歩後ろへ下がった。
「あっ、ケイちゃん、おかえり」
「ただいま。ねぇ、今日は友達を連れてきてるの」
「うん・・・?」
「森山さんよ」
「え、」
「久しぶりね、松田くん」
「香奈ちゃん・・久しぶり」
「・・あ、そっか。森山さんの名前は香奈だったね、呼んだことなかったから、ビックリしたよ。」
私が話しても、2人は気まずそうに黙っているだけ。
「あの、私邪魔かな?」
「そんな事ないよ、居てくれていいから。」
「あ、そう・・?」
どうしよう。どんどん気まずくなっていく。
「あのさ、何か話さないの?」
「えっ、うん・・」
「こんなとこに突っ立ってても意味ないから、部屋入ろうよ」
「・・そうだね」
「松田さんの部屋でいい?」
「あ、うん、いいよ」
「じゃ、おじゃましまーす」
「香奈ちゃん、入りなよ」
森山さんは頷いた。この緊張感はなに、私のこの肩身のせまさ、何?
「今日はね、森山さんは誤解をときにきたのよ・・ね、森山さん?」
「・・ええ」
「さぁ、話な?」
「・・・・誤解なのよ、私が仕事をやめたのは、あなたのせいじゃないわ、松田くん。」
「・・・香奈ちゃん、」
「終わりよ、私帰るわ」
「待って、」
「何、」
いけない・・。思わず言ってしまったのはいいけど、止めた理由が思い浮かばない。
「何よ、浜野さん?」
「・・あのさ、もう帰っちゃう、の?」
「駄目?」
「いや、あのね・・こんな微妙なトコで帰っちゃったらサ、また・・変に終わっちゃうじゃない、」
「何を言いたいの?」
「だからぁ、2人がもっと分かり合えなきゃ駄目じゃない?前のように、普通に接せるように・・」
「・・・そんなの、どうすればいいのよ」
「・・香奈ちゃん、ごめんね。ずっと、香奈ちゃんを苦しめてたのは僕だ。」
「そんな、」
「そうなんだよ、ごめんね」
「誤らないでよ、私が勝手に仕事をやめたせいで、あなたが苦しむのはおかしいわ。」
「でも、」
「誤らないで、もう忘れましょ・・」
「忘れる・・・?」
「そう、何もなかった事にしましょうよ。」
「・・香奈ちゃんが、そうしたいなら・・忘れよう、お互い。」
「浜野さん、あなたも忘れるのよ、今日の事も、私たちの過去も。」
「うん、わかった。」
こうして、話は終わり、私たちは全てを忘れる事にした。全てを忘れる事で、2人はスッキリしたのかというと、私はそうじゃない気がしてしまう。でも、2人が望んだ結果に口出しは出来ない。だから、そっと見守る事しかできない。
「ケイちゃん、ごめんね、いろいろ」
「いいのよ、私の事は。それよりいいの?このままで。」
「えっ」
「2人は、忘れる事でもういいの?このままじゃ、また同じじゃないの?」
「・・香奈ちゃんが、望んだ事だし、忘れるのが1番いいみたい。」
「そんな・・」
「だから、ケイちゃんも忘れて?もう、なかった事でいいんだ。」
「・・・・うん」
でも、私はやっぱりスッキリしない。
「ケイ、ちょっといい?」
「お母さん・・」
「私の部屋にいらっしゃい」
「はい」
ガチャ
「お母さん、どうしたの?」
「ケイ、あれでいいと思う?」
「へっ?」
「あの2人よ」
「あぁ、・・駄目だと思う。」
「でしょ、あなたの力でなんとかしてやれないかしら」
「私が?!」
「そう、ケイが力を貸してあげなさい」
「出来るかなぁ・・」
「誰かの力が必要よ、あの2人は。気まずいままで終わってしまっては駄目よ。」
「私、頑張ってみる!」
「よし、それでこそケイ。頑張りなさい。」
「はいッ!」
私はどうすれば2人から気まずさをなくす事が出来るか、必死に考えた。でも、いくら考えても一つしか思い浮かばない。そう、思い切り話し合って、分かり合う。いいたい事を全て言い合う、それしかないと思う。
そして次の日。
「おはよー、ケイちゃん!」
「真美、おはよ」
「昨日、どうだった?」
「うん。まだ駄目、分かり合えてないの、あの2人」
「そっか・・難しいね」
「でね、私は少し力を貸そうと思うの」
「まだケイちゃんが何かしてあげるの?!」
「うん」
「ケイちゃん、頑張るねぇ」
「あの2人から、気まずさをなくしたいの」
「私に何か出来ることがあれば、言ってね?」
「ありがと、真美。」
真美はこうやって、優しい事いってくれるけど、私は1人で頑張ろうと思ってる。
「ケイさん、無理は駄目ですよ?」
「へっ?」
「ケイ、いつも無理しちゃうんだもん。ケイが無理して、ケイがつぶれちゃったら大変よ、心配だわ。」
「つぶれる?」
「傷ついたり、落ち込んだり」
「真美・・」
「だから、無理しないでね?」
「はい」
「よしよし、頑張れ、ケイ。」
友達とは、本当にいいものだ。励ましてくれたり、力になってくれる。
「あっ!森山さん、おはよ!」
「あっ、ちょっとケイ、」
「森山さん、おはよ」
「・・・」
「ちょっとー、森山さーん?」
「・・・朝から、元気ね。」
「うん、元気がとりえだもーん」
「何か用?」
「用って・・挨拶ぐらいしてよ、友達なんだから!」
「・・友達?」
「ん?違うの?」
「・・・友達、久しぶりに言われたわ」
「うん?」
「結局、何もないんでしょ?私行くわよ」
「今日の放課後、時間ある?」
「放課後?」
「うん」
「・・何かあるの?」
「うん」
「どんな用かしら?」
「内緒、言ったら森山さん、逃げちゃうもん」
「逃げっ、逃げるわけないでしょ?!」
「本当?・・松田さんの事なんだけど」
「・・何よ、もう話はないはずよ」
「あるよ。何の解決にもならなかったじゃない、昨日」
「なったわ。あなたも忘れるって言ったはずよ」
「だって、おかしいと思ったんだもん、気まずいままじゃ駄目だよ」
「いいのよ、もう会う事もないんだし」
「どうして、会いたくないの?」
「会いたくない・・」
「嘘、そんな事あるわけないじゃない!」
「・・どうして?」
「だって、森山さんは松田さんのことが、」
「浜野さん、いい加減にして」
「・・・・森山さぁん」
私には分からない。森山さんは強がってるだけなの?それとも、本気で・・・?
「ケイちゃん、大丈夫?」
「真美・・・」
「ケイ?」
「・・森山、強がってるのかなぁ?それとも本気で松田さんの事、嫌いになっちゃったのかなぁ?」
「ケイ・・」
「私、分からないよ」
「・・うん、難しいよね、他人の気持ちは。」
「真美、私どうすればいい?」
「・・・ケイは、あの2人から、気まずさを取り除きたいんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、それをするしかないじゃない?諦めたくないなら、頑張るしかないんじゃない?」
「そうだね、うん。その通りだよね」
「らしくないよ、ケイが諦めるなんて」
「・・・だよね」
「ケイは、諦め悪いんだから」
「えー、ちょっとそれ、ほめてんの?!」
「うん、褒めてるの」
「うん、ありがと。私、諦めません!」
「よし!」
「また落ち込んだら救ってね?」
「落ち込む気ー?」
「アハハ」
「自分で立ち直る練習をしなくちゃ」
「練習ー?」
「アハハ、そうだよ。」
そして放課後・・・・
「真美、森山さん、ちゃんと話してくれるかな?」
「ケイの頑張りが伝わればいいけど・・」
「うーん、難しい・・」
「頑張ってきなさい、ホラ」
「はいッ!」
緊張の一瞬。森山さんに話かけなきゃ・・
「もっ、森山さん」
「浜野さん・・」
「一緒に、来て?」
「嫌よ」
即答・・?
「嫌・・って、何?」
「私、もうあの人とは話すことはないの」
「ある」
「あなたが私の立場でも、話すことなんてないと言うと思うわ」
「・・せっかくのチャンスなんだよ、無駄にしちゃ駄目だよ」
「チャンス・・・」
「うん」
「じゃあ聞くわ、このチャンスにあの人との仲が前のように普通になったとして、何が変わるの?」
「えっ?」
「松田くんと、普通に話せるようになったとしても、私たちはもう関係ないのよ?松田くんが私のマネージャーになるわけでもないのに。」
「でも、やっぱり気まずいのは嫌じゃない」
「気まずくても、もう関係ないんだから、一緒じゃない。私が芸能界をやめてから今まで、会ってもないのに」
「これから会えばいいじゃない」
「会う必要がないわ、用もない」
「どうして・・どうして分かってくれないの?分からないの、本当に。このまま、こんなままでいいと思ってるの?」
「普通、芸能界をやめたアイドルと、その時のマネージャーは、その後関係なんてないものよ?」
「・・・・そんなの」
「みんなそうなの、これが普通なの」
私は何もいえなかった。何故、何も言えなくなってしまったのかなんてわからないけど、何も言う言葉がなかった。
「分かったわね、もう私に関わらないで」
「・・・森山さん、どうして」
そのまま森山さんは帰ってしまった。
「ケイ?」
「真美・・どうして、分かってくれないの」
「森山は、そういうヤツなんだよ。仕方ないよ、ケイは一生懸命やったじゃない。」
「・・でも、あの2人は、」
「ケイ、もう頑張ったじゃない、仕方ないよ」
「・・変だもん、こんなの」
「ケイ・・・」
「ごめん、今日はもう帰るね」
「元気出しなよ、ケイ」
私は黙って教室を出た。
もう、どうする事もできない自分の力なさに絶望を感じながら。
「あっ、ケイちゃん、迎えに来たよ」
「あー、松田さん」
「乗りな?」
「うん」
「どうしたの、元気ないね?」
「ううん。それより、久しぶりじゃない?迎えに来てくれたの。」
「うん、ちょっと近く来たから」
「そうなんだ・・」
「ケイちゃん?」
「んー?」
「何かあった?」
「んーん」
「・・僕らの事?」
「・・・僕ら?」
「森山さん、」
「ううん、違うよ」
「ケイちゃん・・」
松田さんに、気付かれちゃったかな?
「ねぇ、松田さんは森山さんと仲良くなりたい?」
「・・仲良くはなりたいとは思わないよ、今はケイちゃんの事だけ考えてるから」
「私の事?」
「うん、仕事の事とかね」
「・・・・私のせい」
「んっ、何?」
「何も言ってないよ」
「・・この後、雑誌の取材入ってるんだけど、どうする?」
「どうするって、やるよ?」
「そう?ケイちゃん、元気ないから・・断ってもいいんだよ?」
「ううん、やる。」
「そっか、頑張るのはいいけど、無理しちゃ駄目だよ」
「はい」
「着いたよ、用意しておいで?僕はこのまま待ってるよ」
「急がなきゃ駄目なの?」
「ううん、でも用意出来たらすぐ行くよ」
「はーい」
駄目、今は仕事に集中しなきゃ。
「ただいま」
「あらおかえり、今日は仕事でしょ?頑張ってきなさいね」
「はーい」
本当に、私の力だけじゃ、あの2人は仲良くなってくれないのか・・ずっとその事ばかり考えてしまって、仕事どころではなくなりそう。
「お母さん、いってくるね!」
「いってらっしゃい」
ガチャ
「松田さーん!」
「ケイちゃん、さぁ乗って」
「遅くなってごめんね」
「ううん、全然」
「時間大丈夫?」
「余裕だよ」
「今日は何の雑誌?」
「今人気らしいんだけど、名前なんだっけ」
「いいよ、なんでも」
「ケイちゃん、ドラマきてたけど、本当に断る?」
「うん、だって学校1週間は休まなきゃいけないんでしょ?」
「そうだね」
「それは嫌」
だって、1週間のうちに何かしなきゃ。それに、こんな中途半端な状態で、仕事に集中なんて出来ない。
「本当に断っちゃうの?」
「うん、どうして?」
「だって月9だよ、もったいないなぁ」
「うーん、そうだね」
そりゃ、やってみたい気もあるよ。でも、松田さんは私の仕事の事やらで私の事だけ考えてるって言ってた。私の事はいいから、森山さんとの仲を考えてほしい。
「ケイちゃん、もしかして、僕と香奈ちゃんの事気にして・・」
「違うよ」
「それならいいけど、もしそうなら、僕らの事はいいからね。」
「・・・うん」
何か言いたかった、でも言えなかった。
「ケイちゃん、行くよ」
「うん」
「今人気のケイちゃんに聞きまーす」
「はい」
雑誌の取材は、同じような事ばかり聞かれる。
「今、1番したい事はなんですか?」
「したい事・・」
今、1番したい事は、松田さんと森山さんの気まずさを取り除く事。
「ケイちゃーん?」
「あっ、はい。スミマセン・・」
駄目だ、集中しなきゃ。
「したい事は、やっぱ仕事ですかね・・」
「そうですかー、やっぱりバラエティーとかしてみたい?」
「はい、お笑いとか」
・
・
「ケイちゃんお疲れ」
「松田さん、この後はもう何もないんだよね?」
「うん」
「よかった、ちょっと疲れたかも」
「珍しいね、大丈夫?」
「うん」
結局仕事に集中できなかった。こんなんじゃ、どんな仕事しても迷惑がかかってしまう・・・。
ちゃんと、ちゃんとしなきゃ。しっかりしなきゃ。
「ケイちゃん、明日はCM撮影あるけど、体調大丈夫?」
「何のCM?」
「カレーの」
「この間言ってたのだね」
「うん」
「・・ちょっと寝る、着いたら起こしてね」
「うん」
「ケイちゃん、ケイちゃーん」
「・・・・ん、」
「起きて、着いたよ」
「・・もー着いたの?」
「うん」
私は大きなあくびをひとつ、車を降りた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
「お母さん、ちょっといい?」
「ええ」
ガチャ
「松田さんと森山さんの事なんだけどね、」
「どうだった?」
「森山さん、もう何も話すことはないって・・」
「そう」
「どうしよう」
「それならもう仕方ないわね、諦めなさい」
「嫌よ、それだけは嫌なの」
「やっぱり、そう言うと思ったわ」
「何とかできないかな・・」
「きっと森山さんも気まずいの、嫌だと思うわ」
「うん」
「だから、わかってくれるまで言い続けなさい、話しろ、って。いつか折れるわ」
「そんなー」
「それまで頑張れない?」
「諦めないよ」
「じゃあそれでいいじゃない」
「うん!私、絶対諦めないわ」
「あ、それと、今度のドラマ、断っちゃ駄目よ」
「えっ、どうして?」
「良い話だと思うわよ、ドラマ。やってみなさい」
「・・うん、やってみる!」
「はい、もういいわよ」
「はーい」
ガチャ
そうだよね、ここでドラマ断っちゃったら余計松田さんが誤解しちゃう。私の事でまで困らせたくないもん。
「松田さーん、私ドラマやるよ!」
「えっ?ケイちゃん、今なんて・・」
「だから、私、ドラマ出る!」
「本当?!」
「うん」
「よかったー、断るのもったいなく思ってたんだよー」
「へへへー」
「学校は休まなきゃいけないけど、頑張ろうね」
「はーい」
次の日
「真美ー、おはよ!」
「ケイ、どうしたの?元気だね。」
「うん、私ね、ドラマ決まったの」
「えー、すごいじゃない!よかったね、ケイ。」
「うん」
「頑張ってね」
「ありがと」
「いつからなの?」
「撮影?」
「うん」
「1週間後から」
「へぇー、そうなんだぁ」
「うん」
「で、森山のことは?」
「ううん、何も変わりなし。」
「そっかー」
「でも、諦めないんだ、私」
「うん」
「あのっ、浜野さん」
「へっ?私・・?」
「そうです、浜野さん・・あっ、握手して下さい!」
「・・うん、いいよ」
「あっ、ありがとうございました」
「いえいえ」
「・・では」
「待って、あなた、九条くんでしょ?同じクラスだよね!」
「そうですが・・」
「私のファンなの?」
「はい、大好きです」
「・・同じクラスの子のファンって、変じゃない?」
「えっ、そうですか?」
「だって、友達なんだもん」
「友達・・・ケイちゃんが、僕の友達・・・・・・」
「違う?」
「そんな風に思ってくれるんですか?」
「うん。だから、敬語もやめなよ」
「あ・・はい」
「私のファンでいてくれるのは、すごく嬉しいからサインもするし、握手もするけど、普通にクラスメイトとしても接してよ?」
「あ・・・そんな、駄目です。なれなれしい・・」
「なれなれしい?」
「本当に、あの、僕・・・スミマセンッ!」
「えっ、待ってよ」
「何ー、あいつ。ケイの熱狂的なファンだよね」
「うーん」
「危ないよ、アレ」
「危ない?」
「うん、あんま近づかない方がいいかも」
「えー、そんなに」
「ああいうの、ヤバイよ」
「同じクラスなのに・・」
「えーー?ケイちゃんの熱狂的なファン?!」
「え・・うん」
「気をつけなよ」
「・・・うん」
帰宅後、今朝の事を松田さんに話してみたら、やっぱり真美と同じように、気をつけなとか、危ないとか・・・。どうして?
「そういうのいるんだよねー」
「えっ?」
「だんだんエスカレートしてきて、隠し撮りとかされるよ、危ないよー」
「隠し撮りってー、ストーカーでもあるまいし・・」
「ありえるよ、人気のないとこ行っちゃ駄目だよ」
「えー、変だよー」
「そういうヤツがいるんだよ、物騒な世の中だから」
クラスメイトがファンって・・・なんだか変だよ。
普通、特別な感情なら、好きだとか、恋愛感情なんだろうけど、ソレとは少し違ってる。何故・・?
「とにかく、気をつけてね」
「私は大丈夫」
次の日
ガラ
「あっ、ケイ遅かったね」
「うん、ちょっと寝坊」
「あの、ケイさん」
「はい?」
「写真、いいですか?」
「えっ?いいよー、かして、カメラ」
「いや、違うんです。ケイさんを撮りたいんです」
「私、だけ?」
「はい」
「・・それじゃあ、一緒に写らない?」
「いや、僕が入ると絵が汚くなる」
「そんな事ないよー」
「ちょっと、ケイ、いいじゃんそんなヤツ。ほっときな」
「だって、」
「あんたも、ケイが困るような事しないで」
「・・・・すみませんでした、でも好きなんです、本当に、本気なんです」
「気持ち悪いよ、そういうの」
「真美、いいよ・・」
「すみませんでした」
「・・ケイ、あいつはかなりだね」
「かなり?」
「ヤバイ、あいつ」
「・・うん、気をつける」
やっぱり、ファンの子とは友達になれないのかな?
・・・・・・そうだ!!
あの子と直接話せばいいんだ。
分かってくれるよね、私の気持ち。
「ねぇ、九条くん?」
「ケイさん・・僕なんかに何の用でしょう?」
「あのね、九条くんが私のファンだって言ってくれるのは、すごく嬉しいんだけど、お友達なんだから、敬語とか、特別な事はしなくていいよ?普通に、クラスメイトとして接しちゃ駄目かな?」
「クラスメイト・・・」
「九条くんは友達だよ」
あれ?表情が、
「友達じゃ、駄目なんです。好きだから・・」
「私の事、好きなの?」
「大ファンです」
「・・好きなのと、ファンは違うよ。1人の男の子として私の事、好き?」
「好きです。でも、ケイさんの事好きなヤツは他にもイッパイいます」
「・・・他のファンの子たちとは違うんだよ、九条くんは・・友達なんだもん」
「友達なら、ファンじゃなくなる。僕はケイさんを見守る、一ファンでいたい」
「・・・それじゃ、寂しいよ、同じクラスの仲間なのに」
そう、私たちは仲間。共に日々を過ごす、仲間。
「あっ!ケイ、どこ行ってたのよ」
「真美、ごめん」
「何?九条と話してたの?」
「うん・・」
「じゃあ、僕はこれで」
「・・やっぱ、ファンはファンなんだね」
「ケイ、もう気にする事ないよ。ほっときなよ」
「・・うん」
「ケイはね、いろいろ気にしすぎなのよ。何て言うのかな、優しいんだよね」
「・・私は、そんなんじゃないよ」
「もう行こ?」
「・・・うん・・」
その後も九条くんとは一言も話さなかった。
ただのファン、それで終わりたくなかったのに・・。クラスの、仲間なのに。
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