スクールDayズ(小説)


その分、ストレスもたまって、嫌な事もたくさんある。
でも、誰しもがその中に少しでも、幸せと楽しさをもっているものなのである。

しかし、そんな唯一の幸せがない人も、中にはいる。
そんな人たちは、ドコの学校にも必ず1人はいる。
いわゆる、イジメラレッコだ。

そんなイジメられっ子は、毎日ひどいイジメに会いながらも、せっせと学校に通う。
辛い思いしてまで、何故?と、問いたくなる人もいるだろう。
その答えは簡単。
これはあくまで私が思うにだが、親に心配をかけたくない。イジメられてるのではないだろか?と、思われるのが嫌だからだ。
それと、1度休めば、休みぐせがついてしまい、次の日学校に行けなくなり、不登校になるのが怖いからであろう。


あ・・・
私は、イジメられているわけではありません。
ただ、助けたいと思っているだけ。



今日もまた、イジメっ子たちは陽気に登校してきた。
こんな彼女らの姿を見るのが、時々痛々しくも感じる。それと同時に、ミジメさまで感じられる。
どうしてここまで悪ぶる必要があるのか・・・
それとも本当の悪人なのだろうか・・・まだ中学生なのに。



「ねぇ、美沙」
「えっ、何?」
「今さぁ、あいつハミろーと思ってんだけど、協力してくれるよね」
「またぁ?やめときなよ」
「美沙も言われてんだよー、イロイロと」
「いろいろって?」
「そりゃあ、悪口とか」
「ふぅん」

イジメっ子は、必ず仲間をほしがる。そう、いつでも。
私はイジメた事も、イジメられた事もある。
だから、どちらの気持ちもわかってしまう。だから、どちらかの見方につく、という事は出来ない。

「美沙ぁ?聞いてんの?」
「えっ?うん」
「でさぁ、放課後呼び出すんだけど、一緒にどーよ」
「遠慮しとくよ」
「どして?」
「今日、用事あるから」
「じゃあまた改めて」
「じゃね」

呼び出し。は、彼女らの遊びの一つ。
人数が多けりゃ多いほど、いじめられっ子の恐怖は増す。
それが楽しくて、彼女らは呼び出しに参加する子を集める。
ほら、また。
あっちでも、勧誘が始まってるよ。
何が楽しくて、何が嬉しくてこんな無意味な事やってんだろ。
そう、思わない事もない。けど・・・
私もイジメてた時もあった。
その時は、やっぱり立場が上になったようでとても楽しいものなのだ。
それが、本当にいい事なのかなんて、そんなの有り得ないけど。
頑張ってるいじめられっ子の姿を見ると、心が痛む。


「あの・・・・美沙ちゃん」
「えっ、・・何?」
「ちょっと、いい?」
「うん、いいけど」

話しかけられて驚いた。
何故かって・・・
そりゃあ、いじめられっ子だから。

いじめられっ子に話しかけられると、対応に困る。
でも、無視するわけにはいかなくて・・・・・・

結局、相談を受ける事となる。


「美沙ちゃん・・・ごめんね、急に」
「いいけど」
いじめられっ子は、妙に控えめだ。
その控えめな性格が、いじめっ子の反感をかう。

「美沙ちゃんにしか、相談できなくて・・・」
「うん。どうしたの?」
どうして私?
「私ね・・・イジメられてる・・の」
「うん」
知ってるよ、そんな事。だから何?
「・・・・助けてほしいの」
「えっ・・」
助ける?いわゆる、あなたをイジメから救うの?この私が?まさか・・・そんなの、出来るわけないじゃない。
「・・・美沙ちゃんしか、・・もう頼れる人いなくて・・・」
そんなの・・・・・
私だって、いじめっ子の反感をわざわざかうような事はしたくない。
でも・・・助けてあげたい、という気持ちが・・出てきてしまう。
「・・・・悪いけど・・・」
「お願いっ」
「でも・・そんなのって、自分で解決しなくちゃ、駄目なんじゃないの?意味ないよ、またイジメられるんなら」
「でも・・・・もう、私・・・・耐えられないよ」
「しっかりしてよ・・」

頼れるのは私だけ。
私がこの子を救わないと、イジメは続くだけ・・・・

「あっ・・」
「えっ?」
「未来ちゃん、もう大丈夫よ」
「・・どうして?」
「まきは、もう未来ちゃんをイジメないと思う・・確信はもてないけど」
「でも、どうして?」
「まき、新しく嫌いな子が出来たみたいで・・・今日、呼び出すみたい。だから、未来ちゃんにはもう・・」
「本当に?」
「・・たぶん」
「もし・・・それでもまだ私に何かしてくるようなら、助けてくれる?」
「それは・・・・」
「どうして?私の事、嫌い?」
「嫌いとかじゃなくて・・・私には、そんな力ない」
「美沙ちゃん、友達だと思ってたのに・・」
「え・・」
「私の事、助けてくれないんでしょう?」
「・・ごめんね」
「美沙ちゃん・・・・・友達だと思ってたのに・・」
「未来ちゃん?」
「美沙だけは・・・友達だと信じてたのに」
ヤバイよ・・・この子。
いじめられてて、精神状態普通じゃない。
「私、もう行くね?」
兎に角早く、この場から立ち去りたい。
「美沙ちゃん、待って」
「ごめん!」
「美沙ちゃんっ」

私を何度も何度も呼ぶその声は、まずで見捨てられた子猫のようだ。
かわいそうだと思う気持ちと、巻き込まれたくないと思う気持ちが交差する。駄目だ、ワカッテル。
もし、ここで未来ちゃんの見方になれば、今度の標的は私。
イジメっ子はそういうもの。すぐに標的を変える。
そのたび、クラスの人の恐怖は増す。次は私じゃないだろうか・・・と。

本当に、勝手なものだ。
いじめっ子は、一度虐められてみるべきなのだ。
イジメられる恐怖、毎日、朝に目をさます苦痛。死ぬ事ばかり考えて、手首に傷は増える一方。
そんな地獄を、一度体験するべきだ。


私だって、体験したからこそ、イジメはもうしない。むしろ、出来ない。
いじめっ子なんて、まだ経験不足のお子チャマ。ただ自分より弱い子を探して、イチャモンつけて、楽しむだけ。ただの遊び。


「美沙」
「・・何?」
「さっき、未来に呼び出されてたみたいだけど、何話してたの?」
「別に」
「いいじゃん、教えてよ。今あたしらがあいつ嫌いなの知ってるでしょ?」
嫌いなの?知ってるよ。でも、それとどう関係あんのよ・・・。
「大した事話してないよ」
「もしかして、助けを求められたとか?」
「そうだったら何?」
「美沙を困らせたから、罰を与えなきゃ」
「まき・・また虐める気?」
「イジメじゃないよ、当然の罰」
罰・・・?じゃあ何?あなた達は、神様ですか?神様でもないくせに、偉そうな事を・・・・
「美沙も困ってんでしょ?助けとか求められて」
「私は助けもしないし、まき達と一緒に罰を与える事もしないよ」
「未来は、ずっとよって来るよ、ウザイじゃん」
「構わないから」
「ふーん・・じゃあ、何か言われたりしたら言いなよ」
「わかった」
「じゃ」

「ふぅ・・・」
いじめっ子と話すと、ドッと疲れる。
考え方も全く違うし、話をあわせるのも嫌いだし・・
だからといって、わざわざ自分の意見を出す事もしない。
もしも、反感をかうような事になれば、次は私だ。私が、ミジメなイジメラレッ子になってしまう。

いじめっ子と、いじめられっ子は正反対。同じ、人間なのに。
「人類平等」とういう言葉は、消え去ったのか?


「美沙」
「心!」
私の視線のさき。
そこには、久しぶりに会う親友、心がいた。
「久しぶりだね、何してたの?」
「別に、何もしてないよ」
「あ、わかった。また観察でしょ?」
「どうしてわかったの?」
「わかるよ、長い付き合いだもん。で、今はどんな奴らを観察してんのかなー」
「いじめっ子といじめられっ子」
「いじめ?!何でまた・・」
「何となく」
「そうだね、美沙は昔から、人の不幸を見るのが好きだったもんね」
「やだな、その言い方。心だってそうじゃない」
「まぁ、人の事はいえないけどね」
心は小1からの付き合い。
出会って、もう8年になる。
「心、最近どーしたの?」
「何が?」
「全然会いにきてもくれなかったし、むしろ会わなかった」
「ここ3日、休んでたのよ。風邪こじらせてね。」
「そうだったの?!言ってくれればお見舞いぐらい、行ったのに」
「そんな大げさな、ただの風邪よ。あっ、美沙、部活はどうなの?」
「ん?退部はしてないよ。サボリ気味だけどね」
「今日、一緒に行かない?」
「うん、いいよ」
私と心は吹奏楽部。
「じゃあ、放課後迎えにくるね」
「うんっ」
「じゃーね」
「じゃ」

久しぶりに会う親友はいいな、やっぱり。
そういえば、私、このクラスになって親友という子はいないなぁ。
まぁ、こんな荒れたクラスに、親友なんていらないけど。

「美沙、さっきの、3組の心だよね」
「まき・・・そうだけど」
「心って最近彼氏できたみたいだけど、知ってる?」
「へぇー、そうなの。知らないけど」
少し驚いたけど、それを表情には出さない。いつも冷静に。特にこんな奴らの前では。
「心の彼氏、実は私の元カレなんだよね」
その時、私の頭をよぎったのは「いじめ」
「そ、そうなの・・」
「むかつくと思わない?!別れてすぐなのに・・心も最低よね」
「・・・・」
どう対処すればいいの、こういうときは。
いつも人間観察してる腕の見せ場じゃない?ホラ、思い出すのよ。誰かが・・・こんな状況にたたされてたような・・・・
あっ!
「でさ、美沙にも協力してもらいたいの」
「・・・協力?」
「そう、簡単な事よ。心と、淳平を別れさせるだけ」
「別れっ?!そんな簡単に、・・・無理よ」
「美沙、心と親友だったわよね」
「それが・・何?」
「心を騙して」
「そんな事・・」
「出来ないの?いつも私たちを見てて、わからない?やらないと、どうなるのか」
「・・・・・・どうなる、の?」
「聞かない方がいいわ」

聞かなくても、わかってる。そんなの。
アレしかないじゃない、「いじめ」

私は、本当は迷ってはいけない。

でも、迷わないはずがないだろう。

これからの学校生活をとるか、親友をとるか。
私は、心を裏切りたくない。でも、これからの毎日も大切だ。
地獄か、天国か。
どっちが、地獄?


迷っていたって、何も始まらない。
まずは、そう。行動しなくては・・・。





「心」
「あれー、美沙。どうしたの?」
「うんー、・・最近元気?」
「ハ?!今さっき、会ったばっかじゃない」
「そうだった、ね」
「・・どうしたの?」
「いや、別に・・・」
「言いたい事って、何?」
「え?」
「顔に書いてあるよ、何か私に言いたいって。親友をごまかそうなんて、10年早いっ」

やっぱり鋭いな、親友、は。
大切なんだ、親友と言う存在は。
今までの私をよく知っていて、それでわかってくれる。
あんな、いじめっ子なんかと比べ物にならない。

そもそも、心が田村と付き合ってなければいい話だ。
噂なんてものは、しょせん嘘の塊。
誰かがでっち上げたり、大げさに言ったりした、ただの嘘。

私は親友を信じる事を決意し、きいてみた、あの事を

「ねぇ、心ってさ・・田村と付き合ってんの?」
「ん?淳平?どうして?」
え・・・・心、どうしてって。否定、してくれないの?

「否・・噂が、ね」
「噂、か。」
「どうなのっ、」
私は思わず慌ててしまった。それを心が不審に思ったらしい。
「何、あわててるの?」
「慌ててなんかないよ」
「・・付き合ってるよ」

1番聞きたくなかった言葉を、心はあっさりと言った。
その言葉を、私は受け止める事が出来なかったのだろう。少しの間、放心状態だった。

「美沙?それが、どうかしたの?」
「う、ううん。どうもしないけど・・ただ、本当なのかな、って」
私は、珍しく動揺していた。
親友をとるか、これからの学校生活をとるか、板ばさみの状況。
こんな状況を、私が好むわけがない。ただでさえ、面倒な事が大嫌いなのに。
「美沙、何かあったの?」
「別に・・」
「だって、何か・・変じゃん」
「そんな事ないってば」
「・・・まさか、淳平の事・・・・、」
「まさかっ、やめてよ。冗談・・」
「だよね・・」
「心?ホントだよ」
「うん、わかってるよ」
「・・・・・・ごめんっ!」
勢いよく誤った私に、心はかなり動揺しているようだ。
「なっ、何よ!いきなり、・・ビックリするじゃない」
「ごめん・・・ワケは、話す。ちゃんと。」
「う、うん」

「あの、さ・・・・・」
私は心に全てを打ち明けた。
私が今、どんな状況にたたされているかを。そして、もちろん心を裏切るような事は絶対にしない。ということを。

心はそれを、全て理解した上で、だんだん怒りの色が見え始めた。

「何よ・・・それ」
心が立ち上がった。それをみて、私は焦った。
「待って、心。落ち着いて!」
「どうして、私のせいで美沙が・・こんな目に会わなきゃいけないのよ!それに第一変でしょ?!淳平とまきはもう、別れたんだから・・いつまでも、何言ってんのよ。私、ちょっとまきに言ってくる」
「心!待って、心!」
「どうして?!」
「今心が何か言ったところで、まきの気がすむと思う?!私が今まで、観察してきた結果で、まきは諦め悪い性格よ。あれ、一番嫌われるタイプ。そんな奴に、何言っても、通じないと思う」
「じゃあ、どうすればいいのよ」
「ねぇ、頼みがあるの。心にも、田村にも・・」
「何?」
「・・・・・別れたふりを、してくれない?」
「美沙?!何言ってんの・・」
「ごめん!ホントにそんな事したくないんだけど、もうそうするしか、ないと思うの」
「でも、別れたふりをした後は、どうするの?」
「それは、わからない。とりあえず、一時しのぎに、ならないかな?」
「らしくないよ、美沙がそんなに慌てるなんて。ゆっくり、考えようよ」
「・・・うん。」

確かに、らしくない。
いつでも冷静沈着で、何があっても多少のことでは動じない私が、こんなに慌てるなんて・・・

やっぱり、学校生活も親友もとても大切な物が犠牲になろうとしている今、落ち着いてなんていられないのだ。

これから、どうする・・・






「まぁ、淳平にも相談しとくよ」心はそういい残して、その場を後にした。
これから、今から、どうすればいいんだ。



「・・・・・・・・美沙、ちゃん・・・」
背後から呼ばれ、ゾクッとした。
「未来ちゃん・・・なに?」
未来は、まだ虐められているようだ。まきは、何人も同時に虐めることに成功したようだった。
無意味で、馬鹿げた結果だ。

「美沙ちゃん、聞いたよ」
「え・・」
「今、大変なんだってね?」
「・・どうして・・・」
「悪いけど、立ち聞きしてた」
「趣味悪いよ」
「何とでも言って。あなたは私を見捨てたの。もうあなたなんて助けてあげない。でもね、いい事思いついちゃったの」
「何よ・・」
こんな大変な時に、こんな奴の相手なんてしてられない。
「私と親友にならない?」
「えっ?」
未来の口から発されたのは、予想外の言葉だった。
「何言ってんの・・」
「心ちゃんとの親友ごっこはもう終わりにして、私と本物の友情を作り上げていこうよ」
「私と心は、親友ごっこなんてしてない・・本物の友情があるの。あんたみたいな、友達が出来ない、おまけに虐められてる奴なんかの世話になんてならない。もう話しかけないで」
「いいの?本当に、それで。今、心と親友をやめれば、まき達から虐められなくてすむのよ?それで私と、楽しい毎日を送ろうよ」
「・・・なっ、・・何が楽しい毎日よ!あなたといて、楽しい日々なんて送れるわけないじゃない!」
「あら。そうかな?私は、その方が正しい選択だと思うけど」
「兎に角、私はそんなつもりないから」

一瞬、言葉に詰まってしまった自分を憎んだ。
親友は、心だけなんだ・・。



「ふん、今に見てなさい。きっと後悔するわ」

未来の発した小さな言葉になんて、気付きもせず、私はその場を足早に立ち去った。




数日後、心が田村を連れて、私のトコロへやってきた。

「心・・・」
「ちょっと、時間ある?」
「うん、大丈夫だけど・・」
正直、ヤバイと思った。まだ私が心と仲良くしている事をまきが知ったら、事態は悪くなるばかりで・・・

「美沙、何かいい考えは浮かんだ?」
「・・・ごめん、まだ・・」
「ううん、誤らないで。そんな簡単な事じゃないよね。」
「・・・・うん」
「・・淳平には、もう話した」
「そう」
田村は黙ったまま。一言も話そうとしない。
この重い空気を、一刻も早くどうにかしたい。
「でさ、別れたフリをするって話なんだけど・・・」
「それ、もう忘れて?私がとっさに言っただけで・・ごめんね」
「やってみたらどうかな、って・・」
「え・・」
「その後どうなるかなんて、わからないけど。やらないよりはマシなんじゃないかって、相談したの、淳平と。」
「・・うん・・・・」
「でもね、私達、やっぱりまきには一言言いたい。別れたフリをするのは、それでも駄目なら、の話なの。」
「・・・どうしても?」
「えっ?」
「まきに、どうしても一言いわなくちゃ駄目?」
「・・どうして?」
「・・・・うん・・」
私はやはり、ただの中学生だった。
孤独というモノに恐れを感じていて、絶対に虐められたくもないと思い出してきたのだ。
心たちがまきに一言いうという事は、私が心に全てを相談してる事になる。
そうなれば、私の学校生活も先行き不安になってくるであろう。
そんな面倒なことだけは、絶対にごめんだ。
「美沙は、賛成してないみたいね」
「そういうわけじゃ、ないんだけどね・・やっぱり、自分の学校生活も大切かな、って・・・・」
「うん、わかってる。だからね、そこは上手くまきに言って・・美沙には絶対に迷惑をかけないようにする。それだけは約束する。」
「でも・・・」
でも・・・、なんだ?
心が信用できないわけじゃない。ここは、2人を信用して任せるというのも一つの手だ。
でも、私が今まで見てきた中で、このような例に成功はそうないのだ。
「・・・・わかった、任せる」
決断は、わりとあっさり決まってしまった。
心を信用することに、私は決めたのだ。
「絶対に、大丈夫。私を信じて」
「・・うん」




時間というのは、待ってくれないものである。

もう放課後がやってきているのだ。今、心がまきを呼び出した、という事を田村から聞いた。
私の中には、不安しかなかった。

田村の提案で、私たちは心の様子を見に行く事にした。
もちろん、まきには気付かれないように、そっと・・・・


声がする。
間違いなく、心の声だ。
「・・・・もう終わった事をいつまでも、引きずってるなんて格好悪いわよ」
「あら、格好悪いのはどっち?まぎれもなく、私から淳平を奪ったあなたの方じゃない?」
「奪った?可愛そうな人ね、あなた。淳平が、私を選んだのよ?まきじゃなくて、私を」
「浮かれちゃって、馬鹿じゃないの。すぐにあなたも捨てられるわ。私は捨てられたんじゃなく、私から離れたようなものだけど?」
「まぁいいわ。どうせあなたは淳平に嫌われてる。だけどね、それに美沙を巻き込むのは間違ってる」
「巻き込む?一番あいつを巻き込んでるのは誰?ねぇ、あなたじゃないの?心。あなたが、美沙にいつまでもまとわり着いてるから、美沙が巻き込まれたんじゃないの。勘違いしないで、あなたが1番美沙に迷惑をかけてるのよ」
「・・私が、美沙を。」
「そうよ、あなたが美沙から離れれば、私たちの問題に巻き込まれなくてもすむのよ。いつまでも勘違いしてたら駄目よ、可愛そうに。馬鹿な子」
「・・・違う。美沙が巻き込まれてるのは、あなたのせい。本来、美沙は何の関係もなかったのよ。だけど、あなたが・・美沙に」

「心!」
「美沙・・・居たの?」
「ごめん」
「・・・ごめんね、美沙。迷惑かけて」
「迷惑なんかじゃない!親友のピンチよ?!助けるのは、当たり前じゃない。だいたい、私が巻き込まれたのは、全部まきのせいよ!」

そうよ、全てはまきのせい。
心も、私も、田村も、悪くなんてない。いつまでも昔を、田村を忘れられない、だらしないまきが悪いのよ。



「ハハハッ、いい眺め」
突然の笑い声に、物凄く驚いた。
「・・・なっ、何よ!突然・・」
まきも驚いて、まともに話せていなかった。ひどく動揺してて、あぁ面白い。だけど・・・・・今、何がおこっているかなんて私にもわからず、私も動揺の色を隠せなかった。
「みんな馬鹿よね、こんな幼稚な揉め事、いつまでもダラダラ言い争ってるなんて」
「未来・・・」
何?何で、未来がここに・・・・・
「まき、私、あなたが嫌いなの」
「わっ、私だって、あんたなんて大嫌いよ!」
「私を虐めて、いい気になってるみたいだけど」
「は?!」
「まきなんて、しょせんガキだわ」
「何言ってんの、お前・・まだ虐められたいの?」
「幼稚なイジメ遊びに付き合ってる暇はないの。今まで遊んであげた事を感謝しなさい」
「・・・・未来ちゃん、どうしたの?」
「どうした?ハハッ、おかしい。美沙こそどうしたの?こんな親友のために、自分を犠牲にして、何してるの?」
「犠牲になんて!」
「してるわ。あなたは何の関係もないのに、巻き込まれて。こんな親友といつまでもつるんでるから悪いのよ」
「ちょっと、何言ってんの?あんたには友達さえいないから分からないだろうけど、親友がどれほど大切か・・・。友達の為ならね、自分を犠牲にしたってかまわないのよ!だいたい、親友のためなんだから、自分が犠牲になってるなんて思わないわ」
「あー馬鹿らし。そうね、私には友達もいないわ。でも作らないだけ。むしろそんなもの必要ない」
「だっ、大体なんであんたがココにいんのよ?!まさか、まきの?」
「まさか、やめてよ。そんな奴と一緒にしないで」
「ちょっと待って!意味わかんない。まず、どうして未来がここにいるわけ?出てくる必要ないじゃない」
「私ね、あなた達をずっと観察してたのよ。美沙は、私達の事を鋭く、見ていたつもりだったらしいけど、本当によく観察していたのは私よ。もちろん、美沙の事もまきの事も心の事も、全てね」
私はそれを聞いた瞬間、気味悪くなってきた。
私は、今までこんな事をしてきたのか・・・。そう思うと、イキナリ自分が嫌になり、恥ずかしくなった。
「私と美沙は同じじゃないわ。私の方が、ずっと観察上手だもの」
「当たり前よ、一緒にしないで」
「私はあなた達をずっと観察してきた。だから、ちゃんと結末も見ておかないと。最終回だけないドラマなんて、見た事ないでしょ?」
やっぱり、未来は只者ではなかった。あきらかに変だ。妙としか、言い表せない。私も、こんな奴と同じ行動をとっていたのか・・・・
人間観察、なんて。いいものじゃない。

「美沙、あなたは私を裏切った」
「・・だから?」
「心も、私から美沙を奪った」
「奪ってなんか」
「まきも、私を虐めた」
「だから、何なのよ」
「これから、どうする?」
「どうするって・・・何を?」
「まずはあなた達の関係」
「え・・」
「このままズルズル引きずったままなんて、何の解決にもならないわ。縁を切るのか、このまま仲良くやっていくのか・・」
「そんなこと、未来には関係ないじゃない!あなたにそこまで言われる覚えはないわ」
「関係ない?それなら、美沙だって関係ないわよね。私と同じで、観察をしていただけなんだから。それに、美沙は私と親友になるの」
「何言って、」
「だって、その方がずっといいじゃない。」
「よくないわよ・・・・」

本当、こいつ何言ってるの?!
全く意味がわからない。変よ。考え方も、全てが、おかしくなってるんじゃないの・・・・・

「美沙は、どう思ってるの?未来のこと」
「嫌いよ」
「それなら、未来は諦めるしかないわね。それに、親友っていうものは、いきなりできるような簡単なものじゃない。何年もかかって、分かり合えなきゃ、親友とは言わない。」
「心・・」
「未来、あなたがここにいる資格はないわ。」
「驚いた。あなたがそんな口きくとはね。あの時の事、もう忘れたの?心」

あの時・・・・?
私には何のことだか全然わからなかった。
でも、私は心の何年も一緒にすごした仲だ。未来がこんな状況でいきなり持ち出してくる話だ、きっと大きな事件か何か・・・

それなら、なおさら私は知っていて当然なのに。

「ねぇ心、あの時私がいなかったら、・・」
「未来!今、その話は関係ないでしょ」
心・・・・・一体、何の事なの?分からないと、何故かあせる・・・
「美沙、知りたいわよね。心の、過去を」
「・・過去?」
「そう、心の荒れた過去。あなたの知らない、私だけが知っている、心の」
「知りたい」
私は即答だった。
「美沙?!」
「未来、教えてくれるよね」
「美沙?ホント、何でもないのよ。それに、ここで言う事でもないの」
「だったら、なおさら今教えてもらっても、困らないよね?」
「美沙…」
「アハハッ、おっかしい…あんた達の友情もその程度だったのね。美沙、あなたは心の事、何もわかってない。人にはね、知られたくない過去っていうのがあるの」
「それぐらい、わかってる。だからこそ知りたいの!心の傷ついた過去を、今更変える事は出来ないけど…。私は全てを知りたいの、心の全てを。親友だから…」
「美沙…」
「……心はね、昔私と仲がよかったの。あなたなんかより、ずっとね」
「嘘……心、本当?」
「…うん」
心は申し訳なさそうにうなずいた。ソレが何故か、無性に腹が立った。
「心、昔はひどく荒れてたの。それがあなたには見せない、心の本当の顔だった。私には何もかも話してくれたわ。相談もいっぱいうけたし、信頼してた、お互いを。」
「心…私には、そんな事…一言も」
心はうつむいたままだった。
「そんなる日、私に一本の電話が入ったわ。…心が、自殺未遂した、って」
「っ自殺…」
「私は慌てて病院に向かった。そして心のいる病室のドアをあけた。そこには、手首に包帯を巻いた、放心状態の心がいた」
「リストカット?」と私が恐る恐る聞くと、未来は深く頷くだけだった。
「私は心の隣に何も言わず座った。心は黙ってて、何も話さなかった。私が、どうして自殺なんてしようとしたの?と聞くと、心はただ、死にたかった。とだけ答えた」

その話をきいて私はピンときた。
心が一時期、長期にわたって学校を欠席した時があったのだ。
先生に理由をきいても、風邪だ、としか言ってくれないし、どこかで、不安があった…。あの時だったんだ。あの時、心は苦しんでた…なのに、私は・・・・・

「…心の過去」
「心、そんなに苦しんでたんなら…どうして、私に何の相談もしてくれなかったの?私、そんなに信用できないかな……私は、心の事大切におもってるのに…」
「違うのっ、迷惑、かけたくなかっただけ…。美沙、もう忘れて」
「え…」
「この話、全て忘れて?今は、ホント普通だから」
「…美沙、あなた本当に信用されてなかったのよ。だって、心あの時言ったわ。未来がいてくいれなかったら、私は本当に死んでいた、って。心をすくったのは、あなたじゃなくて、私なの。」
「そう、だよね…私、頼りないもんね。いつも、心に甘えて…。ごめんね、私…心のこと大好きなのに、心に迷惑かけて。」
「迷惑だなんて、…美沙がいてくれなかったら、今の私はないの。それは、あの時は…未来が支えだったけど。その後もその前も、美沙が私の支えだった」
「綺麗な友情も、しょせん作り物だったって事ね。あなた達、お互いを理解してないわ」
「……でも私には、心が必要なの。心がどれだけ私を迷惑に思ってても、私は心が1番の親友だと思ってる」
「美沙…私も、同じだよ?」

心の言葉で、安心したのか。
私の目から、大粒の涙が落ちてきた。


「第三者だけど、言わせてもらうわ」
いきなりまきが口をひらいた。
「あなた達の友情は本物だと思うわ、確実にね。だから未来、もういいでしょ?私も、もういいわ。馬鹿馬鹿しくなってきた。淳平のことは、今も本気で好きだけど…心、あなたになら譲ってもいいと思ったわ。じゃ、私もう行くわ」
「まき……あなた以上に、私、淳平を幸せにする」
「それって、男のセリフじゃないの?…まぁいいわ、勝手にしなさい」
「ふんっ、面白くないわ。」
「待ちなよ!逃げる気?」
「逃げるも何も、どうでもよくなってきたわ。でも美沙、これだけは覚えておいて。あなたは、私の永遠のライバルよ」
「………ライバル…」
「羨ましかった、あなたの事が。」
「え…」
「とにかく、そういう事だから。理解しなさい」
「うん…」

未来は足早に、その場をさった。

「俺、結局出番なかったな。…帰るわ。」
「淳平っ!」
「ん?」
「また、明日ね」
「あぁ」
微笑む心を見て、
あぁ人って恋をすると、自然と幸せな顔になるんだな
と思った。

「美沙、私たち、これからも親友よね」
「もちろんよ!」
「何だったんだろうね、この場は」
「私と、心の絆を深める場」
「そうだね」
「ふふっ」
あ、私、幸せだ。
いま、人間観察してる時よりも、ずっと楽しい。
そうか。
こんな時に、人は幸せを感じるんだ。 自分を観察して、初めて気付いたことの方が多かった。

私はこれからも、自分を観察し続けるだろう。
より大きな人間になるために…。








                       終


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