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身代わり人形(小説)
「えっ・・・・」
「アキーーーー」
運命というのは、絶対に変えれないみたい。
アキは私の妹。
可愛くて、でも時々憎くて、でもやっぱり大好き。
本当に、愛してた。アキがいなくなるなんて、考えられなかった。
アキが事故にあってから1ヶ月がたった。
私には時がながれてる事なんて、わからなかった。
いつのまにか、時はたってたみたいだけど、私の時間だけは動いてなかった。
何も変わりないんだ、そう、何も・・・
「お姉ちゃん」
アキだ・・・・
いつもアキは笑顔で私を呼ぶ。
「ねぇ、お姉ちゃん?」
あれ・・・
アキだよね。
でも、私の知ってるアキは、私の目の前で血だらけになった。
棺桶に入って、灰になったはずじゃ・・・・
あ、そっか。
全て夢だったんだね。
アキ、あなたはまだ、私の側にいたんだね。
「美紀さん、あなたにアキさんをお返ししましょう」
「お姉ちゃん、私・・まだお姉ちゃんの側にいたいの」
・・・・アキ?
私の目に映ったは、まぎれもなくアキの姿だった。
「美紀さん、アキさんを側に置いておきたくないですか?」
「・・・・・・誰?」
私はアキの隣で立っている老人を見つめた。
「アキさんをここまで連れてきた者です。名乗るほどのものではございませんので・・」
「・・・・・・で、アキを帰してくれるって・・どういう事?」
「アキさんは1ヶ月前、確かに亡くなりました。」
「じゃあ・・・どうして」
「亡くなったアキさんを、あなたの力でこの世にもう少しだけいさせてあげる事ができるのです」
「私の力・・・・?」
「なに、心配はいりません。あなたの生きる力。つまり、生命力さえあればいいのです」
「生命力?私の生命力をアキにあげるの?」
「アキさんがこの世に1日いる。そうしたら、あなたの生きる時間が1日減る。それだけの事です」
「じゃあ、アキがこの世に1年いたら、私は1年早く死ぬ・・って事?」
「そうです」
「・・・・アキは、どうしたいの?」
「お姉ちゃんには、長く生きてもらいたい。私の分まで。・・でも、・・・・私、まだ心残りがあるの。」
「・・・アキ・・・・・・」
私は思った。
もしこのままアキを天国に送れば、アキは浮遊霊にでもなってしまうのではないか・・・・。
アキが辛い思いをするぐらいなら、私は死んだ方がまし。
アキが少しでも長く、幸せにいる事ができるのなら・・・私は、今すぐに死んでも構わない。
と・・・・・。
「アキ、あなたはこの世にいて」
「お姉ちゃん・・・」
「心残りがないようにね」
「・・・・ありがとうっ、本当にありがとう。」
「アキ・・・」
私に抱きついているのは、変わりないアキ・・・。
アキ、戻ってきてくれたんだね・・本当に。
「では、アキさんをよろしくお願いします。有効期限は、自由です。ただし。これだけは覚えておいて下さい。アキさんがこの世にいる時間と、美紀さんがこの世にいられなくなる時間は、比例します。絶対に忘れないで下さい。アキさんが天国に戻られる時は、私をおよび下さい。アキさんが、私を呼べば、私はすぐに来ます。」
「はい、わかりました」
「あ、それと。アキさんが幽霊だという事が他の人間に知られたら、アキさんも、美紀さんも、共に天国に来ていただきますので、よろしくお願いします」
「はい」
大丈夫よ、アキは私が守るわ。
「では・・・・・」
「お姉ちゃん、私・・どれぐらい居ればいいかなぁ」
「好きなだけ居ていいんだよ、もう何も心配いらない」
「ううん、これ以上おねえちゃんに迷惑かけれない。3日で帰るわ。約束する」
「・・アキ、本当にアキなのね」
「うん、アキだよ?」
「アキ・・・・どうして先に逝ってしまったの・・」
「・・・・ごめんね、お姉ちゃん・・」
「アキ・・」
「でも、ほら!私、ちゃんとココにいるよ」
「あ、アキ覚えてる?2人で埋めた、身代わり人形」
「え・・うん、覚えてるよ」
「あの人形にさ、アキの身代わりを頼めないかな?」
「身代わり・・を?」
「そう。アキの代わりに死んでもらうの」
「駄目っ」
「えっ」
「駄目よ、そんな大きな事を、人形1つじゃとても、抱えきれないわ」
「そ・・かな」
「いいじゃない、そんな人形いらないわ。身代わり人形の代わりに、お姉ちゃんが私の身代わり人形なんだからっ」
「え・・私が?」
「そうじゃない?」
「そういえば、そうね」
アキじゃない。
死んでしまって、性格も変わってしまったの・・・・・?
そんな恐ろしい事を、笑顔で言うような子じゃなかった、アキは。
「お姉ちゃん、私、ずっーと一緒にいたいな。お姉ちゃんと」
「・・アキ?」
「ん?冗談だよっ」
「ねぇ、本当にアキなの?私の妹の、アキなの?」
「うん、アキだよ」
「・・・・そうよね」
「ねぇ、今日はもう寝ましょうよ」
「ええ、そうね。アキは私のベッドを使うといいわ」
「お姉ちゃんは?」
「下で寝るから」
「あっ、そうだわ。私、自分の部屋で寝るわ。」
「あっ、待って!お母さん達には見えないの?」
「ええ。私が自由に姿を見せたり、隠したりする事が出来るの。だから、心配ないわ」
「そう・・じゃあ、気をつけてね」
「おやすみなさい、お姉ちゃん」
「おやすみ・・」
ガチャ
「アキ・・・」
私には、どうしてもアキが戻ってきたのだと思う事ができない。
アキは、あんな子だったかな・・・。
あの子は本当に、アキ・・・?
私はいつの間にか眠っていた。
幽霊は、食事をしなくてもおなかがすかないらしいので、アキは朝食をとらなかった。
そして、そのまま2人で学校に行った。
「お姉ちゃん、見て!学校よ」
「そうね」
「わー、久しぶりだぁ」
「待って、本当に皆には見えないのよね?」
「ええ、大丈夫よ」
「十分気をつけてね」
「わかってるわ」
「私、教室へ行くけど・・一緒にくる?それとも、」
「私は、自分のクラスへ行くわ」
「ええ、わかった」
アキは中学2年生。
私は中学3年生。
同じ校舎だけど、階は違う。本当に見つからないか、不安が積もる。
「お姉ちゃーん!」
「えっ?」
「アキだよ?」
「どこ?」
声はすれども姿は見えぬ・・・・・
まさにこの事。
「美紀、一人で何やってんの?」
「否、アキがね」
「アキ?」
「あ・・・・」
友達は皆、アキが死んだ事を知っている。
ヤバイ・・・・つい。
「美紀?大丈夫?」
「ごめん、先行ってて?」
「ホントに大丈夫なの?」
「うん」
「・・わかった」
「アキ、どこなの」
「お姉ちゃん、ここよ」
「もう、駄目じゃない。学校でおちょくらないで」
「どうして?楽しいじゃない」
「アキは楽しくても、周りからは私が可笑しく見られるのよ」
「私、ちゃーんと居るのにね」
「皆は見えないの。わかるでしょ」
「ふふっ。ねぇお姉ちゃん、もっと驚かしてやらない?皆を」
「アキ!何言ってるの?あなたが見つかれば、私たちは2人とも天国よっ」
「平気よ、皆からは見えないんだもの」
「アキ!」
「わかった、もう何もしないから。じゃあね」
「えっ、ドコ行くの?アキっ」
「もう・・・」
「美紀、どーしたのよ」
「あの子ったら、ホント・・悪戯ばっかで」
「あの子?」
「あっ・・・否、何もない」
「誰よー」
「何もないのよ、ホント」
「・・変なの」
駄目だ。
しっかりしなきゃ・・・。
もしもアキがこの世にいる事が誰かにバレたら、私まで死ななくちゃいけなくなる・・・・
私まで・・・
そうよね。
アキは、もう死んでしまっている。私なんかより、ずっとずっと辛いはず。
それなのに、・・少しはこの世を楽しませてあげても・・いいよね。
私、アキとなら・・・・天国にでも、行ける。
「お姉ちゃん」
「アキ・・もういいの?」
「ええ、もう疲れたわ。」
「ねぇ、あなたの心残りは、何?」
「やめて」
「えっ?」
「幽霊はね、心残りを聞かれるのが一番嫌なのよ」
「・・そう、なの」
「でもいいわ、知りたいなら教えてあげる」
「・・・・いいわ、言いたくなければ。無理に言う必要はないわ」
「嘘。お姉ちゃん、知りたいんでしょ?」
「別に、いいわよ。そんなの。」
「いいわ。教えてあげない。」
「・・アキ?」
「私、心残りをなくしてくる」
「アキっ、どこ行くの」
「言わなくていいんでしょっ」
「アキ・・・」
アキは、あんな我侭だったっけ。
死んでしまえば、性格も変わるものなの?
ねぇ、アキ・・
教えてよ。
「斉藤くん」
「えっ?近藤、お前、呼んだか?」
「呼んでねーよ」
「じゃあ、さくらか?」
「呼んでないわよ、どうしたの?」
「今・・確かに」
「斉藤くん、私よ」
「・・まただ」
「孝之、おかしいんじゃない?」
「さくら・・今、俺の事よんでないよな?」
「ええ、呼んでないわ」
「聞こえなかったか?今、斉藤くんって・・・」
「やだ、幽霊じゃないの?怖いっ」
「まさか・・」
「斉藤くん、来て」
「誰なんだよっ」
「私よ、アキよ」
「アキ?!」
「あれ?もう忘れちゃったの?私の事、忘れたの?」
「アキ・・本当に、アキなのかよ」
「私を忘れて、さくらと付き合ってんの?」
「・・アキ」
「信じられない、最低ね」
「ちょっ、・・アキ」
「孝之?アキって誰よ。まさか・・あの、アキちゃん?」
「あぁ、いるんだよココに。アキが・・」
「いるわ、見えない?」
「あっ・・アキ」
「ふふっ、さくら、あなたよかったじゃない」
「え・・」
「私が死んで、孝之と付き合えてるんでしょ?よかったわね」
「そんな・・・アキっ?」
「さくら、孝之のこと好きだったじゃない。私が死んで、嬉しいんでしょう?本当は」
「違うっ、アキ・・」
「嘘。・・ねぇ孝之、私とさくら、どっちが好きなの?」
「・・アキ、お前、どうしてココに」
「あなたが憎いからよ」
「アキ?」
「なれなれしく呼ばないでっ」
「アキ・・・もちろんお前だよ。アキが大好きなんだ」
「孝之?!」
「さくらゴメン、俺・・」
「アキっ!」
「お姉ちゃん」
「何してるの?ねぇ、アキっ!」
「美紀先輩・・」
「さくらちゃん・・・アキの事、見えてるの?」
「・・はい」
「アキ、どういうつもりなの・・孝之くんたちに迷惑かけて、あなた・・何してるの?」
「うるさいわね。そうよ、私の心残りは孝之。」
「アキ・・」
「・・さくらは孝之が好きだった。でも、孝之は私と付き合ってた。私が死んで、さくらは孝之に告白したわ。もちろん返事は、OKだった。だって、孝之もさくらの事が少し、気になってたもんね?」
「・・ごめん」
「私が死んで間もないのに、2人はとても幸せそうだった・・。ねぇ、ひどいよ。孝之も、さくらも・・・・みんな・・・・・・死ねばいい」
「アキ!」
「・・お姉ちゃんに私の気持ちなんてわからないわ。だって、お姉ちゃんは生きてるんだもの!」
「わかるわ!だって、アキは、私の大切な妹なんだもの。アキは死んでしまって、・・辛いのはわかる。でも、それで孝之くん達を苦しめるのは間違ってる。ねぇアキ、もういいでしょ?」
「・・いいわ、どうせ私は死んでるもの。今更、どうにもならない。でも、私はこの世にまだ居る事ができるの。そう、お姉ちゃんがいる限りね」
「アキ・・・あなた、まさか」
「そうよ。私はお姉ちゃんが死ぬまで、ずっとこの世にいる。だって悔しいもの。このまま天国にいくなんて」
「アキ、何考えてるの?!事情はよくわからない。でも、お姉さんを苦しめるようなことはやめなさい」
「さくら・・あなた、偉そうな口聞くようになったじゃない。私が死んで、自分の方が立場が上とでも思ってるの?勘違いしないで、私は今すぐココであなたを殺すこともできるのよ」
「アキ、何言ってるの?」
「幽霊を甘く見ないでほしいわ。」
「アキ!やめなさいっ」
「きゃっ」
「さくら!」
「痛っ・・」
さくらちゃんの頬には傷跡があった。
アキが・・・・・本当に、アキが
「思い知った?私が本気を出せば、あなた達なんてすぐ殺せるのよ」
「アキ、もうやめなさい」
「お姉ちゃん、さくら達の見方なの?!」
「見方とかじゃない。アキ、あなたは間違ってる」
「・・何よ。でもいいわ。もうすぐ私たちは天国に行かなきゃならないもの。そう、お姉ちゃんもね」
その時、あの老人からの言葉を思い出した。
アキが幽霊だとばれた時は、私も天国に・・・・・・・
「アキさん、美紀さん、さぁ行きましょう」
「あなたは・・・」
私達の前には、あの老人。
「お姉ちゃん、私の身代わりありがとう。あの時埋めた、身代わり人形に、お姉ちゃんの名前を彫っておいてよかったわ」
「・・え・・・どういうこと?」
「私、ずっとお姉ちゃんが嫌いだったの。憎かった。いつも、いいトコばっかもってって・・。でも、皆からみれば、妹思いのいいお姉ちゃん。そんなあなたが大嫌いだったのよ。」
「アキ・・」
「そこで、身代わり人形にお姉ちゃんの名前を彫ったの。私にもしもの事があった時のために、お姉ちゃんに身代わりになってもらおうと」
「・・嘘でしょ」
「嘘じゃないわ。だって、お姉ちゃんは本当に嫌な女だったじゃない。」
「どうして・・」
「どうしてだ?よくそんな事が言えるわね。お姉ちゃん、孝之とこっそり付き合ってたでしょ?私、全部知ってたのよ」
「・・・・アキ、・・どうして・・・」
「お姉ちゃん、私が部活へ行ってるとき、孝之を部屋に呼んでたじゃない。部活が早く終わったから、いつもよりズット早く家に帰ったら、見ちゃったのよ。2人が、キスしてるトコ・・孝之も、お姉ちゃんの事愛してるとか、言ってたでしょ」
「アキ・・ごめん」
「何がごめんよ・・」
「美紀さん、あなたの生命力はまだまだあります。あなたはアキさんを苦しめ、悲しめた・・・。どうです?あなたの生命力を、お詫びに差し上げては・・・」
「そんなっ」
「当然の報いだと、思いますが?」
「そうよ、お姉ちゃん、ちょーだいよ」
「いやっ・・・」
「いやーーーー」
「お姉ちゃん・・・どうして死んでしまったの」
「アキ、お姉ちゃんはね、アキを事故から助けてくれたのよ。アキのために、死んだの・・・・ほら、お姉ちゃん、綺麗な顔をしているわ」
「そうね・・・お母さん」
そんなのって・・・・・・
人間たちの世界では、私の葬儀が行われていた。
アキが死んだことなど、皆忘れているらしい。
「あぁ、言い忘れてましたが、私は死んだ人間を生き返らせるプロです。美紀さん、誰かに変わりに死んでもらいますか?」
「お母さん、アキ、幸せよ。お姉ちゃんに、助けてもらって・・・お姉ちゃん、ありがとうね」
ふふふふ・・・・
クスクスクス・・・・クスクス・・
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