青空をどこまでも(小説)




もし神様がいるとするならば


私の心に


いつまでも いつまでも


どこまでも広がる


青空を下さいませんか?








「舞子、明日は一緒に学校行けないんだぁ」

「えっ?そうなの?…うん、分かった」

「ごめんねぇ」

「ううん、全然いいよ」

「理沙子!これで明日一緒に行けまーす」

えっ…

私はどくどく鳴る胸の高鳴りを、確かに感じとった。

背筋が凍る。

寒気がした。

「沙紀…あのさぁ、ちょっと、聞いてもいい?」

心臓が正常に動いていない気がした

いつもより、ずっとばくばくしてて

声を出すのを邪魔している。

「なに?」

さっきと比べて暖かさを失った友の声は

私の体中を突き刺す

「…明日ね、どうして一緒に行けないのかなぁ、って…思ったんだ、けど」

「言わなきゃ駄目なわけ?」

「うっ、ううん!全然、そんなこと、ないんだけどね。ただ、どうしてかなぁ、って…変なこと聞いてごめん」

「別にいーけど、なにテンパってんのよ。可笑しな舞子」

「ホント、私可笑しいよねー」

「バーカ」

私は笑顔をみせた

馬鹿、いつも言われてることじゃない。

そんなに気にすることないんだよ

全然、いつもと変わらないじゃない、みんな。

沙紀、機嫌悪いだけだって

クラスが静かなのも、きっとみんな、勉強してるんだよ

今日小テストあるもんね。

「梨香ちゃん、今日国語あったっけ?」

「時間割見ればわかるじゃん」

「えっ…あ、そうだよねぇ」

「私勉強してるの、悪いけど邪魔だから、用ないなら話しかけないで」

「あっ、ごめんね!」

梨香ちゃんは、こんな子だったよね

うん。こんな感じの子だったよ。

冷たいのが不思議に思っちゃうと、やってけないよ

うん。そうだよ。いつもと変わらない、みんな。

「はるかぁ…今日何か教室静かだよねぇ」

「舞子…」

私の幼なじみのはるか

はるかなら、私の心の片隅にある

かすかな不安を、ふきとばしてくれるよね。

「…悪いけどぉ、話なら後にして。今忙しいの」

「あっ、そうなんだー。ごめんね、忙しいのに」

「ううん」

はるかも、みんなと同じだった

冷たい…明らかに違う。昨日と今日では、暖かさが違う。

私の不安は的中したらしい。

イジメなのかな。私は、いじめられるのかな。

「今日の体育バスケするんだって」「マジ!?」「ねぇねぇ!みんなでチーム組もうよ!」「いーねー」「小テストの勉強した?」「やってなーい」「マジやばいよぉ」

聞こえてくる会話

声がものすごい速さで私の体を通り抜ける。

「理沙子ぉ!今何か楽しいことしてるって聞いたんだけど」

「もう知ってんの?」

「聞いたのよ。で、何してんの?」

「教えて欲しいなら協力すること約束して」

「当たり前じゃん!楽しいこと大好きだもん、うちら」

「実はさっ」

そのあとの言葉は聞こえてこなかった



わざと聞こえないように耳をふさいだのかもしれない。

「マジでぇ!」

「最高じゃん!」

「きゃははー」

甲高い笑い声が教室を揺さぶる

私は、昨日まであの中で笑ってたんだよね

夢の世界だったのかな、あそこは。

「なになに」「面白い話ー?」「聞いてよ!」「うっそーぉ、マジ楽しそうじゃん!」「もちろん参加しまーす」

教室にまた、甲高い笑い声が広がった。


次の日、私が朝登校すると、下駄箱に1通の手紙があった。

私は恐る恐る封を開ける。

「っ…」

中にはカッターが入ってあった

手紙は、パソコンで書いたのだろう

暖かさの無い文字が綺麗にならぶ

死 ん で く だ さ い

死、と言う文字のインクがにじんでいて、泣きそうになった

私、これからどうなるんだろう。

教室に入ると学級委員の明美が「登場」と叫んだ

「おっはよーぉ!」

笑顔で駆け寄ってくる理沙子

あとに続く数人の元友達

「お、おはよう…」

「なにしてんのーぉ?」

「な、なに、って?」

「その手紙なに?」

「え…」

明美が私から手紙を取り上げた

「きゃー、なにこれ!カッターじゃん!」

「やべーよ、舞子ちゃーぁん」

「ねぇ…いじめられてるなら相談してね?」

明美が私の顔を覗き込み、微笑んだ

「…うん」

お前らがイジメてるんじゃん、綺麗事言うなよ

と、心の中で叫んだ。


授業中、メールが届いた

明美からだった


To 明美


件名 生きてる?



授業ちゃんと聞いてますかーぁ
このメールみたら先生に
「好きです」って言え。



本当に、私が何をしたの…

私、いままでちゃんといい友達してたじゃない。



To 明美


件名 はやく



言えよ。
授業終わるまでに言え。
言わなかったらさぁ
どうなるかわかってんだろ?
ほら、はやく。



地獄だ

私はなにもしてない。

絶対に、人を傷つけたり

悪口言ったり、場をしらけさせたり

いつも笑顔だったじゃない。

いつもにこやかに接してたじゃない。

何が気に食わないの?直すから、やめて。


「せんせー」

「なんだ?」

「舞子が質問あるってー」

「えっ…」

「どこが分からないんだ?」

「え…えと、」

「はやく言いなよーぉ」

そんな…

私、なにもいえないよ

どうすればいいの…

「なんなの!」

「何なんだ、気分でも悪いのか?」

「先生、高橋さん気分悪そうなので保健室連れて行きます」

「あ、そうか?じゃあ頼んだぞ」

「はぁ?!舞子元気じゃん」

「保険委員ー、なにしてんだよ」

「真理果!」

「はい、静かにー。じゃあ始めるぞ」


…助けてくれたの?

まだ私を、助けてくれる人がいるの?

「質問なんてなかったんでしょ」

「…う、うん」

「どうしてこんな目にあってるか、知らないの?」

「……うん」

「へぇ…大変ね」

「あの、一之瀬さん…」

「なに?」

「助けてくれてありがとう」

「別に」

「でも…一之瀬さんもイジメられるかも…だよ?」

「私は大丈夫。理沙子たちにイジメのこと教えられて協力しろって言われるだけだと思うから」

「……そっか…」

ちょっと期待してしまった自分がいた

一之瀬さんもイジメられれば

私は孤独から抜け出せるんじゃないか、と。

私は最低な人間だよね

助けてくれたのに、いじめられればいいなんて少しでも思った。

だからイジメられるのかな

こんなだから、嫌われちゃうのかな。

「どうする?」

「えっ…何が?」

「今から。私は教室戻るけど、貴方は保健室に居た方がいいんじゃない?」

「そうだよね…」

「授業遅れると困るから、もう戻るわ」

「あ、…本当にありがとね。じゃ…」

「ちょっと、あれ、舞子ちゃんじゃない?」「うそ…どこ?」「あれ」「あ…」

誰かが私の名前を呼んだ

気付いたけど、気付かないふりをした。

きっと理沙子たちの仲間だ…

「舞子ちゃん!」

やだ…来るよ。どうしよう。

心臓が今にも破裂しそう

怖い。緊張にも似た感じで、息が詰まる。

「舞子ちゃん!」

私は恐る恐る足をとめ、振り返った

「なに…」

相手を刺激させないように、一つ一つ言葉を選ぶ

「ちょっと話あるんだけど、いい?」

「…うん」

ここで拒否したら、何言われるかわかんないもん

「あのね、舞子ちゃん…理沙子たちに酷い目にあってるんだって?」

私は何もいえなくて、うつむいた

「あ、安心して。私達、理沙子の仲間じゃないから」

「うん、そうだよ。どっちかっていうと舞子ちゃんの見方だよねー」

え…本当に?

「うちらさぁ、理沙子のこと嫌いなんだよね」

「舞子ちゃんイジメたりして、ホント酷いよね」

「最低だよね」

あ…違う。これは同情だ。

私を見下してる。わかる。

「そういえば今授業中でしょ?どうしてこんなとこに居んの?」

「…保健室に、来た」

「授業中も理沙子たち、何かしてくる?」

言ってもいいの?

もし仲間だったら?

私、もっと酷い目にあうよね。

「……ううん」

「そっか。…あのさ、うちらでよければ相談してね」

「うんうん。話聞くぐらいしか出来ないだろうけど、力になりたいの」

「あ、でも、理沙子たちの前では話しかけちゃ駄目だよ。舞子ちゃんをかばう人がいるって知ったら、イジメも酷くなりそうだし」

違う。そんなんじゃない。

この2人は、自分がいじめられるのが嫌だから、理沙子たちの前では仲間ぶろうとしてるんだ

八方美人なんだ。

ずるいよ、そういうの

「……ありがとう。私、もう行くね」

「うん、じゃあね!」

「頑張ってね、舞子ちゃん!」

どうして貴方たちみたいな人がいじめられないで

私がいじめられなきゃいけないの?

馬鹿みたい

ホントわかんない

私は保健室に行く気になれず

そのまま階段に座って1時間をやり過ごした

「あ!サボリ魔だー」

理沙子の声だ

私は心臓が縮こまっていくのを確かに感じた

もうやめてよ

こんなことして何の意味があるの

私が何かした

いい加減にして

言いたい言葉が頭の中に綺麗に並ぶ

でも口に出せない自分に

腹が立った

「舞子って授業サボっちゃうような子だったんだーあ」

「馬鹿になっちゃいますよー」

「もう馬鹿じゃん?」

「キャハハハハ」

廊下に笑い声が響く

もう我慢なんて出来ない

「…うるさい」

私の意志とは全く関係なく

言葉が口をついて出た

「はぁ?!」

「今なんて?」

「ふざけんなよ!」

理沙子が座っている私の腕を引っ張り上げ

そのまま引っ張られてトイレに入った

お決まりのあれだ

私は直感した

水を掛けられる

「まじ死んでよ。自殺してよ。うぜぇから」

「舞子ちゃん、お願いがあるの」

理沙子がいつもより小さな声で言った

私は全身震えが止まらない

「ここで土下座して」

理沙子が私の体を押した

その拍子に私は地べたに座り込んでしまった

「きったねぇ!」

「此処トイレですよー!」

「土下座しろよ」

立ち上がろうとしても足が動かない

理沙子が私の手を踏んだ

痛い、という声も出なかった

「……土下座したら教えてくれる?」

「は?」

「………どうして、私をイジメるのか…教えて」

「嫌いだから」

あっさりとした答えだった

私はもっと酷い言葉を並べられるのかと思ってた

嫌いだから

そんな軽い一言が

今の私にはどんな言葉よりも傷ついた

「面白そうなことやってんじゃん」

「きゃあ!」

頭に冷たい水が飛んできた

顔を上げると

理沙子が水浸しになっていた

「何すんだよ!」

理沙子たちの後ろで一之瀬さんがバケツを持って笑ってた

「あんたら暇だね、こんなことする暇あったら勉強でもすれば?理沙子、今回の数学のテスト26点でしょ。やばいんじゃないの?」

「嘘言ってんじゃねーよ!」

「行こ。こんな奴らと居たら頭おかしくなりそー」

「26点が,よっぽど恥ずかしかったんだろうね」

「…一之瀬さん……有り難う」

「別に、あんたのこと助けたんじゃないから」

「でも…」

「ただストレス溜まってただけ」



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