運命という言葉と (小説)



何も変わらず時間は流れて

まるで取り残されたように

わたしの周りだけが

あのときのままだった。


死んだ、という

ひとつの言葉でまとめてしまいたくない

もっと特別なものなんだ

死という簡単な一言で

全てを理解して欲しくない


今まで誤解してきた

「人が死んだ」そうきくたび悲しくなってきたけれど

もっともっと深いものだったんだ

死にました。のひとことで理解できるものじゃなかった。













「遅れるよー」

いつもとなんら変わりない朝だった

わたしは双子の姉の美佐子の声で目がさめた

「うーん…わたし後から行くからぁ」

「はやく起きてってば!」

「…うるさいなぁ」

全然、変わりない朝だった

いつもと同じ会話が繰り返されるだけだった

「美佐子さき行っててよー」

「いいから早く!」

私はのそのそとリビングに降りていく

「お母さんは?」

「先行った」

「お父さんは?」

「お父さんもお母さんと一緒に出た」

「あ…」

「え?」

「美佐子ぉー、ちょっと、しっかりしてよ!」

「なに?」

「今日休みじゃーん」

「えっ、うそ」

「振り替え休日だよぉ。もう…しっかりしてよねぇ」

「ごめんごめん、うっかりしてた。お母さんも言ってくれればいいのに」

「…まぁ、せっかく起きたんだし。買い物にでも行こっか」

「うん、そうだね」

姉はしっかりしてる反面ドジも多かった

学校でも委員長にも選ばれてたし、友達も多かった

私達は双子で

顔も、親が間違えるほどではなかったが、似ていた

ただ、ひとつ決定的に違うことがあった

美佐子は性格がよく、人を思いやれる、優しい人だった

わたしは、いつも自分のことで精一杯で、人のことなんて考えてる余裕もなかった

よく親に「美佐子を見習いなさい」と言われていたが

私はそれがとても嫌だった。

「一緒に買い物行くの久しぶりだね」

「うん」

姉は姉らしくなかったし

私は妹らしくなかった

それはやっぱり双子の特徴でもあるのだと思っていた

友達のように居られるけど、友達より深い仲

親友とかよりも、ずっとずっとお互いをわかっていた

つもりだった

「あたしら服の趣味違うよねー」

「美佐子はどちらかというと白とか多いもんね」

「うん。梨香は黒とか好きだもんね」

「でも系統としては同じかなぁ」

「うん、系統は同じだね。姫系とかでしょ?」

「そーそー」

なんとなく会話を交わしていた

 ドンッ

大きく美佐子が倒れた

私は一瞬なにが起こったのかわからなかった

一瞬の出来事だった

「…っ」

「美佐子!」

全身黒っぽい服をきた男が美佐子のカバンを持って逃走していた

美佐子をみると

赤い血がドクドク溢れ出てきていた

「あっ…え…ど、どうしよう」

なにもできなくて、ただ美佐子をみて慌てるわたし

「大丈夫ですか!今救急車呼びましたから!」

「あっ…ど、どうしよう!」

「落ち着いて!」

「み…美佐子!」

話しかけてきた男の人の声も耳にはいっていなかっただろう

わたしはただ、一緒にこれからも生きたいと、

思ったのはもう少しあとのことだったかな。

このときは、もう何が起こっているのか

状況がつかめないまま

ただ懸命に祈っていただけだった

なにを思っていたのか祈っていたのかわからないけど

すぐに救急車が来て

美佐子を担ぎこんだ

「あ、…助けて!」

わたしは救急車に飛び乗り、懸命に祈った

一刻も早く病院につくことを。

「美佐子…目ぇ開けてよぉ!美佐子!」

動かない美佐子をみていて

一瞬美佐子が自分になったような気がした。

「梨香!」

気が着くと病院の椅子に座っていた

病院についたことすら、わかっていなかったのだろう

「梨香!」

お母さんの声が耳にはいり、ふと我に帰った

「あ…美佐子!美佐子は!」

「今、中にいるわ」

赤いランプがついていた

美佐子はこの中で生死をさまよっているの?

「…お母さん、美佐子だよね」

「え?」

「いま…なかに居るの、美佐子だよね」

「…ええ」

「どうしよう…わたし、隣にいたのよ!?」

「……ええ」

「買い物…行くはずだったのに。普通に歩いてただけなのに。」

「ええ」

「わたしより、美佐子の方が性格良いんだよ!」

「…梨香?」

「なのに、どうして美佐子なの?どうして私じゃなくて、美佐子なの?」

「…梨香……貴方は何も悪くないのよ。美佐子を刺したのは、通り魔なの」

「とおり、ま…」

「見ず知らずの男。もちろん相手も美佐子を知らない。誰でもよかったのよ…誰でも…なのに、どうして……美佐、子」

「嫌よ…嫌!美佐子が居ないと嫌よ!」

「……梨香」

「…美佐子………」

「犯人は、捕まったの?」

「…まだ……何の連絡も入ってないわ」

「なんなの…これって、何…悪夢?悪い夢なの?」

「……美佐子は大丈夫よ。あの子、強いもの。昔からそうだったの。怪我の回復、人より早くてね。風邪もこじらせた事無かったし」

「………どうして、通り魔のようなどうでもいい奴は生きてて、美佐子みたいないい人が危ない目にあうの?」

「……」

「変よ!」

「あっ、梨香!」

わたしは一目散に走り出した

受け入れないから

受け止めたくないから

絶対に。

私は逃げた

片割れの生死から?

それとも悲しみから?

否、違う

自分ではなく美佐子が生死をさまよっていること

死を選びそうになっている片割れが自分と重なること

「美佐子!」

わたしはいつの間にか病院の屋上にいた

ものすごいスピードで階段をかけのぼったからだろうか

なにも感じないのに

息が詰まって苦しくなる。

「何してんのよ!」

今生きてるのは梨香なのよね

私なのよね…



約2時間後、母が私を呼びにきた

「梨香…?ずっと此処に居たの?」

疲れきった顔…

「……美佐子が出てきたの」

「………美佐子?…無事なのよね。助かったんでしょ?」

「………」

「どうして黙ってるの?ねぇ!お母さん!何とか言ってよ!助かったんでしょ!」

「…………ついさっき、…息を引き取ったわ」

「………う、そ……美佐子が…そんな。嘘でしょ?」

「…先生は、出来る限りのことはした、って…」

「どうして……なんで…」

「梨香…美佐子に、会ってあげて?」

「…冗談だよね、死んだなんて……嘘でしょ?ねぇ、冗談でしょ!」

「…梨香……」

「いや……」

「」


© Rakuten Group, Inc.

Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: