get one's wish (小説)




昔から在り来たりな人間には絶対になりたくない,と強く思ってきた


私は望んだことを全て手にしないと気がすまない性格だったので


私は私の望みどおり


人とは違う自分を手に入れた。



人と違う,と簡単に言っても


いろんな違いがある。


個性や感情なんかは人それぞれ


そんな当たり前な「違い」を求めていたんじゃない。


私が欲しかったのは


最も違う自分


欲張りでも我侭でもあるのだろう


私は,そんな


思い通りの自分を手にした。





基本は大事だ

名前も変わった名前の方が断然いい

私の名前は亜梨子

「ありこ」,ではない

「ありす」だ。

私は私が望んだとおり

人とは少し違った名前になっていた。

これは初めからだ

私がどうあがこうと,変わるものでもない

これだけは両親に感謝している

亜梨子,こんな変わった名前をつけてくれてありがとう。



学校だって人と同じように進学するのでは

面白くない。

もちろん私は私が望んだ有名な私立の小学校に通い

エスカレーター式の学校を蹴って

中学も名門私立中学校に通った。

私は私の望みのためなら,なんだってする。

今までだって,厳しい勉強やハードな一日

幼い頃から我慢してきた。

高校も望みの有名な私立の学校に通っている。

別に家が特別金持ちだった訳でもない

「どうしても将来有望でありたいの」

そんな出任せを平気で親に言っていた

私はいい子だったので,私の我侭はすぐに通った。




「不思議ちゃんだよね」

「変わってるー」

そんな言葉が欲しかった

そこらへんに居る今時の若い子じゃ嫌だったのだ

天然なんかじゃ物足りない

もっと,もっと,を求めた。

だから,今の私は

学年でも噂の不思議ちゃん

私生活は謎につつまれているのだ。




もちろん私服だって

変わってなくちゃ嫌。

流行りのスカートに流行りのコートじゃ

全然納得いかない。

それは,私の趣味もあってだが

フリル全開の人々が振り返るような,

いわゆるロリータファッションを好んで着ている。

両親はそんな私を

「流行に流されることなく,自分の意思をしっかりと持っている」

「それに,勉強も出来て頭もいい。将来有望だ。自慢の娘だ」

と,褒めまくる。

本当は自分の欲求だけで動かされている

ただの我侭な女の子なんだけれど。




もちろん外見だって

街を歩いていればよく見る顔だなんて

絶対に嫌。

でも,私の容姿は

悪くはなかった。

それも両親のおかげ

自分で言うのもなんだけど

目はパッチリと大きく,童顔で,鼻は小さめ

アイドルのような顔だ。

自慢じゃないけれど

下校中の電車で

男子に何回か声をかけられたことだってある。

自慢じゃないんだけれど

深夜のアイドル番組や秋葉原で行われるイベントに参加したことだってある

本当に自慢じゃないけれど

ファンクラブまで出来てしまった時期もあった

それは最近,約1年ほど前の話

私はアイドルなんてとっくにやめている

普通のアイドルじゃ嫌だったの

輝いている間に消えてしまいたかった。

外見には恵まれていてよかった

望みどおりの顔でよかった

これも両親に感謝しなければならないところだ。






でも,私はまだ何か足りない


もっと,もっと


何かが欲しい







欲しいものが分からないと

動くことも出来ない。

無性に苛々して,無駄な神経を使っているのだろう


私は深夜に放送されていた夜の渋谷の街に居る病んだ若者のドキュメンタリーを観たことがあった

今は全く,憧れは抱かないが

昔はリストカット,麻薬,売春行為などに心を奪われていた

変な時期があった

人との違いを強く求めていた私が

まず欲しがったのは

人と違う傷であった。

リストカットや麻薬の中毒症状などは,人と違った傷と思いこんでいた

でも違った

今はそんな傷を自らつけている若者が後を絶たない

私は人と同じ傷を持ちたくなかったので

自殺行為は間逃れた。

売春行為も増えてきていたので,もちろんやめた

あと一歩で私は

確実に地獄へ陥れられるところであった。



「亜梨子,もうすぐピアノの先生がお見えになるわ」

お母様もお父様も

私をこんなに大切になさってくれる

でもそれが時々無性に飽きてくる

ドラマや小説の中のお話のように

悲惨な家庭を思い描いてみたりもした

でも

家庭のことまでは,私がどう足掻いても,どうにもならないので

幸せな家族を演じている。


「亜梨子,先生がお見えになったわ」

「まぁ先生,こんにちは」

私はここらでは有名なお嬢様だ

特別お金持ちだった訳じゃないが

お父様の会社が今,のりに乗っているらしく

少しつづではあるが,確実にお金持ちへと成長しているところなのである。

早く億万長者になりたい

そして大きなお城を建てるの

人々を見下ろして過ごす生活なんて,最高,素敵


私はいつものようにピアノのお稽古を終え

今日は街に繰り出してみることにした

「亜梨子,何処へ行くの?」

「お友達と約束をしているの」

「まぁ。それじゃあ待ち合わせの場所まで送って貰いなさい」

「すぐ近くなの」

「でも,最近物騒な事件が多いじゃない?亜梨子が巻き込まれるようなことがあったら,大変でしょう?」

「分かりました。車は待たせてあるの?」

「お嬢様,此方へ」

私のお家には

何処に行くでも送り迎えをしてくれる

召使がついている。

お父様の会社が,物凄くのりに乗っているらしいので

どんどんお金持ちになっていっているのです。

このままいくと,お城も夢じゃない?


「おじいちゃまのお家まで頼める?」

「はぁ…お友達とお約束をしていたのではないのですか?」

「あれ,嘘」

「畏まりました」

車は特別豪華なものではないが

いつかリムジンに変わるのではないだろうか。

私は気が変わったので,おじいちゃまの家に行くことになった。

「おぉ,いらっしゃい」

「御機嫌よう,おじいちゃま」

「亜梨子ももう一流のお嬢様か」

「そんな大したものでも御座いませんのよ」

「…亜梨子は何不自由ない生活が出来ていて幸せ者だ」

「幸せ者?」

「亜梨子,わしは用があっての…ちょっと出かけなければいけないんだ」

「ふぅん,分かりましたわ。では,さようなら」

私は笑顔で手をふり,大富豪のお嬢様を熱演した

私はずっとこんな生活を送るつもりはない

もっと変わった,まるで物語の主人公のような人生を送りたいの

「お嬢様!大変です,お父様が…!」

「お父様が,どうかしたの?」

「……その,」

「言ってくれないとわかんないじゃない」

「…事故で,今,病院に運ばれたと,連絡が……」

嘘。まるで主人公じゃない。

内心ドキドキしながら悲惨な昼のドラマを思い出していた

突然裕福なお嬢様から貧乏な苦労人へと変貌してゆく様

これが私の望んだ生活?未来?

まさか 冗談じゃない

苦労は嫌なの

でも私,劇的な生活を望んでいるわ

誰よりも,きっと世界で一番

だから

昼ドラよりもどろどろと

悲惨な人生も,いいんじゃない?悪くないわよね



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