秘密(小説)


































私には大きな秘密がある














「ねぇねぇ,聞いた?転校生,すっごく綺麗なんだって!」

「聞いた聞いた!先生も可愛い子が来るぞぉ,って!言ってたもんね」

「マヂ楽しみ!俺,惚れるかも!」

 ━ガラ

「ほらほら,席につけー」

「先生!転校生は?」

「分かってる。今紹介する」

「待ってましたー!」

「入っていいぞ」



「こんにちは,竜崎桃香です」

「すげぇ!名前まで綺麗じゃん」

「ホント可愛い!」

教室中がざわつく

私はやっと

憧れの地位を手に入れた

「竜崎から挨拶があるから,静かにしろ」

教室中がいっせいに静まり返る

「このクラスには,優しい人たちがたくさん居るって,先生から伺っていました。本当みなさん,優しそうで,ほっとしました」

「彼氏居んの?」

お調子者の男子が叫ぶ

「いたらいいんだけど,生憎そのような人はいないんです」

「マヂかよ!俺らにもチャンスあるってことか!」

「馬鹿,うるさいよ,男子!」

「これから,この学校で一生懸命頑張りますので,よろしくお願いします。みんな,仲良くしてくださいね」

人気者になりたい,だなんて

誰もが持つ

在り来たりの夢

でも私は

その夢をかなえるためだけに

今まで必死で生きてきた

「竜崎さん」

「桃香でいいですよ」

「敬語なんてやめてよ,友達なんだから!」

私は笑顔を振りまいた

「ありがとう,嬉しい」

「桃香はさ,どこの中学から来たの?」

「言っても,分からないと思うよ」

「遠いとこ?」

「そう,遠いとこ」

「そこに好きな人とか,いなかったの?」

「うん,いなかった」

「告白,何回されたことある?」

「2回,かな」

「嘘ぉ!これだけ綺麗で可愛いのに!」

「ありがと」

私の噂はたちまち学校中に広まった

「綺麗な子が来たらしいよ」「すっごく可愛いんだって」「性格もいいんだって」「優しい子らしいよ」「芸能人並みに可愛いの」

私は転校してきた日1日で

10人の男子に告白された

「一目ぼれ,ってやつ。あまりにも可愛いから。でも,気持ちは本気。遊びでも冗談でもない。軽い気持ちじゃないんだ。付き合ってくれ」

「すっごく嬉しい。だからね,お友達にならない?」

「友達じゃ駄目なんだ」

「…でも,お互い全然知らない内に付き合っちゃっても,良くないよ?もっともっと,お互いを知ろ?」

「…分かった。じゃあ,友達として,仲良くしよう」

「うんっ」

みんな

どうしてこの顔が好きなんだろう

みんな

どうしてこんなかわいこぶりっこが好きなんだろう

私は大嫌い

こんな女

こんな人間

大嫌い

「桃香ぁ!」

「ん?」

「隣の男子校の奴らがさあ!今日,めちゃ可愛い子が転校してきたって聞きつけて,正門の前で待ち伏せしてんの!」

「えー?」

「桃香のこと待ってんの!どおする?」

「……迷惑…かけちゃってるね,私。ごめんなさい。今,帰ってもらうように,言ってくるね」

「え?!やばいよ,桃香!」

「大丈夫」

「それなら私も行くよ!」

「ううん。これ以上迷惑かけれない」

私は走って正門まで向かった

いい人を演じることは

自分を捨てなければならないんだ

「みなさん?誰かをお待ちなら,私が呼んできましょうか?」

男子たちの視線がいっせいに私に集まる

「もしかしてさあ,君が転校生?」

「まじ?!超可愛いじゃん!」

「静かになさって下さい!私が今日この学校に転校してきた者です。なにか御用ですか?」

「噂どおりだなあ」

「まじで可愛い」

「俺らとちょっと遊び行かない?」

「ねえ!いいじゃん」

私は男子たちの真ん中に立った

「ね,行こ」

「…あんたらみないな雑魚と遊んでる暇ないの。私にはやらなきゃいけないことがある。あんたらみたいにフラフラしてる奴,大っ嫌い。分かったらさっさと帰れ。もう来んじゃねーよ」

「は?!何言っちゃってんの?」

「可愛いからってさあ,何でも許されるわけないよ?」

「いやぁ!」

「何してるんだよ!さあ,逃げて!」

私は教室まで走った

「桃香!大丈夫?!」

教室のみんなは

上から私達のことをみていたようだ

でも

私の言い放った言葉は

聞こえているわけもなく

私がただ危なかった,ということしか伝わっていない

「あの人…誰?」

私は私を助けてくれた男を指差した

喧嘩が強いようで

男子たちはもういなくなっていた

「ああ,A組の多川。あいつさぁ,喧嘩だけは強いんだよね」

「そうなの……お礼,言わなきゃ」

私は小走りで

校門前へ向かった

「多川くんっ!」

「…ああ,さっきの。大丈夫?」

「うん,多川くんが助けれくれたおかげだよ」

「別に」

「…ねぇ!お礼に今日遊びに行こぉ?」

「……お前,変わったよな。そんなキャラじゃなかったじゃん?まあいいけど…てか今日俺,忙しいんだわ。じゃ」

そんなキャラじゃなかった…

変わった…

まさか

多川

私の過去を知ってるの?

「待って!」

「なに?」

「私のこと,知ってんの?」

「見りゃ分かるよ。どれだけ性格変えたって,顔変えたって,声は変わらないし,面影だってある。お前,昔の方が可愛かったよ」

「何が昔よ。あんなの私じゃない。あんなブス,もう居ないんだから」

「ずっと下向いてたからあんま顔わかんなかったけど,十分可愛いと思ってた」

「目も小さかったし…今より7キロも太かったし…あんな自分,大嫌い…最低」

「整形なんてして自分捨てる奴のほうが,よっぽど最低だよ」

多川

思い出した

小学校のときに

3年のとき以外

ずっとクラス一緒だった奴だ

中学で転校したんだ

こんな所で会うなんて

最悪

「あ,桃香」

「多川くん,クールなんだね。私,お礼するって言ったのに,断られちゃったあ…迷惑だったかな」

「あいつ,そーゆー奴なんだよ。私,中学の時から一緒なんだけど,あの頃からクールで,つるんだり馬鹿騒ぎしたりするのが嫌いな奴だった」

「へぇ…麻衣子,多川くんと友達なんだ」

「友達ってほどじゃないよ。ただ中学のときから知ってるってだけ」

「ふーん…」

私の過去を知ってるなんて

許されない

あいつ

つるんだりするのが嫌い…か

私の過去を人に話される心配は今のとこなしか

でも油断できないね

あいつ

整形のこともバレてるし

過去なんてなくなればいいのに

あんな最悪な過去なんて

いらないのに

「桃香ちゃん,ちょっと…いい?」

「うん,どうしたの?」

大人しそうな子だった

透き通るような声

「私,愛っていうの」

「愛ちゃん,よろしくね」

私は愛に連れられ

屋上に来た

なんなの…一体

「私と友達になってくれる?」

「もちろん!」

「…可愛いよね,桃香ちゃん。私,憧れるなあ…」

「愛ちゃんだって可愛いよぉ?私なんて全然可愛くないんだからぁー」

「愛って呼んで…」

「愛,どうして私をこんなとこまで連れて来たの?」

「人前じゃ…言えない。友達になって欲しいだなんて…」

変な子…

まさかイジメられてる?

そんな嫌われ者と付き合うなんて嫌よ

「私,桃香ちゃんみたいな可愛くて人気者で優しい子と友達になるのが夢だった」

全く

なんなのこの気味悪い子は

私の邪魔になるようなことだけはやめてよね

「大丈夫。桃香ちゃんには迷惑かけないわ」

うそ

気付かれた?!

「愛,迷惑って,どうして?愛のこと迷惑だなんて思うわけないじゃない」

「本当?」

「もちろん」

「じゃあ…私達,友達よ。絶対,裏切らないでね」

「…教室,戻ろうよ,愛」

階段の下に多川が居た

目があったけど

多川はそのまま行ってしまった

「ねぇ桃香ちゃん…多川くんと友達なの?」

「友達じゃないけど…多川くんね,今日私のこと助けてくれたの」

「愛も…助けられたことある」

俯いてるせいで

声がくぐもって聞こえた

鬱陶しい

まるで昔の私みたい

「桃香!」

「麻衣子…どうしたの」

「愛に連れられてったから」

「あの子,静かな子だね」

「変な奴なんだよ。愛と友達になった子は,みんな,転校してる。あいつ,疫病神なんだよ」


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