い ち ご ネ ッ ト  (小説)





いち|



いちご|



いちごね|



いちごねっ|



いちごねっと|



いちごネット|









いちごネット













いちごって

甘くてすっぱくて

まるで恋のよう


貴方を真っ赤に

染め上げてあげる











「ねぇ!いちごネットって知ってる?」

「当たり前じゃーん!」

「ちょーヤバイよね!」

「まじヤバイよ!うちの友達いちごネットに入会したらしーよ!」

「まじかよー」

「やべぇじゃん!」




今,一番話題な

いちごネット

私にも

そのいちごネットの入会案内メールが

届いてしまった



「亮太…相談があるんだけど」

「え…俺?!」

「あんたしか居ないでしょ」

「まあー…そうだけど,何で俺?珍しいじゃん!」

「いいから…ちょっと来てよ」

「おー」

亮太なら

私の相談

真剣に聞いてくれると思った

もう私は

亮太にしか相談できない

「あのさ…」

人通りがほとんどない

裏道に亮太を連れ出した

「美知が俺に相談って,なんかあった?」

「あったから相談すんの。真面目に聞いて…」

「おう」

「今さ,いちごネットって…流行ってるでしょ?」

「あー,女子たちが騒いでるやつ?」

「それでね,その,いちごネットから…入会案内メールが届いたの」

「入会案内って,あれ,マジであんの?!」

「そんなのわかんない。でも実際うちに,入会案内メールが届いた…」

「誰かが美知に送ったとか?」

「あたし,パソコンのアドレス人に教えたことないんだよね…お父さんもお母さんも使わない,あたし専用のパソコンだから…どっかからアドレスがもれるってことは有りえないの。それに,パソコンにメールなんて届いたことなかったから」

「本当のいちごネットからのメールだと?」

「じゃないのかな…って。半信半疑だけど」

いちごネットは

可愛らしい名前をしているが

恐ろしいサイトだった。

入会案内メールは

選ばれた女の子にしか届かない

恋をする女の子だけに届く

不思議なメールだった。

そのメールに付属されているアドレスにリンクしたら

もう入会は完了

その日からいちご会員になるのだ。

みんながどうしてその

いちごネットを恐れているのかというと

いちごネットに登録した女の子が

恋をしている相手は

必ず

いちごのように真っ赤なって

死ぬというのだ。

「でもさ,そんなの出鱈目だと思わない?」

「…でも実際,ニュースでもやってるじゃない。いちごネットの関係で死んだと思われる男子が…たくさん居るって」

「そんなの全部出鱈目だって。なんか仕掛けがあるとしか思えないだろ?」

「そうなんだけど…」

「まさか登録…」

「してない」

「じゃあそれで大丈夫だって」

「それがね…ここ何日間か,メールを消去し続けて来たの。でも…ずっと来るの。今日なんて,20件も来てた。アドレスも何回も変えてる。おかしいじゃない…」

「…美知,好きな奴居んの?」

「え…」

「だって,いちごネットからメールが来るのは,恋してる女子だけなんだろ?」

「うん…」

好きな人がいるって

私の口から言いたくなかった

私の好きな人は

亮太だったから

「とりあえず…メール消し続けろよ。そのうち飽きるって。な?」

「…いちごネットの入会案内メールを100件以上消去すると,一番の親友が殺されるって…噂もあるの」

「なんだよそれ…で,今何件消去した?」

「34件」

「まだ大丈夫だ。今日俺も家行っていい?メール…見てみるわ」

「うん…」

本気で考えてくれてることが伝わって

凄く

嬉しかった

その日

私達は一緒に家へ向かった

「まあ…入って」

「女の子の部屋に2人きりなんて,初めてなんだけどー」

「私の部屋なんて小さい頃何回も入ってるじゃない」

「あれはガキん時の話」

「…とりあえず,メール,見てみて」

私はパソコンの電源を入れ

メールボックスをクリックした

送受信ボタンを押すと

50件のメールが届いていた

「全部いちごネット…」

「すげぇな」

私は1件

メールを開いて見てみた



星野 美知様

貴方は選ばれたいちごネットの会員になる権利を与えられました
いちごネットへの登録は完全無料
あなたもいちごの様な彼に恋をしましょう
http://itigo.koi.co.jp/
アクセスしていただくと入会完了です



「いちごの様な彼って…なんなの」

「気味わりぃな…こんなのが50件も」

私は薄暗いその部屋が

急に気味悪くなって

テレビの電源を入れた


「…パソコンの画面が開いてあり,画面にはいちごの様な貴方が大好きです,と言うメッセージが残されていた模様です。警察は,犯人の身元特定を急いでいます。次のニュースです。横浜で火災が発生し,6人が負傷,そのうち2人が意……」

「ねぇ……まさか…」

「いちごネットの仕業だよな…確実に」

「いちごネットを作ってる人を突き止めればいいんじゃ…絶対裏で暴力団関係に繋がってるに違いないよ。だって…殺しまでするんだよ…考えられない」

「登録してみろよ。それを警察に報告しよう。おまえの好きな奴を見張ってればいいんだろ?そしたら犯人捕まるんじゃねぇのかな…いちごネットって言っても,所詮はどっかの誰かが作ったサイトだろ。犯人は絶対捕まるって」

「…登録なんて,出来ない」

「警察に協力してもらえば大丈夫だって。それに俺たちも見張ってようぜ。絶対殺されることはないよ」

「私の…好きな人を,教えなきゃ駄目になるじゃない」

「こんなに大きな事件になってんだ。それに,俺たちの仲じゃん。これで犯人が捕まると思えばさ…」

「そんな…簡単な問題じゃないよ」

私は

言いたくなかった

どんな理由があっても

絶対に

告白なんてしたくなかった

亮太に迷惑かけるのも嫌だったし

何より

私達の仲が壊れることが怖かった

「このいちごネットってさ,片思いじゃないとメールって届かないわけ?」

「え…」

「いや…片思いの奴にしか届いてないのかなーって…」

「今のとこ…片思いの人にしか届いてないみたいだけど,どうして?」

「否…お前がさ,両思いになればいいんじゃないかと思って。両思いになっちまったら,殺せねぇかな…って。一か八かの賭けだけど。何もしないでもがくより,動いた方が断然いいから」

「でも私…告白なんて出来ない……ごめんね。いい案だと思ったけど…」

私の勇気がないだけ

根性がないだけ

気合が足りないだけ

私のせいで亮太が死んじゃう

私のせいで巻き込んじゃう

いちごネットなんて無くなってよ

早く


「私,いちごネットに登録する」

「は?!何言ってんだよ?!冗談だろ?」

「このまま何もしないでじっとしてても,メールは送られ続けてくるだろうし。登録して,私の好きな人の所に殺しに来た時に,犯人捕まえればいいじゃない。動かなきゃ進展なしだよ。そんなの我慢できない」

私はいちごネットから送られてきたメールに

記載されていたアドレスをクリックした

「おい!待てって!」

いちごネットにアクセスしてしまったようだ

ピンクの背景にいちごの絵が浮かび上がる


ようこそ

いちごネットへ

~登録完了~

貴方は今日から

いちご会員です

楽しいいちごライフを送りましょう!

ログインID:itigo27

パスワード:299836844

登録完了メールを送信しました

大切に保管しておいて下さい


「まじかよ…」

「もう…後戻りは出来ない」

「どうするつもりなんだよ」

「犯人が現れるのを待つ」

「…警察には?」

「相談するけど相手にされないと思う」

「じゃあ…」

「自分でやるしかないよ」

「本気なんだな?」

「うん,本気」

「わかった…俺も協力する」

「じゃあ亮太には,今日から2週間,此処に居てもらう」

「泊まり?」

「親は帰ってこないから大丈夫」

私はメール画面をクリックし

登録完了メールが届いていることを確認した

「来てる…」

件名:いちごネット

登録完了!
あなたは今日からいちご会員です
会員ナンバー027
我々いちごネットは
いちごのような恋を応援します

「とうとう始まったんだな」

「これからが戦いだよ」

「犠牲者をこれ以上増やす訳にはいかねーもんな…頑張って犯人逮捕しような!」

「うん」

亮太は私を元気付けようとしてくれたのだろう

でも私は

亮太への罪悪感でいっぱいだった

亮太を危険な目に合わせている

私の勝手な

気持ちのせいで

この気持ちがなくなれば

こんな身勝手な気持ちがなくなれば

亮太が危険な目に合わないで済む

そうだよね

なんでもっと早く気付かなかったんだろう

消そう

はやく

「とりあえず俺,着替えとか取りに帰るわ」

「あ,あたしも行く」

「すぐ戻るから。お前は家でいちごネットをやつける作戦でも立てとけ」

「でも…」

「まさか,心配してんの?」

「だって…もしもいちごネットが来たりしたら…」

「馬鹿。お前が好きなのは俺じゃねーだろ。俺が殺されるわけねーじゃん」

「……そっか。そーだよね!」

笑えなかった

気付いてないんだよね

当たり前だよね

なんか…ショックだよ

ヴー ヴー ヴー

パソコンの隣で携帯が動いていた

知らない番号

誰からだろ…

 「もしもし」

 ━「あ…美知?どうしよう!助けて…」

 「亜佐美?!どうしたの?」

 ━「いちごネットからメール来て…」

 「いちごネット…」

心臓が大きく動いた

激しく鼓動し始め

私の呼吸の邪魔をする

 ━「真っ赤な彼に恋をするって…翔太が…殺されちゃう!」

「亜佐美,いちご会員だったの!?翔太って,山本翔太?!」

 ━「どうしよう!私が好きなばっかりに…私のせいだよ!」

 「落ち着いて!私,今から山本の家に行くから,亜佐美も行って!」

 ━「どうしよう…翔太,死んじゃったら…私のせいで…いや…嫌」

 「いい?!山本は無事だよ!亜佐美のせいじゃないからね!」

私は急いで山本の家へ向かった

いちごネットからのメール

真っ赤な彼に恋をする

脅迫状メール?

いちごネットの奴,絶対に捕まえてやる

山本という表札を確認して

私はインターホンを何度も押した

「山本!」

いくら呼んでも返事がない

「山本!出てきて!」

私は家から少し離れ

窓から家の中の様子を調べた

「山本?!」

返事がないのは変わらなかった

耐え切れず,ドアを開けてみた

「…開いた……」

私は家の中へ入った

「こんにちは!誰か居ませんか?!…山本?!」

返事がない

カギが開いているのにおかしい

私は胸騒ぎを押さえ

階段を駆け上がった

「山本!」

部屋のドアを開けようと

ドアノブに手を掛けた

開かない

「山本!あけて!」

「うぁぁぁあああ!」

中から山本の悲鳴が聞こえてきた

ノブを引っ張ってあけようとしたが

開くはずがない

「きゃあ!」

ドアが勢い良く開いた

私の横を風邪が通り抜けた

「…うそ……」

私の目の前に広がった光景は

信じられない

地獄のような光景だった

血で染まった真っ赤なじゅうたん

机もイスも

真っ赤だった

ベッドの上に山本がいる

いちごのような山本が

「いやぁぁぁああ!」

ドドドドドと階段を駆け上がる足音がした

「美知?!」

亜佐美だった

「見ちゃ駄目!」

私は亜佐美を強く押した

「ッいた…」

亜佐美は床に倒れた

「美知…何があったの……翔太は?」

亜佐美が部屋の中に入っていった

「亜佐美…」

私は掛ける言葉が見つからなかった

「いちごってさ,甘いよね。恋も甘い。でも時々,すっごく酸っぱい時があるよね」

「亜佐美?」

「いちごと恋,共通点がいっぱい」

「…亜佐美,どうしたの?」

「いちごネットは…どうして恋する相手を殺すのかわかる?」

「…ううん」

「すっぱい時期が来たんだよ。いちごにとって,とても食べることが出来ない,酸っぱい酸っぱい時期が」

「亜佐美…どうしたの?落ち着いて?」

「翔太は酸っぱくなっちゃった。だから,いちごネットは,永遠に甘いいちごにしてくれたの」

「亜佐美…?」

「優しいサイトだよね…私のこと,考えてくれた」

「亜佐美…違うよ,いちごネットは,最低だよ」

「酸っぱいいちごは要らないの。甘いいちごだけが欲しいの。女の子は,皆そうなの。いちごネットは,そんな女の子の見方」

「違う!」

「あたし,帰るね」

「待って!亜佐美!」

私はどうすることも出来ず

ただそこに立ち尽くした

ヴー ヴー ヴー

ポケットの中で携帯が響く

ヴー ヴー

 「…もしもし」

 ━「美知?!お前,今何処に居るんだよ?!」

 「山本の家」

 ━「山本?!翔太の家か?なんで…」

 「いちごになってるよ,山本」

 ━「いちご…?!美知,今すぐ行くからな!」

プッ ツー ツー ツー

電話はすぐに切れてしまった

私は

電話の切れたあとの

ツー ツー と言う音を

ずっと聞いていた

「美知!」

「……酸っぱい山本は永遠に甘くなったの」

「美知?大丈夫か?」

「亜佐美が言ってた。永遠に甘いいちご…魅力的ないちご…」

「帰ろう,美知」

甘い果実

いつかは酸っぱくなって

私の前から消えるときが来る

でもきっと

それは永遠の甘い果実となって

私の元に帰ってくる

「亮太は酸っぱくならないで…」

手を握られた

ぬくもりが直接伝わる

甘い午後

「美知,起きろよ」

「…あれ……私…何やってんの?」

「家に着いた瞬間,玄関で倒れたんだよ。それから俺がベッドに運んだ。スヤスヤ寝てただろ,お前」

「…私…亜佐美から電話貰って,山本の家に行ったの」

「…美知,思い出したくないことは思い出さなくていい」

しっかりと覚えていた

あの言葉

酸っぱいいちごは永遠の甘いいちごに変わる

亮太はまだまだ

とても甘くて美味しい

旬のいちごだった

「俺さ,美知が電話で翔太の家に居るって言った時,美知の好きな奴は翔太なのかと思った」

「え?違うよ,山本を好きだったのは亜佐美」

「直ぐ分かったけどな」

「うん」

「それで俺,気付いたんだよ」

「何に?」

「美知には,好きな奴が居るってこと,わかってるんだけど,聞いて欲しい」

「うん…」

「俺…美知のこと,好きなんだ」

「えっ…」

「ごめんな,こんな大変な時に。でも俺,やっと気付いたんだ。ずっと美知と一緒に居て,何かモヤモヤしてた。言い表せない気持ちはあった。でもそれが何なのか,分からないままだった。でも今回の事件があって,俺は気づいた。美知が好きだ。」

「…亮太…それ,ほんと?」

「あ,でも気にすんな。俺はこれからもお前のいい友達だから。この件にもとことん協力するから」

「本当に協力してくれる?」

「ああ」

「じゃあ亮太はずっと私を好きでいて。亮太が酸っぱくならなかったら,亮太は殺されたりしない。私も好き。亮太が大好き」

「…まじで?」

「マジだよ!」

亮太は私を抱きしめた

ねぇ亮太

亮太が酸っぱくならないのなら

いちごネットなんて

怖くないよね

「両思いと分かった今,俺らはいちごネットなんて怖くないな」



同じこと考えてた

「うん」

私達は

少しの間いちごネットのことなんて忘れていた

2人で居れば絶対に大丈夫だと

自身があったから

「美知ー,パソコンにメール来てるぞ」

「メール?」

メール

いちごネットからのメールは

2週間ぶりに私達に送られてきた

「いちごネットからだ…」

「いちごネット…どうして…」

「読むぞ?」

「………うん」

どうしていちごネットからメールが

私達は

幸せなのに

「いちごの命は短い…早く食べてしまわないと,腐ってしまいます」

私はパソコンを除いた

画像が添付されているようだ

「どうする?開く?」

亮太がマウスを動かす

矢印がURLの前で止まっていた

「開かない方がいいと思う…」

「俺も」

URLの下には

メッセージが付けられていた

この画像には未来が映し出される

「…未来ってなんだろ」

「見ない方がいいと思う。気味わりぃ」

亮太はそういってイスから立ち上がり

部屋から出て行った

じっとマウスを見つめていた

見たい気持ちと怖い気持ちが交差して

好奇心が生まれる

すると

画面の中の矢印が勝手に動き出した

スーッと

URLをクリックした

カチッという音と共に

新しい画面が開かれた

私は何も出来ずにただじっとその様子を見ていた

少しずつ

画像が表示されてきた

大量のいちご

その上に亮太が寝転んでいる

「亮太…?」

カチッと

また音がした

すると

いちごが少しずつつぶれ出していく

「…え……なにこれ…」

亮太が少しずつ

いちごに埋まっていく

「…うそ……」

カチッという音と共に

画面が消えた

メールフォームも消え

待ち受け画面が表示された

私は唖然として

ただそこに突っ立っていた

「美知ーい?」

亮太の声にハッとした

白昼夢を見ていたようだ

「何いー?」

私は階段を駆け下りていった

すると

玄関に亮太と隣のおじさんが居た

「……田辺さん…こんにちは」

「こんにちは,美知ちゃん。今日はおすそ分けを持って来たんじゃ」

「おすそ分け…ですか?」

「親戚の家からねぇ,大量の苺が送られて来たんじゃ。わし1人じゃとても食べ切れんから,美知ちゃんにおすそ分けに来たんじゃ」

おじさんは小さなダンボール箱のふたをあけた

私はドキリとした

そこには真っ赤なイチゴが大量にあったのだ

さっきの画像のようなイチゴが

たくさん詰め込まれていた

「わぁ…こんなにたくさん。おいしそうですね,有り難う御座います。頂きます」

「ジャムにして食べても上手いんじゃ。じゃあ,わしは…」

亮太の顔は明らかにこわばっていた

「ほんと,ありがとう御座いました」

ガチャっとドアが閉まった

私はペタリとそこへ座り込んでしまった

「イチゴ…貰っちゃったね」

「美知…大丈夫か?」

「イチゴジャムにしようか。天然のイチゴジャムはね,すっごく綺麗な赤なんだよ」

「とりあえず美知は部屋で休め」

「イチゴ,あとでちゃんと食べようね。折角貰ったんだし」

私はイチゴの夢を見た

大量のイチゴに埋もれていく亮太を

私はじっと見つめている

助けたくても体が全く動かないのだ

何度も何度も亮太の名前を呼ぶ

でも亮太は

そのままイチゴに飲み込まれてしまう

そんな夢だった

目覚めは最高に悪かった

頭がズキズキ痛んで

体が重く,だるさまで感じられた

私は何も考えずにパソコンを起動させた

メールボックスを開くと

いちごネットからのメールが来ていた

私はクリックしてメールを開いた

「次のイチゴは…甘くて,切ない……」

また

犠牲者が出てしまうのだろう

そしてそれを

私達はただ待つことしか出来ない

私は階段を降り,リビングへ行った

「あ,起きた?」

「またいちごネットからメール来てた」

「え?」

「次は甘くて切ない…だって」

「また誰か殺されるのか…」

「そうみたい」

「甘く切ない…か」

いちごネットからのメールがきて

1週間がだった

おじさんから貰った苺は

私が苺ジャムにして置いたが

亮太も私も食べようとはしなかった

「ねぇ亮太,甘くて切ないって…何のことだったんだろうね」

あのメール以来

いちごネットからのメールはまだ来ていない

「そんなに続々と被害者は出ないだろう。翔太が死んでから,まだ間もない」

「そうだけど…次は誰なんだろ。それを突き止めなきゃ,助けられないよね…」

「まずは甘くて切ない,の意味を考えることからだろ」

亮太が読んでいた漫画を机においた

私も亮太の前に座った

「甘くて切ないってさ,初恋じゃないのかな」

「初恋?」

「そう。初恋ってさ,蕩けそうなほど甘いじゃない?でも,初恋は叶わないの。それにはじめての恋はどうすることも出来なくてただ好きだって気持ちが膨らんでいくばっか。だから凄く切ない」

「今,初恋してる奴を探せばいいんだ」

「私,友達に聞いてみようかな。明日学校で聞いてみるよ」

亮太は頷いて,席をたった

とりあえず初恋と仮定したら

亮太が殺される心配はまずない

私の恋は初恋じゃない

「美知!」

2階から亮太の声が聞こえた

「なにー?」

私も聞こえるように大きな声で返事を返す

「メール来てるぞ!」

メール,ときいて

私の頭の中はいちごでいっぱいだった

「いちごネットから?!」

私は急いで階段を駆け上がった

パソコンの画面にはメールフォームが開かれていた

「受信して」

「もうした。いちごネットから,1通来てたぞ」

私はメールを確認した



星野美知 様
あなたの恋は実りましたか
あなたの想いは届きましたか
貴方たちのようになることを
心から願っている少女は
空回りばかり

甘くない
甘すぎて
甘くない



「どういう意味だろ…」

「甘すぎて甘くない…意味わかんねぇよ」

「ねぇ…やっぱり,初恋のことなんじゃないかな」

「え?」

「ほら,貴方たちのようになることを願っている少女,って,好きな相手と付き合いたいって思ってる女の子のことなんじゃない?」

「いちごネット,俺たちが付き合ってること,何で知ってるんだよ」

「…見てるんだ……」

「嘘だろ…」

「見られてるんだよ,絶対」

何処かに目があって

何処かからずっと

私達を見張ってるんだ

 ヴー ヴー ヴー

「美知,電話…」

 ヴー ヴー 

「美知…電話なってるぞ」

「えっ…」

「電話」

「あぁ…」

 ヴー ヴ

「はい」

 ━「もしもし?星野先輩ですか?」

「そうだけど」

 ━「亜美です。あの…相談したいことがあるんです」

「相談?うん…いいよ」

 ━「聞いてくれますか?」

「いいよ」

 ━「じゃあ,今からお家に伺ってもいいですか?迷惑ですかね…?」

「ううん。今親居ないから大丈夫だよ」

 ━「じゃあ行きますね!」

「はーい。ばいばい」

亜美…どうしたんだろ

一体,何の相談よ

こんな大変なときに

「亜美が来る。今から。相談したいことがあるって」

「美知,大丈夫か?」

「どうして?」

「顔色,悪いから…」

「私は平気」

「…ちょっと,休んだほうがいいんじゃないか?」

「大丈夫だってば」

「でも顔色…」

「うるさいなぁ…放って置いてよ」

大好きな亮太が

疎ましく感じる

「ああ…もう…なんでよ……なんで私がいちごネットなんかに悩まされなきゃいけないのよ…」

「美知…落ち着けって」

うるさい やめて 

 ピンポーン

「亜美ちゃん,来たんじゃないか?」

「亮太出て」

亮太は黙って玄関へ向かった

「えっ!亮太先輩?!」

「美知なら中だよ」

「どうして先輩が?!」

「いいから…中入って」

「亜美,私の部屋で聞くよ」

「先輩…どうしたんですか?顔色,よくないですよ?」

ああ…もう

「大丈夫だから」

いちごネットなんてなくなればいいのに

「入って」

私は亜美と部屋に入った

「で,どうしたの?」

「あの…私,今,好きな人がいるんです」

「好きな人?」

私はイスに座った

亜美は地べたに座り込んだ

目線が合わないから

私も地べたに座り込んだ

「あ,先輩はいいですよ。イスに座ってて下さい」

「いいの。さぁ,続けて」

「…はい。それで…私,好きすぎて,どうしたらいいか分かんないんです」

「誰なの,亜美が好きな相手って」

「……絶対に,秘密ですよ」

「分かってるって」

「…岡本先輩です」

「智?!」

「そうです…」

「あいつ,年下と付き合いたいとか言ってたから,チャンスあるよ」

「ホントですか?!」

「うん。それにあいつ,女の子らしい子が好きだから,持ち物はピンクで,私服は妹系。若しくは姫系。話し方もスローテンポがいいよ。天然な女の子は可愛いって言ってたから」

「そうなんですか!ありがとうございます,先輩!」

「頑張ってね」

「はい!先輩に相談してよかったです!私,実は初恋なんですよね,だから,どうしていいかわかんなくて」

…初恋

初恋?

「亜美,まさか…いちごネットに入会なんて…してないよね?」

「いちごネット…ですか?」

「ごめん,知らないよね」

「いえ,入会してますよ。今流行ってますよね。先輩も会員なんですか?」

「…入ってるの?」

「はい…いちご会員ですよ。どうかしましたか?」

初恋

いちご会員

「…智が危ない」

「え?」

私は急いで部屋を飛び出した

「先輩?!」

物音に気付いたのか

亮太も階段の下にいた

「どうした?」

「亜美がいちご会員だったの。それも初恋。智が危ないよ」

「智?!…連絡とってみる」

「私,智の家行く!」

「先輩?!どうしたんですか?!何かあったんですか?!」

「亜美はここに居て。絶対来ちゃ駄目だからね。すぐ戻るから!」

「連絡付かない。美知,急ごう!」

私は亮太と智の家へ向かった

どうか

無事でいて

私達は智の家の前にきた

インターホンを鳴らすが

返事はない

「家の電話にも出ない…」

「入ってもいいよね」

「ああ」

私達は玄関のドアをあけた

「開いてる…」

「智!」

「智!?居る?!」

2階から物音がした

階段に人影が見えた

「智?!」

「…なんだよ,お前ら」

「智…」

無事だった

「あ…上がってもいい?」

「おう…来いよ」

智は居た

ちゃんと生きてた

「もう…ほんと……心配したんだから」

「何でだよ。2人して」

「危ないから…智も私の家,来てくれない?」

「なんでだよ」

「智,狙われてるの。危ないの。絶対1人になっちゃ駄目」

「おい美知,何言ってんだよ」

「兎に角私と一緒に来て」

私達は

強引に智を私の家まで連れてきた

「あっ!先輩!何処行ってたんですか?!心配したんですよ!」

「ごめんね亜美,今から全部説明するから」

もう全て言おうと思った

次の犠牲者は出してはいけないのだ

もう誰1人

いちごネットに殺されるわけにはいかない

「美知,本当に言うのか?全部」

亮太が心配そうに私を見る

「言わなくちゃ,もう2人じゃ対処し切れないよ。智を守る為にも」

亜美と智は呆然と立っているだけだった

「亜美,智,私の部屋,行こ」

2人は黙って着いてきた

亮太も心配そうに私を見る

「信じてもらえないかもな」

亮太がぼそっと私に言った

「信じてもらえなくても,何もしないよりマシだから」

犠牲者は絶対に出してはいけない

智を危険な目に合わせるわけにはいかない

「…なあ,話ってなんだよ」

「うん……今から言う話,全部本当だから。冗談なんかじゃないから。黙って聞いててね」

「……ああ」

亜美は黙っていた

「あのね,いちごネットって知ってるでしょ?」

「…私,会員です」

亜美が情けない声で言った

「女子達が騒いでるサイトだろ?」

智は私達の表情から

今から話すことは重大なことなのだと悟ったようだ

「いちごネットは人を死に追いやるの。これ,見て」

私はパソコンを起動させ

メールボックスを開いた

いちごネットからのメールを全て見せた

今まで起きたことや

山本翔太のこと

次に狙われるのは初恋の相手だということ

全て話した

「…ちょっと…待ってください。その話が本当なら,私,ヤバイじゃないですか」

「…うん」

亜美が目に涙を溜めて

私の目をまっすぐにみている

「智先輩,殺されちゃうなんて…私,絶対嫌です!」

「…なんで,俺が?」

智の言葉に

亜美が遠まわしに告白してしまったことに気付いたようだ

「あっ…あの,えと……違うんです。……あの,私…」

「亜美,だから私達はこのことを話したの。守らなきゃいけないから」

「でも…そんなの,無理ですよ…きっと,みんな殺されちゃうんです…私だって!」

「亜美,落ち着いて。大丈夫だから」

「どうして私の好きな人なんですか?!どうして山本先輩なんですか?!どうしてターゲットは皆,美知先輩の友達ばかりなんですか?!何か…知ってるんじゃないの?!先輩,何か手がかり,知ってるんじゃないんですか?!」

「……私の…友達?」

「おい,美知のせいだって言うのかよ」

「そうじゃない……そうじゃないけど!おかしいじゃないですか!」

「たまたまだろ。次は俺かもしれない。ターゲットがたまたま美知と同じ学校の同じ学年の奴だったってだけだ。美知を中心にして事件が起こってるわけじゃないだろ」

「………次は…智先輩なんですよね」

「何で……何で俺なんだよ!」

「私が好きだからです!私が好きなばっかりに…私の勝手な思いがあるから…智先輩を危険な目にあわせてるんです……ごめんなさい!先輩は,私が命を掛けても守ります!智先輩だけは,私の勝手な気持ちで,殺させたりなんかしない!」

「………なんで俺のこと,好きになったんだよ」

「え…」

「何で俺なんだよ。男はいっぱい居るだろ?なあ…なんで俺がお前のために死ななきゃいけないんだよ!」

「智,好きになる気持ちは仕方ないことなの」

「だからって!」

「気持ちはわかる。でもな,相手のことも,少しは思いやれよ」

智は私の部屋から飛び出した

亜美は声を上げて泣いている

「智!待てよ!今お前は一人になるな!」

「うるせぇんだよ!そんな話信じるかよ!馬鹿馬鹿しい。翔太のことにしたって,偶然だろ!それをいちごネットか何だか知んねぇけど,それのせいにして!お前ら,狂ってんじゃねーの?!馬鹿馬鹿しいにも程があるよ!」

「…馬鹿馬鹿しくなんかないってこと,直ぐに分かるよ。智。」

「…なんだよ…何なんだよ!」

「馬鹿馬鹿しくても事実なの!信じないならそのまま死ねばいい!」

「おい美知」

「美知先輩はおかしい…人の命がかかってるのに…おかしいですよ」

「智…大人しく此処に居た方が安全だから。亜美ちゃんも。なあ…冷静に考えろよ。馬鹿馬鹿しい話でも,実際死者は出てる。智が次に死んでもおかしくない。そんなときに,言い争いなんか出来ないはずだろ。よく考えろよ。死にたくないなら,今は,俺たちと皆で此処に居た方が安全だ」

「お前ら,馬鹿?」

「…え?」

「俺と一緒に居るってことは,お前らも危険な目に合うってことだろ?それぐらい分かれよ」

「智…今は,変な気つかわなくていいから。私達はまだ死なない。何れそのときが来るまで,大丈夫なの。だから今は,智の安全が第一だよ。ここに居て。もうこれ以上…目の前で死んでゆくのを,放っておく事は出来ない」

智は不服そうな顔で

私達の前に座った

「……悪かったな,取り乱して」

私は首を横に振った

「……智先輩……」

亜美は俯いたままだった

「津崎,ごめんな。お前のせいじゃないから…」

「…謝らないで下さい。先輩は何も悪くないんです」

「俺,津崎のこと嫌いじゃない。でも付き合うとかはまだ全然考えられない。俺達には,まだまだ時間があるんだから,今は友達のままで居よう」

「……はい」

亜美も智も笑顔だった

亮太が私にひっそりと

「あの2人,いつか付き合うぞ」

と言った

「私,飲み物取ってくる。喉乾いた」

「俺行くよ」

亮太がすかさず立ち上がる

「いいよ」

「お前はこの2人と居ろ。それに,こんな時に一人になると危ないから」

「亮太…私の心配は要らないよ」

「いいから,座ってて」

私は渋々智と亜美の前に座る

亮太がドアを閉めた

「熱いねぇー」

智が冷やかす

「ほんと,ラブラブなんですね!」

亜美が目を輝かした

「そんなことないってば」

「私,先輩達は絶対,大丈夫だと思います」

「なにが?」

「いちごネットなんかに引き裂かれない愛がありますよ,先輩達の間には」

「そうかな」

「そうですよ!」

「俺もそう思う。お前らは大丈夫だよ。俺も,いちごネットだか何だか知らないけど,絶対負けねぇから」

「私も,智先輩を精一杯守ります!」

「女に守られてもなあー」

私達の間に

少し笑いがもれた

「っ…さと,」

私が声を上げたときには

もう既に遅かった

本棚から本が飛び出てきたのだ

それも

分厚く重い,辞書だった

「智…」

智の頭からは血が流れていた

「っ…てぇ……」

智は頭をかかえ,うずくまった

「…先輩…ど,どうしよう…死んじゃ,やだ…!」

「亮太!」

階段を駆け上る音が響いた

ドアが勢いよく開いた

「智?!」

うずくまる智の元へ亮太は駆け寄った

「おい!智!」

「亜美,救急車呼んで」

「…いや…先輩,死ぬなんて…いや……いちごの仕業に違いない…この部屋に…居るのよ」

「おい美知,救急車呼べ!はやく!」

「わ,わかった…!」

私は急いで階段をおり

リビングの電話の受話器をとった

「救急車…救急車…」

 ━「はい,どうなされまし」

「救急車!早く!!」

 ━「住所を教えて下さい」

私は慌てながらも住所を口にした

 ━「落ち着いて下さい。今すぐ,救急車がそちらへ向かいますからね」

私は受話器をおき

2階へと駆け上った

「智!」

智はまだうずくまっていた

「動かないんだ,返事もしない」

「震えてるの…救急車はまだなんですか?!」

「今来る。もうすぐ来るから。…智!頑張りなさいよ!もうすぐ救急車来るから!」

「美知…後ろ……」

亮太が震える指先で,私の背後を指差した

私は言葉を失った

私の後ろには白い影のようなものが浮いていたのだ

ふわふわとしているようで

形はある

生命体とは思えない

人間をかたどったものだと言うことは分かる

キラリと電気に反射して光が私の目をさした

ナイフだ

「智…危ない!」

私の叫ぶ声と一緒に

智めがけて

ナイフが投げられた

「やめて!」

……亜美!

亜美が智をかばった

「いやぁあああ!」

「亜美!」

亜美を通り抜け

ナイフは智に突き刺さった

「う…そ……なんで」

智の体からナイフが抜けた

おびただしいほどの血があふれ出す

ナイフは智の頭の上をふらふら飛んでいる

ナイフの動きが止まった

「やめろ!」

亮太がナイフを掴もうとした

ナイフはするりと亮太から逃げ

智の足を突き刺した

「きゃぁああああ!」

亜美が倒れた

「亜美?!」

ナイフは智の足からぬけ

再び頭上をふわふわと浮遊している

「やめろ…やめろ!」

ナイフは智の頭を狙っている

亮太が智をかばったが

ナイフは亮太の体を通り抜け

智の後頭部にぐさりと刺さった

ナイフは刺さったままだ

智の体は血まみれだった

「智…どうして……どうして!」

私と亮太は

亜美を抱きかかえ

リビングにおりて

しばし放心状態だった

「美知…おかしくないか」

亮太が重々しい口をひらいた

「……なにが」

「救急車,来ねぇ」

「…忘れてんじゃないの」

「そんな訳ないだろ。相手はプロだぞ」

「河童の川流れよ」

「有り得ないな。誰かが救急車のキャンセルの電話を入れたんじゃないか」

「キャンセル?なにそれ」

「もう大丈夫です。少しパニックになってしまい,ただの気絶だったのに、電話をしてしまいました。だからもう大丈夫ですよ。気絶した友達も,ピンピンしています。」

「まさか…考えすぎだよ。第一…誰がそんな電話…」

「いちごネット」

「もうその名前は出さないで。その可能性もあるかもしれないけど,でも,もう考えたくない…」

ソファで寝ていた亜美が起きた

「先輩……私,怖い夢,見てました…」

「亜美,大丈夫?」

「智先輩は……」

「心配しないで。大丈夫だから,亜美は,まだ寝てていいよ」

「私…変な夢見ました」

「変な夢?」

「…亜佐美先輩が,智先輩に本を投げつけるんです。そしたら智先輩…うずくまって,そしたら,亜佐美先輩が,ナイフを持って,智先輩を,刺すんです。私達が止めても,亜佐美先輩…狂ったように…刺して…殺すんです」

「亜佐美が…どうして……」

「ただの夢だ。気にすることなんてない,亜美ちゃんも。美知も。」

「ねぇ亜美,さっきまでのこと覚えてる?」

「さっきまでのことって,なんですか?」

「智が…刺されて,死んだの,つい1時間ほど前」

「……うそ,うそ…!そんなの……」

亜美がソファから立ち上がる

階段を上ろうとした

「待って!亜美!」

亮太が亜美を止めた

2階にはまだ,智がいる

「亜美がみた夢は,夢じゃないんだよ!」

「……夢じゃ,ない?……じゃあ……亜佐美先輩が…」

「待て,そうとは限らないだろ。寝てたんだから,夢を見ていてもおかしくない」

「…共通点よ。それが怖いの。」

「共通点…いちごネット…か」

亮太が呟く

亜美が小刻みに震えていた

「いちごネット…亜佐美も,大事な人を殺された。いちごネットに」

「亜佐美先輩も………嘘ですよね…」

「もう……どうすればいいのよ!」

「いや……もう嫌……智先輩を返してよ…!」

「亜美……家,戻ろっか。此処に居たら,駄目だよ。亜美は,いちごネットのことなんて早く,忘れるんだよ」

「先輩は…どうするんですか。いちごネットのこと,まだ,背負うつもりですか?亜佐美先輩のことも,私のことも,全部,背負うつもりなんでしょ?全部,解決しようとしてるんでしょ?分かるんですよ,先輩。先輩,そーゆーとこ,直したほうがいいですよ。何でも抱え込まないで下さい。先輩がどうこう出来る問題じゃないと思います…この問題は」

「私は,背負うつもりなんてないよ。だから大丈夫。亜美は,家でゆっくり休んで」

「……はい…。でも先輩,無理だけはしないで下さい」

「分かってるよ,ありがと」

亮太は亜美を途中まで送ると言って

一緒に家を出た

私は

二階の部屋に向かっていた

「…智,どうしよう」

このままでは

智を殺したのは自分達だと疑われてしまう

いちごネットのせいで

人生…めちゃくちゃだよ

 ガチャ

ドアノブをひねった

息を飲み込み 手をぎゅっと握った

大きく息を吐き

ドアを開けた

「…え」

ない ない どこにもない

智の姿が,なくなっていたのだ

血も,ない

「なんで…どうして……!」

消えた…

まさか

さっきまで此処に,ちゃんとあったはずなのに

私は急いでパソコンを開いた

メールボックスを開き

新しいメールが来ていないかチェックする

 カチ カチ 

来ていた

いちごネットからのメールが

1通

「愛は,脆く儚い。でも…美しい。ずっと,甘く美味しいと思っていても,いずれ,食べられなくなる,そのときがやってくる。別れのときが。永遠の,美しさを授けます。幸せな,貴方に……」

私はピンときた

私の番なのだ

「………亮太!」

亮太が危ない

次に狙われるのは亮太だ

私にこのメールが届いた以上

いちごネットは必ず亮太を襲いに来る

私は家を飛び出し

亜美の家への道を探した

「亮太!」

亮太らしき後姿がみえた

私は急いで駆け寄る

「亮太…!」

「美知?!どうしたんだよ…何かあったのか?!」

「よ,よかった……無事で」

私は息を整えた

「いちごネットから,メールが来たの。次は…私達の番だよ」

「……片思いの奴らだけが狙われるんじゃなかったんだな」

「そんな,そんなことは,どうだっていいのよ!兎に角,今は亮太の身の安全を考えなくちゃ」

「俺なら大丈夫だよ。やっとチャンスが来たんだ。殺し屋の犯人を捕まえるチャンスが」

「そんなのん気なこと,言ってる場合じゃないんだよ!今まで,智や,山本や…いっぱいの人,死んだの知ってるでしょ?!」

「殺される前に捕まえればいいだろ」

「智が,刺されるの,見たでしょ?!あんなの,人間の仕業だと思える?!」

「思えない」

「でしょ?!」

「だから何なんだよ。俺は何も悪いことはしてない。霊だかなんだか知らないけど,そんな奴に殺される覚えはないんだよ」

「だけど…」

「心配すんな,な?美知」

亮太は私の頭を軽く叩いた

「家,戻ろう」

「…そうだね」

家のドアを開けた

ふわっと,白い影が見えたのは

気のせいだろうか

「…亜美,ちゃんと帰った?」

「ああ。ゆっくりトボトボ歩いてたよ。智の死の直後だ。相当なショックを受けてるんだろ…あ,智は,どうした?」

「それが……消えてるの。綺麗さっぱり。血のあともない」

「まさか…」

亮太が階段を駆け上る

ドアを勢い良くあけた

「…ない」

私達はしばし放心状態で立ち尽くしていた

「そんな…馬鹿な話が……」

「」


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