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無感覚(小説)
私から
私の前から
全てが
次々と
消え去ってゆく…
「理沙子!危ない!」
「いた…」
「ごめん!大丈夫?」
私の腕に
強くボールが当たった
「ホントごめんね」
「ううん」
「怪我してない?」
「うん,大丈夫大丈夫」
「ホントごめんねー」
痛い?
痛い
痛いんだよね
「理沙子,どうしたの?」
「え?」
「ぼーっとして」
「あー…うん,なんでもないよ」
「じゃあ早く行こ!また怒られるよー」
「酷いよね,高島が窓ガラスわったのに,私達まで」
「居残りとか有り得ない!掃除なんてやってらんないよねー」
さっきボールが当たったところは赤くなっていた
そっと触れてみる
手の暖かさが伝わってくる
でも
痛みは無い
「須藤!森本!」
「遅れてごめーん,先生来た?」
「まだ」
「高島!うちらまで巻き込んで!マジ,馬鹿なんじゃないの!」
「お前はうるせぇんだよ,須藤見習えや」
「理沙子だって怒ってんの!ねぇ,理沙子」
「え?あ…うん…怒ってる」
「ほら!」
痛くない
全く
腕が麻痺してるみたい
そういえば
怒りも全く感じない
いつもなら
こんな馬鹿げたことに巻き込まれて
すっごく怒るのに
早く帰りたくて,みんな遊んでるのに
私だけ高島のせいで居残り掃除
最悪じゃない
なのに怒りもなにもない
何も思わない
早く終わらないかな
早く帰りたいな
みんなと遊びたい
腕痛い
高島のやつ…
怒り……
何も感じない
どうしてだろう
「理沙子ぉー,早く終わらそ!馬鹿みたい!」
「だね…うん,終わらそ」
私達は掃除を猛スピードで終わらせ
先生のチェックを受け
居残り掃除を無事終わらせた
「はぁー…マジ疲れたぁ」
「だるいねー」
言葉では気だるさを表現してみたが
何も感じない
脱力感が私を襲うのは確かに感じる
でも
気だるさや鬱陶しさは
全く感じない
「須藤!」
「…なに」
振り返ると高島がサッカーボールを片手に立っていた
「何か用?」
「ちょっといい?」
「…雅美,先帰ってて。高島に呼ばれてる」
「何なんだよー高島は。じゃあまた明日ね!」
「ばいばぁい」
雅美に別れを告げ
私は高島に連れられ体育館倉庫の裏側へと来た
ここは以前
私,雅美,晴子,宇佐美,香奈の5人で
コックリさんをした後に
その紙を燃やしに来た場所だ
炎は少しづつ燃え広がり
最後は灰になって消えた
「あのさ…」
あのときコックリさんはすんなりと帰ってくれたが
「話があるんだ」
もし帰ってくれなかったら
どうなっていたのだろうか
「俺な……」
そもそもコックリさんというものは
何処からやってきて
何処に返るのだろう
もしもコックリさんの国があるのなら
そこには何人のコックリさんが居て
…そもそもコックリさんとは狐じゃなかったっけ
だとしたら神社?
神様の使いだったりして
真実を伝える神様
迷惑な話…
「あのさ…その……今日はごめんな!」
「え…」
全然話を聞いていなかったことに気付いた
「今日?」
「居残り…」
「ああ…別にいいから,そんなの」
そんなことで呼び出したの?
これもまた
迷惑な行為よね
「話ってそれだけ?」
「いや…あのさ……」
そもそも迷惑って何なんだろう
私,呼び出されたこと
どうも思わないな…
いつもならもっと
「須藤!」
また違うことを考えていた
今日の私,なんか変
「…好きです」
「は?」
「好きなんだ,須藤のこと。俺と,付き合ってくれ」
嬉しい
嬉しい?
嬉しくない…
ということは私,高島のこと別に好きじゃないってこと?
だよね
「私…高島のこと好きなのかどうか,分かんないから,付き合えない」
「分かんないって…それじゃあ,好きって可能性もあるって意味?」
どうしたんだろう
何も感じない
高島のことを一生懸命考えて見た
そしたら
ただ,顔だけが浮かんできた
私は…村上が好きだったような気もするし
高島が好きだったような気もして
訳が分からない
「俺と付き合えよ…俺のこと絶対好きになるから」
「…うん」
「え?マジで?!付き合う?!」
「……どうしよっか」
「付き合おうよ!な?」
「…うん」
「やった!夢みたい!」
好きじゃないけど
嫌いじゃない
何も思わない
高島についての感情が
全く無い
「理沙子ぉー,何してたの?」
「雅美…先帰ってていいって言ったのに」
「さっきまで沙紀と話してたから,そしたら丁度理沙子が来て」
「そう言えば沙紀,来週転校するんだよね」
「うん…なんか寂しくなるよね」
「悲しいね」
悲しいと言われて見れば
悲しいのかもしれないが
でもやっぱり
何も思わないのだ
「須藤!」
「理沙子,高島が呼んでるよ。あいつマジ煩い」
高島が走って私の元に来た
「なに?」
「理沙子って呼んでいい?」
「はぁ?!何言ってんの,馬鹿じゃん。おめぇに理沙子のこと呼び捨てにする資格なんてねーよ。ねぇ,理沙子」
「…別にいいけど。どう呼ばれたって,関係ないもん」
「えー!何でぇ!?」
「うるせぇなあ,森本は。俺ら付き合ってんの」
「はぁ?!馬鹿言ってんじゃねぇよ!理沙子,マジなの!?」
「…そうみたい」
「何でなんで?!理沙子,村上のこと好きだったじゃん!1年前からずっと…なのにどうして高島なの!?」
「私,村上のこと好きだったっけ…あー…言われて見ればそうかも」
「でも須藤は俺と付き合うって言ったんだよ,馬鹿」
「理沙子,いいの?私,理沙子がいいなら何も言わないけど…諦めちゃったの?どうでもいいとか思わないでよ?」
「うん」
「理沙子,高島のこと,好き?」
好きじゃないけど
好きなのかもしれない
曖昧な気持ちなの
曖昧って言うのか
なんとも思わないの
「須藤は俺のこと好きだから付き合ってくれたんだよ。お前は黙ってろよ。行こ,須藤。じゃなくて…理沙子」
「雅美,私,分からないの。また,相談乗ってね。今日は帰る。ばいばい」
「理沙子…」
何も感じない
「なあ理沙子,村上のこと,好きじゃないよな?」
「やめて。好きとか嫌いとか,私,分かんないから」
「じゃあ理沙子は俺のことが好きなんだよ,絶対」
「うん」
家に帰ると
お母さんが夕食の用意をしていた
そういえば私
おなかすいてないな
おやつも食べてないのに
いつもならすっごくおなかすいてるのに
「あ,理沙子,おかえりなさい。もうご飯出来るから,着換えて来なさい」
「はーい…」
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