背伸び {小説



一気に

2段飛ばしで駆け上がる



はやく

もっとはやく


大人になりたいの












新藤美咲

14歳

だけど

心はもう

大人だった

はずだった-…






「ねぇどうして!待ってよ!ちゃんと理由を言いなさいよ!」

「お前さあ…ガキっぽいんだよ」

ガキ?

私が,ガキ?

「何よそれ」

「子供っぽいって言ってんだよ」

「どこが!?どうして!?」

「全部。お前とはやっていけねーよ。歳も本当はもっと下なんだろ。どれだけ背伸びしたって無理なんだよ。じゃあな」

「ちょっと……待ってよ」

私が

子供っぽい訳ないじゃない

これだけ大人っぽくしてるのに

髪型だって

服装だって

話し方だって

態度だって

全部,全部

大人っぽい筈よ,私…

「あー,美咲じゃあん!」

「……真知」

「何やってんの,こんなトコで」

「私,ガキっぽい?」

「え?」

「私,大人っぽいよね?」

だって

真知と同い年だって言ったって

みんな信じないわよ

それぐらい

私は大人なんだから

「私よりは大人っぽく見えるけどねー」

「どれくらい?どれくらい上に見える?」

「えー…どうしたの?」

「いいから,答えてよ」

「見た目は…16歳って言っても分かんないんじゃない?」

2歳だけ…?

それだけ…?

これだけ頑張ってるのに?



私は

大人っぽくなきゃいけないの

大人にならなきゃいけないの

あの人と釣り合うために…



「あー,美咲!おはよおー」

「真知…おはよ」

「今日ねぇ,隣町の中学の子らと合コンするんだよおー!」

「合コン?」

「そう。美咲も来るよね?!」

「私はいい。相手も中学生でしょ?」

「えー!こないの?!どうして?!」

「相手が中学生なんて嫌よ」

「なんだあー…美咲も中学生のくせにぃー」

「もう大人になろうよ,真知。中学生同士の付き合いなんて,すぐ終わるわよ。遊びに過ぎないもの」

「美咲は年上が好きなのね,分かった」

私は真知と別れ

職員室へ向かった

私の意中の相手は

ここに居るのだ

「先生!」

「ああ,新藤。どうしたんだ?」

「ちょっと勉強教わりたくて来たのですが…いいですか?」

「熱心だな,新藤は。ほかの奴らなんて少しも勉強になんて興味ないぞ?」

私だって

勉強になんて興味はない

興味があるのは

貴方だけ

貴方が好きなの

田村先生

「先生は結婚してるんですか?」

私はノートをひろげながら聞いた

「してないよ」

たとえ結婚してたとしても

私は

先生の心を奪う気でいた

「彼女は居るんですか?」

「いないよ」

「そうですか」

先生は1ヶ月前に入ってきたばかりの

新人だった

「新藤はどうなんだ?」

「え?」

田村健吾

数学の教師だ

「彼氏とか,やっぱ居るのか?」

「居ませんよ,そんなの」

「まだ中学生だもんな」

「でも…」

「ん?」

心は大人なんですよ

先生と同じ

24歳なんですよ

「何でもないです,勉強始めましょうか?」

「ああ,で,何処が分からないんだ?」

私は適当なページを開き

ここ,と指をさした

「此処はな…」説明を始める先生

私は教科書など目に入っていなかった

貴方だけ

貴方だけを見ていたの

「…分かったか?」

ねえ あの日から私

貴方と同じ24歳になろうと

必死に努力したんだよ?

「新藤?」

少しは私のこと

恋愛対象として

女として

見てくれてる?

「新藤?おい,聞いてるのか?」

「……っ,はい?」

「今のとこ,分かったか?」

「え…あ,はい。分かりました」

「…お前,寝不足なんじゃないのか?」

先生が私の顔をじっと見た

「…どうしてですか?」

「目の下に,クマがあるぞ」

「クマ?うそ…どこ?」

「今日は家に帰ってゆっくり休め。な?」

「…はい」

私は立ち上がり

職員室から出た

ねえ 先生

顔だけじゃなくて

目の下のクマだけじゃなくて

私を

私の全部を

見つめて?

ねえ 好きになってよ

私こんなに

貴方に近づこうと

努力してるんだから




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