ダークエンジェル{小説













悪魔はどんな時でも

自分の利益しか考えない








「これを飲み続けろ」

影のような男の人は

私に小さな小瓶を手渡した

「これを飲めば、魔力が手に入るのね?」

「ああ。その代わり、永遠に俺の命令を聞くと約束しろ」

「そのくらい、お安い御用よ。私には魔力があるんだもの」

「これは契約だ。もしもお前が俺に逆らったら、お前の魂を貰う」

「魂を…?どういう意味?」

「お前の命を頂く、ということだ」

「大丈夫よ。私は貴方に永遠にお礼をするわ。命令でも何でも聞きます」

「いいな?これだけは忘れるな。俺はお前の命だ」

私は微笑んだ

そのとき

黒い影の隙間から

鋭くとがった牙が見えた

「待って!貴方の名前を聞いてないわ!」

男は振り返った

「ダークエンドだ」

消えた

「…ダークエンド様…私は貴方に、永遠に、仕えます」


私はあのとき言った言葉を

あとで深く後悔することとなる














「おはよ!」

「おはよ、麻衣。今日も朝から元気だね」

「当たり前じゃん!テスト明けだよ?!開放感だよー」

私はただの高校生だ

いや、高校生だった

もう違う

みんなとは違う

私はダークエンド様との契約のときから

魔力を持った

「真知、明日ね、合コンするんだけど来る?」

私は魔女だ

「行かない」

「えー、珍しい!どうして?彼氏でも出来たの?」

もう人間には興味はない

私は魔女

「ねぇ真知!真知ってばあ!」

「私、もう彼氏とかどうでもいいの」

「えー!どうして?」

私はもう

貴方達とは違う世界の人間

「私、保健室行って来る」

「気分でも悪いの?」

「眠いの」

「分かったあー。じゃあまた後で」

私は麻衣と分かれ

保健室のベットにダイブした

眠いのは本当

魔女になってから

すごく体力を消耗する

ダークエンド様は

いずれ慣れる、と言ったけど

いつになったら一人前になれるの…

私は枕を自分の姿に変えた

もう魔法は使えるようになったのだ

「私の変わりに授業を受けて来て」

ドアを指差す

ドアは勢いよく開いた

これも魔法だ

「…だるい」

私になった枕は

足早に教室へと向かった

私はそれから深い眠りに落ちた

「あれー?真知?」

麻衣だ

「……頭いた…」

軽く頭痛がした

体が重い

「真知、また保健室来たの?ほんと、大丈夫なの?」

ああ、そっか

麻衣達には私が授業を受けていることになっているんだもんね

枕のおかげで

「…うん、ちょっと風邪気味なの」

「へぇ…真知が風邪って、珍しいね。そういえば最近ずっと元気ないよね?どうしたの?日に日に弱ってるみたいだけど」

確かに

私は日に日に弱っていた

前は

魔力をもらう前は

風邪も全く引かない、病気もしない

元気な子だったのに

「真知、余計なお世話かもしれないけど、病院行ってみたら?風邪、酷くなったら大変だよ?」

「そうだね、うん、そうしてみるよ」

口ではそう言ったが

医者に行ったところでこのだるさは

治らないだろう

ダークエンド様に聞かなきゃ

原因は分からない

「…っ」

「真知?」

頭痛だ

それも激しい

めまいがする

「真知?!大丈夫?」

私は意識を失った

夢を見ていた

暗い闇の中に私が飛んでいる

私は人間だから

魔力を使うと体力をたくさん消耗してしまう

私はあくまでも人間

魔女にはなれない

ただの人間

「…っ?!」

私は飛び起きた

目の前に麻衣が居た

「あ!真知!気がついた?」

「私…寝ちゃってた?」

あたりを見渡した

まだ保健室のベッドの上だった

「よかったよお…心配したんだから!真知、倒れちゃったんだよ?覚えてる、わけないよね。もう放課後だから先生が見てるって言ったんだけど、私心配で」

「ずっと此処に、いてくれたの?」

「そうだよ」

「ごめん、迷惑掛けちゃって」

「私はいいの!暇なんだもん、私。何も予定ないし。用事もない。真知が心配だったから、て言うより私、気になっちゃって帰れなかったんだよね。だから、真知が謝ることなんてないし、迷惑だなんて思ってないから、ね!それより、体の具合はどう?だるい?熱、あるかな?あ、測ってみる?それとちゃんと病院行かなきゃ駄目だからね。明日、私も一緒に行こうか?」

麻衣は延々と話し続けた

私の返事は

うん、くらいだった

「これ、体温計」

「熱あるかなー?もしあったら今日、私の家おいでよ!真知の家、今日はお母さん居るかな?もし居なかったら心配だから私の家おいで!今日はお兄ちゃんしか居ないよ。お母さんとお父さんと妹は、旅行なんだよね。私達を放ってさ、ズルいんだもん。妹の小学校は休んでもいいけど、私達は駄目だって、高校生だからって。酷いよー、ほんと。という理由で、うちの親、1週間居ないから!ね?おいでよ!」

「…うん」

体温計が鳴った

「お、測りおえた?」

「38度」

「ぇえ!やっぱり!熱あるんなら絶対家おいで?一人じゃ、ご飯も作れないでしょ?熱もあるのに。あ、それより先にお母さん、居るか確かめなきゃね」

「…居ないよ、今日は。朝に言ってた。今月はもう帰って来れないんだって」

「え、1ヶ月も?」

「うん」

「真知、じゃあ1週間は家に泊まりなよ、ね?1週間後は親が帰ってくるから、私が真知の家行くよ!」

「…麻衣、いいよ。気にしないで」

「え?」

「気、使わなくていいから。私なら大丈夫」

「気なんて使ってないよ!私ただ、真知が心配だから、言ってるんだよ?だから、真知が嫌って言っても、今日は家に連れてくからね!そんなに熱あるのに、何も食べないで薬飲んで寝ちゃうなんて、体に悪いよ!うちなら平気だから。お兄ちゃんとか、全然気にしないでいいから!」

私は麻衣の話に耳を傾けつつも

枕のことを思い出した

魔法を解かなければ

見つかったりしたら大変なことになる

とくに、麻衣に

元気そうな枕、いや、私をみて

不思議に思わないはずはない

「…ありがと。じゃあ今日は泊めてもらうね…あ、私、鞄取って来なくちゃ…」

ふらり、と倒れた

「あ!真知?!大丈夫?!いいよ、鞄なんて!私がとってくるから!此処にいて?動いちゃ駄目だよ!」

そういって麻衣は教室へ向かった

「…はあ」

作戦通りだ

私は自分の姿になっている枕を呼び

元の姿に戻した

窓を開けて、心の中でつぶやいてみた

ダークエンド様…聞こえますか

この体のだるさは一体何なのでしょう

私は、一人前の魔女になれることが出来るのでしょうか

ふと、目を開けたら

目の前にダークエンド様がいた

「…ダークエンド様!」

「お前は、まだ完璧に人間の心を捨てきれていない。魔女になるということは、どういうことか分かるか?」

「魔力を持つだけじゃ、魔女にはなれないのですか?他には、何を手に入れれば…」

「心だ。心を捨てろ。魔女には心がない。私は悪魔だ。仮にもお前は、悪魔の魔力を手に入れ、魔女になった。悪魔にも心がない。お前が魔力に追いついて居ない。その魔力を完全に使いこなしたいのなら、心を忘れろ。」

「心を…忘れる?」

「お前はもう、人間じゃないということを忘れるな」

「…はい」

ダークエンド様は

私の前からふ、と消えた

私はベッドに腰掛けた

心を、捨てる…

私は、人間じゃない…

私の心が、魔力を使う邪魔をしているの?

そんなことを考えていると、パタパタと、

足音が近づいてくるのが聞こえた

「…真知、帰ろ!」

大きな音を立て、ドアが開いた

麻衣だ

「…ごめんね、使っちゃって」

「いいのいいの!さ、早く行こ!先生が見回りしてて、もうカギ閉めちゃうみたいだから」

「そう」

学校を出るまで、無言だった

麻衣も話し出さないから、もちろん私からも話すことはない

「…ねえ、最近真知、冷たいよね」

沈黙を破ったのは麻衣だった

私が麻衣の顔を観ると、麻衣は

「嫌な意味じゃないんだよ」と慌てて付け加えた

「だってね、真知、前はもっと明るくて、元気で、何て言うか…上手く言えないけど、もっと、子供らしくて、私の馬鹿な話にも楽しそうにノってくれて、もっと、生き生きしてた」

「…今は?」

「うん…何か、冷たい」

「それは、麻衣に対して?」

「違うの。私に対してって言うか…真知自体が、変わった。態度も含めてだけど、表情とか、全体が。もう、真知じゃない感じ」

「最近、体調悪いからかな」

「そういうんじゃない。クールになっちゃったって、感じ」

「クール?」

「うん…目が、笑ってないの。真知。今日は楽しいことなかったからかな?体調良くなったら、また、前の真知に戻るかな?」

それが、心をなくしてる、ってことなのか

ダークエンド様が言った

心をなくす、ということは

こういうことなのだろうか

「…心が、冷めちゃったの、かな?」

「え?自分でも、そう思うの?」

麻衣が目を大きくして

私を覗き込むようにして見ていた

「うん。少し、最近、気分が盛り上がらないって言うか…」

「…大丈夫!真知、心配しないで?…治るよ、そんなの」

「え?」

「真知、昔の真知に戻れるよ。いつも楽しそうで、笑ってて、明るくて…」

「戻りたい、って思わなくても?」

「…戻りたいって思わないの?」

「自分でも分からない。原因は、…分かるけど」

魔力が、私の心を、奪ってゆく…

「真知が辛いなら、私、いつでも側に居るから。いつでも相談のるから。だから、私を頼ってね?会いたい時は、いつでも会いに行くし、寂しくなったら電話してよね?私達、深い仲じゃん!」

「…ありがと」

暖かくなった、気がした

心が溶かされてゆく、そんな気がした

だけど、すぐに、ぎゅっと押さえ込まれるように

息が苦しくなって、また、心は凍る

これも、魔力

「真知、あがって?遠慮しないでね」

麻衣の家に来てしまった

「お兄ちゃん、今日私の友達泊めるけど、気にしないでね」

「なんだよそれ」

「いいでしょ?」

「別に、いいけど」

1人で居るほうが、楽かもしれない

だけど

1人でいたら、もっと、凍る気がする

だけど、心をなくさない限り

私はいつまでも半人前だ

「真知?入ってよお?」

「あ、うん…おじゃまします」

リビングに入ったら、麻衣のお兄さんがいた

私は頭を下げて、挨拶をした

「こんにちは。麻衣の友達の真知といいます。」

「ゆっくりしてってね」

「なにそれ、お兄ちゃん、私と態度違うじゃん」

「うるさい」

笑わないと

笑顔を、作らないと

「私の部屋行っててー?何か飲み物持って行くから」

「うん」

魔力が心を奪っているんだとしたら

私はいつか、確実に一人前の魔女になれる

心と引き換えに

ずっと望んでいた、魔女に

でもそれは

私にとって幸せなことなのだろうか

でも、これは

私が望んだこと

早く一人前の魔女になってしまって

全て、忘れてしまえば

つらくもなんとも、ないのだろう


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