過去を変えて{小説




貴方に会いたい…








「真美、早く!遅れるよ!」

「先行ってて…私、今日休む」

「なに馬鹿なこと言ってんの、今日はテストじゃなかったの?」

「そうだけど…行かない」

「真美、頭いいんだから、テスト受けなきゃ勿体無いでしょ!」

「どうでもいい、そんなの。兎に角、今日は行きたくないの」

「じゃあテストだけ受けて早退すればいいじゃん、行かないとママ、うるさいよ?」

「……分かった」

そのとき、私はまだ気付いていなかった

真美の異変に

学校へ行くのを拒んだ

どうしたのだろう、とか

何かあったのかな、とか

少しも思わなかった

ただだるくて行きたくなくて

その上テストだから

そんな日もあるよね、ぐらいにしか

思っていなかった

「真由子…学校楽しい?」

「え?うん、まあね」

「私も公立の中学に転校しようかな…」

「え?どうして?せっかく受験までして私立行ったのに。頭いいのに勿体無いよ」

「…そうだね」

真美は学校が楽しくないのかな、って

思っただけだった

まさか

真美がイジメラレテタだなんて

少しも気付かなかった

「じゃあね」

「…うん」

あのときの笑顔

確かにいつもと違っていた

真美は私の双子の妹

真美は私と違う私立の中学を受験し

見事受かり

私は頭もよくないし

別に電車通学をしてまで遠い学校に

行きたくなんてなかったから

地元の公立中学に通っている

お互いの学校の話はよくしていたが

ここ最近真美は学校の話をしたがらない

私立は校則も厳しく疲れるそうだ

真美はその日も

いつもと変わりなく

私と駅で分かれ、電車に乗り

学校へ向かった

私もいつもと変わりなく

駅前で友達の亜由美と待ち合わせをして

学校へ向かった

学校では友達と他愛もない話をし

授業中は手紙を回し、先生に気付かれないように笑い合い

放課後は部活をサボり亜由美と

下校した

「ばいばい!また明日ね!」

亜由美に手をふり

ふと携帯を見た

今どこ?私駅前に居るから一緒に帰る?

と、真美にメールを打ち、本屋に立ち寄り

ファッション雑誌を立ち読みしていたが

真美からの返事が来なかったため

私は一人で家に向かった

その途中で、家から電話があった

「もしもし?ママ?どうしたの?」

━「真由子…今何処?」

「もうすぐ家だよ?どうかした?」

ママの声がかすかに震えていて

いつもと違った

「どうしたの?落ち着いて?何があったの?」

━「…どうしよう…真由子……真美が、飛び降りたって…」

「飛び降りた?!何処から?なんで?真美は?!真美は無事なの?!」

━「それが分からないのよ…!…今、病院に向かってるから、真由子も来なさい。東川総合病院よ」

「わかった…すぐ行く」

私は携帯を鞄に放り投げると

すぐに道路へ出た

早く、早く行かないと

真美…どうか無事でいて!

私はタクシーに飛び乗り、行き先を告げると

ずっと心の中で祈っていた

神様お願いです、どうか、真美を助けて下さい

私、何でもしますから…なんだって、しますから

だから真美を助けて下さい

「ママ!真美は!?」

「真由子……」

「真美は何処?!無事なの?!」

「今…この中よ。手術中…助かるわよね…ねえ真由子…真美、助かるわよね」

「当たり前でしょ!真美は強い子なんだから。私なんかよりずっと…だから、真美は助かる」

「私……真美にもしものことがあったら…生きていけないわ…」

「しっかりして!ママがそんな弱気でどうするの?この中で真美、懸命に頑張ってるんでしょ?!ママが弱気でどうするんのよ!私だって…真美がいないなんて……いやよ!」

私は椅子に座って

真美とおそろいのネックレスをぎゅっと握り締めた

ねえ…真美

頑張って

真美なら大丈夫

真美、頑張って

「……こ、真由子、お医者様が…」

「…ん、真美…」

私は少し、寝てしまっていたらしい

「真美は…」

目の前に居る医者が

私達の方に少しずつ歩いて来る

「真美はどうなんですか!」

私は医者の前に駆け寄った

「…出来る限りのことはしました……残念ですが」

「うそ…嘘よね、ねえ…嘘でしょ?!」

私はその場に座り込んでしまった

「真美…!」

私の頭の中ではこれまでの

真美との思い出が

巡っていた

真美と大喧嘩して、私が家を飛び出したとき

真美が必死になって探してくれて

2人で笑い合った

私が小学校のときイジメられて

悩んでた時に

みんなに言ってくれたよね

私の片割れイジメたら私が許さないよ、って

あのとき私

真美と双子でよかったって心から思ったよ

ねえ真美

あんたに助けられた事、いっぱい、いっぱい

あるんだよ

なのに居なくなるなんて

私をおいていくなんて

酷すぎるよ…

真美、戻って来なさいよ

何かあったら私が守るから

私が真美を助けるから

ずっと、ずっと

2人で生きていこうよ

一緒に生きていこうよ

…真美

私は夢を見ていた

此処はどこ…学校?

海が見える…真美の通う学校だ

悲しい、辛い、もういやだ

なにこの気持ち?誰の気持ち?

真美の…真美の気持ち?

もう、死にたいよ…

いや、私、まだ死にたくないよ

どうして?なんで?何なの、この気持ちは

体が軽い…私……浮いてる?

「…っ!」

私は飛び起きた

学校の屋上から飛び降りた瞬間に

目が覚めた

「…夢?」

「気がつきましたか?」

「え……」

私の目の前には看護士さんがいた

「どうして…私、何してるの?」

「病院で、気を失ってしまったみたいで。此処は東川総合病院、貴方は少し、眠っていたみたい」

「…真美は?」

「真美さんは…先ほど……」

「まさか、死んだなんて…言わないよね?」

「残念だけど…」

「夢じゃ…なかったの……?」

看護士さんはそのまま部屋を出て行った

「真美…どこ?何処に居るの?ねえ、返事して?真美?」

どれだけ名前を呼ぼうとも

真美は何処にも居なかった

私は病院を出た

「真美!」

きっとまだ、何処かで、迷ってるんだよね

真美は、私に助けを求めてるんだよね

大丈夫だよ、今すぐに探し出してあげるから

「…お嬢さん?誰かお探しですか?」

「…真美を…私の双子の妹なんです。真美を、知りませんか?」

「真美さんは、過去で生きています」

「…過去?」

「私は時空を操る者です。貴方が、私を呼んだから、私は貴方の前に現れた」

「何言ってるの?どういう意味?時空を操る、って…なに?」

目の前に居る老人は

私に古びた時計を渡した

「これです。これで、時空を自由に行き来することが可能です」

「…時空を、行き来?」

「これを使い、過去に行き、貴方が、真美さんを止めなさい。真美さんに、戻ってきて欲しいんでしょう?」

「…真美を、戻す事が出来るの?」

「ええ。真美さんの死因は学校の屋上からの飛び降り自殺です。原因は友達からのイジメ。貴方が、今日の朝に戻り、真美さんの後をつけ、自殺しようとしているところを止めるか…もしくは、3年前に戻り、真美さんも貴方と同じ、公立の中学に通うよう、説得するか…貴方の手で、過去を変えるんです。そして、真美さんの居る、未来にする。どうです?いい話じゃないですか?私、貴方の手伝いをしますよ。」

「本当に、そんなことが出来たら…真美は戻ってこれるのに」

「出来るんですよ、私が居れば」

「……その話、嘘じゃないのよね?私をからかってるだけ?」

「からかうなど、滅相もない」

「じゃあその話、乗った。今すぐ私を過去に戻して、今朝でいいわ。私が真美を止めてみせる」

「待ってください、そう焦らず。では貴方を過去に案内します。ですが、いくつか注意点がある。」

「注意点?」

「もしも過去の自分に会ってしまうと、貴方はこの世から消えてしまう。過去からも未来からも。貴方は初めから居なかったことになる。ただ、過去の貴方に会わない方法はいくらでもある。貴方は今朝の自分の行動を思い起こし、自分が行ったところには近寄らなければいいだけの話です。そして、自分は未来から来たということがバレてしまうと、貴方は消える。さっき話したのと同様に。くれぐれも気を付けてください」

「ええ…大丈夫、分かったわ」

「では貴方を過去に戻しましょう。任務を果たしたら、このボタンを押してください。貴方は現在に戻って来れます」

私は老人から時計を受け取り

過去へ向かった

「…っいたぁ…」

私は道路にしりもちをついた状態で座っていた

過去に…来たのね

「真由子、おはよー!」

私だ

今日の朝だ

亜由美に会って、今から学校へ向かうんだ…

私が亜由美に会ってるってことは

真美はもう電車?

うそ…急がなきゃ

あ、まだ大丈夫か

真美が自殺するのは夕方

今からだと十分に間に合う

私は電車に乗り、真美の学校の駅で降りた

「え…真美?」

私が真美達の通学路を歩いていると

真美がベンチに座っていた

「…なんで」

時計を見てみると、もう朝礼が始まっいてもおかしくない時間だった

真美は俯いて、ため息ばかりついている

「真美ちゃん、おはよう!こんな所で何してるのぉ?遅刻するよー?」

「麻奈…」

まな?真美の友達?

あんな子、見たことないな…

「あ、もしかして学校行きたくないの?そりゃそうだよね、行ったらまたイジメられるだけだもんね。私が助けてあげようか?助けて欲しいなら、ここで土下座しな?私がみんなにもうターゲット変えない?って言ってあげるよ。私も、あんたに飽きてきたとこだし。さ、早く土下座しな?」

「…本当?本当に、もうやめてくれる?」

「うん。だから早く、土下座しろ、って言ってんの」

真美はベンチから立ち上がった

駄目だよ…駄目だよ、真美。

そんな奴に土下座なんて…!

「今まですみませんでした…もう、許して下さい」

真美はそいつの前で土下座した

きゃはは、と

甲高い笑い声が聞こえた

「写メ撮っちゃったあ!あとで雅美に見せよーっと。喜んでくれるだろうなあ…楽しみー」

「…もう、やめてくれるんだよね?」

「さあ、知んない。だってイジメとか全部雅美中心なんだもん。私は雅美の言う通りにしてるだけ」

「そんな……だって、初めに、土下座したら許してくれる、って…」

「雅美がもうやめるって言ったらやめるけどおー、あ、私もう行くからー、ちなみに今日はとっておきのお楽しみがあるから、楽しみにしててね」

「…そんな…ひどい、ひどいよ!」

「わめくな馬鹿」

真美は地面に手をついて泣いていた

最低…

真美虐めるなんて最低

「…真美っ、」

私は真美の元へ駆け寄ろうとした足を止めた

今バレたら

私まで消えてしまう

「…っ真美……ごめんね、何も出来なくて」

気付いてもあげられなかった

真美が、楽しく学校に通ってると思ってた

ごめんね、ごめん、真美

真美は立ち上がり、学校へ向かった

「頑張れ、真美」

私は小さくつぶやいた

私は学校の前にある喫茶店から

校舎を見つめていた

バレちゃまずい為

近くの雑貨屋でだてメガネと帽子を購入し

それを着用して、私は学校をじっと見つめていた

2時間が立って、私はさすがにこれ以上居たら怪しまれると思い

喫茶店を出て

学校の裏側に回った

真美が飛び降りて自殺を図るまで

あと3時間

学校からのチャイムを

あと3回聞いたら、私は屋上へ向かい

真美を止めに行かなければならない

それから、私はじっと

そのときを待った

1回目のチャイムが鳴り響き

運命のときまで、あと2時間

2回目のチャイム

そして、30分が経過した

「…もうすぐだ」

私はごくりと息を飲み込んだ

3回目のチャイムは

私のあくびとともに鳴り響いた

「…GO」

軽くこぶしをにぎり

気合を入れた

私はめがねをかけ、帽子を深くかぶり

校舎の中へと忍び込んだ

裏側の階段を使った為

1人、生徒とすれ違っただけだった

私はそのまま屋上まで走った

屋上の扉は半開きになっていた

私は屋上に真美の姿を見つけた

見つからないように、静かに屋上へと足を踏み入れる

そして、倉庫の裏にすばやく隠れた

「私…もう………生きるの辛いの」

真美はつぶやいていた

「悲しくて、辛くて、誰もこんな気持ち、気付いてくれなくて…」

私が気付いてあげてたら

未来は、過去は、

変わっていただろう

「…もう、死にたいよ……」

真美がフェンスに手をかけた

よじ登ろうとしている

「…真美!」

「……真由子?…どうして、なんで此処に居るの?」

真美は驚きのあまり

上りかけていたフェンスから落ちた

「馬鹿!何してんの!」

「そ、それは、こっちのセリフ、…真由子、何で此処に居るの?!」

「そんなことどうでもいいでしょ!真美のピンチだよ!それに気付かない姉が何処に居んの!私達、双子なんだよ?真美が、居なくなったら…私、消えちゃうよ!」

「…真由子……」

「だから死のうなんて考えてんじゃないわよ!真美が死んだりしたら私、この先どうやって生きてけばいいのよ!」

「真由子……でも私…もう辛くて、辛くて、死んじゃった方が、マシなの。楽になりたいの。こんな所に居るくらいなら、もう、死んだ方がマシなの」

「こんなとこに居る必要なんてないよ!うちの学校に転校しておいで、真美。うちの学校の子、優しい子ばっかだから。うちの学年、イジメなんて全然ないから。だから、おいでよ。真美。死なないで、死ぬ必要ないよ」

「…真由子……真由子…!」

真美が私に抱きついてきた

「もう…真由子が来なかったら私、死んでたよ、今頃」

「そうだよ、馬鹿!あんたが死んで、どれだけ悲しかったと思ってんの!」

「…え?」

一瞬時が止まった気がした

「……夢の話だよ、馬鹿…もう死のうなんて思わないでよね」

「…うん」

「私、帰らないと…」

「え?どうして?そういえば真由子、なんで此処に居るの?学校は?」

「真美がピンチだから、私、飛んできたのよ」

時空を超えて、ね

「え、でもどうして私服なの?真由子、学校帰りじゃないの?」

「いいの!そんなことはどうでも。私、兎に角帰らなきゃなんないの」

「え、どうして?一緒に帰ろうよ?私ももう帰れるし…」

「私、人待たせてるの。だから、急ぐから。あ、真美、まっすぐ家に帰ってくるんだよ!」

「え…うん、わかった」

「じゃあね!またあとで!」

私はダッシュで駅まで向かった

駅のトイレの中で

私は時計のボタンを押した






「ばいばい!また明日ね!」

「真由子?」

「あ、真美!今メールしたんだよ?」

「え、うそ。気付かなかった」

「そう」

「ねえ真由子…今日は有り難うね」

「え?なんのこと?」

「さっきのことだよ」

「えー?何言ってんの?真美、どうかしちゃったんじゃない?」

「へへっ、真由子のばーか」

「えー?」













過去を変えて

あなたという存在を

取り戻した



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