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「邂逅」するということ



 『カラマーゾフの兄弟』からまず引いている。アリョーシャはカラマーゾフの兄弟の末子である。

(ここから)

 早熟で生意気なコーリャは、アリョーシャとの邂逅によって、次のようなことをいうようになる。それ以前のコーリャには考えられないことである。

「このニコライ・クラソートキンに命令できる存在は、全世界に一人きりしかいないんです、それがこの人ですよ」

 そういうと、彼はアリョーシャを指差した。「この人には服従するんです」

(略)

 イリューシャの病床でコーリャが話す時に、コーリャはアリョーシャの一挙一動がなぜか気がかりでならない。

「コーリャは気取っていい、ちらっとアリョーシャを見た。この席で彼の意見だけを恐れていたからだ」

 アリョーシャは終始、沈黙しており、その沈黙を、コーリャは、軽蔑のしるしかも知れない、と考えていたのである。しかし事実はアリョーシャは、アリョーシャはコーリャを軽蔑していたのではなかった。むしろ、アリョーシャはコーリャのことを「ゆがめられてこそいるけれど、素晴らしい天性の持主」として賛美する。

 そのことを知ってコーリャはそれまで自分を「えらいやつ」に見せようとしてあせっていたことを、正直に告白し、その際、アリョーシャが自分のことを軽蔑しているであろう、と憎しみさえ覚えた、という。

 こうして苦しい告白の後、コーリャは忽然としてアリョーシャに邂逅したのである。コーリャはいう。

「あのね、カラマーゾフさん、僕らのこの話し合いは、なんだか恋の告白みたいですね」
(引用終わり)

 恋するとコーリャのように感じるのはよくわかる。




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