日常・・・

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第四章【Lモンスター】



「スコット、ユアン、大丈夫か!?」
戻ってきた二人に、ネイオが聞く。
周りの隊員達も近づいてきた。
「一応大丈夫だが・・・」
スコットが話し出す。
「ここにはゾンビがいるぜ」
その言葉にネイオの背筋は固まった。
そして、自分自身を恨んだ。
(運が悪いな)
しかし、そうこうしていては始まらない。
「よし、そいつは倒したんだろ?だったら早く事務室に行き、任務を果たそうではないか」
「どんだけ気取ってんだよ、ネイオさん」
スコットの冷ややかな突込みが入る。
ネイオは左手で頭をかく。
その瞬間、左手首に装着していた多目的機<オール>のアラームが響いた。
「なんだ?」
「お前の通信機だ。冷静になれ」
カルロスに言われ、ネイオは左手のオールに向かった。
相手はどうやらマックスのようだ。
通信返答のボタンを押すと、内蔵されているマイクに向かって喋りだした。
「マックス、どうした?何かあったのか?」
『のんきな事言ってるなよ!』
大きな声が響いたので、ネイオは一度オールから顔を離した。
そして再び近づけた。
「何があった?」
『リッカーだ。リッカーが出た』
一同は驚いて、お互い顔を見合わせた。
『そして一人、エルバトフスが重傷状態のようだ。そっちは異変があったか?』
「こっちはゾンビだ。負傷者はいない・・・」
負傷者はいない・・・この言葉を聞いて、ユアンは顔をしかめた。
「援護に向かうか?」
ネイオは即席に応答した。
しかし、内容はきちんとある。
『いや、こっちがそっちに向かう。重傷者、エルバトフスの様子を見てだな』
「分かった。では事務室にいると思う。気をつけろ」
『そっちもな』
そういってマックスは通信を切った。
ネイオも同じように電源を切った。
しかし、全員が浮かない顔をしている。
内容が筒抜けだったようで、リッカーの恐怖がこみ上げてきたのだろう。
「だからきたくなかった・・・」
やる気のないようだったキットがつぶやいた。
スコットはそれを見かねた。
「おまえなぁ!そういう考えはやめだ!来たくなくても来てしまったからには仕方ないだろ。
さ、立て。事務室に行くぞ。そっちの方が安全だ」
スコットの熱弁でキットは立ち上がった。
ネイオは感心をした。
「お前って、任務に一回、必ず熱弁をふるうよな」



―ドク、ドク、ドク・・・―
青い液体の入っている注射器を、計七本注射した。
鎮痛剤が入っているはずだから、痛みが取れるだろうと思っていた。
しかし、痛みが取れることは無かった。
「グハ・・・グハ」
エルバトフスの苦痛の声が響く。
そのとき、目の前の扉が開いた。
(マックス・・・)
そう思って目を開けた。
しかし、目の前にいるのは、何もかも黒ずくめの男、アローンだ。
「誰だ・・・?」
エルバトフスは苦痛の中、声を発した。
アローンはゆっくり語りだした。
「君は間違いを犯した」
低く、冷たい声が響く。
視線はエルバトフスの周りに転がっている、空の注射器に向かっている。
「そこにあったLウイルスを体内に注入したようだ」
「Lウイルスだと?・・・」
エルバトフスは苦痛をこらえ、質問をする。
「一般的にはそういう名だ。別名SSウイルス。それを体内に注入されるとゾンビ化する。
リッカーに噛まれたり、引っ掛かれたりすると、約注射器一本分の量が体に入り込み
人間をリッカー化、ゾンビ化させてしまう・・・
しかし、お前は五本も注入した。それはとてつもない量だ。少なくともゾンビ化の際に・・・」
そのとき、エルバトフスの意識が切れた。
「知能レベルが格段にアップするだろうな」
そう男が言った時、エルバトフスは起き上がり、ものすごいスピードでアローンの胸倉に
突っ込んでいった。
しかし、アローンは予測していたかのように扉を閉めて、エルバトフスをシャットアウトした。
そしてアローンは、廊下を走っていった。
ガン!ガン!ガン!ガン!
扉を開けようとエルバトフスは体当たりをしている。
完全に理性が無いようだ。
これが人間がリッカー化、ゾンビ化した姿だ。
通常ゾンビは食べるだけを本能としているため、単純に人を襲うことしか出来ない。
しかし彼の場合は違った。
次の瞬間、部屋後方の扉が開いてカーギーが入ってきた。
「大丈夫か・・・って、何をやってるんだ!」
そのカーギーにエルバトフス・・・いや、ゾンビは拳銃を向けた。
そしてカーギーの脳天めがけて、弾を発射した・・・
カーギーは倒れこんで、動かなくなった。
このゾンビこそ・・・スーパーアンデットである。



第二節【緊急速報】

「起きてください・・・もう八時です」
「んん・・・あと五分・・・って、お前!!」
ジェシーに起こされたアフタショットは叫びだした。
「学校はどうした!日本の高校に留学なんだろ!早く行けよ」
「だから起こしたわけで・・・行って来ます」
そういうとジェシーは部屋を出て行った。
アフタショットはテレビをつけ、再びソファに横たわった。
テレビでは数人のコメンテーターが一つのニュースで議論している。
数十分鑑賞していると睡魔が襲ってきた。
すると、画面上に数行の文字が出てきた。
すぐに副音声ボタンを押す。昨日覚えたらしい。
流れていた内容に耳を傾ける。
「何・・・」
内容はこういうものだ。
『今日の深夜、東京新宿のデパートで三人の遺体が発見されましたが・・・原因となったのは
どうやら動物のようです。その動物が今、マンホールの下、下水に逃げ込んでいるとの
情報が入りました。現在、警察による決死の捕獲活動が続いています・・・』
「動物か・・・何の動物だ?」
そう思って再びテレビを見つめる。
『たった今、捕獲活動の中継映像が入りました。ご覧ください』
「タイミングバッチシじゃねぇか」
アフタショットは、一人つぶやく。
すると、ある住宅街の一角で、警官達が必死でマンホールの下を覗き込んでいる。
周りには網を構える者や、銃を構えている者までいる。
住宅街ということで、野次馬も多く、マスコミの数も半端ない。
「あれ?」
数多い野次馬の中にジェシーがいるではないか。
「何で野次馬してんだよ」
次の瞬間、マンホールを覗き込んでいた警官が中に引きずり落とされた。
「!」
その場にいた野次馬達をはじめ、観賞していたアフタショットも驚いた。
そしてマンホールの中から何かが飛び出して、網を持っていた警官を襲った。
画面向こうの野次馬、もちろんジェシー含め全員が拡散した。
そしてアフタショットは、画面を見つめて固まった。
出てきた動物が、あのリッカーだったからである・・・。




「ここが事務室か?」
せっかちなエージェンが訊く。
「そのようだ」
先頭を行くネイオがガラス越しに確認していう。
事務室というわりに、廊下の一番奥に位置していて、頑丈な扉だ。
横にスライドする分厚い扉の顔の高さあたりに、小さめのガラスがあって、そこから内部が確認できた。
部屋奥の大きなスクリーンに向かって、長い机が配置、設置してある。
サーフが出てきて、どうやれば扉が開くか確認する。
「分かった。ここは多分・・・中のコンピュータで開けるんだと思う・・・」
「おいおい、さっきのコンピュータで開けてくれよ」
「それが出来ないから言っている」
スコットの野次をサーフは切り返す。
ネイオは名案を・・・思いつこうと思ったが、どうやっても思い出せない。
「そのガラス割れば入れるんじゃないか?」
カルロスの後ろにいたクロウが言った。
「お前、いたんだな」
スコットがとぼけたことを言うと、ネイオとクロウとのWパンチが喰らわされた。
そしてネイオは切り出した。
「そう思ったんだが・・・このガラスは扉と同じく分厚いと思う・・・そして」
そこまで言った時、銃声と共にガラスは割れた。
ネイオは二、三歩だけ後ずさった。
「そうでもないな」
クロウが拳銃を窓ガラスに向けて放っていた。
「クロウって、こういうキャラ設定だったのか・・・」
スコットがぼやいた。

キャラ云々より、今は事務室に入るほうを優先的に考えた。
とりあえずスコットがためしに隙間から入ることにした。
しかし、窓の大きさがたて三十センチ、横七十センチほどだ。そしてガラスがあった場所の
高さが人の顔の辺りだ。
そこに体を通せという方が、無理難題だった。
「正直きついぜ・・・もうやめよう・・・イデデデデデ!!」
スコットはその窓の隙間に肩を通し胸まで入ったものの、それ以降無理だというんで
残っている全員で、スコットの体を押し込んでいるのだ。
「正直言って、もう少しで行きそうだ。スコット、もう一押しする」
「やめろ、ネイオ・・・死ぬ・・・イデデデデ・・・・・・うわぁ!」
強引に押し込んだ結果、スコットの体はわずかな隙間を通過した。
スコットは事務室に入ったのだ。
「よーし、俺は入れた。皆も早く・・・」
「スコット、中にはボタンがあって開けられるはずだ。それで開けてくれ」
ネイオの命令が飛び、スコットの苛立ちは頂点に達しそうだった。
扉の脇にある緑色のボタンを押す。
分厚い扉が横にスライドし、勢いよく開いた。
「・・・ほぉ、なんと便利なんでしょう」
ネイオ、カルロス、クロウなどなど、一同入ってきた。
「ありがとうなスコット」
カルロスが渋く言ったので、スコットは機嫌を取り戻した。
スコットは次々と入ってくるメンバー達に笑顔で対応した。
まぁ、数人しかいないが。
スコットはまだ事務室に入っていないユアンに目をつけた。
「ユアン?どうした?寝てるんじゃないのか。早く来い」
ユアンはスコットの言葉に、もたれている壁のドアから体を離そうとした。
するとドアが揺れた。
一瞬にしてユアンはそこから離れると、事務室に入り込んだ。
未だにドアはギシギシ・・・内側から押されている。
「何かいるのか?」
「大丈夫だろう・・・扉を閉める、入れユアン」
スコットとユアンは揺さぶられているドアを見ながら扉を閉めた。




アフタショットは荷物を持ってアパートを出た。
「あんた見かけないね、アメリカのいい男の知り合いかい?」
アパートの大家の老婆が日本語で言うが、アフタショットには分からなかった。
アフタショットは退出際に紙切れを落としていった。
故意でやっていることで、大勢に伝えたかったことだ。
老婆が拾い上げると、紙には「TV 1」と書いてあった。

すると、外ではリッカーのニュースを見たのか、人々がパニックになっていた。
アフタショットは行きかう車と人を掻き分け、先へ進んだ。
向かう場所は新宿、リッカーが現れた場所である。
約三キロから四キロ・・・電車ならすぐだ・・・
アフタショットは渋谷駅に行き、電車に乗ろうとする・・・が、丁度いい電車を逃した。
「くそが・・・走るか!」
アフタショットは渋谷から新宿に向かい、走り出した。


その頃、日本の首相官邸では慌しく関係者が走り回っていた。
中年の男が、前から歩いてくる老人の前に立った。
「総理。緊急連絡があります」
「なんだ?」
歩いてきた老人は日本国の総理大臣である。
しかし、なかなか老けを感じさせない、きりっとした表情をしている。
独特の声域を持っている総理大臣はくたびれたような声で返答した。
「地震か?」
「違います!新宿で謎の動物が出現し、暴れまわっているのです」
「謎のどうぶつぅ!?」
すっとんきょうな声をあげる総理に、中年の男は証拠映像を見せる。
先ほどニュースで流れた、マンホールから出現するリッカーを捉えた映像を小型TVで見せる。
「けっ」
不意に総理が鼻で笑ったので、回りの一同は総理に顔を向ける。
「どうかしました?総理?」
「こんなのはやらせ映像だろが。いかにもCGっぽい。動きをすばやくしてごまかしている。
今や一般人が簡単にテレビの周波に侵入することが出来て、映像を流すことが出来るんだ。
この侵入問題が、今後の課題となるようだな」
そう言葉を残し、総理は歩き始めた。
呆れてきょとんとする中年の男に、総理は振り向き最後にこう言った。
「事態が明確になるまでこれはやらせということで判断しておく。分かったな」
総理が見えなくなるのを見て、中年の男は呟いた。
「・・・くそ、あの馬鹿頑固爺が!・・・」




「カーギーはまだか」
最年長のデックスが呆れ返って言う。
「もう10分は経ったぞ。マックス、オールで呼び出せ」
ルークが膝を付きながらマックスに言った。
マックスは左腕に装着している、オールを手に取りスイッチを入れ、喋りだした。
「カーギー、大丈夫か?」
一瞬間が空く。
「カーギー?」
マックスはオールに向かって話しかけ続けている。
見かねたデックスは訊く。
「どうしたマックス。カーギーが応答しないのか」
「あたりだ」
マックスは問いを待ち構えていたかのようにすばやく答えた。
一瞬、部屋の片隅にうずくまっている一同に、冷たい風が吹いた気がした。
「やっぱりカーギー一人にエルバトフスの生死確認を任せたのが間違えだったようだな」
G.E.の嘆きが聞こえる。
そのとき、ルークが立ち上がった。
「何をするんだよ」
スパンが辺りを見回しながら聞く。
「ここでもたもたするよりは・・・ネイオたちと合流が一番じゃないのか?」
ルークの言葉に、マックスは賛同した。
「そうだな。皆もいいだろ」
くたびれた顔だが、一同は小さく頷く。
「リッカーだな・・・問題は・・・よし、銃を構え、いつでも撃てるようにしろ。よし、レベル2に行くぞ」
マックスの一言で隊員達は歩き出した。



ロス市警では、一人の壮年刑事、アンサー・ドアー電話を手にメモをしていた。
「そうか、地下の研究所とやらで現在任務遂行中・・・」
ドアーはメモ用紙をちぎる。
「その地下施設の場所は?任務内容は?・・・施設の場所はマイアミ・・・あのビルの扉の向こうだと!?
で、内容は・・・ああ、詳しくじゃ無くていい、施設の動力切断だな。分かった、また質問させてもらおう」
彼は電話を切った。
若手の刑事がデスク越しに質問する。
「ドアー刑事、さっきからやけに慌しいですね。どこに電話してたんです?」
「ああ、特殊部隊本部だ。情報収集部に友達がいてな、リッカー事件について聞こうとしたんだ。
そしたら・・・極秘だが、現在任務遂行中らしい。マイアミのアローン所属のビルの地下で若者が扉に射殺されたろ?
あの扉の向こう側にその・・・えっと、アローン社の地下研究施設はあるらしい」
ドアーが一通り説明すると若い刑事が質問する。
「ということは・・・あのアローン社がウイルスの・・・・」
「ああ、まだ確定事項じゃない。しかし、そういうことだろ。」
ドアーが椅子にもたれる。そこで若手の刑事が口を挟んできた。。
「アローン社の研究施設といえば・・・これを見てください。」
若手刑事がドアーにパソコンの画面を見せる。インターネットニュースである。
表示されていたのは"アローン社 研究施設破棄"とのニュースだ。
どうやらあまり良くない研究を追及されたらしく、破棄したとなっている。
「1年前ですが・・・これと関係ありますかね」
「分からん。ただ、もしこの施設と同じだとしたら・・・」
ドアーは画面を見た。そこには思い切り"マイアミにある支店と研究施設"云々書いてある。
そうか、あそこのビルはこのニュースが公表された1年前から使ってないから薄暗くて
どこか放置され年期が入っているように見えたのか。
そして表に見えるビルや会社内部は使用せず、一般に破棄されたと思わせた。
しかし、その地下、さらに奥にある主要研究所は動いていたのか。
「それで動力の切断か・・・納得だ」
ドアーはそう呟いたがそんな内部の人間しか知らないような事、動力が稼動していることを
いくら特殊部隊の人間とはいえ、探知できるものなのだろうか。
「とにかく、また確認とる」
ドアーは電話を取り出すと、再びその情報収集部の友人へとコールした。



第三節【ゾンビ軍団】

「コンピュータばかりだ・・・」
「そりゃ事務室だからな」
クロウとカルロスが、一台のPCの前で会話をしている。
やはりカルロスのほうが体は大きいが、筋肉の付きはクロウも負けてはいない。
スコットは扉のガラスがあった場所 ―スコットの体を通した所― を近くのプレートでふさいだ。
何故か知らないけど、不気味な感じがするのだ。
「スコット。何故そこを覆った」
ネイオがサーフと会話をしながら聞いてきた。
「なんとなく・・・嫌悪感というか・・・恐怖感が出て来るんだ。大体俺は、隙間が苦手なんだ」
「はーん。でも気を付けてくれ。マックスたちは着たらあけてくれよ」
ネイオはスコットに指示をすると、サーフと大きなコンピュータに目を向けた。
「これがこの施設の区画・・・地図ですね。まず、主な施設が書いてあるんです。
レベル1はメインホールと入り口・・・レベル2は事務室、コントロールルーム、研究室・・・」
「研究室。。。嫌な響きだ」
クロウの後ろにいるヘブリックが嘆く。
サーフはさらに書いてあるものを読み上げる。
「で、レベル3には電気室に食堂・・・レベル4が事務員室、書室・・・恐竜育成室・・・」
サーフの発した言葉は、メンバー達を恐怖に陥れた。
「きょ・・・恐竜育成室?」
カルが低くかれたような声を出す。
ユアンがネイオの元にやってきた。
「恐竜って・・・あの恐竜か?」
「そうだユアン。約六千五百万年前に絶滅したあの恐竜だ」
「俺達はスピノサウルスって奴に殺されかけたんだぜ。リッカーよりでかいんだ」
ネイオが言って、スコットも便乗する。
カルロスは部屋の片隅で銃の手入れをしていたが、やがてネイオたち、中央モニターを眺めている面々に向かって諭すようにしていった。
「おい。何の音だ?」
一瞬、神が通り過ぎたかのように沈黙が降りた。
しかし、カルが静寂を破る。
「音がしたか?」
耳をもう一度澄ます。
すると、なにやら騒がしい音がするではないか。
ネイオは銃をさりげなく構えると、扉の方に駆け寄った。
スコットが覆った、プレートをゆっくりとどかす・・・
そのときだった。
扉がゆっくり開いた。
ネイオは不審に思って、扉の開閉装置の方向を見た。
「カル。勝手なことをするな」
「ん!?俺はネイオがきちんと出来るようにしてやっただけだぜ」
「ありがたいな。この・・・」
そういいながら、完全に開いた扉のほうをネイオは向き直ろうとした。
「ネイオ!」
スコットの声が響く。
ネイオは正面を向き直った。
「こういうことか!」
ネイオは後ずさりながら、構えた銃を連射し始めた。
扉の向こうにはゾンビが大量にいたのだ。



アローンは監視カメラのモニターでこの状況を眺めていた。
「ようこそ哀れな犠牲者たち」
そう呟くと、再び衛星電話を取り出す。相手は変わらず、先ほどの男。
『何か進展があったか?』
「さっきからモニターで確認しているが1人が運の悪い事に知能強化アンデットになった」
スーパーアンデットと化したエルバトフスのことを言っている。
「そしてそいつが1人殺した。で、さらに俺の部下達が別の部隊を襲おうとしている」
アローンは事務室の状況を見ながら報告した。
『これでリッカーの姿を知るものが消えるといいが・・・』
「そのために俺はわざわざこの研究所を餌にして、獲物をひきつけたんだ。
部下達をすべてゾンビにまでしてな、ありがたいと思ってくれよな」
アローンが言うと、相手の男のテンションも上がっているようだ。
『私の部下だ、丁寧に扱ってくれよ』
冗談も混じるこの恐ろしい会話。アローンは急ぎ口調で言う。
「とにかく俺は脱出させてもらう。いい実験台にもなるよ」
アローンはそういって、電話を切った。そして、レベル2の事務室を見つめた。



レベル2の事務室では、激しい銃撃音が響いていた。
頑丈な扉を開けたせいで、どんどんとゾンビが入り込んでくる。
その数は計り知れない。
ネイオは自前のマシンガンの弾をどんどんゾンビに浴びせかけた。
しかし、数が多すぎて減る兆しすらなかった。
「しなねぇぞ」
ヘブリックの歎く声が響いた。
そういえばヘブリックはこいつらの倒し方を知らない。
「ヘブリック!頭だ!脳を狙え!」
スコットのアドバイスが響き、ヘブリックは再び撃ち始めた。
カルロスはグロック拳銃 ―単純なピストル― をゾンビの頭めがけて撃っていた。
しかし、どうやら弾を切らしたようだ。
引き金の隣にあるボタンを押し、弾入を床に落とし、新しいのを入れようとする。
近くにゾンビが迫っているせいか、後退しながらの作業だった。
すると、運悪く段差に引っ掛かり転倒をしてしまった。
カルロスの手からグロック拳銃が滑り落ちる。
カルロスは仰向け状態の上に、一体のゾンビがまたがってきているのを確認した。
何とか迫り来る顔を片手で押さえ、もう片方で別の銃に手を伸ばすことが出来た。
しかし、いかんせん近すぎた。
脳天めがけて発射しようとするが、顔が近すぎて狙いが付かない。
「くそっ!」
正直諦めかけた瞬間、目の前のゾンビの頭にナイフが突き刺さって、力なくゾンビは倒れこんだ。
カルロスはすぐにゾンビを押しやると、ナイフの飛んできた方向を確認する。
「お前か」
投げたのはクロウだった。
「これくらい・・・お手の物・・・」
ゾンビの頭に刺さったナイフを引き抜きながらクロウは言った。
「ところで、大丈夫か?」
「ああ、何とか噛まれることは・・・」
二人がそんな会話をしていたとき、向き合っている二人の、カルロスは右側、クロウは左側にゾンビが近づいていた。
「くそ」
クロウは銃を構えようとするが、二人の顔の間を銃弾が走った。
ゾンビは崩れ落ちる。
「お二人さん、気をつけてくれ」
スコットがマシンガンを構えて立っていた。
「もしこのスコット様がいなったら・・・」
突然、スコットの後ろのゾンビが倒れこんだ。
スコットは得意そうな顔から一転、恐怖の顔へと変わった。
クロウが拳銃を撃ち終わった体勢でスコットに言った。
「お前見てると・・・ジェイク思い出す」
「誰だよジェイクって」
スコットが聞き返すが、クロウの答えはそっけなかった。
「過去の話だよ」
そういって2人は再びゾンビに銃口をむけたのだ。


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