日常・・・

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第5章 【月光】





「地図はどこだ・・・」
ジョンが壁際に張り付き、慎重に歩いている。
彼らは地図など、出口への手がかりになるようなものを探していた。
「これは?」
エレナが壁に張り付いていたパネルに手をやる。
もちろんこのパネルは地図である。
「ラッキーだな」
「でかしたエレナ」
ウィルとソーンが続けて褒める。
エレナは照れながらも、地図を見ながら位置を確認した。
「ここは地上へ一番近い階よ・・・そこをまっすぐ行って左に曲がれば出られるわ」
「簡単だな」
ジョンは、エレナの説明に笑みをもって呟いた。
「脱出は近いぞ」




「奴らは出口まで・・・どのくらいだ?」
「分かりません・・・監視カメラはほとんど破壊されました。私設部隊も逃がしたようです」
デレックは頭を痛めた。
奴らが脱走したら、貴重な実験人材が・・・もし変異しなくとも、さらにそれを研究しようとプランを立てていた。
大体、このことを告発されたら?
この施設のことを告発されたら?
私のことを告発されたら?
なんとしてでも捕まえなくてはならなかった。
「ジョーンズ」
部下兼年上のジョーンズに声をかける。
「出口を完全封鎖しろ。警備員も固めて、部隊にはパトロールを強化・・・殺すな、捕まえろ。と伝えろ」
「はいよ」
ジョーンズが無線機をおもむろにつかむ。
デレックは失敗作をどうしようか迷っていた・・・
デレック・アローン、彼の大勝負が始まろうとしていた。




ロスソンはグリー、アポー、ラッセルを集め作戦会議をしていた。
マーティが入り口の警備、アーデスとラリーが建物内の巡回、サイドが屋根の上で見張りに立っていた。
レストランの窓際の席で、テーブルを囲み4人が腰かけている。
「どうするかだ・・・明日の0600時には出発したい・・・今何時だったっけ?」
「深夜0時・・・だな」
ロスソンの問いにグリーが答える。
「1日終わったわけか」
アポーも呟く。
「おいおい、それはいいとして任務を続行するか、救助を呼んで帰るかだ。リーダーが死んだからな・・・」
ラッセルが深刻そうに呟く。
3人より若干年上の36歳の彼は、なかなか説得力がある。
ロスソンは彼にリーダーを任せたいくらいだ。
しかし、決まったものは仕方ない。
「よし、とりあえず本部へ報告するか・・・誰か、長距離通信機持ってないか?」
ロスソンの問いに黙り込んでしまった。
誰も持っていないのだ。
耳についている無線機は近距離用で、メンバーとの通信用である。
そしてロスソンは思い出した。
ハンディースが本部に連絡を取っていたということを・・・
「くそ・・・ハンディースが持っていたんだ・・・」
「サイドなら持っているかも・・・」
グリーがロスソンに提案する。
「そういえばネイオ名誉指揮官のファイルは、結局俺が持っているんだが・・・これもサイドに預けるか」
「だな」
ラッセルが頷く。
―その瞬間、上のほうで銃声が響いた。
「何だ!」
グリーが上を見ながら叫ぶ。
「見張り場だ・・・屋根の上だ!」
アポーが推測で言う。
「くそサイド・・・サイド!サイド!聞こえるか!?」
ロスソンが通信機を使用しサイドを呼んだ。
そして、またもや銃声が聞こえた。
続いて悲鳴も聞こえた。
「サイド!」
グリーも通信機に叫ぶ。
「やばいぞこれは・・・ロスソン、皆を集め上へ・・・」
ラッセルがロスソンに提案した時だった。
ガラス張りのガラスの向こう側を、血にまみれたサイドが落下していった。
「くそ!」
ロスソンはそれを確認すると銃をとった。
「グリー、アポー、ラッセル!屋根の上に向かうぞ!」
4人はその場を離れた。
すると奥のほうから巡回中だったアーデスとラリーが走ってきた。
「やべぇぞ・・・サイドが・・・」
「やつは死んだ!」
ラリーが怯えながら言っていたのを、アポーは強い声で制止する。
入り口で警備していたマーティも合流した。
2階のレストランで特殊部隊員は立ち往生した。
「どうする・・・すぐに怪物は来るぜ!」
「外にうかつに出れないのが・・・」
グリーがそう言いかけた時、前面ガラス張りの窓に何かが張り付いた。
リッカーである。
長い爪と、強力な握力等を利用してガラスに張り付いているのだ。
「撃とうぜ、ロスソン」
ラリーが提案する。
「ダメだ!撃ったらガラスが割れて奴が中に入ってくるだろ」
ロスソンはいたって冷静に対処しているつもりである。
リッカーは長い舌を出して威嚇してくる。
「どうする・・・?ここに留まっているのも危険だぞ」
「待ってくれ、いい案を探してるんだから!」
ロスソンは頭を抱えて下を向いた。
するとリッカーは、ガラスに張り付いたまま大きな爪をつきたてた。
ガラスにひびが入る。
次の瞬間、ロスソンは声を張り上げた。
「ラリー、ランチャーだ。撃ち落とせ!」
ラリーは慌てて最新鋭のポータブルランチャーを持つと、リッカーに向けた。
「くそ・・・どこを撃つ・・・」
「どこでもいい!自分の思うところだ・・・お前は射撃のプロなんだろ!」
ロスソンが大きな声で、ラリーに言う。
すると、ラリーは若干機嫌が良くなったようだ。
「耳をふさげよ・・・」
ラリーがそういった次の瞬間には、大きな音と共に発射された。
弾はガラスにへばりついていたリッカーに―厳密には、そのガラス―に命中した。
ガラスは全て吹っ飛び、リッカーもついでに吹っ飛んだ。
リッカーが吹っ飛んだ瞬間、全員に果てしない安堵感がやってきた。
「はぁ~」
グリーがため息を大きな声にして表す。
「サイド以外は全員いるな?大丈夫か?」
ロスソンが皆に訊くと、全員から気のない返事が返っていた。
いつも通りだ。
「ロスソン・・・」
ラリーがいつも以上に深刻そうな顔をしている。
「これからどうする・・・分かったんだ・・・このロサンゼルスで安全な場所はどこにも無いってな」
ラリーがいつもはないような、-思考に言うのでロスソンは凹んだ。
何気に、彼の馬鹿な言動に助けられていたようだ。
「ここで平凡としてはいられない・・・」
ラリーがポータブルランチャーを腰に返しながらゆっくりといった。
ロスソンは、再び深く考え込んだ。
するとグリーが声を出す。
「・・・地下」
「は?」
「地下道さ・・・というか配水管だ。全民避難のちょっと前、スタジアムに水を通すための狭い道を作った・・・」
グリーが思い出しながら解説をする。
「あ、確か避難の2,3ヶ月前に完成した奴だな・・・それがどうした?」
マーティが思い出したようで、グリーに質問をする。
確かにそのトンネルをどうするか・・・
「大体察しはつくと思うんだが・・・そのトンネルを通るってのはどうだ?」
「馬鹿か!」
アポーがすぐに反対する。
「中に大量のリッカーがいたらどうするんだ!?」
「そもそもトンネルはどこにあるんだ?どこから入るんだ?」
大勢から反対の意が飛んでくる。
しかし、グリーには一応計画があった。
「大量のリッカーは調べてみないと分からないが・・・トンネルは遊園地の・・・真下を通っている。
マンホールがあるから分かるはずだ」
マンホールという言葉を聞いてアーデスが思い出した。
「おいおい・・・マンホール・・・ハンディースの二の舞はごめんだ!」
「落ち着け・・・グリー、そこのところはどうなんだ」
ロスソンがアーデスを抑えつつ、グリーに質問する。
「あのマンホールはそのトンネルとはまったく別の・・・下水道が流れているんだ。あのトンネルは比較的最近出来たから、
マンホールのふたも新しいはずだ。もちろん、2058年から1年半経っているから・・・」
「でも通常通路を通っていった方がいいんじゃないか?」
アポーが疑問をぶつけた。
「ああ、そこのところはリーダーのロスソンに任すけど・・・どうするんだ?」
グリーはそこまで確証は無い様で、ロスソンに決定は任せた。
ロスソンはようやく顔を上げた。
「分かった・・・グリーを信じる。そのトンネルに行くか」
「マジかよ」
ラリーが大きな声で言った。
「新しい案の方が俺は好きだ。なんとなくだが・・・けれど危険性はどっちも変わらない。そこは心におけ」
ロスソンが締まる言葉を言う。
アポーはグリーの隣に行った。
「お前、こういうこと妙に詳しいな」
その問いに、グリーは照れくさそうに答えた。
「いや実は・・・このトンネル工事に携わっていて・・・変だろ」

午前0時39分、新しいプランが決まった。




その頃、ハワイにある本部では慌しい状況であった。
「ハンディース!ハンディース!くそ、無線に出ないぞ!」
ホーキンスは無線機でハンディースの無線機に連絡をいれていた。
しかし、もちろん応答は無い。
ハンディースのつけていた長距離用通信機は、シグナルが仕組まれていて本部ではシグナルで現在地が表示されるようになっていた。
そのシグナルが、ぴたりと一定の場所から動かなくなったので、ホーキンスは心配になって連絡をいれていたのだった。
連絡が取れなくなった本部では最悪の場合を考えていた。
「部隊全員が死んだか・・・それともハンディースだけか・・・」
ホーキンスは独り言を呟いてデスクに座った。
しかし、どちらの場合にしても死人が出たのは明らかである。
ホーキンスは怒りがこみ上げてきた。
もともとこの案には反対だった。

“ハンディース少佐をリーダーとするチームで、ロサンゼルスのウイルス生物削減”

作戦からして馬鹿げていた。
ウイルス生物を消滅ではなく・・・削減・・・。
これはもともとから消滅させる気はないうえでの作戦のようである。
さらに、このような作戦は実は2060年に入って3回行われていた。
1回目はニューヨークへ、2回目はワシントンへ、3回目はサンフランシスコへチームを送ったが、
全体を通しての生存者はいないという惨事であった。
そして4回目として今回、ロサンゼルスにチームを送り込んだ。
今回の生存者の見込みは・・・無い。
今回は爆弾を設置するという任務を兼ね備えてはいるが、やはり12月31日に予定される総攻撃の・・・所詮・・・下見だろう。
最高司令官は各所に派遣してこのような下見を行ってきた。
そんなやり方は卑怯であった。
ホーキンスの堪忍袋の緒が切れた。
すごい勢いで部屋をあとにすると、最高司令室に直行した。
彼は最高司令官の補助も行っているので、すんなりと入れる。
司令室の分厚い扉を開けると、怒りに満ちた顔を、正面のデスクに座っている最高司令官に向けた。
「司令官!」
「どうしたホーキンス」
最高司令官は動揺することなく、強気に言った。
ロビー・キャメロンという最高司令官で、かなり強気な作戦をとる事で知られている。
「今日はロスのチームの補助だろ?呼んでもいないし・・・」
「いい加減にしたらどうです!」
キャメロンは、ホーキンスの態度に正直驚いたが、それも常識であろう。
「・・・何の話だ?」
「同じことを繰り返して・・・進歩が無い・・・ロスのチームも犠牲者が少なくとも1人出たんです」
キャメロンはやっと怒りが治まってきたホーキンスの言わんとしている事が、ようやく理解が出来た。
「そういうことか・・・お前は何も分かっていないようだな」
「分かってないのは司令官です!」
ホーキンスは再び語を荒げた。
「どうせ今回の任務は後の総攻撃の下見・・・」
「分かっていないのはお前だ、ホーキンス!」
今度はキャメロンの方が声を荒げる。
ホーキンスは一瞬黙ってしまった。
そして首をかしげた。
(私が分かっていない?)
「まったくお前は・・・今回の任務で確かにその下見も兼ねていた・・・少し前の計画まではな・・・
だが、今回のチームには帰ってきてもらわなくちゃいけない理由がある・・・分かるか?」
ホーキンスは分からなかった。
それより、自分が間違っていたという後悔のほうが強かった。
「分からないか・・・なら、何故直接スタジアムに爆弾を仕掛ければいいものの、わざわざ特殊部隊の元本部に言った理由は?」
「ネイオ名誉指揮官の私物ファイルを回収して・・・2008年のリッカー事件の記録を明確にすること・・・」
最後の方は声がかすれ、消えそうであった。
しかしキャメロンはしっかりと聞き取った。
「そうだ。表向きにはな」
ホーキンスの怒りは、この言葉で再び燃え上がった。
また何かを隠していた!
しかし、それを指摘する前にキャメロンが口を開いた。
「これは決してマイナスなことではない。その事件で名誉指揮官はある重大な発見をしている・・・」
声をそっと止めて、間をあけた。
「ウイルスを撲滅できるかもしれないこと・・・ワクチンを見つけ出していたんだ」
その言葉で、髪の通ったような静けさが、最高司令室を襲った。




部屋に一人残ったダラックは尋問を受けていた。
部屋の扉は閉ざされていて今更逃げるのも困難だった。
「脱出計画に参加しなかったわけは?」
同じ質問を20回くらい繰り返されている・・・気がする。
「さっきから言ってるだろ。出る意味が無いからだよ」
ダラックは冷静を装っていた。
しかし、早く一人にしてくれという衝動の方が大きかった。
「最後の質問だ。お前は何で脱出計画に・・・」
尋問官がまた同じ質問しようとした時、ダラックの体に変化が起こり出した。
「・・・うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
ダラックの叫ぶ声が狭い部屋に響き渡る。
「・・・くそ!・・・なんだこれは・・・だはっ!!」
ダラックが叫んだ後にそう呟いていたが、腹を突き破られるような痛みに襲われて黙り込んだ。
しかし、うなり続けていて、痛みに全身が襲われているのが分かった。
するとなんということだろうか・・・
震える両手の爪が、どんどん伸びて、鋭くなっていくのだ!
筋肉細胞が活性化しているのか、腕の筋肉には筋が通り脈打っている。
次の瞬間、体の筋肉が膨れ上がり白い服が破れた。
「わぁ・・・助けて!」
尋問官が怯えて背中を向けた瞬間、鋭い大きな爪が彼の背中を破った。
ダラックはもはや人間ではなかった。
髪は抜け落ち、歯は鋭く、舌もものすごく長くなっていた。
素っ裸の状態ではあるが、全身が剥き出しの、灰色の筋肉に覆われている。
手ほどではないが、足にも鋭い爪が生えていた。
そして黄色い恨みのあるような鋭い眼差しを扉に向けた。
ダラック・・・脱出作戦に参加させなくて本当に正解だった男である。




「・・・変異・・・変異しました!」
ようやく復旧した隔離部屋のカメラのモニターを見ていたデレックの部下が叫んだ。
デレックはそのモニターに駆け寄る。
「作戦に参加しなかった男か?」
「そうです。ようやく変異しましたね」
部下が興奮気味に言う。
デレックもうれしいことだった。
そしてジョーンズを見た。
「はは、やっぱりな。変異しただろう」
デレックは笑いながらジョーンズを見た。
そしてこういった。
「部屋の扉を開けろ」
今の嫌味笑いを黙って流したジョーンズが、その言葉に反論した。
「ダメです!放したら・・・まずは麻酔銃で眠らせましょう。早く撃たないと、麻酔も効かなくなります」
ジョーンズが必死で理由を言う。
しかしデレックは考えを変えなかった。
「ここまで被害は来ないだろう・・・それにお前は私の部下だ!たまには黙れ」
ジョーンズはその言葉で黙り込んだ。
デレックは悠々と再び言った。
「あいつを放して・・・もう必要のなくなった失敗作を殺させるんだ」




月光が彼らを照らすなか、ロスの特殊部隊員は建物を出ていた。
ロスソンは先頭に、アポーが殿を務めて進んでいる。
目指す場所は中心部にあるというトンネルの出発点である。
「ロスソン、メリーゴーランドの手前のあれ・・・あの丸い奴」
グリーが暗闇にあるメリーゴーランドの手前の黒い物体をさす。
遠距離からだと確認は出来なかったが、近づくにつれ確認できた。
いたって普通のマンホールである。
「トンネルを作っているときは、遊園地の開園前の午前5時にこの穴に忍び込んだものさ」
グリーが思い出に浸っていた。
しかしロスソンが声をかける・・・思い出話は終わった。
「ああ、マンホールは普通に開けるんだ・・・」
「どうやって?道具が無いぞ」
マーティが鋭く言った。
しかしグリーは何も言わずマンホールの横をさする。
「何かあるのか?」
アポーが尋ねる間もなく、アスファルト柄のプレートで覆われていたらしい1~9までの番号入力機が現れた。
「な、問題ない」
「アスファルトじゃなかったのか・・・技術は進歩したな」
ロスソンが感心する。
次にはグリーが素早く4つの番号を入力した。
すると、マンホールがうえにぱかっと開いたのだ。
「おお、最新技術だな」
ラッセルも感心した。
「さぁ、開いた・・・後は入るだけだが・・・」
グリーは言葉を切った。
皆、自分の方を見ていたからだ。
「あれ?もしかして、俺が先に入るパターン」
「言いだしっぺだからな」
ラリーが無責任に言った。
仕方なく銃を構え、穴の中へ足を踏み入れた。
梯子に足をかけると、皆を見回した。
「もしかしたら、おさらばかもな」
というと、一気に梯子を下って行った。
あっという間に暗闇に吸われて、グリーは見えなくなった。
「大丈夫かな?」
アーデスが心配顔になって誰ともなしに尋ねる。
すると、次の瞬間、マンホールの狭い穴の下から明かりが届いた。
グリーが小型ライトで照らしているのだった。
「おーい。安全だ。変わってない」
「よし降りるぞ。殿はアポー頼む。よし行くぞ」
ロスソンが命じて1人1人下に降りていった。

最後のアポーが降りると、グリーがいろいろ探り何かを探している。
「何をやってる?」
ロスソンがライトでグリーを照らす。
「ここから先は水が流れる水路の脇を通る・・・くらいと汚い水にまみれることになるぞ」
「それは嫌だな・・・」
ラリーが静かに呟くと、グリーはついに何かを見つけたようだ。
「発見」
といった瞬間、当たりは明かりに満たされた。
電気がついたのだ。
「おお、すごい!」
「何でだ?グリー」
ロスソンが感心し、アポーが尋ねる。
「ここは地下だから月光も太陽光も届かないだろ?しかし、電線が引けなかったんだ・・・馬鹿だろ?
だから、専用の発電機を地中深くに埋めてあるんだ。だから、停電しようとリッカーが襲っても、ここだけは電気がつくんだ」
「その技術を持ってるのなら、電線くらい楽に引けただろ」
ラリーが突っ込みどころを言ったが、誰の耳にも届いていないようだ。
とにかく、降りたところは水路の途中ではなく、一つの部屋であった。
もちろん、地面はコンクリートだが・・・
壁一面に機械が並べてあって、一つの通路も確認できた。
その通路は、中央に汚い水が浮かんでいる。
本来の目的であるものであろう。その脇を、幅が3メートルほどながら壁に面した通路がある。
「あの通路を通るんだな?」
「そうだ」
ロスソンは念押しでグリーに尋ねた。
するとグリーは解説を始めた。
「これは海から引いているんだが・・・あそこから突然水路が姿を表して意るのが不思議だろ?
あれは、あらかじめ下に水路が引いてあって、それが終わって、その溜まった水が上に上がってくる仕組みにしているんだ。
その水を球場の方が絶え間なく使っているから溜まってあふれるなんて事は無かったんだ。
もちろん今は、そのさらに下にある水路を遮断してあるから、水は上がってこないわけだ」
「ちょっとややこしいぞ」
「なに!!」
アポーの突っ込みが、グリーを驚かせた。
彼としては、分かりやすく説明を・・・
「それはいいとしてグリー、この水路を一直線に行けば球場だな?」
「ああロスソン。時々通路だけ通れないように扉が閉まっているときもあるが・・・それは俺が開ける」
グリーが珍しく頼もしいことを言った。
そして特殊部隊員たちはゆっくりと通路を進んでいった。

月光の輝く夜の、地下での出来事である・・・


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