出会い 服薬2ヶ月前。

2004年5月2日(日曜日)

僕のブログに興味を持ってくれた女性がいた。
もちろんネットでの関係だから会った事もない女性、お互い顔も知らない。
しかし相手は僕の日記を読んでいてそれなりに僕の事を理解していた。

その女性は僕の1歳年上。
就活と大きな恋愛の喪失から苦しい日々を過ごしていた。

ある日その人から書き込みがあった。
活字のキャッチボールをするうちにすぐに意気投合した。
そして会う事になった。

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ネットでの知り合いに会う事は僕にとって有り得ないことだった。
だから有り得ない待ち合わせをする事にした。

「お互いに顔を知らない。」
「しかし僕は女性の外見的な特徴を知っている」

そこで僕は女性のアルバイト先に客として潜入する事にした。

女性が僕に気が付かなければ僕はそのまま客を装い平然として帰宅する。
女性が僕に気が付けばそれで良し、どこかご飯でも食べに行く。


結果として僕は客として店に入り込み全く気が付かれる事もなかった。

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女性のアルバイト先は横浜のとあるマンガ喫茶だった。
僕はマンガを2冊手に取り指定された禁煙席に座った。
ゆったりとしたソファーだった。

マンガ2冊はすぐに読み終えた。
腕時計を確認するともう20時近かった。
別に会わずに帰っても良かった。

しかしわざわざ来たからには何もしないで帰るわけにも行かない。
僕は女性に「今お店の中にいる」とメールを送った。
女性は「全く気が付かなかった」と返信してきた。
しかしすぐに女性から「○○番テーブル?」とメールがきた。

受付での僕の言動が少しおかしかったようで(受付の女性をガン見)アルバイトの同僚が女性に教えてきたらしい。
女性はその同僚に今日、僕が訪れる事を教えていたのだった。

メールを返信しようと携帯電話を弄っていると僕の座っているソファーの左横に跪いた格好で女性がいた。
話し掛けられるまで解らなかったがこの女性が僕が今日会う約束をした女性らしかった。

僕は聞いていたカセットウォークマンのスイッチをOFFにした。
軽く挨拶した後、女性は仕事に戻って行った。
女性は僕に食べかけのお菓子を手渡した。

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僕はもうマンガを読むのも疲れたのでカセットウォークマンで音楽を聞いて目をつぶって考え事をした。

これから何処に行こう?
こんな出会い方をした事は今の今まで一度も無い。
夜の横浜。
そもそも横浜になんて来た事は皆無と言って良い程だった。

僕はとりあえず白木屋のような居酒屋で軽く飲んで終電までには帰る計画をその場で立てた。

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女性のアルバイトの勤務時間が終わった。
二人で適当に話をしながら夜の横浜の街を歩く。
自己紹介もそこそこに、話の話題は専ら僕のブログの話へ。
そして話も弾みだしたところでお店を見つけて入った。
僕も女性もよく行くというチェーン店の居酒屋だった。
23時だったのでお互い1時間くらいなら飲める時間だ。

二人で乾杯をして飲んだ。
僕は精神科に通い始めて薬を飲み始めてから初の酒だった。

「カルピスサワー」

今でもあの味を覚えている。
一口で顔が熱くなるのを感じた。

そして無難にサラダなどを頼んで二人で突付いて他愛のない話をした。

すぐに意気投合した。
終電で帰るはずが僕と女性が楽しげに酒を飲んでいるうちに電車会社は規則的に業務をこなし、僕たちを置いて行ってしまった。

仕方ないのでカラオケでオールをする事にした。

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カラオケでのオールは0時くらいから5時までのコース。
ソフトドリンク飲み放題だった。
二人とも酔いは少なくとも醒めていた。
でも酒なんかなくても波長が合う二人だった。
ソフトドリンクでも十二分に楽しく過ごせた。
二人で色々な歌を歌った。

僕はラップ。
女性は失恋ソングやメロコア。
僕も負けじと失恋ソングを歌った。

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あっと言う間に時間は過ぎて行った。
何時間か経った頃、僕の腕の中に女性はいた。
決してこの女性に恋愛感情を持つ事はないと思っていた自分の心が揺らぐ感覚に陥った。
それが不確かな一夜の夢なら良かった。

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僕は女性がタバコを吸うのを別に否定しない。
しかし好きな人になってしまうとそうはいかないらしい。

初対面の女性を抱きしめた状態で「タバコを止めて欲しい」と僕は言った。
女性は「無理」の一点張りだった。

カラオケBOXから退室する際、僕は女性の唇にキスをして「タバコを止めろ」とキャラにない事をした。
女性は「ハイ」と言った。
最後に女性は…

「私は付き合った人としかキスしないんだヨ」と意味ありげな事を言っていた。
その言葉に恐らく嘘偽りないだろう。

僕は高揚感を感じていた。
唇と唇が重なる柔らかな感触。
お互いの舌がさらに奥を求める。
ますます僕が女性に引かれていくのは当たり前だった。

カラオケBOXから出ると雨上がりの早朝のあの独特の湿気臭い匂いがした。

まだトレーナーを着なくてはいけないくらいの肌寒さの中、二人はまた会う約束をして別れた。



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