幸せな大学生活8

僕は彼女と番った。
彼女を連れ保健室に入ったがすぐに保健室を追い出された。
いや、自分から逃げ出したと言った方が適切かもしれない。
僕の名前を呼ぶ彼女と保健室のメンバーを尻目に僕は大学から、保健室から離れた。
そしてすぐに手持ちの薬を飲めるだけ飲んだ。


僕は主治医から処方された薬を全て鞄に入れて持ち歩いていた。
精神安定剤のデパス。
睡眠導入剤のマイスリー、ロヒプノール。
抗鬱剤のパキシル。
抗躁剤のリーマス。


列挙したならば切りがない。
一つ一つは弱い薬だがストックとして持っている薬の量は腐るほどあった。
1週間ごとに通院していたのだが、理由をつけては予約の2、3日前に病院に行き簡単なカウンセリングを受け処方薬を手に入れていた。


~~~~~


僕は彼女が保健室で保健室メンバーと保健室の先生に保護された後、断続的に電話をかけた…


…様である。


薬の飲み過ぎで意識が曖昧だった。
大学の最寄りの駅で蹲っている僕を友人が発見したらしいがその時僕は意味不明の言動を繰り返すだけだったという。


ただ、覚えているのは保健室に戻ろうとした事だ。
保健室に戻るために最寄駅から大学に向かうと前から僕の友人たちが歩いてきた。


ペイ谷。
サカマサ。


あと数人いたと思う。
しかしココに記せるほど記憶は確かではない。


僕は皆に「事件」の概要をかいつまんで説明した。


簡単に言ってしまえば…



「E棟の障害者用トイレでセイ行為をした、挿入し本当の意味での初体験をした」



という内容だ。
僕はその時ペイ谷が持っていた使い捨てカメラに向かって満面の笑みで、ガッツポーズを作った。
写真機という一瞬を切り取る機械に向かった。


…しかしその事も覚えてはいないのだ。
後から写真を見せられて初めて知った。


「薬の飲み過ぎによる健忘」


その一言で片付けてしまえる。
しかし薬の飲み過ぎだけでは説明がつかない。
記憶を封印しようと脳が先手に回って精神的ダメージを回避しようとしたのだと、僕は推測する。


ペイ谷一行と別れた後、僕は保健室に行くのが億劫になったのだろう。
駅の券売機の横でうたた寝をしたようだ。
これも通りすがった友人に聞いた。


そして気がつくと情景は電車内に場所を移していた。
終点の新宿駅で駅員に起こされた。
僕は千鳥足で自宅へ戻るための電車まで普段の歩行速度の3倍は遅く歩き始めた。


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