にんじん色の雲。

ただそこにある、ポッカリあいた穴を埋めるように浮かぶ白い雲。

その雲がにんじん色に染まっていく。

今日も終わりなんだって私は帰り道の土手でそれを見て思う。

昨日彼氏と喧嘩をしたことも忘れて、ただ今日の終わりを見る。

出会ったときは毎日が新鮮で同じ日は来ないって信じてたけど…

最近は顔を合わせれば喧嘩ばっかり。

浮気しちゃうゾー
これでも私だってまだ街角に立てばナンパされるゾー
って心の中でにんじん色の雲に向かって叫ぶ。

ここが海だったら大声で他人の目も気にせずに叫べるのかな??

…でも本音は彼氏に捨てられるのが怖い。

出会ったときの新鮮さは無くなってしまったけど、一緒にいると一番落ち着く。
別にセックスなんかしなくても一緒にいられるだけでホッとする。

前に彼氏に「お嫁にもらうならお前みたいな女がいいな」って言われた事があったっけ、あの時は嬉しすぎて地上三メートルくらいをふわふわ浮かんでいるような気持ちだったけど…

「お前みたいな」って別に私じゃなくてもイイのかよ?! って冷静になった今では思う。

にんじん色の雲がもう見えなくなってきた、代わりに満月にはあと少し足りない欠けていて、でも回るいお月様が顔を覗かせる。

土手にいるといつも時間を忘れてしまう。

さー早く帰らなくちゃ。

帰ったらまず最初に彼氏に謝ろうかな?

ほっぺたに雨が一滴垂れた、それが自分の涙だって気付いた頃は私はワンワン泣いていた。

また明日も明後日もにんじん色の雲が見たいなって思った。

出来れば彼氏と一緒に。


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