少年とオオカミ



 昔、ある国のある村に「せんみつ」というあだ名の少年がいました。あだ名の由来は1000回しゃべって3回くらいしかホントのことを言わないという意味です。しかもその3回というのは「腹減った」「眠い」「頭来た!」なのです。
 今日も今日とて隣村の朝は少年のウソで始まりました。

少年:「オオカミが出たぞ~~!!オオカミだ~~~!!」

 村人たちは家畜が襲われていないか、子供は無事かと手に手に鋤や手斧を持って家から飛び出して来ました。しかし、オオカミは影も形もありません。
 少年は物影から村人たちの慌てふためく様を見てほくそ笑んでいました。

村人A:「全く、誰だ人騒がせな・・・」

村人B:「全くだ!どこのアホだあいつは!?」

村人C:「ありゃ上の村の“せんみつ”だ!俺はあいつが 
    走って行くのを見たぞ」

 村人たちはカンカンでした。そしてもう二度と騙されまいと口々に言って散会しました。

 さて、翌日から、村人たちが騙されなくなって面白くない少年は、「そうだ!僕がオオカミになればいいんだ!」と奸計をめぐらせました。
 翌朝、オオカミの着ぐるみを着た少年が、
「でぇ~へ~へ~!オオカミだじょ~~~!!早く逃げないと食べちゃうじょ~!!」
と叫んで下の村に突入して行きました。すると・・・。

 鶏小屋から、鶏をくわえた一匹のオオカミが現れました。
中にはもう一匹います。

少年:「ギョエ~!!何でこんな日に限って!!食われたら
   どうしよ~~~!!だじげでオカアチャ~ン!!(〇o〇;)」

 ところがオオカミ達は二足歩行のオオカミ(少年)の姿に驚いて逃げて行きました。

 その時、鶏小屋の異変に気づいた村人が鉄砲を持って家から出て来ました。

少年:「あ、オオカミならあっちに行きました」

村人A:「うっぎゃ~~~!!ワ-ウルフ(人狼)だぁ~~
    ~~!!誰か~~~!!銀の弾丸をッ!!早く  
    ~!!」

少年:「えっ!?いや、ちょっと待って・・・僕だよ!上の
   村の・・・ホラ、僕だってば!(;ロ;)」

 少年は慌てて着ぐるみを脱ごうとしましたが、こういう時に限って脱げないんですよね・・・。


村人B:「つくんだったらもうちっとマシなウソを言え!
    奴はとんでもねぇウソつきだが生肉は食わねえ!」

村人C:「ええい!構うこたぁねえ!撃っちまえ!!」

少年:「ギョエ~~~~!!待った待った!!勘弁してよ
   ~!!(T_T)」

村人たちの集中砲火をかいくぐり、少年は命からがら逃げ出しました。それっきり下の村に「せんみつ」少年は二度と現れなかった・・・ということです。







 それから10年後・・・、上の村では、若干25歳の村会議員が誕生していました。「正直エイブ」と異名を取る彼ですが、10年前は手のつけられないいたずらっ子でウソつきでしたが、ある日を境にウソを言わなくなったそうです。上の村の人たちはその変貌ぶりに「神の啓示を受けたんだ」とか、「雷に当たったんだろう」とか噂したそうです。
 彼の名は「エイブラハム・L」やがてこの国の大統領になる男です。


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