俺がみっくみっくにしてやんよ~♪

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SLIME“西”(第三章

SLIME“西”(第三章


スライムとスライムベスが、ホイミスライムとベホマスライムに

改造されているちょうどそのころ、西へ向かったグループは

黄色い砂漠に到着していました。

「ナンダここは!?食べるモンなんかなんにもないじゃないか」

「まわりは砂とでっかい岩ばかりだ」

「おまけに太陽はギラギラ。とてつもなく熱いヨ」

「だれだ、西はいいとこだなんて言ったのは!?」

「責任者、出てこーい」

なんと言っても後の祭りです。

「困った、困った。食べ物は全然ないし。子どもたちだけはどんどん生まれてくる
し。

いったいどうすればいいんだろ?」

引き返そうにも、最初の湖からはあまりに遠くまで来てしまいました。

「それに戻ったって食べ物がないのは解決するわけじゃないしナッ」

「でもここにいるぐらいなら前の場所の方がましさ!」

「だいたい西へ行こうって言い出したスライムくんが悪いんだよ」

「そんなコト言ったって、自分だってこっちが言いと思うから来たんだろ」

お腹が減ってイライラし始めたスライムたちは、あちこちで言い合いをしていま
す。

「もうダメ。わたしお腹が減って死んじゃいそう」

「せっかくここまで来たのに……」

「とにかくここにはいられないナ」

グルッっと辺りを見回すと遠くに山が見えました。

「あの山へ行こう。ここよりは食べ物があるはずだ」

山の上の方は雪が積もっているのか、真っ白です。

ゾロゾロ、ゾロゾロ。

スライムたちは照りつける太陽の下を進んで行きました。

途中かなりの仲間が倒れましたが、なんとか半数以上が

山のふもとにたどり着きました。まばらな草と貧弱な木々がスライムたちを

むかえてくれました。

「ワーイ、草がアルゾ!」

「それに木ノ実もなってるヨ」

けどやはり食べ物は足りません

「しょうがない、もうちょっと上の方へいってみようよ」

「アソコに道らしいものがあるヨ」

見れば、かなりの広さの山道が頂上へとのびています。

なんとか元気がでたスライムたちは、上へ上へと上っていきました。

「ぺっ、ぺっ。ここいらの葉っぱは硬いなァ」

「わがまま言うなヨ。チョッピリでもたべものがあるだけましじゃないか」

「それにここは砂漠にくらべてずっと涼しいしネ」

ところが登るにつれて涼しいどころではなくなってきました。

岩や木の陰には、去年の冬に降った雪がまだ残っています。

初めての寒さにスライムたちは、ガタガタ震えながら進んで行きました。

山の頂上に近づくにつれ、草はほとんどなくなっていきます。

そして木々は、葉が針のように細い針草樹ばかりです。

「寒いよう、身体が凍っちゃうヨ!」

「来るんじゃなかったヨ!」

「またまた不平が出はじめたころ、一匹が妙な物を見つけました。

「なんだいこれは?」

「丸くってキラキラしてるけど食べ物じゃないネ」

それは人間の使う金貨でした。

でもなんでこんな場所に落ちているのでしょう?

「ウワッ!ひどい」

一匹が大きな声で叫びました。

目の前はスライムたちが登ってきた道と、

横から伸びてきた道が重なる十字架のような場所でした。

何台もの馬車が横倒しになり、荷物がいっぱい転がっています。

「いったい何があったの?」

みんな頭をひねっています。

実はこの道は、山の両側にある二つの町を結ぶ街道だったのです

転がっている馬車と荷物は、片方の町からもう一方へ移動する

キャラバンのものでした。

でも大事な荷物をほっぽって、人間はどこへ行ってしまったのでしょうか?

「オーイ!こっちにもおもしろいモンがあったゾ」

一匹がほどけた荷物の中から不思議な物を発見しました。

かなり厚みのあるきれで作られたソレは、身かわしの服と

呼ばれる人間の防具でした。しかしもちろんスライムたちにそんなコト

はわかりません。

「フワフワしてあったかいヤ」

中にもぐりこんだ一匹が言いました。

「イイナ、イイナ。僕も探そっと」

我も我もと全員が散乱した荷物を調べます。

「こっちは剣が入ってたヨ」

「こっちにはカブトが入ってるヨ」

「あったぞ、この箱は全部あの、“フワフワあったか”と同じだ」

引きずり出したみかわしの服は、何とか全員がもぐり込むだけの数がありました。

「ちょっと動きにくいけど、これなら寒くないネ」

「気のせいかな?動きにくいどころか素早くなったような気がするゾ」

これで寒さがしのげます。

「それじゃソロソロ出発するよ」

一匹がそう声をかけました。そのときです……

「ネエ?なんかいま聞こえなかった?」

「そう言えばどこかで声がするネ」

風向きのせいでしょうか、道の左側から誰かの声が聞こえます。

硬い葉を茂らせた立木のすぐ奥は険しい崖になっていると言うのに、

いったい誰がいるのでしょうか?

「ボクちょっと見てくるネ」

最初に身かわしの服を発見した一匹が、様子を見に行きました。

「ネエ。ネエ。このすぐ先の洞窟から声がするよ」

「声がするってコトはナニか生き物がいるってこと……」

「生き物がいるってことは……」

「食べ物があるかもしれない!」

ここ数日間、満足な食事をしていないスライムたちは

洞窟に入ってみることにしました。

中はかなりの広さです。

「やっぱり生き物の声だ……」

「いや、これは歌だヨ」

そうです、洞窟の奥で何者かが歌っているようです。

「ホーヤレホー、どっこいせ」

「仕事はとってもきびしいが、やらぬと魔王に叱られるっ」

どうやら、中で誰かが働いているようです。

スライムたちはさらに奥へと進んで行きました。

地面はかなりの急勾配で下がり始め、温度がだんだんと低くなっていきます。

「コレを着てて良かったネ」

「ホント、ホント。このきれがなかったら凍えているところだ」

「シッ!声を立てると見つかっちゃうヨ」

かなりの距離を進むと正面に明かりが見えました

巨大な影がいくつも動いています。

なんと!そこにいたのは巨人族のトロルでした。

五人のトロルがツルハシで岩肌を掘っています。

「うーん、硬い岩ダ」

「こいつさえ壊せばきっと銀の石がたくさん取れるのに」

「早くしないと魔王さまに叱られるぞ」

実はこの山は、ミスリルという鉱石が取れる山だったのです。

精錬するととても丈夫な金属になるミスリルを、人間も

魔物も血眼になって捜していました。

人間の鍛冶屋はミスリルから水鏡の盾や光の剣を造ります

そして魔物の鍛冶屋は、ガイコツ剣士の剣や悪魔の騎士の斧を作るのです

「これじゃ時間がかかりすぎる」

トロルの一人がツルハシを投げ捨てて言いました。

「そうだ、魔法の玉はまだ残ってたか?」

「アト三つあるけど、使うのか?」

トロルたちは硬い岩を魔法の玉、つまり爆薬を使って吹っ飛ばすつもりのようで
す。

スライムたちはジッと動かずに彼らの様子を見守っていました。

「この前みたいに人間が来ると面倒だ、

早く掘り出しちまった方がイイだろう」

「おまえがあんなにデッカイ声で歌うからじゃないか」

「ナニを言いやがる、歌でも歌わなきゃ仕事やってられっかい」

どうやらあのキャラバンを襲ったのはこいつらの仕業のようです。

人間は殺されたか……食べられてしまったに違いありません。

隠れていたスライムたちは恐ろしくなってしまいましたが、

ヘタに動けば見つかってしまいます。

「サァ、魔法の玉を三発しかければふっ飛ぶだろう」

カチカチ、火打石の音が響き渡りました

「隠れろっ!」

導火線に火がつき巨人達が岩陰に隠れます。

シュル、シュル、シュルッ……

ドッカーン!

大爆発が起こりました。どうやら三発は多すぎたようです

岩が崩れ、その奥から銀色の液体が流れ出しました。

「なんだコリャ?」

「ぎ、銀の岩が溶けちまった」

いくら魔法の玉でも鉱石を溶かすだけの熱は出ません。

トロルたちは知らなかったのですが、この山は休火山

つまりいまは眠っている火山だったのです

ミスリスを求めて下へ下へと掘り進んだトロルたちはマグマの熱で溶けた

鉱脈を掘り当ててしまったのでした。

「グワワッ!熱い」

「た、助けてくれー」

さすがのトロルも灼熱したミスリルを浴びてはたまりません。

大火傷をしてあっけなく死んでしまいました。

「ヒエー。こ、こっちに流れてくるぞ!」

「早く逃げろ」

慌てたのはスライム達です。懸命に出口に向かって逃げました。

しかしみかわしの服のおかげで素早さが上がっているとはいえ、

そう早くは逃げられません。

たちまち溶けた金属の流れに飲み込まれてしまいました。

「アチチチ、こりゃたまらん」

「ヒー、死ぬ!熱いよォ」

スライムたちは大慌てで服の中にもぐりました。

スッポリ全身が入ってしまったのです。

みかわしの服のおかげで熱をしゃだんし、なんとか死なずにすんだようです。

やがて流れ出たミスリルは冷えて固まりました。

洞窟の床がまるで鏡を張ったように光っています。

そしてその所々に、ポコッっと出っ張った部分がたくさんありました。

スライムたちです。

彼らもいっしょに固まってしまったのです。

「オーイ、みんな大丈夫かァ?」

「こっちは大丈夫だヨ」

「ボクも生きてるゾ!」

なんと運のいいことに全員助かったようでした

「だけど身体が動かないゼ」

「こっちなんか逆立ちしたまんま固まっちまったい」

ひっくり返った一匹が怒鳴りました。

「まってろ、ボクがなんとか……」

ピキピキ……ピキーン。

一番力の強いのが必死で身体をミスリル銀の床からはがします

「今助けてあげるからネ」

キーン、体当たりして、次々と仲間の身体をはずしていきます。

こうしほかのスライムたちもなんとかミスリル銀の床から離れることが出来たので
す。

「イヤーみんなきれいになっちゃったナ」

「ホントだ。ピカピカ光ってるゾ」

命拾いしたスライムたちはゾロゾロと洞窟を出て行きました。

「それにしてもビックリしたネ」

「ボクはもうダメかと思ったヨ」

こうしてみかわしの服で素早さが上がったスライムたちは、

溶けたミスリルを浴びたことで丈夫な皮膚も身につけたのです。

彼らの体質は子孫へと伝わり、

やがて全く新しいスライム、たぐいまれな素早さと金属の体を持った

メタルスライムが誕生するのです。






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